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多くの外傷・障害は痛くなってから診断・治療をしても治療によりスポーツ現場に復帰できます。しかし、骨・軟骨障害の中には無症状に進行し、持続する痛みや可動域制限といった症状が出たときは治療によっても完治せずに将来障害を残す場合があります。このようにサイレント(無症状)に進行する障害としては肘や膝の骨、軟骨障害、脊椎分離症などがあります。症状の乏しい時期に障害を見つけ出して早期治療をするためには、学校やスポーツ現場で行う検診が有効です。
どのようにすれば運動器検診で症状の乏しい初期例を発見できるのでしょうか。学校やスポーツ現場では普段の姿の子どもたちに接することができ、病院では決してみることのできない表情やパフォーマンスの変化から、隠れた障害を見つけ出すことも可能となります。だれが診察しても所見に乏しいことは変わりありません。しかし、子どもとの会話の中で「繰り返す痛み」や「立てないほどの腰痛」といったキーワードを聞き出すことができ、診察で本人の気づかない可動域制限などを見つけることができます。
しゃがもうとすると後ろに転んでしまうような状態は運動器の機能に障害をきたした状態であり、運動器機能不全の一つといえ、「からだが固い」状態のままで運動・スポーツを行えば運動器に障害を招く可能性があります。
子どもの時期から運動の習慣をつけることにより運動不足を解消できるばかりでなく、健全な運動器の発育・発達をサポートし、将来のロコモティブシンドロームやメタボリックシンドロームの予防となります。
運動器検診は、骨格の異常、バランス能力、関節の痛み、可動域制限がないか等、四肢体幹を検診することにより、運動の過不足による障害を早期にチェックし、早期に介入して、子どもの将来にわたって健康を守ることを目的にする検診です。
人が自分の身体を自由に動かすことができるのは、骨・関節・筋肉や神経で構成される“運動器”の働きによります。運動器の障害のために移動機能の低下(移動や日常生活に何らかの障害)をきたした状態を「ロコモティブシンドローム」といいます。進行すると自分で身の回りのことができなくなり、介護が必要になります。
学校における定期健康診断は学校保健安全法に基づいて行われ、現在、検査項目として12項目が定められていいます。このうち運動器に関しては、以下の3項目が明記されています。
(1)脊柱の疾病および異常の有無については、形態等を検査し側わん症等に注意する。
(2)胸郭の異常の有無については、形態及び発育を検査する。
(3)骨、関節の異常及び四肢運動障害等の発見に努める。
国においては、平成26年4月30日付け文部科学省局長通知「学校保健安全法施行規則の一部改正等について」において、「児童生徒の健康診断の検査項目に『四肢の状態』を必須項目として加えるとともに、四肢の状態を検査する際は、四肢の形態及び発育並びに運動器の機能の状態に注意することを規定すること」としました。
なお、施行期日は平成28年4月1日です。
県教育委員会では、各学校における児童生徒等の健康診断が適切に実施されることを目的として、群馬県医師会の協力を得て、「学校における運動器検診マニュアル」を作成しました。
運動器検診では、家庭における観察(問診)により、子どもの日常の様子を知ることが大切です。健康診断の結果、運動器疾患が疑われた場合であっても、必ず異常があるわけではありません。まずは専門医を受診し、骨などの運動器に異常がないか確かめてもらいます。
もし、異常が見つかれば、早期に適切な治療を行いましょう。
また、専門医を受診した結果、異常がなかったとしても、「子どもロコモ体操」による簡単な体操やストレッチで柔軟性やバランスを高めれば、将来のロコモティブシンドローム(運動器症候群)やメタボリックシンドロームを予防することができます。
運動器検診マニュアル(表紙~本文)(PDFファイル:911KB)
運動器検診問診票(様式1)(Excelファイル:154KB)
学校健康診断における運動器検診について(別紙1)(PDFファイル:61KB)
学校健康診断における運動器検診について(別紙1)(Wordファイル:31KB)
学校健康診断における運動器検診結果のお知らせ(様式2)(PDFファイル:62KB)
学校健康診断における運動器検診結果のお知らせ(様式2)(Wordファイル:28KB)