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教育委員会の点検・評価について(平成23年度対象)

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

群馬県教育委員会では、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第27条の規定に基づき、平成23年度の教育委員会の事務の管理及び執行の状況の点検及び評価の結果について取りまとめましたので、お知らせします。

なお、点検・評価結果の全文をご覧になりたい方は、こちらのファイルをダウンロードしてください。


点検・評価の概要

1 趣旨

 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され(平成20年4月1日施行)、すべての教育委員会は、毎年、その教育行政事務の管理執行状況について自己点検及び評価を行い、その結果に関する報告書を議会に提出するとともに、公表することとされました。
 そこで、群馬県教育委員会では、効果的な教育行政の推進に資するとともに、県民への説明責任を果たすため、「教育委員会の点検・評価」(以下、「点検・評価」という。)を実施し、報告書にまとめました。

2 点検・評価の対象

 点検・評価の対象は、「群馬県教育振興基本計画」(以下、「基本計画」という。)に基づき実施した主な施策・取組と平成23年度の教育委員会の活動としました。

3 点検・評価の方法

  1. 平成23年度に群馬県教育委員会が管理及び執行した事務の点検・評価に当たっては、「基本計画」に基づく8本の施策と「教育委員会の活動」に関して、取組結果と成果・課題を明らかにして施策評価を行いました。
  2. 個別の取組等については、以下の観点(基準)により評価を行いました。
    A: 「主な評価項目(指標)」を達成し、中長期的な目標に向けた事務(取組)についても、期待する成果があったもの
    B: 「主な評価項目(指標)」を達成し、当該年度に期待される成果が得られたが、中長期的には、なお解決すべき課題が多いもの
    C: 「主な評価項目(指標)」を達成できなかったもの

4 第3者の知見の活用

 点検・評価の客観性を確保するため、教育に関し学識経験を有する外部の方々のご意見をお聞きする機会を設け、ご意見、ご助言をいただきました。ご意見をいただいた方々のお名前は次のとおりです。(五十音順、敬称略)

氏名一覧
氏名 所属等
佐々木 尚毅 群馬県立女子大学教授
矢端 義直 東京福祉大学教授

5 その他

 群馬県教育振興基本計画のうち、他部局の権限に属する取組について、他部局の担当所属がその取組状況等の自己点検・評価を実施しました。また、教育委員会が点検・評価した取組の中でも、他部局の関連事業の状況を明らかにしています。
 それらの取組等は、教育委員会の点検・評価の対象外ですが、本報告書の「個別の取組等の点検・評価」に参考添付しています。

群馬県教育振興基本計画(計画期間 平成21年度から25年度)

1 基本目標

 10年後の社会を見通すと、少子・高齢化、情報化、国際化・グローバル化、環境問題の深刻化、雇用の多様化や社会意識の変化などが一層進行し、我が国は多くの課題に直面していくと思われます。
 このため、これからの教育には、一人ひとりの個性や能力を伸ばし、自ら学び考える力を身につけることで、困難を乗り越えてたくましく生きる力をはぐくむことが求められています。
 このような状況を踏まえて、本県教育の基本目標を次のとおりとします。

たくましく生きる力をはぐくむ ~ 自ら学び、自ら考える力を ~

2 施策の方向

 学校教育では、基礎学力の定着や健康な体と豊かな心の育成、児童生徒一人ひとりの個性や能力を伸ばして夢をはぐくむ取組を推進します。
 家庭や地域では、児童生徒の健全育成をめざし、社会全体で家庭教育や子育て支援します。また、生涯学習や文化・スポーツの振興を通して、健康で心豊かな社会づくりに取り組みます。

3 8つの基本施策

 本県がめざす教育を実現するため、8つの基本施策に取り組みます。

  1. 基礎学力の定着を図る
     小中学校での学習指導の充実と教員配置の工夫・改善を進め、児童生徒の授業理解度を高めます。
     また、小中学校現場の事務負担軽減、教員の資質向上等を進めて、教員が一人ひとりの児童生徒と向き合う時間を確保し、わかりやすい授業で基礎・基本の確実な定着を図ります。
  2. 健康な体と豊かな心を育てる
     学校体育と運動部活動を振興することにより、健康な体をつくり、体力・運動能力の向上を図るとともに、集団の中でコミュニケーション能力を育てます。
     また、命を大切にする教育、道徳教育及び人権教育等を通して、マナーやルールを守る意識を持ち、自分や他人を大切にすることのできる豊かな心を育てます。
  3. 個性や能力を伸ばし、一人ひとりの夢をはぐくむ
     キャリア教育や魅力ある高校づくりを通して、児童生徒の夢をはぐくみ、一人ひとりの夢の実現を支援します。
     また、少子化に伴い入学者の大幅な減少が見込まれる県立高校について、入学希望者の進路希望に合わせた再編を進めます。
     さらに、特別支援教育を充実して、すべての児童生徒の自立に必要な支援を行います。
  4. 社会の変化に対応し、社会に貢献する人材を育てる
     国際化・グローバル化、情報化、環境問題の深刻化に対応した教育と社会や地域が求める職業教育を推進して、社会に貢献する人材を育てます。
  5. 安全で充実した学習環境を整備する
     県立学校施設の耐震化や実習設備等を整備して学習環境の維持向上を図るとともに、いじめや不登校等に適切に対応できる安全で安心な学校をつくります。
     また、経済的な理由で修学が困難な児童生徒を支援します。
  6. 学校・家庭・地域の連携を推進する
     幼児教育や子育て支援を通して、家庭の教育力を高めます。
     また、学校・家庭・地域が連携して児童生徒等の健全な成長を支援することで、地域の大人と子どものつながりを強化し、子どもの社会性をはぐくみます。
  7. 多様なニーズに応える生涯学習・社会教育を推進する
     県民の多様な学習ニーズに応える生涯学習を推進します。
     また、公共の精神のかん養や公共的な課題について主体的に学ぶ社会教育を推進します。
  8. 生きる喜びと創造性をはぐくむ文化・スポーツを振興する
     文化・芸術活動の振興や文化財の保護・活用を通して、人々の創造性や感性をはぐくみます。
     また、県民が生涯を通してスポーツに親しむことにより、健康の保持や明るく活力に満ちた社会をつくります。

点検・評価結果の概要

施策1 基礎学力の定着を図る

目標

  1. 児童生徒がわかる授業で基礎・基本を確実に習得する
  2. 教員の資質向上と児童生徒と向き合う時間を確保する

取組項目

  1. 基礎・基本の確実な習得
  2. 基本的な生活・学習習慣の定着
  3. 効果的な授業や指導の推進
  4. 教員の資質向上
  5. 小中学校現場の事務負担軽減

取組結果

  1. 基礎・基本の確実な習得
    ・基礎・基本習得プロジェクト会議及び分析委員会を開催し、「ぐんまの子どもの基礎・基本習得状況調査」の結果を基に各教科ごとに本県の成果と課題を明らかにし、その課題を基に義務教育9年間において児童生徒に身に付けさせたい資質・能力や各教科等における指導の基本を示した「はばたく群馬の指導プラン」を作成し、全教職員に配布した。
    ・各教科ごとに課題を解決するための指導のポイント等をまとめた「ぐんまの子どもの基礎・基本習得状況調査結果分析資料」を作成し、県内の各学校及び関係機関へ配布した。
  2. 基本的な生活・学習習慣の定着
    ・「はばたく群馬の指導プラン」の中で、「豊かな心」「健康な体」の育成に向けて、3つの心(向上する心・やりぬく心・大切にする心)とその3つの心の育成に向けて伸ばしたい資質・能力を示した。また3つの健康的な生活習慣(規則正しい生活習慣・進んで運動する習慣・望ましい食習慣)とその3つの生活習慣の育成に向けて伸ばしたい資質・能力を明らかにした。
  3. 効果的な授業や指導の推進
    ・カリキュラムセンターにおいて、県内各学校への教育関係資料の提供や貸し出し、さらにデジタル化を推進して授業の充実、業務の効率化を図るとともに、Webページによる情報提供や学習指導案のダウンロードサービスなど機能の充実を図ってきた。
    ・研修支援隊事業として、学校内の教員向け研修を充実させるための講師派遣や授業に必要な教材・教具の提供などを実施した。
    ・全国学力学習状況調査の分析結果に基づき、県内8校に国語、算数・数学の課題解決のための授業提案を依頼し、公開授業及び授業研究会を開催した。
    ・学習習慣や基本的な生活習慣の確立を図るため、継続して全ての小学校第1・2学年において30人学級編制ができるように教員を配置した。【さくらプラン】
    ・学力差のつきやすい中学年の学習指導の充実を図るとともに、高学年へのスムーズな移行を実現するため、継続して全ての小学校第3・4学年で35人学級編制ができるように教員を配置した。【さくらプラン】
    ・全ての中学校第1学年において、常勤による35人学級編制ができるように教員を配置し、全ての教科を少人数で指導するとともに、いじめや不登校、問題行動への早期対応など中学校生活への適応や中1ギャップ解消に向けて支援体制を強化した。【わかばプラン】
  4. 教員の資質向上
    ・教員採用選考において、指導力を有した人材を幅広く確保するため、臨時的任用教員経験者特別選考の出願資格に週30時間以上勤務の非常勤講師の経験を追加した。また、中学校理科において基本的な指導技術を有する者を選考するため、実技試験を導入した。
    ・教職員の研修を体系化・系統化した「ぐんま教職員ステージアップシステム」を再構築し、ライフステージに応じた教育指導や組織経営に関する職能成長を図り、教職員の資質能力の向上を図った。(研修講座数:89、受講者:延べ24,104人)
  5. 小中学校現場の事務負担軽減                                                                                                          ・教員が、児童生徒と向き合う時間を確保するため、市町村教育委員会との連携による研修・会議・照会文書の見直しや校務支援ソフトの導入推進、教頭、教務主任による文書データの共有化や会議の進め方の工夫などの学校における校務の効率化、中学校の部活動の適正化方針の周知などを実施した。

成果

  1. 義務教育の課程において児童生徒に身に付けさせたい資質・能力や各教科等における指導の基本を示した「はばたく群馬の指導プラン」を作成し、かつこれを全教職員に配布したことにより、県全体で歩調を同じくして授業改善の道筋を付けることができた。                                                         
  2. 「はばたく群馬の指導プラン」の中で、大切にしたい3つの健康的な生活習慣を明らかにしたことにより、県内の児童生徒の課題や伸ばすべき資質・能力について各学校が共通理解を図ることができた。
  3. さくらプランによる小学校第1・2学年の30人学級編制、小学校第3・4学年の35人学級編制が定着したことにより、基本的な生活習慣や学習習慣の育成、個人指導の充実などが図られている。
  4. 校務支援ソフトウェアの導入率は平成20年度の24%から平成23年度は57%となり教員業務の標準化や効率化について成果をあげた。

課題と対応

  1. 「はばたく群馬の指導プラン」を活用した授業改善が一層推進されるよう、公開授業を通して活用方法の例を具体的に示すとともに、各教育事務所や総合教育センターにおいて本指導プランを生かした研修等を行うことが必要である。
  2. 少人数学級編制については、導入後10年を経過することから、効果について具体的に検証することが必要である。
  3. 学習指導の充実を図るため、授業改善、教職員の資質向上、学校現場の負担軽減に継続して取り組むことが必要である。

学識者の意見

  • 基礎学力の定着や生活・学習習慣の定着については、県独自の調査である「ぐんまの子どもの基礎・基本習得状況調査」が、主要科目(国語・算数・数学)以外の科目を調査対象としただけでなく、調査方法においても、筆記調査に実技調査を取り入れ多面的に調査した点はユニークであり評価できる。また、この調査結果を分析して「はばたく群馬の指導プラン」を作成し、県内小中学校の全教職員に配付したことは、今後の小中学校における授業改善に大いに役立つと思惟する。しかし、学校ごとにその課題は多種多様であることから、各学校が定期的にこの指導プランを用いた校内研修等を実施し、その結果を分析することで、当該プランを自立的に進化・展開させていくことが必要と考える。子ども達に「確かな学力」、「豊かな心」「健康な体」が育まれていくことを期待したい。
  • 県内の小・中学校において、今後10年間で4割近くのベテランの教員が定年退職すると言われている。ベテラン教員の経験に裏打ちされた優れた教材等が蓄積されているカリキュラムセンターの役割の重要性は増すと思われる。センターの一層の活用が図られるよう期待する。同時に、ベテラン教員が去った後、学校現場において中軸となる若手教員の指導力の向上を図るため、階層研修以外にもベテラン教員が若手教員にノウハウを伝えていく場面の構築(OJT:職場での業務を通じた教育)が必要と考える。
  • 中学校1年生における「35人以下学級の実現」と「非常勤講師の常勤化」は、大いに評価できる。このことにより、教師が生徒と向き合う時間が増え、教師と生徒との信頼関係に良い影響を及ぼすことが期待される。教師と生徒との信頼関係の構築は、教科指導のみならず、望ましい生活習慣や良い学習習慣等を定着させ、集団生活を円滑化させることにも結び付く。また、「小中学校現場の事務負担軽減」の取組は、教師が児童生徒と向き合う時間を確保するという観点からも、今後も継続して行う必要がある。今後も、少人数学級編制や事務負担軽減を着実に進め、教員の“ゆとり”を確保し、きめ細かな体制を整えつつ、「中一ギャップ」 や「小一プロブレム」をはじめとした複雑化・多様化する教育課題に取り組むことが望まれる。ただ、少人数学級編制については、第三者機関等による評価・検証を進め、学習集団を小さくするだけでなく、集団の編制方法や小さな学習集団だから可能となる授業方法等への取組の充実を望みたい。

施策2 健康な体と豊かな心を育てる

目標

  1. 健康な体をつくる
  2. 豊かな心を育てる
  3. ふるさとを愛する心を育てる

取組項目

  1. 児童生徒の体力の向上
  2. 健康教育・食育の推進
  3. 命を大切にする教育・人権教育・道徳教育の推進
  4. マナーやルールを守る意識を育てる
  5. ふるさとの歴史や先人の歩み、文化、自然を学ぶ

取組結果

  1.  児童生徒の体力の向上
     ・体育授業の実践上の課題解決方策を明らかにした授業モデルの普及や授業公開により指導者の資質向上を図ることができた。
     ・外部の専門的指導力を有する人材を体育授業や運動部活動に派遣することにより、指導者の資質向上を図るとともに、授業や部活動の充実を図った。(授業:62人、部活動:40人)
     ・県内市町村の中学校区を実施地区として指定し、各学校において地域や家庭との連携を図りながら、健康や体力の向上を目指した取組を進め、児童生徒の体力の向上を図った。
  2.  健康教育・食育の推進
     ・全公立中学校と高等学校へ、がん教育啓発DVD「がんちゃんの冒険」を配付し、がん教育の普及・啓発を図った。
     ・薬物乱用や性教育の講習会や研修会を開催し、教職員に知識と指導方法等を伝えることができた。(研修会等の教員参加者数:薬物乱用:166人 性教育:516人)
     ・県立学校の生徒の健康診断を実施し、疾病の予防措置・治療指示等を行った。(健康診断受診率:99.1%)
     ・児童生徒の調理にかかわる課題を改善することを目的に、家庭における調理実践を促すための「ぐんまの食育レシピ~地場産物活用学校給食献立事例集~」を作成した。
     ・安全安心な学校給食の実施と内容の充実改善を図るため、学校給食施設の巡回指導を実施し、学校給食業務の安全衛生管理、給食内容等について点検、指導助言を行った。
  3.  命を大切にする教育・人権教育・道徳教育の推進
     ・教員が心の悩みを抱える児童生徒への適切な対応やその課題解決を適切にコーディネートできるよう、教員の対応等能力育成のための研修を実施した。(教育相談に関わる講座の総受講者数:994人)
     ・総合教育センターやこころの健康センターなどで、児童生徒からの相談に応じ支援した。
     ・学校や地域での人権教育指導者を養成するため、研修会等を実施した。
     (人権感覚育成実技研修会:教職員 1,684人【H19年からの累計】、人権教育指導者研修:県民 762人)
     ・幼稚園や小学校の保護者を対象とした人権に関する啓発資料を作成し配付した。 (幼稚園「めぶき」:4,000部、小学校「みんなの願い」:23,000部)
     ・文部科学省委託事業「道徳教育総合支援事業」の研究成果を「道徳教育指導実践事例集」としてまとめ、県内の公立小・中・特別支援学校及び高等学校に配付し、道徳の時間の授業改善等に役立てることができた。
  4.  マナーやルールを守る意識を育てる
     ・問題を抱える中学校25校、高等学校7校に生徒指導担当嘱託員を配置した。
     ・県警察本部と連携し、小学校247校において万引き防止教室(中学年向け)を実施した。
  5.  ふるさとの歴史や先人の歩み、文化、自然を学ぶ
    ・県内の特色ある教育活動に取り組んでいる学校を「ぐんまスクール・オブ・ザ・イヤー」として表彰するとともに、その取組を広く県内の小中学校や県民に紹介することができた。
    ・「学校支援センター」や「未来を拓く特別授業」を推進し、県内の多くの学校が、地域の歴史や文化、自然などに造詣の深い地域人材を授業で活用できるようにしてきた。 

成果

  1. 運動の楽しさ、充実感、達成感が味わえる授業づくりの手法を体育授業モデルの普及や授業公開を通して、県内の体育・保健体育の指導者に発信し、指導者の資質向上が図れた。
  2. 薬物乱用防止や性教育講演会等を開催した学校の割合は、小中高すべての学校で目標を達成した。
  3. 県内の小・中学校では食に関する指導体制は整備されつつある。
  4. 小中学校では問題行動総件数が減少した。また、高校では中途退学者数が減少した。

課題と対応

  1.  地域や家庭との連携を図り、児童生徒の健康や体力の向上のための取組を一層充実させていくこ とが必要である。
  2.  平成23年度より新たに取り組んだ「がん教育」については、正しく理解し、関心を深める取組が必要である。
  3.  命を大切にする教育・人権教育・道徳教育については、様々な教育活動と関連付けて学校として 組織的に取り組んでいく必要がある。
  4.  問題行動を起こす児童生徒を少なくするためには、教育現場においては事後的な対応だけでなく、 予防的教育をも含めた生徒指導の強化が必要と考える。
  5.  総合的な学習の時間が減少したため、ふるさと学習などの取組に要する時間の確保に工夫が必要である。

学識者の意見

  • 子どもは年をとるだけではオトナにならない。子どもは多くのオトナの中でオトナになっていく。教師はプロのオトナであり、その仕事は子どもをオトナにすることである。また学校は、子どもをオトナにする社会化の専門機関である。子どもたちを育てて目指すべき理想のオトナが、学力だけは高いが社会人としての資質に欠けるようであってはならない。その意味でも、当該施策は至極重要である。
  • 児童生徒の体力の向上は、体育、保健、食育など教育活動全体を通じて図られるものであり、生涯を通じて健康で活力のある生活を送るための基礎を養い育てられなければならないと考える。外部人材等を活用した、教員の資質や児童生徒の体力の向上に向けた取組は一定の評価はできるが、児童生徒の体力向上には体育の授業だけではなく、家庭・地域との連携を図り継続的に取り組むシステムづくりが必要と思われる。
  • 健康教育については、教職員への意識啓発を継続して図るとともに、教育活動全体の中で児童生徒に正しい知識と判断力を身に付けさせることが必要と考える。また、食育の推進についても、レシピの作成など普及啓発のための環境は整ってはいるが、学校の教育活動全体の中で児童生徒の生活習慣に染みこませるような組織的かつ継続的な取組が必要と思われる。殊に食事に関する行儀作法の指導に一段の配慮が望まれる。
  • 心の教育については、平成22年度の全国学力学習状況調査の自尊感情や他人を思いやる質問に対する回答は全国平均を上回っているが、命を大切する教育、人権教育等はいずれも息の長い取組として考えることが必要であり、各教育活動において有機的に関連付けて児童生徒に伝えていくことが重要と思われる。こうした取組は学校長の考え方に左右されやすいことから、全県下においてバランスよく強いリーダーシップの下、推進されることが望まれる。
  • 郷土を愛する心の教育については、地域にある学習素材を活用して児童生徒にふるさとの歴史と文化、自然を伝え、郷土への愛着や誇りを育む取組を進めることが必要と考える。こうした中で、新規事業である「ぐんまスクール・オブ・ザ・イヤー」により特色ある教育活動を実施している学校を、広く県内に紹介し、啓発できたことは評価できる。今後はこの取組への参加学校が増加することに期待し、一人でも多くの児童生徒に郷土を愛する心を育んでもらいたい。

施策3 個性や能力を伸ばし、一人ひとりの夢をはぐくむ

目標

  1. 児童生徒の夢の実現に向け魅力ある学校をつくる
  2. 障がいのある児童生徒の自立や社会参加を推進する

取組項目

  1. キャリア教育と進路指導の充実
  2. 新しいタイプの高校づくり
  3. 県立高校の再編
  4. 高校と大学の連携
  5. 特別支援教育の推進
  6. 障がいのある子どもの教育相談

取組結果

  1. キャリア教育と進路指導の充実
    ・人生の先輩である様々な分野で活躍している人材を小・中学校に講師として派遣し、講話や交流、体験的な活動などの特別授業を実施することにより、児童生徒に将来に向けての夢や希望を育むなど、キャリア教育の推進を図った。
    ・県立高校の生徒を対象に、企業等で2週間程度の長期インターンシップ(就業体験)を行い、職業観・勤労観の育成を図った。【インターンシップの生徒の参加率(公立高校《全日制》、専門学科):23.5%】
    ・社会の仕組みや経済の構造、職業・職種、仕事内容等を理解させ、望ましい勤労観・職業観を育成し、進路選択や将来設計に主体的に取り組むことができるようにするため、キャリアアドバイザー(キャリアコンサルタント等の講師)を活用し、講演・講話、進路相談を実施した。(延べ51時間)
  2.  新しいタイプの高校づくり
    ・普通教育及び専門教育の選択履修により総合的に学習ができる総合学科高校(単位制高校、6校)では、教育の充実と県民の理解・関心を深めてもらうため、生徒による学習成果発表会を2会場(太田市、安中市)で開催した。
    ・1学年2学級規模の学校の一部を「生徒の実態に合わせた特例的・先進的な取組」を行う「ぐんまチャレンジ・ハイスクール」や「学校の人的資源や施設を有効活用し、地域の文化・スポーツの交流拠点としての役割を担うための研究」に取り組む「ぐんまコミュニティ-・ハイスクール」に指定し、特色ある高校づくりを推進している。
    ・学校の人的資源や施設を有効活用し、地域の文化・スポーツの交流拠点としての役割を担う「ぐんまコミュニティ・ハイスクール」の研究指定を長野原高校で継続することとした。(研究指定:平成20から平成21年度で実施し、引き続き平成22から23年度で実施中)
  3. 県立高校の再編
    ・県教育委員会では群馬県高校教育改革検討委員会の報告(「群馬における今後の県立高校のあり方について」)を受け、平成24年度から10年間を計画期間とする「高校教育改革推進計画」を策定した。
  4. 高校と大学の連携
    ・県内高等学校等の高大連携の取組が円滑に進むように、群馬県内外の大学・短期大学における、高大連携に関する取組予定についてまとめ、Webページに掲載した。
    ・県内の高等学校と大学の関係者が集まり、高大連携の具体的な方法や高大の接続の望ましい在り方などについて情報交換を行い、高大連携のねらいの明確化や情報の共有化を図った。                            
  5. 特別支援教育の推進
    ・館林高等特別支援学校が平成23年4月1日に開校となり、館林邑楽地域における特別支援教育に係る環境整備が進んだ。
    ・就労支援員を1人増員して、4人の就労支援員を県立知的特別支援学校に配置し、就労体験先や新たな職域の開拓等を行った。
    ・「群馬県特別支援学校の配置及び整備計画」を策定し、未設置地域への特別支援学校の配置及び整備等について、関係市町村と協議を行った。
  6. 障がいのある子どもの教育相談
    ・各教育事務所に配置した特別支援教育専門相談員及び県立特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが、特別な教育的支援を必要とする幼児児童生徒への指導等について、教員等の相談に応じて、助言や援助を行った。
    ・総合教育センターでは、来所、電話、訪問による発達相談を実施している。                                                           

成果

  1. キャリア教育の一環であるインターンシップの重要性が認識されてきており、全日制高校全体でのインターンシップ等実施率も増加してきている。(平成21年度:52.9%→平成22年度:47.1%→平成23年度:100%)
  2. 群馬県高校教育改革検討委員会での検討結果に基づき策定した「高校教育改革推進計画」により県立高校の再編に関する教育委員会の総合的な方向性は示せた。
  3. 高大連携プロジェクトを実施する中で、高大連携の具体的な方法や望ましい在り方の情報や認識を共有することができ、高大連携を推進する道筋をつけることができた。
  4. 就労支援員と進路指導に関わる教員が連携して、就業体験先や新たな職域の開拓や現場実習等における巡回指導を行うなど、進路指導の充実に努めたことにより、例年と同程度の一般事業所への就労を行うことができた。

課題と対応

  1. キャリア教育の推進には、教育活動全体を「生きること」や「働くこと」と結びつけるとともに、教員や保護者のキャリア教育に対する理解を更に深めることが必要である。
  2. 「高校教育改革推進計画」に基づいて、地区別整備計画等の策定を進めることが必要である。
  3. 高大連携の取組については、より効果が高く実行性のある取組となっているか検証する必要がある。
  4. 発達障がいを含む障がいのある児童生徒の実態把握や支援方法の検討等を行う校内委員会を効果的に機能させるためには、福祉関係機関等との連携が必要であるが、その連携の基本ツールである学校毎の教育支援計画を策定していない学校が4割程度あることから、早急に策定し、活用を促進することが課題である。
  5. 障がいのある子どもの教育相談については、教育機関だけでなく、保健や福祉関係機関等と連携した就学前から関わりがもてる相談支援体制の構築が課題である。

学識者の意見

  • キャリア教育は教育活動全体で推進することが必要である。キャリア教育に関する全体計画やそれを具体化した学校における年間指導計画の中に、キャリア教育を落とし込むことが重要であり、各教科との有機的な繋がりが必要となる。また、縦の連携(就学前、義務、高校、大学、成人)の強化とともに横の連携(地域、社会、産業界等)の強化も必要と考える。あえて付言すれば、キャリア教育・職業教育の目指すところは、「この国の人々に『未来を見据え、希望を持って人生を歩んでいくための力』を与えること」(平成23年1月中教審答申)であり、そのためには、横の連携(地域、社会、産業界等)の強化が特に重要である。たとえば、家庭の経済的理由から学業を中断した青年が、「中退」にまつわる偏見によって正当に評価されず正規雇用されないなどの社会状況・社会環境は、かつての学歴主義、学校 中心主義の残滓をいまだ払拭できずにいることの証左であり、「未来を見据え、希望を持って人生を歩んでいくための力」を奪うものである。こうした社会状況は、学校教育のみをもって変えることは難しく、横の連携(地域、社会、産業界等)を強化すべきとする所以である。
  • 高校教育改革推進計画は、県教育委員会として総合的な方向性を示したものであり、この点評価できる。ただ、これまでの再編整備でつくられた総合学科高校や全日制単位制高校等の検証を行い、検証結果を反映させることを通して、高校教育改革をより実効性のあるものにして推進することに期待したい。
  • 高大連携については、大学との連続性を協議する場を示し、今後の連携推進に係る道筋をつけることができていることは評価したい。今後は、より取組を充実させ、キャリア教育の一つの課題である高校と大学とその先の社会との連続性を強化し、生徒に大学の先にある社会を強く意識させる場面の提供が必要と思われる。
  • 公立学校教員の特別支援教育の研修受講割合は着実に伸びており、こうした活動を通じた特別支援教育に対する教職員の意識の向上、及び県民の理解の広がりについては高く評価したい。発達障がいのある児童生徒に対する周囲の理解も進んでいると思える。発達を見る大人の目の発達に応じて、子どもの発達はより見えてくるのである。発達に対する周囲の理解の低さが子どもとその家族の困難を大きなものにしている側面があることは否めない。子どもの発達の正しい理解は、学校教職員にとどまらず、子どもを育てる周囲の大人にも必要である。今後は、各特別支援学校のセンター的機能を充実させるとともに、各高校に100%設置してある校内委員会の機能を充実させ、より身近な相談・支援機関となることに期待したい。
  • 特別支援学校高等部卒業生の一般就労割合は、就労支援員と進路指導教員の連携、努力により全国平均を上回ったことは評価できる。とはいえ就労割合は30%台にとどまっており、各校ごとの職業教育の一層の充実とともに、地域、社会、産業界等へのさらなる就労支援活動の展開が望まれる。また、館林高等特別支援学校が開校し、東毛地区の特別支援教育の環境整備は一定の進展をみた。とはいえ、特別支援学校の未設置地域があることから、新たに策定された「群馬県特別支援学校の配置及び整備計画」が着実に実行されることが強く望まれる。

施策4 社会の変化に対応し、社会に貢献する人材を育てる

目標

  1. 国際化や情報化に対応する教育を推進する
  2. 社会が求める資質をはぐくみ、社会に貢献する人材を育てる

取組項目

  1. 英語教育の推進
  2. 国際理解教育の推進
  3. 外国人児童生徒への教育
  4. ICT(情報通信技術)活用能力の育成
  5. 社会を学ぶ体験活動・ボランティア活動
  6. 環境教育の推進
  7. 県立高校における職業教育

取組結果

 

  1. 英語教育の推進
    ・小学校における外国語(英語)活動を充実させるため、「外国語活動の手引き(平成23年3月作成)」を使い、県内各小学校の外国語活動担当に対する研修を実施した。
    ・高校生の外国語でのコミュニケーション能力の育成を図るため、24人の外国青年を外国語指導助手として招致した。
    ・県立沼田女子高校と県立女子大学が連携し、総合的な英語能力の育成や英語学習の動機付けと環境づくりのための研究実践を行った。
  2. 国際理解教育の推進
    ・総合的な学習の時間の部会において、国際理解や情報教育に関する指導例等に応じた人材を派遣した。
    ・各公立高校では、生徒海外研修、姉妹校交流の実施及び海外からの留学生の受け入れを行った。【外国人留学生等との交流実施校(公立高校):16校】                             
  3. 外国人児童生徒への教育
    ・帰国・外国人児童生徒受入促進事業を実施している太田市では、編入学児童生徒への初期指導及び保護者へのガイダンスを行った。
  4. ICT(情報通信技術)活用能力の育成
    ・群馬県警、NPO法人など関係団体と協力し、生徒向けや保護者向けに、情報モラルに関する講習会を実施した。
    ・コンピュータや提示装置を活用したICT活用授業の実践研修や、デジタル教材の作成・収集・共有化等の指導力向上のための研修を実施した。
  5. 社会を学ぶ体験活動・ボランティア活動
    ・県の新教育課程研究協議会等において、全県の小学校に対して体験活動の重要性を一層明確にした新学習指導要領の趣旨の理解・徹底を図った。また、中学校の進路指導主事を対象とした研修会で、職場体験活動の重要性を周知するとともに、「学校教育の指針」では、学ぶことや働くことの意義の理解や、主体的に進路選択を促すために体験活動の充実を図ることを各学校に働きかけた。
    ・県立高校の生徒を対象に、学校から離れた産業現場等で2週間程度の長期インターンシップ(就業体験)を実施し、実際的な知識・技術の体得や望ましい職業観・勤労観の育成を図った。《長期インターシップ実施学科の割合(公立専門高校全日制)90.5%》
    ・ボランティア活動への参加意欲のある青少年や地域で活動をしている青少年を対象とした活動指導者養成研修を行うとともに、ボランティア活動の実践の場を提供し、地域活動の活性化を図った。(青少年ボランティア活動支援:332人)
  6. 環境教育の推進
    ・環境教育に係る教科・領域等における優れた実践事例や県内各学校における環境学習に関する特色ある取組を紹介した。
    ・高校の環境学習に関する優秀な取組をHPに掲載等し、広く普及啓発した。
  7. 県立高校における職業教育
    ・農業高校2校、工業高校4校、商業高校1校が地域の企業や農業生産者等と連携したカリキュラムの研究開発を行い、地域の産業界が必要とする人材育成に努めた。また、熟練技能者を非常勤嘱託職員として雇用し、工業科を設置する高校の生徒・教員への指導を実施した。

成果

  1. ALTの研修会や小学校英語活動の研修会では、ALTアドバイザ―が中心となり、小学校の外国語活動や英語の授業におけるTTの指導技術や活動例を周知することができた。
  2. 国際理解講座において本県関係者の海外生活体験等を紹介し、児童生徒の国際協力活動への意識啓発等を図ることができた。
  3. 集住地域におけるプレクラスの設置及び日本語指導の充実等により、公立学校へのスムーズな就学を図ることができた。(太田市)
  4. 公立中学校では約40%の学校で5日間の職場体験を実施している。専門高校における長期インターシップの実施率も増加傾向にある。
  5. 尾瀬学校を実施する学校は県内の小中学校全体の約30%で推移しており、自然を守ることや環境問題に興味を持った児童生徒の割合も安定している。

課題と対応

  1. 小学校における外国語活動から中学校における教科としての英語への円滑な移行については、様々な課題がある。(例えば、小学校では「正しく言えたか」よりも「自分の伝えたかったことが伝わったか」を重視するが、中学校では「正しく言えたか」といった正確性も重視することから、生徒が過度に苦手意識を持つことなく、基本的な表現を着実に習得していけるかなど)
    小学校の英語活動に関する中核教員研修で研修を積んだ教員が、その成果を広める場を効果的に設定する。
  2. 国際理解講座が大幅に減少するなど、国際理解教育には課題は多い。予算や総合的な学習時間の減少にしばられない新しい国際理解教育の実施方法等を検討する必要がある。
  3. 児童生徒が情報化社会で適正な活動を行うための基礎となる情報モラル教育に対する支援をより充実させる必要がある。
  4. 学習指導要領では体験学習の充実が示されていることから、職場体験や就業体験等の実施校を増やしていくことが必要である。
  5. 東日本大震災の教訓から、自然エネルギー等について児童生徒がもっと身近に感じとれる環境教育の充実が必要である。

学識者の意見

  • 中学校において、英語の授業中に教員の英語使用率が高くなったことは評価できる。平成24年度から新しい中学校学習指導要領が全面実施されるという事情によるところもあるとはいえ、英語科の充実を目処に行われてきた各種研修等によって教員が意識啓発された側面が大きいのではないかと推量する。
  • 公立高校の普通科などで「オーラルコミュニケーション1」を教える教員のうち、授業のほとんどを英語で行う教員は2割に過ぎないとの調査結果がある。(平成22年度文部科学省調査)。英語を日本語に置き換える教育指導が根深く残っており、なかなか英語のみを活用した授業展開に踏み込めないものと思われる。しかし、平成25年度より全面移行される学習指導要領では、「英語による言語活動を授業の中心とし、授業を英語で行うことを基本」 と示されていることから、英語に係る授業改善に早急に取り組む必要がある。しかし、単に外国語を使える人が現代社会に求められているグローバルな人材ではない。外国語の運用能力はグローバル人材の力量の一部である。グローバル人材の育成を目的とする国際理解教育については、県内各学校への一段の広がりを持たせる取組が必要である。
  • 日本語を母語としない外国人児童生徒が公立学校へスムーズに就学できることを目的とするプレクラスの充実は評価できる。また、従来から待ち望まれていた母国語者による心理カウンセリングが開始されたことは高く評価できる。今後の課題の第一は、外国人児童生徒の保護者にいかに日本の教育に対する理解を深めさせるかである。課題の第二は、多言語での会話ができる教員の採用と育成、さらに外国人児童生徒に日常生活言語レベルの日本語、いわゆる「地域日本語」を教えることのできる「日本語教師」の採用と育成である。この課題解決の上で、県立女子大学に創設される「地域日本語教育センター」の活動に期待したい。これらの施策は、「外国人児童生徒への教育」という狭義の取組の枠を超えて、外国人児童生徒と日本人児童生徒とが机を並べ学びあうことを推進するものであり、それは国際理解教育の面からも重要な意味を持つものである。また同時に、労働力人口の減少とともに直面する外国人労働者の急増という局面で、本県の取組は、外国人労働者をそのときはじめて大量に受け入れることになる他都道府県の本課題におけるパイロットケースとなることは明らかであり、魁としての矜持を持っての施策の展開が望まれる。
  • 小学校では2泊3日以上の宿泊体験活動の実施校の割合は約55%であるものの、長期宿泊体験活動(4日以上)の実施校が減少傾向にあり、目標の30%に対して1%にとどまっている。長期宿泊体験活動の教育的効果は文部科学省の調査からも明らかであり、今後、より多くの学校で実施されることを望みたい。
  • 本県は環境教育を推進するに当たって、尾瀬学校を実施するなど、他県と比べて取組としては進んでいると思える。
  • 職業教育については、より実践的な教育が望まれていることから、産業界をはじめ、産業経済部、健康福祉部等との連携を強化し、就業体験等各種取組の拡充を図ることに期待したい。

施策5 安全で充実した学習環境を整備する

目標

  1. 学習環境を整備する
  2. 児童生徒の安全と安心を確保する

取組項目

  1. 県立学校の施設設備の整備
  2. 修学の支援
  3. 学校の安全確保と安全教育
  4. いじめ・不登校対策の推進
  5. 問題行動への対応と中途退学の防止

取組結果

  1. 県立学校の施設設の整備
    ・市町村の避難場所に指定されている県立学校の耐震改修工事を実施した。(実施棟数10)
    ・専門高校等における実験実習に必要な設備等を整備した。
    ・教育用・校務用コンピュータを整備した。(教育用 1,020台、校務用 461台)
  2. 修学の支援
    ・幼児・児童・生徒等の修学を支援するため、各校種段階で各種事業を実施した。
     (主な事業・実績)
     1 幼稚園就園奨励費補助(国庫補助事業) 13,585人(302,572千円)
     2 要保護・準要保護児童生徒就学援助(国庫補助事業ほか) 学用品等:10,984人(340,246千円)
     3 群馬県教育文化事業団高等学校等奨学金貸与 276人(78,400千円)・幼児・児童・生徒等の修学を支援するため、各校種段階で各種事業を実施した。
  3. 学校の安全確保と安全教育
    ・危機管理マニュアルの内容や震災時に児童生徒がどのように下校したか等を把握するための、「東日本大震災に係る各学校園における取組状況調査」を実施し、各学校における課題等を踏まえ、平成21年に群馬県で作成した学校災害対応マニュアルの見直しを行った。
    ・学校の安全管理の取組状況調査を実施し、各学校における安全管理の実態把握をした。
    ・各教育事務所毎にスクールセイフティ-推進事業を実施し、学校、家庭、警察、地域等との連携協力の必要性について周知した。
  4. いじめ・不登校対策の推進
    ・こころの悩み等を持つ児童生徒に対応するため、公立中学校全校にスクールカウンセラーを配置するとともに、公立小学校への配置を111校に拡充した。5教育事務所にスーパーバイザーを配置した。
    ・県立高校(中等教育学校を含む)27校にスクールカウンセラーを配置した。
  5. 問題行動への対応と中途退学の防止
    ・平成19年度から中学校全校へのスクールカウンセラー配置を堅持しつつ、小学校へも配置を拡充し、小学校段階での早期の課題解決に努めるとともに、小中連携体制の強化を図った。
    ・「群馬県非行防止プログラム」の活用を推進するとともに、問題行動発生時においては、事案によって警察とも連携し、問題行動の早期対応・早期解決を図っている。
    ・生徒指導上の問題、課題を有する学校(中学校25校、県立高校7校)に生徒指導担当嘱託員を配置し、学校生活への適応を指導した。
     ※ 4と5の取組は密接な関係にあり、スクールカウンセラーや生徒指導担当嘱託員の配置は、個別の取組に限定的ではない。

成果

  1. 耐震改修工事については、計画的に進んでいる。また、教育用・校務用のコンピュータの整備についても、計画的に更新が進んでいる。
  2. 経済・雇用情勢の変化等に応じて、適宜適切に制度の見直しを図りつつ、周知による制度利用の促進を図り、就修学(園)の機会の確保に努めた。
  3. 東日本大震災を踏まえ、学校災害対応マニュアルの大幅な見直しを行った。
  4. スクールカウンセラーの配置充実などにより、小・中学校では、教育相談体制・カウンセリング機能が充実してきた。高校では不登校生徒数が改善された。

課題と対応

  1. 県立学校の耐震化率は、91.1%(平成24年4月1日現在)であり、老朽化、耐震化工事が未実施の学校施設もまだあることから、今後も計画的に推進する必要がある。産業教育設備については全体的に老朽化が進んでおり、計画的な整備更新が必要である。また、校舎等の長寿命化を図るために、改修工事を計画的に進める必要がある。
  2. 県立高校授業料無償化に伴い、関連する一部の修学支援策の運用を見直したので、引き続きその適切な運用及び周知を図る必要がある。
  3. 各学校の持つ地域性等を踏まえた災害対応マニュアルを早急に作成させる必要がある。
  4. 児童生徒の問題行動の未然防止のため、スクールカウンセラーの配置拡充・資質向上とともに、引き続き予防的教育をも含めた生徒指導の強化が必要である。

学識者の意見

  • 県立学校の耐震化は順調に推移している。なお、県立高校にあっては緊急時の拠点避難施設になることから、近い将来に予想されている大規模地震をはじめとした各種災害に対しても耐えられる、安心安全と感じることのできる施設改造が急務であると考える。
  • 産業教育設備のうち33%が導入後20年を経過しているという事態は、憂うべき教育環境である。生徒が実際に就職したときには目にすることもない旧式の設備による教育は、職業教育の根幹に関わる問題であり、また、「老朽化等の理由により実習できない設備」をそのままにしておいては専門高校としての役割を果たせない。設備の更新を早急に行うべきである。
  • 東日本大震災の教訓を踏まえ、学校における安心・安全教育については教育活動全体から児童生徒へ落とし込むシステムを構築してほしい。各学校において防災マニュアルはあると思われるが、マニュアルのとおりにいかなかったことが震災ではっきりした。今後は緊急時に児童生徒が自らの判断のもと、身を守る能力を身に付けさせることが必要である。さらに、緊急時には災害ボランティアが必要となってくるが、前もって高校生には災害ボランティア教育を施し、緊急時には中心となって動ける人材になってもらうことも、今後は必要と思われる。
  • いじめ・不登校対策については、スクールカウンセラーや生徒指導担当嘱託員を配置し、特にスクールカウンセラーの配置については、拡充し県内全域に広がりを見せているが、短い勤務時間やカウンセラーとしての経験不足等懸念する点も見られる。今後はこれらの課題を改善をしつつ、スクールカウンセラーを拡充し、児童生徒の非社会的行動の減少に努めてもらいたい。しかし、根本的には、児童生徒の心にもっとも寄り添えるのは教師である。教師は児童生徒の心に寄り添うことを喜びとする人たちである。そうした教師たちが多忙の中で、児童生徒に寄り添えなくなっている現実をあえて指摘したい。教師の多忙を軽減することで生まれる“ゆとり”こそが、いじめ・不登校対策のキーであることを確認したい。

施策6 学校・家庭・地域の連携を推進する

目標

  1. 幼児教育や家庭教育を支援する
  2. 子育てを支援し、地域の教育力を高める

取組項目

  1. 幼児教育の推進
  2. 家庭教育を支える教育相談
  3. 企業やNPO等と連携した家庭教育の推進
  4. 地域の人材や学校支援センターの活用
  5. 学校評価と学校評議員制度の推進

取組結果

  1. 幼児教育の推進
    ・「就学前の ぐんまの子ども はぐくみガイド」を関係各所に配付して普及を図るとともに、啓発のためのシンポジウム等を実施した。
    ・保育アドバイザーによる子育てセミナーや園内研修に役立つ出前講座を県内76カ所で開催したところ、3,477人の参加があり、幼児教育や家庭教育の向上をサポートすることができた。
    ・家庭教育に役立つ情報提供や保護者同士の相互交流の場として、子育て中の保護者を対象に「まちかど子育て会議」を県内8箇所で開催し、延べ226人の参加があった。
    ・幼稚園教諭・保育士等を対象に「夕やけ保育研修会」を県内12箇所で開催し、延べ313人の参加があった。
  2. 家庭教育を支える教育相談
    ・相談窓口を設けて悩みを抱える子どもや保護者等からの教育相談を実施した。
     (主な相談窓口・実績)
        1総合教育センター(子ども教育支援センターなど) 来所・電話・訪問相談(延べ) 1,667件
        2生涯学習センター 家庭教育電話相談「よい子のダイヤル」(延べ) 2,148件
  3. 企業やNPO等と連携した家庭教育の推進
    ・「ぐんま家庭教育応援企業登録制度」により従業員の家庭教育を応援する企業登録を推進し、取組内容等を広く紹介していくことにより、地域での家庭教育の関心を高め、その充実を図った。
  4. 地域の人材や学校支援センターの活用
    ・ボランティア傷害保険の加入を推進し、学校支援センターのボランティア(学校支援ボランティア)の活動を支援した。(保険加入者数 13,225人、活動の延べ人数 794,649人)
    ・学校支援センター運営の中核となる人材(コーディネーター・ボランティアリーダー)を養成するため、各教育事務所ごとに研修を実施した。(参加人数合計 513人)
    ・総合的な放課後対策を講じるため、学校等を利用しながら子どもたちの居場所を整備する。「放課後子ども教室推進事業」を実施した。(17市町村、51教室)※ 中核市を含めると19市町村、95教室
  5. 学校評価と学校評議員制度の推進
    ・全ての公立小中学校で自己評価及び学校関係者評価を実施しており、保護者や地域住民に分かりやすい公表の仕方も工夫している。
    ・全ての県立高校が自己評価及び学校関係者評価を実施し、評価結果をWebページや保護者会等を通して公表した。
    ・特別支援学校では自己評価、学校関係者評価のそれぞれについて、年間2回点検・評価の期間を設定した。
    ・90.8%の公立小中学校では、学校評議員を学校関係者評価者として委嘱し、学校経営の改善・充実に取り組んだ。
    ・学校評議員制度によりすべての県立学校(特別支援学校、高校)で、地域住民等による学校運営への参画が図られた。

成果

  1. まちかど子育て会議や保育アドバイザーなど子育てに係る会議や出前講座により、育児不安等を抱える保護者の支援や保育士や幼稚園教諭等の資質向上を図る環境は整いつつある。
  2. 専門性の高い相談員の配置や、相談員がアドバイザーからの指導・助言が受けられるようにするなど、質の高い教育相談が実施できるようになり、相談環境は定着しつつある。
  3. 「ぐんま家庭教育応援企業登録制度」は事業開始から5年で403社となり、多くの企業の登録を得ることができた。
  4. 学校支援センター等を通じて授業や部活動指導等に地域の人材を活用している学校の割合は上昇している。※「個別の取組等の点検・評価」の取組40参照
  5. 学校関係者評価公表は小・中学校については努力義務、高校・特別支援学校では県の要項により義務化され、開かれた学校への環境整備は整いつつある。 

課題と対応

  1. 引き続き「生活の流れの中で育む場」である保育園や幼稚園と、「時間割の中で育む場」である小学校は、環境の変化が大きいことから、連携・強化を図る必要がある。
  2. 課題の早期解決を図るため、継続して学校や関係機関等との連携を図ることが必要である。
  3. 社会全体で子どもを育てる機運を醸成するため、子育てや家庭教育に取り組むNPO等との連携を図り、家庭教育を支援する仕組みを構築することも必要である。
  4. 学校支援センターに携わるコーディネーター等の人数は、学校と家庭・地域社会との信頼関係の指標の1つと考えられることから、コーディネーターの人数増加を図る方策を検討する。
  5. 学校評価及び学校評議員制度は、導入することが目的ではなく学校をより良くする手段である。どのように実施することが良いのか検討を重ね、その取組の質的向上を図る必要がある。 

学識者の意見

  • 教育相談については、社会全体に周知されつつあるようだが、学校・行政機関等とのより一層の連携を図り、きめ細かな取組を期待したい。
  • 家庭教育の支援をより効果的に推進するためには、行政や関係機関等との連携はもちろんであるが、家庭教育・子育て支援等の活動を行っている団体との連携を図り、幅広くきめ細かな取組が必要である。そのためには、関係機関や団体等との定期的な情報交換の場を設けるなど総合的な取組を期待したい。 
  • 学校支援センターの活用では、設置率がすでに100%で、支援ボランティアの実質人数も9万人近くの方々が登録されており、このことは高く評価できるが、学校により大分温度差が生まれてきており、再構築の必要を感ずる。「学校評議員制度」にも共通した課題といえるが、この制度が、真に機能していれば、学校と地域との良好な関係が築かれていることは間違いないと思われる。この制度で最も重要な役割を担っているのは、コーディネーターといわれている。従って、コーディネーターの人選が極めて重要となる。地域での人望や学校に対する理解、行動力等を備えた人材が適任と考える。また、研修機会の拡充なども重要となる。研修会は、形式的なものではなく、学校やコーディネーターが抱える課題、コーディネーターの資質等の実態を踏まえた、きめ細かな継続的な研修が重要である。なお、支援ボランティアの研修も連動させながら発展的な研修機会の充実を期待したい。
  • 学校評議員制度の導入は、100%に近く、このことについては評価できるが、全ての学校が真に機能しているとはいえない。この制度を効果的に機能させるためには、学校側として、構成員の人選や、構成員に対して制度のねらいや役割等について十分な理解を得るなどの配慮が必要となる。形だけの学校評議員制度では全く意味が無いし、管理職や担当教員を忙しくするだけである。絶えず検証し、常に活性化した活動となることを期待したい。

施策7  多様なニーズに応える生涯学習・社会教育を推進する

目標

  1. 多様な学習機会を提供する
  2. 社会教育を推進する

取組項目

  1. 生涯学習活動の推進
  2. 読書活動の推進
  3. 社会教育の推進

取組結果

  1. 生涯学習活動の推進
    ・県、市町村、大学、高校、専修学校、博物館、放送大学等様々な機関と連携しながら、学習サービスを体系的、総合的かつ広域的に提供する「ぐんま県民カレッジ」を運営した。 (新規入学者 138人、連携機関数 490機関・施設、講座提供数 6,773講座)
    ・また、ぐんま県民カレッジの充実等を図るため、各教育事務所ごとに市町村教育委員会との効果的な連携を協議する「ぐんま県民カレッジ地域委員会」の開催や、県民が企画を提案し、講師となる「県民企画型講座」(3講座、各1~3回)を開催した。
    ・県民カレッジの各講座情報を入手する手段のひとつである「まなびねっとぐんま」において、県民カレッジ連携講座にキーワード検索機能を追加し、また、「映像ライブラリー」のサイトを設定し、県自作ソフトコンクール入賞作品や県教委制作の視聴覚センター所蔵映像を配信した。
    ・県立の生涯学習施設では教育普及活動等を実施した。(4施設入館者合計:741,848人)
  2. 読書活動の推進
    ・県立図書館では、特に幼児を対象とした絵本や小中学生に適した児童図書を整備し、図書資料の充実を図り、また、小中学生向けのものを含む新聞雑誌、マイクロフィルム、電子出版物、外国語書籍、商用データベース等及びCD、DVD等の購入や整備を行った。
    ・県内公立図書館の中核館として、市町村支援協力車「みやま号」及び「おおとね号」による資料搬送など、市町村立図書館への支援や図書館未設置町村への支援、学校図書館への支援を行った。
    ・「群馬県子ども読書活動推進計画(第二次)」の実現に向け、児童図書を充実させ、子どもや子どもの読書推進活動に携わる者へのサービスの向上に努め、さらに子どもの読書や図書館に対する理解と関心を高めることを目的に「図書館こどもフェスティバル」を開催した。
  3. 社会教育の推進
    ・社会教育主事等の資質向上を図るため、「県社会教育主事等職員研修」や「地区別社会教育主事等研修講座」、「新任社会教育委員研修会」を実施した。(社会教育指導者の育成研修会参加者:479人)
     ・県立青少年教育施設(北毛青少年自然の家、妙義青少年自然の家、東毛青少年自然の家、青少年会館)で、自然体験や集団宿泊体験など、様々な体験活動の場や機会を提供し、「生きる力」の育成など青少年の健全育成を図った。(4施設合計:113,531人)

成果

  1. 「ぐんま県民カレッジ」の入学者数(累計)は増加傾向にある。また、県民企画型講座については、県民の方々がより参加しやすくするために、講座のうち2つを中毛地域及び利根地域で開催した。
  2. 県立図書館では、入館者数は減少したが貸出冊数は増加した。貸出については、一般書5冊、児童書5冊、視聴覚資料5点という枠を取り払い、合計15点まで貸し出しを可能とし、利便性を高めたところ、貸出冊数が増加した。(入館者数平成22年度:373,365人→平成23年度:350,998人、貸出冊数平成22年度:420,832点→平成23年度:450,846点)
  3. 県社会教育主事等職員研修において、平成21年度より市町村職員にも対象を広げるなど県全体の社会教育主事の資質向上のための工夫・改善を実施した。
  4. 青少年健全育成については、青少年が仲間との自然体験を通して、感性豊かな人間性、規範意識や協調性を養っており、特に学校利用の場合は通常の学校生活では出来ない体験をすることにより、望ましい人間関係を築く態度の形成などの教育的な意義が一層深まっている。

課題と対応

  1. 県民企画型講座の学習の成果を社会参加活動等に結びつけることにより、県内の生涯学習活動に広がりを持たせることができると考えられる。開催回数・開催箇所の拡大を考えることが必要である。
  2. 新学習指導要領では「言語活動の充実」に配慮するように定められたことから、図書館機能の弱い県内の各学校との一層の連携を図り、読書活動を支援する必要がある。
  3. 社会教育主事の数は、全国的に不足しているところである。教育基本法第13条に規定された学校・家庭、地域住民等の相互の連携協力といった環境を整えるために、社会教育主事の育成・配置が中長期的な課題であり、検討する必要がある。 

学識者の意見

  • 「県民企画型講座」の事業は、一定の評価ができるが、すでに5年を経過している事業であり、次のステップへの発展を期待したい。具体的には、この事業で講師を務められた人が、その後、一人立ちして地域で自主的な活動として実施できるような仕組みを構築することが重要と考える。 
  • 県立の生涯学習施設は、全体的に入館者数が減少している。これは東日本大震災の影響も一因と思われるが、取組46(教育委員会所管外)の美術館・博物館の入館者数については増加傾向にある。どのような策を講じたのか読み取れないが、この種の施設は、より多くの人に活用してもらうことにより、施設としての存在意義が増すと思われるので、教育普及活動等の取組への一層の工夫に期待したい。
  • 親しまれる図書館づくり「知るを楽しむ」推進事業では、郷土にかがやく人々といったテーマで、郷土の偉人をテーマに毎年度開催しているが、この種の事業は、県立女子大学「群馬学センター」や知事部局等関係機関との緊密な連携を図り推進することが重要と考える。
  • 新学習指導要領では「言語活動の充実」を謳っているが、これは単に国語だけの問題ではなく、教育活動全体の中で国語力の育成が求められている。この基盤となるものが読書活動であり、国語力を伸ばすには読書習慣を身に付けさせることが必要と考える。学校読書調査によると児童生徒の不読率も年度により多少の増減がみられるものの、全国的に課題となっている。こうした状況下において、県立図書館は、今後一歩踏み込んだ学校図書活動へのアプローチの仕組みの構築について、強力に推進する必要があると考える。
  • 社会教育主事の養成・配置であるが、教育基本法の改正により、新たに「学校・家庭及び地域住民等の相互の連携協力」を趣旨とした規定が盛り込まれた。また、先にも触れた「開かれた学校」としての学校支援センターの推進や学校評議員制度の活性化、家庭教育支援などに重要な役割を担っているのが、社会教育主事であると言われている。このようなことからも社会教育主事の養成と適正な配置は、緊要な課題である。

施策8  生きる喜びと創造性をはぐくむ文化・スポーツを振興する

目標

  1. 文化・芸術活動を振興する
  2. スポーツを振興する

取組項目

  1. 芸術教育の推進
  2. 文化財の保護と活用
  3. 生涯スポーツの振興
  4. 競技スポーツの振興

取組結果

  1. 芸術教育の推進
    ・在学中に小学校では2回、中学校では1回、高等学校では1回、児童生徒が群馬交響楽団の演奏が聴けるように計画的に移動音楽教室(小・中学校)や高校音楽教室を実施した。
    ・芸術家による表現手法を用いた計画的・継続的なワークショップ等の実技指導を、高等学校2校、特別支援学校2校で実施した。
    ・県高等学校文化連盟と連携して、本県高校教育における芸術・文化活動の総合的・象徴的イベント「県高等学校総合文化祭」(第17回)を10月から11月にかけて実施した。
  2. 文化財の保護と活用
    ・文化財の適正な指定・登録手続を行うとともに、文化財の保存・修理や埋蔵文化財の発掘調査に対する支援、文化財パトロール等を実施した。
     (主な事業・実績)
      1文化財保存事業等の実施数 51事業
     2文化財パトロール数 620回
     3県埋蔵文化財調査センター発掘情報館の入館者数 13,715人
     4文化財情報システムへのアクセス件数 21,067件
  3. 生涯スポーツの振興
    ・「全国スポーツ・レクリエーション祭」が隣県の栃木県で開催された際、「ぐんまスポーツ情報ネットワーク」のホームページでの広報を行うことにより参加の申し込みが増え、148人の選手を派遣することができた。
     ・各地域での生涯スポーツを推進するため、総合型地域スポーツクラブの設立や運営を支援した。
     ・市町村の計画的なスポーツ振興や県域全体でのスポーツ振興を図るため、マスタープラン研究協議会を開催し、市町村のスポーツ振興の基本計画の策定等を支援した。
  4. 競技スポーツの振興
    ・国民体育大会に参加する40競技団体及び2学校体育団体が実施する競技力向上対策事業への支援や競技力向上フィードバック対策及び総合一貫強化対策事業への支援を行った。
     ・スポーツ振興と郷土の意識の高揚に資するため、世界大会や全国大会で優秀な成績を納めた競技者及び指導者に対し、その栄誉をたたえ群馬県スポーツ賞を贈り顕彰した。

成果

  1. 県高等学校総合文化祭は前年度と比較して参加者数が増加しており、高校教育における芸術・文化活動は活性化が図られている。また、平成23年度全国高等学校総合文化祭福島大会では、小倉百人一首かるた部門で群馬県チームが準優勝となった。
  2. 文化財の修理・保存への支援や文化財パトロールなどを計画どおり実施することにより、文化財を適正に保存管理できた。また、開発事業者との調整により埋蔵文化財保護対策を実施することができた。
  3. 市町村のスポーツ振興基本計画の策定率や総合型地域スポーツクラブが設置されている市町村の割合が、前年度と比較して上昇した。県民マラソンへの参加者数も定着しつつある。
  4.  第66回国民体育大会では、4競技で8種目が優勝し、天皇杯順位で21位の成績を獲得することができた。

課題と対応

  1.  今後は「音楽」だけに限らず、児童生徒に対し様々な文化芸術に触れる機会の創出も必要である。
  2.  文化財の指定等を促進し、毀損・老朽化した文化財を保護・整備して、貴重な文化財を次世代へ継承しなければならない。また、貴重な埋蔵文化財を失わないため、開発事業者との迅速かつ的確な調整を行うとともに、必要に応じて発掘調査を実施する必要がある。また、郷土への誇りを持たせることが文化財活用の一つの目的であることから、歴史的価値の高い文化遺産が県内に数多く存在することを県民に知らせるとともに、県外へも発信していく必要がある。
  3.  「ぐんまスポーツプラン2011」に即し、拠点スポーツ施設整備などスポーツ環境の整備を計画的に行っていかなければならない。
  4.   スポーツに親しむ県民の増加と競技人口の底辺拡大・競技力向上のため、各競技団体において、ジュニアのタレント発掘とジュニアからの一貫した指導体制の確立を推進する必要がある。

学識者の意見

  • 移動音楽教室、高校音楽教室は計画的に進められ、また、高等学校総合文化祭への参加者は増加している。こうしたことから、児童生徒に音楽を中心とした文化活動を体感してもらう場への理解が学校に浸透していると思われる。今後は美術館や博物館を活用した活動にも力を入れ、音楽等に偏ることなく児童生徒が文化芸術に触れる機会を増やすことへの理解が進むことに期待する。
  • 本県には古墳を初め、数多くの文化遺産がある。これらの調査・研究は進んでいる感はあるが、こうした遺産の活用については、全体的に遅れているように思われる。まずは、価値ある歴史遺産が 県内にはこれだけあり、また身近にあることを県民に知ってもらい、郷土に誇りをもってもらうことが必要と考える。こうした機運を醸成することも、文化財活用を推進する上では必要なことと考える。
  • 総合型地域スポーツクラブの設置については、県内に広がりを見せている。また、市町村により策定するスポーツ振興基本計画の策定率も伸びている。こうしたことから、生涯スポーツが県内に広がってきており、この点は評価できる。
  • 全国大会レベルの選手育成については、様々な課題があると思われるが、その一つにジュニアの育成が上げられると思われる。競技スポーツの裾野を広げるには、早期の段階より人材を確保し、発達段階に応じたアスリートとして育成できる仕組みが必要と考える。そのためには、関係者はもちろんであるが、全県的な機運の醸成を図りつつ、着実に進めることが肝要と思う。 

施策9  教育委員会の活動

目標

  1. 開かれた教育委員会
    ・教育行政の安定的かつ適正な執行を確保する
    ・教育現場の課題を把握する
    ・広報・広聴を通じた県民との双方向の教育行政を推進する

取組項目

  1. 教育委員会及び教育委員の活動
  2. 広報・広聴活動
  3. 教育行政の総合的・計画的推進

取組結果

  1. 教育委員会及び教育委員の活動
    ・教育委員会会議を13回(定例12回、臨時1回)開催し、県教育行政の基本方針や執行にかかる重要事項(議案数94件)の決定を行った。                                           ・地区別教育行政懇談会(吾妻・利根沼田地区)や学校訪問(2回、5校)など、調査研究活動を実施し、学校現場の現状把握・課題把握を行った。
    ・学校の入学式・卒業式や節目行事(創立周年記念等)へ出席した。また、合否判定委員や任用候補者判定会議委員などを務め、教員人事(教員採用選考試験・管理職選考等)に参画した。
    ・公安委員会との意見交換会、生徒指導担当嘱託員との意見交換会を各1回ずづ実施した。
  2. 広報・広聴活動
    ・ホームページに教育情報を適時適切に掲載するとともに、保護者等への広報誌「教育ぐんま」の配付(年4回)や報道機関への情報提供(記者会見 103件、資料提供 161件)を行った。
    ・教育委員会へのメールや電話、投書等による照会や相談に対応した。(教育委員会へのメール 345件)
  3. 教育行政の総合的・計画的推進
    ・平成21年3月に策定した群馬県教育振興基本計画(以下、「基本計画」という。)の取組(事務)が点検・評価の対象となることから、平成22年度より従来の方法を大幅に変更し、基本計画の枠組みを基準とした点検・評価を平成23年度も実施した。
    ・教育委員会内だけでなく、知事部局の教育関係所属に自己点検・評価をしてもらったことにより、県全体の教育行政を一体的に点検・評価したこととなった。

成果

  1. わかばプランの拡充(中学校1年生への非常勤講師を常勤化にして35人学級編成とした。)や館林高等特別支援学校の開校、県立学校の耐震化など教育環境の充実を図ることができた。
  2. 東日本大震災の影響から教育委員会へのメール件数は増加したが、迅速に対応できた。
  3. 平成23年度の点検・評価は、群馬県教育振興基本計画の枠組みとの整合を図れたので、各取組の進捗を管理することが容易になった。

課題と対応

  1. 今後も、教育委員による調査研究活動等を積極的に行うほか、引き続き基本計画に基づいた教育行政を円滑に執行していかなければならない。
  2. ホームページや広報誌「教育ぐんま」については、教育委員会の活動内容を紹介する広報媒体であり、内容を充実させるとともに、効果の確認や更なる改善を図る必要がある。
  3. 現計画が平成25年度末で終了することから、次期群馬県教育振興基本計画の策定について、検討を始める必要がある。

学識者の意見

  • 県立学校の耐震化、特別支援教育への理解や環境整備、教育行政懇談会や学校訪問等は、評価できる。今後も、現場の教職員が力の発揮できる教育環境づくりを更に推進することに期待したい。
  • 「教育ぐんま」やホームページは、学校・社会教育等における教育活動の状況や教育委員会が行う施策等について、保護者や地域住民に周知させるものであることから、引き続き内容の充実に努めるとともに、現状の広報媒体のみに限定することなく、絶えず広報効果を高める方法等に注視し、実り多い広報活動になることを期待したい。
  • 教育委員会の点検・評価について、群馬県教育振興基本計画の枠組みとの整合性が図れ、また、教育に関する取組は教育委員会だけではなく知事部局等でも広範多岐に渡り実施されており、関係する施策を一体的に評価できたことは評価したい。なお、群馬県教育振興基本計画が平成25年度末をもって計画期間が終了することから、次期計画を検討する際には、当然ながらこれまでの反省と評価、さらには時代の要請を踏まえた「教育県群馬」に相応しい第二次振興計画の策定を期待したい。
  • 東日本大震災を経て、改めて考えさせられた教育的な課題として、先にも触れたが、「地域連帯感の醸成」や「家庭・地域・学校との連携協力の再構築」等が挙げられる。これらの課題解決に向けた活動の中心的な役割を担う人材が、社会教育主事等指導者であると考える。 また、学校教育と社会教育の両輪がバランス良く回転することにより、学校現場の活性化等 も期待できると確信している。そのためにも、中長期的視点に立った人材の養成・確保、及び学校・社会教育との一層の緊密な連携による諸施策の推進が期待される。

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