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令和3年度 病害虫発生予察特殊報 第2号(ネギハモグリバエB系統)
令和3年度 病害虫発生予察特殊報 第2号 ネギハモグリバエB系統(PDFファイル:426KB)
本県において、ネギでネギハモグリバエB系統の発生が初めて確認されました。
特殊報とは、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表する情報です。
1 特殊報の内容
- 対象病害虫名:ネギハモグリバエB系統
- 学名:Liriomyza chinensis Kato
- 発生植物:ネギ
- 発生地域:県中東部地域
2 発生概況
(1)発生確認の経過
令和3年9月、県中東部地域のネギほ場において、葉がハモグリバエ類により著しく食害され、白化する症状(写真1)が確認されました。食害状況から他都府県で発生が認められているネギハモグリバエ別系統による被害と類似していたため、農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門に同定を依頼しました。その結果、遺伝子解析によって従来の系統(以下、A系統)とは異なる別系統(以下、B系統)と同定されました。
(2)国内の発生状況
B系統は、平成28年に京都府で初確認されて以降、茨城県、富山県、千葉県、長野県、埼玉県、新潟県、栃木県、三重県、滋賀県、大阪府、愛知県、東京都、佐賀県、岐阜県、鳥取県、兵庫県、岩手県、秋田県、福島県、鹿児島県、福岡県、山形県、宮城県、大分県、青森県、山口県、島根県及び愛媛県の29都府県で確認されています。
3 形態および生態等
- A系統とB系統の形態による識別は困難です。
- 成虫の体長は約2ミリメートルで、胸部と腹部が黒く、その他の部分は淡黄色です(写真3)。幼虫はうじ虫状で、成長すると体長約4ミリメートルに達します(写真4)。蛹は体長約3ミリメートルの褐色、俵状です。
- 両系統とも成虫は葉の組織内に産卵し、孵化した幼虫は葉の内部に潜り込んで葉肉を食害します。幼虫は成長すると葉から脱出して地表または土中で蛹になります。
4 被害の特徴
B系統はA系統と比較して、1葉あたりの幼虫数が多く、集中的に葉肉を食害する傾向があります。B系統による初期の食害痕は、A系統と同様に不規則な白線状ですが、食害が進むと近接した食害痕同士が癒合して、葉が白化したようになります(写真1、2)。
5 防除対策
- 多発してからでは防除が困難になるので、早期発見に努め、発生初期から防除を徹底してください。
- 現在(令和3年10月)のところ、系統の違いにより薬剤抵抗性の発達は確認されていないため、薬剤防除にあたっては、「ネギハモグリバエ」または「ハモグリバエ類」に適用のある薬剤を使用してください。
- 薬剤抵抗性の発達を防ぐため、同一作用機構分類に属する薬剤の連用を避けてください。
- 被害葉や収穫残さは本種の発生源となるので、残さ等はほ場内に放置せず、適切に処分してください。
写真1 ネギハモグリバエB系統による食害(葉の白化症状)
写真2 ネギハモグリバエB系統による食害(葉先まで白化した被害ほ場)
写真3 ネギハモグリバエ成虫
写真4 ネギハモグリバエ幼虫