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1601年頃の総社藩(現在の前橋市総社町付近)
(農民)
あぁ、腹が減った。。。食べるものにも困っているが、米を作りたくても水がない。
年貢(※注)も納められないし、何とかならないものか・・・。
(秋元)
度重なる戦乱で領地が荒廃し、農民が困っている。新田開発のための水が欲しい。
しかし我が領地は利根川より高い位置にあり水が引けない。
どうしたものか?
※注 昔は年貢(税金)を米で納めていました。
(秋元)
やはり利根川のもっと上流のあそこから水を取るしかない。
(家臣)
たしかにあそこなら我らの領地より高く、水を取ることができそうです。
ですが殿、あそこは白井藩の領地でございます。
(秋元)
白井藩主の本多殿から水を取る許しをいただこう。そのためにも、まず高崎藩主の井伊殿に協力を求めてみよう。
高崎藩主・井伊直政の協力により、白井藩主・本多康重との面談が叶った。
(秋元)
井伊殿に「雲に梯子をかけるようなもので無理であろう」と笑われましたが、なんとか御協力いただけないか。
(本多)
承知した。漆原村(※注)から水を取ることを許そうではないか!
※注 漆原村:現在の吉岡町
(秋元)
年貢を三年間免除するから、水路を作る協力をせよ。
(農民)
年貢が免除されるのなら、協力させてくださいませ。
(秋元)
最初に水路の高低差を測る提灯測量(※注)を行うぞ。
※注 提灯測量:提灯やろうそくの明かりを利用し高低差を測りました。
その後三年間、必死に掘り続け、1604年、水路が完成した。
(家臣)
大きな岩に突き当たり困っていたところ、現れた白髪の老人の教えにより岩を取り除くことができました。※注
(秋元)
さしずめ天狗の化身か。天狗のおかげの「天狗岩用水」だな!
※注 諸説あります。
(秋元)
水を通すことができた!
(家臣)
我らの田んぼに水が!
(農民)
米が作れるぞ!
同じ頃、玉村地方(※注)に水を引くことを考える伊奈忠次と江原源左衛門
(伊奈)
この荒れた領地にも水があれば米がもっと作れるのだがのう・・・
(江原)
上流の秋元公の領地にある天狗岩用水の取水堰を大きくさせてもらい、この地方まで水を引いてはいかがでしょう。
(伊奈)
良い案じゃ、秋元公へお願いしてみようぞ。
※注 玉村地方:現在の玉村町
(男性)
こうして、天狗岩用水は関東郡代の伊奈忠次と江原源左衛門により玉村町まで延長されたんだ。
この区間は「滝川用水」や「代官堀」と呼ばれているよ。
天狗岩用水は400年間、水田にかんがい用水を送り、米づくりだけでなく、地域と人々の生活を潤してきたんだ。
(男の子)
地域に水をずっと届け続けるなんてすごい!
(男性)
この天狗岩用水を管理して守っているのが、天狗岩堰土地改良区の仕事だよ。
(男性)
そして天狗岩用水は、その価値が認められて令和二年に『世界かんがい施設遺産』に認定されたんだよ。
(男の子)
ワォ、世界!?すごいね!!
(男の子)
でも、おじいちゃんはなんでそんなに詳しいの?
(男性)
若い頃は土地改良区の職員として水路の管理をしていたんだよ。
この素晴らしい施設がいつまでも利用されるようみんなにも見守っていってほしいな。
(男性)
さあ前橋総社秋元公歴史祭りが始まる!気合いが入るのう!
(男の子)
おじいちゃん、かっこいい!
土地改良区からのお願いです。
水路は水が流れていて危険なので、水路や立ち入り禁止の施設内に入ったりしないでね。