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平成27年度ぐんま緑の県民基金市町村提案型事業の評価
今年度は事業開始から3年目の箇所(平成27年度開始箇所)を第三者機関である「ぐんま緑の県民税評価検証委員会」に評価していただきました。
評価因子として、2つの視点(実績アンケートと効果アンケート)から補助事業者と市町村にアンケートを行いました。
アンケートについて
アンケートの種類について
1.実績アンケート
事業を実施した年度ごとに、補助事業者に対して行うアンケートで、事業が採択された計画どおりに実施されたかを尋ねています。
今回は、平成27年度と平成28年度に実施した箇所についてアンケートを実施しました。
2.効果アンケート(公共性と効果の可視化)
同一箇所の3年目に行うアンケートで、補助事業者と市町村に対して行いました。
公共性の判断のために事業の効果が地域に対して利益があったかを尋ね、効果の可視化により事業の波及効果があったかを尋ねています。
アンケートの集約方法について
アンケートは点数評価の(5段階評価と3段階評価)合計により、A判定、B判定、C判定に分類すると共に、自由に記載できるコメント部分を設け、判定因子としています。
- A判定:取組が特に優れており、模範となり得る
- B判定:現状の取組が充分である
- C判定:現状の取組には課題があり、改善が必要
アンケート結果による判定結果
事業名 | 箇所数 | アンケート結果による判定 | 備考 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
内訳 | A | B | C | 判定不能 | |||
荒廃した里山・平地林 | 62箇所 | 箇所数 | 46箇所 | 16箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 74% | 26% | 0% | 0% | |||
荒廃した里山・平地林 【刈払機・粉砕機の購入】 |
7箇所 | 箇所数 | 4箇所 | 3箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 57% | 43% | 0% | 0% | |||
貴重な自然環境の保護・保全 | 14箇所 | 箇所数 | 12箇所 | 2箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 86% | 14% | 0% | 0% | |||
森林環境教育・普及啓発 | 18箇所 | 箇所数 | 16箇所 | 2箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 89% | 11% | 0% | 0% | |||
森林の公有林化 | 0 | 箇所数 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
構成比% | |||||||
独自提案事業 | 3箇所 | 箇所数 | 2箇所 | 1箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 67% | 33% | 0% | 0% | |||
合計 | 104箇所 | 箇所数 | 80箇所 | 24箇所 | 0 | 0 | |
構成比% | 77% | 23% | 0% | 0% |
評価結果
市町村提案型事業【総括評価】
市町村提案型事業は、予め定めた5つの補助事業に、それぞれの地域がアプローチして実施される事業である。評価の対象となった104事業に対する評価は、A評価77%、B評価23%となっており、C評価は該当がなかった。
「荒廃した里山・平地林の整備」は、104事業の内、62事業59.6%を占め、最も多くの自治体で取り組まれた。評価の内訳は、A評価74%、B評価26%となっており、概ね実施した効果や成果が認められている。また「荒廃した里山・平地林の整備」において、刈払機、粉砕機を購入したケースも7自治体あり、こちらはA評価が57%に留まっている。県民参加型の里山整備は、年々広がりを見せており、事業を通して身近な里山の整備によって獣害の減少がみられており、住民の安全が守られるようになったことは、本税導入の効果として高く評価してよい。
「貴重な自然環境の保護・保全」は14件が取り組まれた。地味な活動ではあるが、県民によって希少な自然環境や動植物の保護、生育環境の保全などが図られており、また児童生徒らへの教育にも結びついている。A評価が86%に達しているのは、これまで、こうした取り組みの必要性が判っていても取り組む契機がなく、本税の導入によって実現したからだと捉えられる。
「森林環境教育・普及啓発」は18件が取り組まれ、多くの児童生徒が森林への関心、自然環境へ関心を高めたものと思われる。自治体によっては、学校教育における自然環境教育の一環と位置づけて実施されており、意義深い。その一方で、学習の最終結果を児童が確認できない例もあり、事業によっては学習効果をより高められるよう事業計画の改善が望まれる。
「独自提案事業」は、2市1町で取り組まれた。それぞれ、地域の課題を解決するために積極的に取り組まれ、成果を挙げた。
本税が導入され、人工林の間伐によって山林整備が進むと共に、様々な形で身近な自然環境、希少な自然環境に接しながら、森林の環境に果たす役割や希少な自然を保全してゆくことの大切さを多くの県民に知っていただく機会を設けられたことは重要な成果だと認識される。さらに、荒廃した里山から、鳥獣害を受けた現場から、その背景にある構造的な問題へと理解を深めていただくことができれば、森林県である本県において、県民と行政が一体となって、次のステップへと政策を展開できる可能性を高められる。
本税全体の評価をするには、まだ道半ばであるが、関係団体の皆様、各自治体担当者の皆様の努力により、本税導入の地域的意義を高めていただいている。課題もあるが、本税導入による諸事業の展開は、地方分権型地域づくりの一つとして、森林県である本県の県土のあり方を、県民と行政が一体となって議論してゆく基盤となりつつあるようにも捉えられる。引き続き、県民の皆様、関係団体、各自治体の積極的な参加と取り組みをお願い申し上げたい。
荒廃した里山・平地林の整備についての評価
荒廃した里山・平地林の整備は、多くの自治体で取り組まれるようになった。本税による展開可能な事業が自治体に周知されるようになり、県民の間に著しい広がりを見せるようになったことは大いに評価される。実施された62事業の評価は、A評価74%、B評価26%となっており、概ね高い評価を得ている。成果として評価されている点では、里山がきれいに整備されたことをはじめとして、荒廃が激しい里山整備は住民だけでは限界があり、専門業者に依頼することができるようになったことや、整備の結果、野生鳥獣害が減少したこと、児童の通学時の安全が確保できたこと、生活環境の向上を図ることができたことなどが挙げられている。B評価は、本税で取り組んだ里山整備を今後も継続的に維持整備できるのか、里山整備の経費を自治会だけで賄うには限界が来ており継続的に本事業を行ってもらいたいといった点を懸念しての評価となっている。
本税導入前に懸念されていた集落近傍や通学路沿いの里山整備が進み、野生獣害が減少してきていることは、本取り組みの成果だと言ってよい。とはいえ、一過性事業で終わることへの懸念が多数出されており、事業の継続性は大きな課題であることが示されている点には留意する必要がある。なお、刈払機、粉砕機の購入例が7例あったが、貸し出し機の不足も指摘されており、伐採後の処分を円滑に行うために検討が必要である。
貴重な自然環境の保護・保全についての評価
実施された14事業の評価は、A評価86%、B評価14%と、概ね高い評価がなされている。2年度連続で取り組まれている事業が多く、ほとんどが絶滅危惧種の生息環境保護に取り組まれている。地道な活動であるが、本県の希少かつ貴重な自然環境が県民の手によって守られるようになったことは高く評価される。成果として、絶滅危惧種の生息環境を保つことができたことをはじめとして、児童への自然保護教育を推進できたこと、児童と保護者が一体となった自然保護活動が実施できたことなどが挙げられている。一方、課題としては、こうした活動への参加者、会員の増加を図ることや活動の継承者の育成、地元住民のさらなる理解と協力の必要性などが指摘され、事業継続性に課題のあることが多く指摘されている。貴重な自然環境の保護・保全については、本税の導入によって取り組まれるようになった。課題はあるものの、事業実施者からの評価は高く、さらに充実した活動が行えるように、長期的視点を組み入れた事業展開について、県と事業主体等における検討も必要とされる。
森林環境教育・普及啓発についての評価
実施された18事業の評価は、A評価89%、B評価11%と、概ね高い評価がなされている。多くは、地元地域の自然環境を小学生や地域住民に知ってもらうことを目的としている。成果としては、群馬県の森を守ることへの意識が高まったことや森林が育む自然の力を知ってもらうことができたこと、自然の素晴らしさを体感することによって環境問題への興味・関心を高めることができたことなどが挙げられ、観察会やバードウォッチング、またチェンソーによる伐採の様子の見学など、多様な形で実施されている。学校教育の一環として行われて、森林への関心を高めることに成功している事例がある一方、課題として、事業主体と学校の連携が課題となっている地域もあり、場合によっては群馬県教育の一端として位置づけて、計画的に実施されることが望まれる。
森林環境教育・普及啓発に取り組んだ自治体の中には、山地がない平坦地の都市が多く含まれていることは注目される。そこでは寺社林に目を向け、植樹による平地林の形成などが行われ、平坦地域の取組方として注目される。
森林の公有林化についての評価
該当なし
独自提案事業についての評価
高崎市、富岡市、甘楽町から提案され、実施された。
高崎市では、高崎市が独自に取り組んで来た里山元気再生事業に補助する形で里山整備が行われ、平成28年度からは整備した里山の管理が事業として行われるようになった。管理は適正に行われ、鳥獣害の低減、生活環境の改善につながっているものの、住民の高齢化に伴い、今後の管理体制のあり方が課題となっている。富岡市では粉砕機を購入し、公民館や清掃センターに設置して、里山整備を進め、獣害、治安、景観等の問題解決に取り組んだ。そして甘楽町では、中学校の生徒とPTAによる学校周辺の荒廃した竹林の整備と森林整備を通した森林環境教育を実施した。それぞれに効果があらわれており、本税による取り組みとして適正だと判断される。この独自提案事業についても、さらなる提案と県民参加をお願いしたい。