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廃棄物処理法では、廃棄物の排出事業者の責務として、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理することが規定されています。
(法第21条の3第1項)
建設工事が数次の請負によって行われる場合は、建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理について、元請業者を排出事業者とします。
これにより、元請業者は、排出事業者として自ら適正に処理を行い、又は委託基準に則って適正に処理を委託しなければなりません。また、下請負人は「廃棄物処理業の許可業者」であって「元請業者からの処理委託契約」がなければ、廃棄物の運搬又は処分を行うことはできません。
建設工事とは | 土木建築に関する工事であって、建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含みます。 |
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元請業者とは | 注文者(施主)から直接建設工事を請け負った建設業を営む者(間接的に請け負った者、二次的に請け負った者は下請負人となります。) |
(法第21条の3第2項)
建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について、下請負人が現場内で行う保管は、当該下請負人もまた排出事業者とみなして、産業廃棄物保管基準及び改善命令に係る規定を適用します。
原則「元請業者が排出事業者」ですから、元請業者及び下請負人の双方に産業廃棄物保管基準を適用し、不適正な保管についても双方が改善命令の対象となります。
(法第21条の3第3項)
建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について、書面による請負契約で「下請負の廃棄物は下請負人が運ぶ」と定め、下請負人が自らその運搬を行う場合には、下請負人も排出事業者とみなします。
この場合、下請負人は産業廃棄物処理業の許可がなくても、当該廃棄物の運搬を行うことを可能としますが、産業廃棄物処理基準及び改善命令に係る規定を適用します。
また下請負人が不適正な処理を行ったときは、元請業者及び下請負人を指導します。
※下請負人が許可なく運搬できる場合(すべてに該当した場合に限ります。)
(ア) 建設工事(建築物等の解体、新築又は増築を除く)又は建築物等の瑕疵の補修工事であって、当該工事の請負代金の額が500万円以下であるもの
(イ) 特別管理廃棄物以外の廃棄物であるもの
(ウ) 1回に運搬する廃棄物が1m3以下であるもの
(エ) 当該運搬の途中で積替え保管を行わないもの
(オ) 運搬先は元請業者が使用権限を有する保管場所又は廃棄物処理施設であって、排出場所と同一の都道府県又は隣接する都道府県に存するもの
(カ) 事業場の位置、廃棄物の種類及び量、運搬先並びに運搬を行う期間等を具体的に記載した別紙を作成し、請負契約書の写しとともに携行するもの(省令第7条の2第3項第9号)
(法第21条の3第4項)
建設工事に伴い生ずる廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合は、原則「元請業者が排出事業者」となるはずですが、それでも下請負人が他人に委託してしまったときは当該下請負人も排出事業者とみなします。
この場合、排出者責任は元請業者に科せられますが、建設工事の不適正処理に限っては、実際に不適正処理を行った下請負人にも排出者責任を科しますので、元請業者及び下請負人の双方に産業廃棄物委託基準を適用し、不適正な委託についても双方が措置命令の対象となります。
建築物の解体時における残置物の取扱いについて、環境省から通知がありました。建築物の解体業者を排出事業者にすることはできませんので注意してください。
【要約】
解体する建築物に残されていた廃棄物について、その排出事業者は、解体業者ではなく元々の占有者である。
【解説】
建築物の解体にあたって、あらかじめ占有者に残置物を片づけさせてください。
一般家屋を解体した場合の残置物は、すべて一般廃棄物となります。
事業用建築物を解体した場合の残置物は、元々の占有者の事業活動に従い一般廃棄物又は産業廃棄物に分類します。
一般廃棄物となる残置物の処理を請け負える者は、市町村の一般廃棄物処理業の許可又は市町村からの一般廃棄物処理の委託が必要です。
元々の占有者が倒産、夜逃げなど連絡がつかない場合、一般廃棄物となる残置物の処理を行おうとする者は、市町村からの一般廃棄物処理の委託が必要です。
※市町村からの一般廃棄物処理の委託について
一般廃棄物の処理については管轄の市町村に問い合わせ願います。
平成14年5月30日より、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化に関する法律)が施行されました。一定規模以上の建築物や土木工作物の解体工事、新築工事の実施にあたり、特定建設資材については、工事現場で分別し、再資源化が義務づけられるとともに、「工事の届出」が必要となります。
分別解体等及び再資源化等の実施義務の対象となる建設工事の規模に関する基準については、1)建築物の解体工事では床面積80m2以上、2)建築物の新築又は増築の工事では床面積500m2以上、3)建築物の修繕・模様替え等の工事では請負代金が1億円以上、4)建築物以外の工作物の解体工事又は新築工事では請負代金が500万円以上と定められています。
建設リサイクル法では、特定建設資材を1)コンクリート、2)コンクリートと鉄からなる建設資材、3)木材、4)アスファルト・コンクリートを対象としています。
対象建設工事の実施にあたっては、工事着手の7日前までに発注者から県又は市へ届出をし、分別解体・再資源化等を実施しなければなりません。なお、対象工事の届出を行わなかった場合等には罰則規定が適用されます。
対象建設工事受注者に対して、分別解体などに伴って生じた前述の特定建設資材廃棄物について、再資源化が義務付けられています。
平成17年度において全国で不法投棄された廃棄物の種類は、件数で見ると、建設系廃棄物が393件(がれき200件、建設系木くず85件、建設混合廃棄物85件等)と多く、全体(558件)の70.4%を占めています。(平成18年環境省発表)
こうした不法投棄等を未然に防ぐため、排出事業者としての建設業者の役割について、次のような取り組みが必要です。
1) 構造物の省資源化・長寿命化を図るよう計画、かつ廃棄物を抑制する。
2) 発生した廃棄物については、再利用・再生利用の徹底し、資源循環を図る。
3) 自ら処理をすることが困難な場合には、適正な委託処理を行い、排出事業者としての責任を全うする。
建設汚泥の再資源化率は極めて低い水準にとどまっており、産業廃棄物の最終処分場の残余容量が逼迫している中、建設汚泥の最終処分量をいかに削減するかは喫緊の課題となっています。また、建設汚泥を含む建設廃棄物の不法投棄問題は依然として全国各地で看過できない状況にあります。
群馬県においても発生の抑制、減量化、再生利用を推進しています。県内の建設工事から排出する建設汚泥については、廃棄物・リサイクル課までご相談ください。
中間処理施設を経由しないで最終処分場へ運搬されるケースもあります。
中間処理施設で再資源化された場合は、処理はそこで終わります。
「焼却」は最終処分ではありません。焼却灰を最終処分場で埋め立てるなど、更なる処理が必要です。
工事で生じた建設廃棄物を、排出事業者である工事業者が自己の資材置場などで一時保管するケースがあります。これは積替えを行う必要があり、かつ、運搬先が決まっている場合に限り認められています。保管量の上限は一日当たりの平均的な搬出量の7倍です。また、廃棄物の性状が変化する前に搬出しなければなりません。一時保管のはずが固定化してしまい、不法投棄と化す事例があります。一時保管した建設廃棄物は速やかに搬出しましょう。
産業廃棄物を運搬する場合、運搬車両の車体の両側面に産業廃棄物の運搬車両である旨の表示をし、かつ、その廃棄物の種類などを記載した書面を備え付けることが義務づけらています。工事で生じた建設廃棄物を排出事業者である工事業者が自ら運搬する場合は、次の表示と書面が必要です。
車体表示の内容 | 備え付ける書面の内容 |
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他の工事業者が排出した建設廃棄物を運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。建設廃棄物の排出事業者は、通常は工事の元請業者であるため、工事の下請業者が運搬する場合は、その下請業者が許可を持っていなければなりません。なお、請負形態によっては下請業者が排出事業者になる場合もあります。(詳しくは前記「3」参照)
産業廃棄物の処理は、ほとんどの場合、専門の処理業者に委託されているのが実態です。委託された廃棄物の不適正処理を防止するため、次のようなルールが定められています。
ルール違反の処理委託をした建設廃棄物が不法投棄された場合は、投棄した者だけでなく、委託した工事業者もその廃棄物を片付けなければなりません。また、委託のルールは守っていても、適正処理の対価とは認められないような安い料金で委託した場合は、委託した工事業者にも不法投棄の責任が及びます。委託先の処理業者は慎重に選びましょう。
〈こんな処理業者には注意〉
以上のルールに違反した場合や違反状態を改善させるために行政機関が出した命令に従わなかった場合は罰則が適用されます。廃棄物処理法は他の法律に比べて量刑が重いと言われています。例えば不法投棄と不法焼却は、いずれも5年以下の懲役若しくは1千万円以下(法人は3億円以下)の罰金又はこの併科です。
処罰されると金銭的にも社会的にも大きな損失を被ります。そうならないためにも、建設廃棄物は適正に処理しましょう。