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群馬県非認知教育専門家委員会(第3回)議事概要

更新日:2024年4月25日 印刷ページ表示

1 期日

 令和6年3月5日(火曜日)午後4時から午後6時

2 場所

 県庁24階 教育委員会会議室(Web会議)

3 出席者

  1. 委員(8名中7名出席、1名代理出席)
     大島みずき委員、田熊美保委員、中室牧子委員、Patrick Newell委員、今井朝子委員、金子弘幸委員、工藤勇一委員(横浜創英中学・高等学校 校長補佐 山本崇雄氏が代理出席)
  2. 事務局 平田郁美教育長 他 職員13名

4 内容

(1)開会

 開会

(2)あいさつ

 平田郁美教育長によるあいさつ

(3)議事

  • 非認知能力の評価・育成事業 事業計画概要について
    配付資料により事務局説明、質疑
  • 非認知能力のアセスメントについて
    配付資料により事務局説明及び委員による事例紹介の後、意見交換

(4)その他

 事務局から事務連絡

5 委員の主な意見

【非認知能力の評価・育成事業 事業計画概要について】

(委員A)
​ スコットランドの視察の中で得られたことをどのように生かしていこうと考えているか。

(事務局)
​ スコットランドはカリキュラムフォーエクセレンスという4つの力を育成することを目指した教育を展開している。学校にある程度の権限が渡され、目指す姿に近付けるように、学校それぞれが取組を行うことができる環境が整っており、子どもたちの特徴、特性を教師がしっかりと見取り、次の成長につなげる指導をしているという様子を見ることができた。ここから得られることとして、学校の実態、生徒の姿に応じた教育活動を非認知教育という視点で捉え、どのような取組が各学校で、また、その学校の子どもたちにとって必要なのかということを考えていくことが大事である。そのため、スコットランド型の学校を作るというような捉えではなく、スコットランドの非認知能力の育成の考え方を踏まえ、日本の環境の中で取組を実践することができればと考えている。
​ ここに挙げている事務局による交流、打合せにおいて、スコットランドが取り組んでいることの詳細を把握し、それを日本の文脈の中に照らし合わせた上で、非認知能力を意識した取組、あるいは非認知能力と認知能力を相互に高められる取組を群馬県は群馬県で、スコットランドはスコットランドで実施し、さらに相互にとって共通の課題が見えてきた場合には、共通の取組を実施していけるとなおよいと考えている。

(委員B)
​ 事業計画概要から特に群馬県として新しく取り組むことは何か。その特徴を教えてほしい。

(事務局)
​ 非認知教育という取組は、これまでの既存の教育活動の中で既にたくさん行われている。今後は、そこにしっかりと焦点を当てるとともに、群馬県としてはSSESを実施したことで得られた結果を踏まえて、感覚的にやっていたものや経験的にやってきたものに対して、見直しをすることができる。こうしたエビデンスをもとにした取組は、群馬県だからこそできることと考えている。

(委員C)
​ この非認知能力の評価・育成事業は、群馬県にとどまらず、全国への示唆となってほしいと考えている。今年や来年から、学習指導要領の改訂の本格議論も始まると思う。ここで強調したいのは、実際ところ、日本の学校におけるカリキュラムの自由裁量は大きい。PISA2015のデータとして、カリキュラムの内容について、日本では校長先生と教師を合わせで90.2%自由裁量がある。ただし、自由裁量に委ねられてしまうと、学校の教科指導の中におけるSELというのは、どの国でもなかなか浸透しにくい。「非認知教育は総合的な学習の時間や特別活動など」「認知教育は教科学習」と二項対立となるものではなく、「非認知と認知」「総合的な学習と教科学習」の往還が重要である。また、各教科の中に入ることでカリキュラム・オーバーロードにも対処できる。群馬モデルが、全国に示唆できるものとなることを期待している。

【非認知能力のアセスメントについて】

(大島委員の事例紹介)
 ​幼児教育の現場を多く見ている立場として、その中でどのようなアセスメントが行われているかというと、幼児教育では遊ぶことを教育活動の中心としているが、それぞれの子どもによって遊びの目的が異なるということがポイントである。一斉に同じ活動をする場面はあるが、基本的に自分で何をしたいかを決めて、自分で行動するというのが遊びであるため、その中で目的は子ども自身で異なる。そこで、ただ遊ばせておくだけになると、「楽しかったね」で終わってしまうことが起こるため、そうならないようにアセスメントを重視している。アセスメントすることで、保育者が保育を振り返り、次の計画を立てることで環境構成を行っている。義務教育以上とは異なることとして、遊びは直接教えるのではなく、環境を設定するにとどまる。その環境を子どもがどう選ぶのかは子どもに任されている。そして、子どもがどういう環境を選んだのかということもアセスメントする必要がある。中学生や高校生は自分自身がどういう活動をしたかということが大事になると思うが、幼児教育の中ではそこまでは求めない。むしろ、子どもたちがどう関わっているのかというのを教師がアセスメントするのである。 
​ アセスメントの方法は、観察がメインである。楽しかったと聞けば皆「楽しかった」と言うため、幼児教育ではよりしっかり観察をしないと分からない。子どもたちの活動が一人一人違う分、共通のチェックリストのようなものは馴染まない。結果よりもどういう過程でその結果に到ったのかということの方が幼児理解には重要である。遊びの中における活動を、1つ1つ切り離すというのは難しいため、観察して全体を見ていくということが多い。その中で、子どもたちの姿としては、子どもが伝えていた言葉やつぶやきみたいなものを記録していることが多い。子どもたちが何を経験しているか、何を楽しんでいるか、何に挑戦しているか、誰と関わっているかを捉える。挑戦してどうだったかという結果ではなく、何に対して挑戦しようとしているのかということの方が重要である。
​ 事例としては、エピソードによる記録、ラーニングストーリー、ドキュメンテーションといったものがある。太鼓橋を渡った子どもの様子を「楽しそうだった」で終えるのではなく、友達が渡り切るのを見た後で、自分も挑戦する列に加わり、難しかったけど渡り切ることができたというように、「楽しそうだった」というのは、どういう姿からそれを見取ったのかということが大事である。ラーニングストーリーでは、子どもが肯定的に見えるようになるための視点を通して記録したものである。こうした丁寧なエピソード記録というのが幼児教育で求められている。また、ドキュメンテーションにおいては、活動の流れ全体が分かるようにするというのが特徴である。それを見ることによって、どういう活動をしたのか、どういう学びがあったのかというのを分かるようにするものである。
​ 最後に、こうした積み重ねをポートフォリオとして残しておく。その際、幼児期の終わりまでに育って欲しい姿という視点でこうした記録をすることが大事である。それにより、子どもたちの発達を保護者と子どもと教員間で共有するということができる。また、数値化できない部分があるからこそ、言葉にしたり図にしたり、流れをしっかり見せることによって、何を学んできたのかを互いに話し合うことができると考える。

(今井委員の事例紹介)
​ 大島委員の話を聞き、幼児教育も高校教育も基本は変わらないと感じた。見取りというテーマにおいて、本校で実施しているスパイラルアップの開発事例を紹介する。まずは手法の検討から話したい。子どもたちをどういう姿に育てたいのかという目標を設定したとき、それに対して授業をデザインするが、その際、データが必要である。そこで仮設から始まり生徒がどうなっているのかというデータを集めるためにはタイミングを考える必要がある。そして、どういう情報を取得するか、このタイミングと必要とする情報を使い分けていくのが見取りのやり方と考える。タイミングに関しては、形成的なものとして、生徒のやっていることを見ながら短いスパンでデータをとっていくというものと、総括的なものとして、年に1回であったり、学期の最後という時にとっていくという2種類がある。アセスメントは、アメリカでは生徒からのデータをアセスメントと呼び、評価というのを先生から生徒へのフィードバックという定義がされており、そのように区別する。組合せは4つとなり、これをどう使い分けながら生徒を望ましい方向に育てていくかというのが、見取りになる。
​ 本校では、OECDのラーニングコーパス2030をもとに、21世紀のビジョンとして世界をよりよい場所にするために、世界の多様な仲間とともに成長して挑戦できる生徒を育てるということを、校訓に加えて次の世紀のビジョンとして掲げている。そのために、高校生である生徒は、社会に出る前にいろいろな人とプロジェクトを行っていくことが必須になると考える。今まで様々な国際プロジェクトに参加し、そこで成功している人たちがもっている気質を見て考えた時に、やはりそれはSELが重要と感じ、それを中核にし、PBLを回すということをやっている。
​ アセスメントとしては、学期の始めにBESSIのアセスメントをやり、全体の傾向を見るとともに、各生徒にフィードバックをすることで、自分の強いところと弱いところを認識させる。これは形成的なアセスメントであり、生徒から情報を得ると同時に、生徒にはデータとして評価を与えるというものである。テキストは、エモリー大学の開発したSEE Learningを用いているが、まず新しい概念、ウェルビーイングや人間に共通するものといった社会性と情動の教育に出てくる考え方を知るために必要な言葉を説明し、その後ワークショップを行う。最後に自分事にするために振り返りをするが、生徒からのフィードバックであるためアセスメントと言える。さらにオンラインで質問をして、各自でその問いに答えたことを評価するというアセスメントを行い、それにより、1人1人が何を理解しているか、どう見ていたかというのが分かる。
​ 概念や考え方を伝えた後に課題設定を行う。この際、例えばSDGsのテーマを与えるといった取組を行う学校などもあるが、自分自身のことを考えて自立してほしいと思っているため、自分で考えて質問を投稿するという方法をとっている。生徒は1人1台の端末を持っているため、自分の日頃思っている個人的で誰もが考えるような素朴な疑問を無記名であげてもらい、クラスメイトがどのようなことを考えているかを把握する。生徒のプロセスを見ているので形成的であり、生徒から情報を得るのでアセスメントとなり、全員で共有しているのでクラスメイトがどんなことを考えているのかというのも分かるようになる。
​ その後は、自分の価値観と似た問いをした人同士でチームを組み、さらに問いをQFT(Question Formulation Technique:学習者に質問を作らせ、それをもとに学習者自身の力で思考を深めていく手法)を使って精緻化する。同じく、プロセスを見ているので形成的であり、子どもたちの意見のアセスメントを子どもたちも見ているためピア評価にもなる。その後は自分たちで問いを決めているので、自分たちで課題を理解することができる。400名参加しているため、1分プレゼンで全員を見てもらい114チームの把握をする。自分たちの問いで分かったことは、各チーム1分でプレゼンして理解度を測るということを行い、これもアセスメントであるとともに、フィードバックによる評価にもなっている。また、チームで一緒に行うためSELの基本として協働的な学びとなっている。自分で問いに対する仮説を作っていくため、レベルに合わせて仮説の作り方を1分プレゼンでチェックしている。
 さらに実験については仮説を検証してみようということで、生徒は自由にやっている。実際、科学的とは言えないレベルのデータ収集ではあるが、自分で考えて失敗してやっている。一応データが取れたかなという段階で1分プレゼンによりデータを示せるようにしている。最後には、結果の共有として総括的なアセスメントを行う。自分たちが今まで集めたデータを統合した上で、最終プレゼンテーションを行い、またBESSIのアセスメントにより自分がどうなったかを把握する取組を行う。この取組に対する生徒の意見として、どのようなことを学んだのかを投稿してもらうと、人間性について学べたとか、人生をどのように過ごすかについて考えたといった総括的なアセスメントを得ることができた。

(工藤委員代理の事例紹介)
​ 本校の建学の精神が考えて行動できる人であり、子どもたちの自律性を高めていくことを教育目標にしている。それを育てるために3つのコンピテンシーと9つのスキルがあり、自分の学びや行動をメタ認知して、これらのコンピテンシーを通して自分を俯瞰し、メタ認知することが大事であると考えている。それが非認知能力の評価であり、子どもが自分で言語化できることを大事にしたいと考えている。こうしたスキルを選定していくにあたってOECDのラーニングフレームワーク等を参考にしながら言葉を選んできたが、情緒的なものや心の教育的なものではなく、全てスキルとして子どもたちに教えていきたいと考えている。これまで、これらを様々な質問紙法とかで評価する試みを見てきたが、子どもたちは数値化されるとなった時には、いい点数を取ろうと考えて、このように答えた方が点数が上がるのではないかという忖度をしたり、逆にテストそのものに対して前向きに捉えなかったりする様子が見られ、質問紙法での評価の限界というのを強く感じている。
​ 本校の取組として、これらをどう評価していくかと考えていく中で、三者面談等を利用したいと考えている。子どもたちがこれらのコンピテンシーを生かして、自分の言葉でプレゼンテーションしていくことで、これまでの学びや探究の学びを振り返り、自分はどの力が付いたかとか、どの力をもっと付けたいかとか、むしろ自分の弱いところをどうやって補っていったかということを伝えられるようにしていく。事務局の説明の中にもあった通り、非認知能力は高いからよいとか低いからよくないということではなく、これから自分の人生をデザインしていく上で、自分の特性を知りながら協働していく力を身に付けていくことが大事であると考えているため、そういうものを保護者や教員に言語化して発表していく機会をできるだけたくさん設けていきたい。意図的にそれらを感じてもらうための行事として4Cスキル研修というのがある。中2と高1で行うが、遊びがない企業研修みたいなものをやっている。中学2年生でも対話はそれほどうまくいかなかったり、対立が起きたり、遊んでしまったり、協力しない子がいたりする中で、それぞれのグループに大学生が入り、助言をしながら自然にブレインストーミングやKJ法やその他の手法を通して、自分の感情をコントロールしたり、対話を促進したりする術を学んでいく。
​ また、教科学習においても、自律性を育てる試みとしてAARという学習サイクルを自律学習の基礎としており、自律学習を目標に向かって自分で手段を選んで実行することと定義している。そのためにこの学習サイクルを回す。自律して学ぶためには、目標設定とメタ認知が大事と考えている。目標設定に関しては、教員が示す目標と生徒個人が示す目標の両方を、子どもたちに意識させ、その目標に向かって今の自分をメタ認知して、何ができているのか、何ができていないのかを理解しながら、手段を選択していくという経験を繰り返している。その手段を選択する中で、何を誰とどうやってどこでという条件に合わせた授業スタイルをとっている。具体的には中学校の英語の授業の試行として、学年やクラスを取り払って学び方を選ぶという形式を開始している。例えば、先生に教わりたいという生徒は、1年A組の教室に行く。友達と対話をしながら学びたい生徒は2年A組の教室に行く。個人で黙々とやりたい生徒は3年A組の教室。企業と一緒に学びたい、マインクラフトとか、プログラミング、それから英会話などの部屋も設けているが、そのような学びをしたい生徒はその部屋に行くという形で、子どもたちは毎回の授業で学びの選択をしている。それを通して自己決定する機会を増やし、メタ認知しながら、先ほど示した9つのスキルを高めていくということを普段の授業で行っている。
​ 2025年からはこれを全ての教科で中学校から高校まで、子どもたちが学び方を選択できるカリキュラムを準備している。知識伝達の授業に関しては、授業では行わない。そして子どもたちが学び方を選べるということを全ての教科で行うということで、今、話し合いが進んでいる。振り返りはものすごくシンプルにしている。学びに向かっているかどうかということに関して学習の質と学習の量について簡単にリフレクションができるようにした。できるだけ子どもたちがその時間を振り返る時に、様々な項目について振り返るということよりも、まずは項目を絞って子どもたちが自律して学ぶというのはどういうことなのかということを意識しながら、学びに向かわせたいとしている。中学生、高校生はスマホの誘惑がすごく大きい。本校は基本的に何のルールもないが、ただ1つルールとして誰かの学びに悪い影響を与えたことに関しては0点になる。自分でさぼる権利はあるけれども、誰かの邪魔をすることは許さないということだけ教員は介入して子どもたちの学びを俯瞰できるようにサポートしている。

(金子委員の事例紹介)
​ 国際バカロレアでは、厳格な評価の仕組みの開発に重点を置いており、生徒の評価に教育的な力を注いでいる。IBの学習者像というのは、非認知スキルを10項目に分けた形と認識している。これ自体が非認知スキルの目標としてその姿をまず生徒に提示する。さらに、前回述べたことであるが、認知スキルに対して非認知スキルを本校ではATLスキルと呼んでいる。このATLスキルはアプローチ・トゥー・ラーニングの略で、学びにアプローチするというのは、学習のための1つの土台のようなものであり、この土台がしっかりしていないと、学習も成り立たないと考える。
 評価というものに関して、従来型の評価であると相対評価は集団によって変化してしまうし、価値観が変わってしまう。100点満点の定期検査をやったとしても、そのテストがどれだけ公平性があるかとか、本当の学力を示しているかということに関しては、難しいところがある。IBではフィードバックを中心にルーブリックにより基準を明確にしている。それにより、評価をきっちり行い、さらにポートフォリオや作品、論文、プレゼンといったものを通して、実際には振り返り、自己評価としてのアセスメントを根本的な取組としている。教育課程において非認知スキルを評価するとした場合、本校では、各教科において非認知スキルを育むことを推奨しているが、教科の中で評価するルーブリックはない。
​  また本校では、非認知能力育成を主体にしたプロジェクトが組み込まれている。教科は認知スキルを主、非認知スキルを従として行い、プロジェクトは、非認知スキルを主として行っている。特にIBのプログラムの中で特徴的なのは中学3年生のコミュニティプロジェクトである。社会課題解決を主な目標にしたプロジェクトであり、これを生徒全員が1年かけて行う。これがカリキュラムに入っている。高校1年生ではパーソナルプロジェクトという自由研究型で自分が追求したいものに取り組み、自分と向き合うことを行う。高校2、3年生ではCAS活動。DPのプログラムに入っており、奉仕あるいはクリエイティビティ中心の活動を行っている。
​ この非認知スキルの評価を考えた場合、それは生徒が自分の成長過程を知る機会、フィードバックを得る機会、このフィードバックというものが常に非認知スキルでは重要である。今まで教員による評価だったものを自己評価や相互評価を通して非認知スキルとして認知する。メタ認知を高めることで、自分自身が評価していく、そこに目を向けさせるのが評価であると考えている。コミュニティプロジェクトでは、自分と周りとの関係にフォーカスし、パーソナルプロジェクトは自分と向き合い自分を高め、その2つを総合した活動がCAS活動である。これにより、最終的に、「あなたの活動は社会に役に立つか」と「あなたの活動はあなたの向上に役に立ったか」という問いかけに答えられるようにしていく。
​ 本校の取組の1つとして、ラーナー・プロファイル・アワードというものがある。これは学年末に生徒がクラスの中で1番探究する人は誰であるかというのを投票していく。1番得票した人がこのクラスの探究賞とかインクワイアリー賞とかを得る。それを受け取ることによって他者を認め、自分との違いを知る。さらには教員に対しても生徒が投票し、選んだ理由も受け取れるようになっている。非認知スキルというのは、評価はできるけれども、今までの評価と違うのはフィードバックが中心であり、自己評価、相互評価、これら全てを含めて、メタ認知をして生徒が自分の向上に役立てる。こうした意味での評価であることを認識しながら進めている。

(委員D)
​ メタ認知の重要性を感じているが、それを育てると考えた時、どうやって育てるのかについて意見をいただきたい。

(委員E)
​ リフレクションをすることで、自分を振り返ることになる。これを意図的に行うことで、自分を客観的に見ている自分、自分自身を見つめる目に気付く時がくると考える。そして、それを繰り返すことで、見つめている自分をさらに見つめる自分がある。そのため、このリフレクションとフィードバックを繰り返すことで、メタ認知が育つと考える。

(委員F)
  メタ認知に関しては脳科学を含めた様々な観点で校内で議論してきたが、最近勉強になったと思うこととして、俯瞰的に自分を見て、また、目標設定に向かってよりよい方向に進んでいるかどうかについて自分を俯瞰してみることを含めてメタ認知と呼ぶと知った。その時大事なのは、子どもたちがそのことを言語化する経験をいかに繰り返すかということと、教員の中でメタ認知というのは、こういうことだということをきちんと言語化できるかということと考える。
 中学生にどんなことが成長しましたかと聞くと、例えば文化祭でリーダーをやって、最初はうまくいかなかったけども、団結して、誰々がいたおかげで、あるいは、みんなのおかげでこうなりましたみたいなことを話す生徒が多い。先程示した9つのスキルに当てはめて対話をしていく経験がすごく大事だと思う。そのため、子どもたちが自己決定し、まさにエージェンシーとして自分の行動を俯瞰する経験をいかに繰り返す機会を増やすかが鍵だと考えている。

(委員D)
​ 二人の委員の話を聞き、振り返りは大事だと思ったと同時に、振り返る際に常に成功の振り返りではなく、失敗をしたという振り返りこそ、子どもにとって重要だと感じた。うまくいかなかったけどこうなったとか、この前はうまくいかなかったという振り返りから、自分の中の自分に気付くことにつながる。つまり、失敗という経験が大事なのではないかと思った。

(委員C)
​ メタ認知というと中学生、高校生の方が高いと思われがちだが、幼児期から意識して育てているカリキュラムの事例もある。例えば、ポルトガルの幼稚園の例(シティズンシップ教育の一環)では、クッキーを2つ与える際に、「いくつ食べる?」と問いかけると子どもは「全部」と答えるが、改めて「本当にちゃんと食べられるの?」という問い掛けを子供たちにすると、「1つにする」といった小さなメタ認知が起きている。また、月曜日に1週間の目標を決めさせると、「ぶたない」とか、「手を洗う」といったことが出てきたりするが、金曜日にできたかどうかをたずねると、「できた」という自己評価をした子どもに対して、「自分はぶたれた」という子どもがいたりして、自分が思っていたことと、周りが思っていたことが異なるということがよくある。こうした失敗という経験の1つ手前に、「自分で思っていたことと人が思っていたことは違うものだ」というズレを感じることも、自己評価に通じたメタ認知力育成の1つになると考えられている。
​ また、その他、3点ほどコメントとして述べたい。まず、非認知能力の評価(フィードバックを含む)には、普通のテスト実施よりも時間がかかるため、「教員の働き方改革の中で、その時間をどのように確保していくのか」というところも併せて考え、教員のウェルビーイングとパッケージにして考えることが重要である。
​ また、エバリュエーションが「評定」と理解されることがあるが、評価の方が評定よりも大きい概念なので、「評価」と「評定」の違いをクリアにすることが重要。「評価」に対する深い理解が無ければ、先生は「評定」の方に意識が向かってしまう傾向ある。
​ 最後に、教科と探究活動について、「非認知能力の育成は、総合的な学習の時間や探求の時間ではできるけど、教科ではできない」という悩みをもつ先生もいるので、探究や総合の時間的な学習と、教科の時間の往還をどのようにしていくかが次の課題と考える。

(委員G)
​ アセスメントとして和歌山県(昭和幼稚園)の「くまのこプログラム」の取組を紹介したい。SELプログラムとして興味を持つかもしれないものであり、幼少期のアセスメントをとても重要と考え、ピア・エデュケーションによって幼少期における他者との関係性について考える機会を与えている。
​ また、OECDのEducation2030のスキルコンパスは、社会情動的スキルとうまく結びついており大変重要である。
​ IBプログラムのCASとプロファイルはIBの最もよい点であり、それらを強く意識していることがすばらしい。また、教師のためのプロファイルアワードは大変よい取組であり、日本でこれらがもっと広まっていくとよいと考える。 
​ さらに、スコットランドとの協力も大変すばらしく、スコットランドは小さな国であるがよい取組をしている。日本とも似ているところがあり、その連携は非常に楽しみである。

6 当日の配布資料

第3回次第 (PDF:387KB)

委員名簿 (PDF:107KB)

資料1_非認知能力の評価・育成事業 事業計画概要 (PDF:420KB)

資料2-1_令和5年度指定校研究会 (PDF:298KB)

資料2-2_指定校における実践研究(取組状況) (PDF:309KB)

資料3-1_非認知能力の評価・育成事業 「群馬モデル」作成イメージ (PDF:393KB)

資料3-2_「群馬モデル」構成イメージ (PDF:297KB)

資料4_非認知能力のアセスメントについて (PDF:330KB)

資料5_幼児教育における「アセスメント」 (PDF:3.17MB)

資料6_非認知スキルのみとりについて 自由ヶ丘学園高等学校におけるスパイラルアップ (PDF:1.24MB)

資料7_横浜創英の子どもが自律する学び (PDF:1.77MB)

資料8_ぐんま国際アカデミー中高等部 国際バカロレアにおける非認知能力の評価 (PDF:3.91MB)

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