1 題名
「Nurturing Social and Emotional Learning Across the Globe
~Findings from the OECD Survey on Social and Emotional Skills 2023~」
2 主旨
- 社会情動的スキルが学校、家庭、社会でどのように促進されているか、またスキルの違いにどのように関連しているかについて、その相関関係を国際比較等により指摘
- 社会情動的学習をより良く促進するための政策と実践の改善に関する推奨事項を報告
3 報告内容
(1) 学校における社会情動的教育
1.教師のフィードバックを強化する、特に生徒の強みに関してのフィードバックを増やす
- より多くの教師からフィードバックを受けた生徒は、社会情動的スキルが高いと報告されている。
- 教師のフィードバックは改善が必要であり、特に生徒の強みを育成する点で重要である。
- 特に15歳や女子生徒にとって重要である。
- ほとんどの地域で、教師のフィードバックは達成動機との関係がより強い傾向があることを示している。この理由の一つとして、教師からのフィードバックが共感のような向社会的行動よりも学業の達成に重点を置いている可能性がある。群馬県は、教師からのフィードバックが達成動機と共感の両方を同等に育む唯一のシステムであり、両方のスキルに強く関連している。
2.教師が提供する社会情動的学習の機会を増やす
感情を調整する方法を学ぶ機会を提供する教師は少なく、多くは課題のパフォーマンスに関連するスキルの成長に焦点を当てている。
3.デジタル技術を活用する
ほとんどの教師は、オンライン授業が社会情動的学習にとっての課題であると認識している。
4.教師の準備を強化する
社会情動的教育に関するタスクは、特に中等教育前期の教師が最も指導に不安を感じていることの一つであり、そのトレーニングが不足している。
5.社会情動的学習を促進する構造とマインドセットを創出する
社会情動的スキルを一般的な実践や教科横断的に教える形式的な統合は、地域全体で非常に一般的となっている。しかし、社会情動的スキルの広範な影響に関する共通のマインドセットは少ない状況である。
※調査時点(令和5年度当初)では、群馬県において社会情動的教育を意識化して行っている状況が見られなかった。
6.課外活動を支援する
課外活動への参加は、10歳および15歳の生徒の全ての社会情動的スキルと正の相関関係がある。しかし、15歳の生徒のうち、様々な課外活動に定期的に参加しているのは3人に1人(またはそれ以下)であり、ほとんどの地域では、経済的に恵まれない生徒や女子生徒の参加はさらに少なくなっている。群馬県では、課外におけるクラブ活動が社会情動的スキルを促進する主要な方法として取り組まれている。
(2) 社会情動的成長を育む学校環境
1.学校を地域のハブにする
- 学校でより高い帰属感やポジティブな感情をもっている生徒は、特に社会情動的な抑制のスキルが高いと報告されている。
- 前向きで支援的なコミュニティの一員であると感じる生徒は、協力姿勢と学習意欲が高く、自分の願望や意見を表現しやすくなり、失敗や不安、ストレスにも対処しやすくなる。
2.スキルを促進するための関係を促進する
- 教師や同級生との良好な関係を回答した生徒は、高い社会情動的スキルを報告している。
- 教師との関係は、作業の成果(責任感・自制心・ねばり強さ)、好奇心、楽観主義、忍耐力(寛容性)とより関連している。
- 同級生との関係はより強い社会的スキル、信頼と相関している。ただし、15歳の生徒は10歳の生徒よりも同級生や教師からの関心が少ないと感じている。
3.経済的に恵まれないグループの経験を改善する
- 女子生徒と成績の低い15歳の生徒は、ほとんどの地域で同年代の生徒よりも帰属感が低く、ポジティブな感情が少ないと報告されている。
- 経済的に恵まれない15歳の生徒は、ほとんどの地域で帰属感が低いと報告されている。
※群馬県では、経済的に恵まれない生徒に上記の傾向は強く見られない
4.教師のストレス対処の対策を強化し、教師の社会情動的スキルとウェルビーイングの向上につながる支援をする
- 多くの地域で「教師の効果的なストレス対処の対策がとられている」と回答している教師が少ない。
- 教師のウェルビーイングが向上し、教師がポジティブな感情抑制のモデルとなることで、より支援的な学習環境が生まれ、生徒にとっても好影響が生まれる。
5.いじめに対処する
- 多くの生徒がいじめの加害者であり被害者であると報告されている。平均して、約67%の加害者は自分がいじめられたことがあると述べており、約40%の被害者も他の生徒をいじめたと報告している。
- 被害者と加害者は、いじめに関与しない生徒に比べて責任感、感情コントロール、信頼が低い傾向がある。被害者は、いじめに関与する生徒を含めて、楽観主義とストレス耐性が低い。いじめに加担していない者は共感が高い
(3) ジェンダー平等への取組
1.ジェンダーのステレオタイプに取り組む
- ジェンダーのステレオタイプに取り組む政策やプログラムは、女性や女子に限らず、男性や少年も巻き込むべきである。ほとんどのステレオタイプへの対策は女性や女子を対象としているが、ほぼ全ての地域の教育制度において、男子の間でジェンダーステレオタイプは女子よりも広まっている。
- ジェンダーステレオタイプを是正することが必要であり、学校はそれに挑戦できる絶好の場所である。
2.家庭でのジェンダー平等を促進する
家事の責任を分担している家庭の生徒は、ジェンダーのステレオタイプが少なく、忍耐力(寛容性)、信頼、感情コントロール、作業の成果スキル(責任感・自制心・ねばり強さ)がより高いと報告されている。しかし、家事は家族の女性が担当することが多く、特に群馬もその傾向が強い。
3.多様なキャリアの追求を奨励する
好奇心や数学のスキルが同じくらい高い生徒の中で、男子は女子の2倍、科学技術分野のキャリアを目指す傾向があり、女子は健康分野を目指す傾向がある。ある地域では「男子は女子よりも科学技術に優れている」というステレオタイプに同意しない女子は、この分野でのキャリアを期待する可能性が高いとされている。
※「男子の方が女子よりもテクノロジーが得意」と思う生徒の割合において、群馬県の生徒のジェンダーステレオ意識は他国と比べて中程度である。その特徴は男女に大きな差がなく、男子は他国に比べてステレオ意識をもつ割合が低く、一方で女子は高い状況である。
他国の状況=男子:60%超~30%、女子:20%以下が多い
群馬県の状況=は男女ともに20%後半
・異なる興味やスキル、職業に関するジェンダーステレオタイプを減らすことは、生徒がより幅広いキャリアの可能性を検討するサポートにつながる。
4.学校と家庭の連携を強化する
※ボゴタ(コロンビア)、ベルー、ウクライナのデータのみから以下のように分析されている。
- ほとんどの親は、読み書きや計算力と同様に、ねばり強さや感情コントロールといったスキルが子どもの成長にとって重要であると考えている。
- 親は、生徒や教師に比べて、自分自身が子どもの社会情動的な学習に対してより責任があると感じる傾向がある。
- 学校は、保護者を生徒の社会情動的成長をサポートする重要なパートナーとして積極的に関わるべきである。生徒がどのスキルを成長させているのか、それぞれのスキルが人生の結果にどのように価値があるのか、保護者が家庭でどのように生徒の学びを強化できるのかについて情報を提供することが重要である。
以上
SSES Round2 国際報告書(第2弾)の概要 (PDF:706KB)
SSES国際報告書(第2弾)公式発表(英語)(SSESのトップページ)<外部リンク>