本文
病気と予防
|<<前(犬を飼う(その2))へ戻る|<<最初(犬の飼い方・しつけ方)に戻る>>|最後のページ|
6病気と予防
現在、日本の家庭犬の平均寿命は着実に伸びていますが、動物病院での受診率やワクチン接種率は欧米諸国に比べるとまだまだ低いようです。犬と仲良く楽しく暮らすためには、飼い主が犬の健康管理をきちんと行わなければいけません。また、犬から人間に感染する病気を「動物由来感染症」といい、飼い主の健康管理上、注意が必要です。ここでは、「動物由来感染症」と「犬の病気」について、もっとも一般的な病気をあげ、説明します。
動物由来感染症
狂犬病
狂犬病ウイルスを含む唾液が傷や咬傷を介して体内に入り、犬や人に感染します。症状としては、神経興奮と意識障害で、続いて麻痺が起こり死亡します。
日本では、昭和32年以来発生していませんが、諸外国ではまだ多くの国で報告があります。いつ外国から狂犬病ウイルスが国内に侵入するか分からないので、狂犬病予防法に従って犬の登録と予防注射を実施しましょう。
また、飼い犬が、もし他人を咬んでしまった場合は、咬傷犬発生届を最寄りの動物愛護センター(出張所)等に届け出なければいけません。
レプトスピラ症
犬に対する感受性が強く、主な症状は腎炎です。尿中に排泄された菌によって犬や人に感染します。人に感染した場合、「ワイル病」(出血性黄疸)といい、肝障害や腎障害を引き起こし、重篤な場合、死亡することもあります。予防には犬のワクチン接種が有効です。
パスツレラ症
犬や猫の口腔内に高率に保有されていて、犬や人への感染は咬傷や掻傷によるといわれています。犬ではほとんど症状は見られず、人に感染した場合、気管支炎や肺炎等の呼吸器症状を引き起こします。
トキソプラズマ症
猫を終宿主とする原虫(寄生虫の一種)による病気で、猫の糞便中に排泄されたオーシスト(原虫の卵)が外界で感染力を持つようになり、それが経口的に体内に入ることで感染します。
犬の症状は呼吸器症状や消化器症状を示し、人の場合は症状を示しませんが、抵抗力が低下した場合に発熱、脳炎等の症状を起こします。
犬回虫幼虫移行症
子犬や若齢の犬が多く保有している寄生虫で、成犬が感染した場合は症状を示しませんが、子犬の場合は下痢、嘔吐等の消化器症状を引き起こします。
人の場合は、犬の糞便中に排泄された卵が経口的に体内に入り、孵化し、体内移動することにより、消化器症状や視力障害等を引き起こします。子供の砂場遊びでの感染が報告されています。
皮膚糸状菌症
土壌中に生息する菌が、犬や人の皮膚に接触することで感染します。犬の場合、脱毛、皮膚の肥厚、痂皮形成が主な症状で、人の場合も同様の所見が見られ、白癬または黄癬と呼ばれています。
予防は犬、人ともに清潔を保持することで、感染した場合には早期治療が重要なポイントとなります。
犬の病気
ジステンパー
感染力の強い急性伝染病で、接触感染、飛沫感染で伝染し、肺炎等の呼吸器症状、粘血便等の消化器症状、脳炎等の神経症状を起こします。神経症状を示したものは死亡率が高く、予防にはワクチン接種が有効です。
パルボウイルス感染症
年齢を問わず感染し、嘔吐や出血性の腸炎、著しい白血球の減少症を示します。予防にはワクチン接種が有効です。
犬伝染性肝炎
1歳以下の感染率、死亡率が高い病気で、成犬では症状を示さないことが多く、抵抗力が低下した場合に発症します。症状は鼻汁、発熱、下痢、嘔吐等で、予防にはワクチン接種が有効です。
フィラリア(犬糸状虫)症
犬糸状虫の成虫(寄生虫)が心臓とそれに付随する血管(主に右心室、肺動脈)に寄生することで起こる病気です。症状を示さないこともありますが、多くの場合、頻脈、不整脈、呼吸困難等を起こし、急性の場合、死亡することもあります。蚊の吸血によって犬から犬へ伝搬します。予防には駆虫薬が有効です。
外部寄生虫
犬ダニ
犬に寄生するダニはツメダニ、ヒゼンダニ、ニキビダニ、マダニ類があります。症状としてはほぼ共通として脱毛、痒み、発赤で、ニキビダニは若齢犬の感染が多く、全身性に波及した場合、細菌の二次感染が原因で致命的になることもあります。
予防は予防薬の投与や駆除用の首輪が有効ですが、寄生が疑われた場合には薬剤シャンプー等で洗浄し駆除します。
また、ダニ類には肉眼では確認が困難なものもありますので、脱毛、痒み等の症状を示したら、動物病院へ受診したほうがよいでしょう。
犬ノミ
ノミの咬刺が原因で発症するアレルギー性の皮膚炎で、激しい痒みが主症状となります。犬だけでなく、猫、人にも寄生します。
予防には予防薬の投与や駆除用の首輪が有効ですが、寄生が確認された場合には薬剤シャンプー等で洗浄し駆除します。皮膚炎が進行している場合には早期に動物病院へ受診しましょう。
イラスト中曽根由かり