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排出事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、許可を受けた産業廃棄物処理業者その他環境省令で定める者に委託しなければなりません。
また、処理を委託する場合は、委託しようとする産業廃棄物の処理がその事業の範囲に含まれていること、書面により委託契約を行わなければならない等の政令で定める基準に従わなければなりません。
委託によって、事業者が責任を逃れるわけではなく、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまで、一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。
廃棄物処理法では、「産業廃棄物の運搬」と「産業廃棄物の処分」を分けて定義しており、それぞれ許可も異なり業者も異なります。また廃棄物処理法では、産業廃棄物の運搬と産業廃棄物の処分はそれぞれ委託しなければならないと定めていることから、産業廃棄物の処理には原則2つの契約が必要となります。
ただし、運搬と処分の両方を請け負うことのできる業者と契約することを決定した場合は、1つの契約にすることができます。運搬と処分のそれぞれ異なる業者とをあわせて1つの契約(いわゆる三者契約)をした場合には、廃棄物処理法に抵触し処罰されることがあります。
【契約1】排出事業者と収集運搬業者A、【契約2】排出事業者と処分業者B
【契約3】排出事業者と収集運搬業者Aと処分業者A(両方を請け負うことができるA)
【契約禁止】排出事業者と収集運搬業者Aと処分業者B(いわゆる三者契約)
【契約禁止】排出事業者と直接廃棄物の処理を行わない第三者
運搬を請け負うことのできる業者には、都道府県知事又は政令市(政令指定都市及び中核市)長から許可された産業廃棄物収集運搬業者と、環境大臣から収集運搬に限って指定・認定を受けた者などがあります。
処分を請け負うことのできる業者には、都道府県知事又は政令市(政令指定都市及び中核市)長から許可された産業廃棄物処分業者と、環境大臣から処分に限って指定・認定を受けた者などがあります。
これら業者の許可又は指定あるいは認定にはそれぞれ「事業の範囲」が定められています。「事業の範囲」とは、取り扱うことのできる産業廃棄物の種類、許可条件、処分業者の場合にはその廃棄物の処分方法及び能力が含まれ、委託しようとする産業廃棄物の処理が「事業の範囲」に含まれる業者を選定しなければなりません。つまり許可を持っているだけでは委託できず、委託する内容が許可に定められた内容にすべてが含まれていないと委託基準に違反してしまいます。許可証の写しをもらって事前に確認しましょう。
産業廃棄物の処理の費用は、その数量や性状、運搬先までの距離や処理方法、運搬機材の効率的な積載可否やその運用などによっても大きく変わってきます。
例えば、事務用イスであれば廃プラスチック類と金属くずの混合物となるので、事業の範囲に廃プラスチック類と金属くずを含む業者を選定します。また処理方法には、焼却や埋め立て、再資源化のための破砕や選別といった方法があります。さまざまな要因に配慮すると、処理施設も異なり処理費用も変わります。
※法律では処理単価を定めていませんが、業者団体である公益社団法人群馬県環境資源創生協会(前橋市紅雲町1-7-12(住宅供給公社ビル3階) Tel 027-243-8111)では、産業廃棄物の種類によっては標準的な処理単価を案内しています。
産業廃棄物の委託処理に際しては、委託契約を締結し産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)の適正な運用による管理が必要です。
産業廃棄物の適正処理のためには、その産業廃棄物の性状をよく確認し、処理業者に対して産業廃棄物に関する情報提供を徹底してください。例えば、有害物質を基準以上含んでいる汚泥等を委託処理する場合は、特別管理産業廃棄物として特別管理産業廃棄物処理業者(収集運搬業・処分業)に委託しなければいけません。また、廃アルカリにシアン化合物が含まれていることを処理業者に知らせなかったため、中和作業を行っていたところ突然毒性ガスが発生したという事故事例もあります。廃棄物データシートや性状分析結果なども活用してください。
廃棄物の処理に関しては記録を残し、自分で排出した廃棄物の処理状況の把握に努めてください。委託契約書やマニフェスト伝票などは法令で5年間保存が義務付けられています。また、事業者によっては帳簿の備え付け等と5年間保存が義務付けられています。こうした記録から自社の廃棄物の状況を見直してみると、案外合理化を図れることが見えてくるかもしれません。事業の合理化のための一つの手段として、記録を役立ててみてはいかがでしょうか。