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高齢化の進展に伴い、認知症高齢者の増加が見込まれています。認知症は、高齢になれば誰でも発症する可能性がある身近な問題で、決して人ごとではありません。認知症の人の多くは地域で暮らしているため、家族だけではなく社会全体の正しい理解と優しい見守りが必要です。
認知症とは、脳がさまざまな原因でダメージを受け、認知機能が低下して起こる生活上の支障が、およそ6カ月以上続いている状態を指します。
認知症は高齢になるにつれて発症しやすくなるため、高齢化の進展に伴ってさらに増えることが予想されています。2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が発症すると推計されており、いずれは誰もが認知症になったり、認知症の人と関わったりする可能性があります。私たちは人ごととして無関心でいるのではなく「自分の問題である」という認識を持つことが大切です。
認知症の人をサポートするためには、症状に応じた適時・適切な医療・介護サービスの提供と相談体制の充実などが重要です。県では「認知症の人とその家族が地域で安心して暮らせる体制整備の推進」のための施策を行っています。
認知症の人やその家族が暮らしやすい社会にするためには、当事者だけでなく、地域全体が認知症について正しく理解し、見守ることが必要です。認知症に関する正しい知識を身に付け、認知症カフェなどに参加して認知症の人やその家族と交流を持つことが、理解を深めるきっかけになります。認知症についてよく知らない人も、地域の一員としてできることから始めてみましょう。
認知症の人に必要な対応や、地域で支える取り組みを紹介します。
時間・場所・人物などが分からなくなる見当識障害、記憶障害、理解力・判断力の障害、計画を立てたり段取りができなくなる実行機能障害など
→治りにくいが、進行を遅らせることができる場合も
不安・焦燥、うつ状態、幻覚・妄想、徘徊(はいかい)、興奮・暴力、不潔行為など
→社会的環境により改善できる可能性も
前橋市の認知症初期集中支援チームリーダーとして認知症の人とその家族を支援してきた、群馬医療福祉大学の山口教授にお話を伺いました。
山口智晴(やまぐちともはる)さん
「認知症初期集中支援チームは、主に高齢者の相談窓口である『地域包括支援センター』からの依頼で活動します。医師の他、医療・介護の専門職で構成され、認知症が疑われる人や、認知症の人とその家族を訪問します。そして生活の困り事を丁寧に確認してその原因と解決方法を一緒に考え、適切な医療に結びつくように支援することで、本人や家族の不安の軽減を図ります。
認知症の人は認知機能が低下し、生活動作や周囲の人との関係性に支障が出ます。認知機能障害は目に見えにくいので、周囲が困惑することも多いです。そのため、例えば足を骨折している人に『急いで』とは言わないのに、忘れっぽい人には『さっき言ったでしょ』と言ってしまうことがよくあります。
一方で、認知症の人もさまざまな不便さや不安を常に感じています。周囲の人は不安が軽減するように関わることが大切です。それは結果的に、認知症の症状緩和やお互いの穏やかな生活につながります。認知症に関する不安や専門医療の受診希望がある人は、早めに近くの相談窓口を利用してください。
認知症だからといって特別な対応をするのではなく、優先席で席を譲るような、相手への思いやりが大切です。『自分が認知症になってもお互いさまな社会』『尊重し合える社会』にしていけるといいですね」