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近代美術館及び館林美術館の取組の検証結果についての答申
答申書
平成24年9月5日
群馬県知事 大澤 正明 殿
群馬県行政改革評価・推進委員会 委員長 佐藤 徹
群馬県公共施設のあり方検討委員会の答申を受けた近代美術館及び館林美術館の取組の検証結果について(答申)
本委員会に諮問された標記の件について、別紙のとおり答申します。
県及び県教育委員会におかれては、本答申を参考に、費用対効果をより高め、県民サービスの向上に努めてください。
また、今後、改善の取組を行う際は、期限を区切って検証し、自律的かつ持続的に更なる改善が図られていくよう求めます。
答申書別紙
群馬県公共施設のあり方検討委員会の答申を受けた取組状況の評価及び提言(近代美術館・館林美術館)
1 施設の必要性について
館ごとに、近代美術館は答申どおり引き続き県の中心的美術館として今後とも幅広い役割を果たしていくこと、館林美術館は引き続き県立の美術館として美術館機能の強化、施設の有効活用や地域開放等の地域に根ざした機能の発揮、地元市町村・住民等の運営への参画推進を図ることが方向性として出され、具体的な取組が進められていた。しかし、答申で求められていた2館の役割分担や位置付けの検討については、美術館ごとには一定の方向性が出されているが、県全体としての考え方が示されていない。この点について明確にする必要がある。
2 管理運営方法について
(1) 運営経費は取組前に比べ1割弱の削減が図られた。しかし、各館の独自収入だけでの施設維持は困難であり、税金を投入する必要性が県民に理解されるような取組が今後も必要である。例えば次のようなことが考えられる。
- 入館者一人当たりの県費負担額の目標設定や、企画・事業ごとの経費管理、他の県施設等との物品の共同購入を行い、収入増・経費削減に取り組む。
- 学芸員の共同研究や展示・広報活動での提携等、両館の連携・協力を進めて効率的に運営する。
- 企業の理解をいただき、一層の協賛を得ていく。
- 経費を削減する中でも企画展示ごとに予算に大胆なメリハリを付けて内容を充実・工夫することや、県民に親しみやすい集客性のある企画を実施すること等を検討する。
- 教育普及事業を一層充実させ、美術に対する県民の理解を促進する取組を進める。
- 施設開放等、県民の利用度を高める取組を一層進める。
(2) 利用促進については、教育普及事業の内容充実や実施回数・参加者数の増加、近代美術館での「えほんの森」の設置やファミリータイムの導入、館林美術館での夏休み木版画展等の取組が進められており、評価できる。
3 管理運営主体について
(1) ボランティアとの協働については、近代美術館でのスクールサポート活動等うまく機能している。利用促進の取組を含め、今後も引き続き積極的に取り組まれたい。
(2) 指定管理者制度の導入については、全国の状況を調査した結果、当面直営を継続するとのことだが、既に制度を導入している美術館・博物館において効果的に管理運営されている事例を十分調査し、今後も検討されたい。
(参考1) 委員会での主な意見
1 施設の必要性に係る取組について
- 今後の方向性について、美術館としての基本的な役割はしっかり果たしつつ、地域と連携していく取組をさらに考えていきたいということであり、今後も期待している。
- 美術館ごとには一定の方向性が出ているが、2館の役割分担について県全体としての考え方が伝わらない。特に館林美術館は、地域に根ざしたことが中心になるならば県営が効果的なのか疑問も出てくる。各館の位置付け、関係性について県全体として検討してほしい。
2 管理運営方法に係る取組について
(1) 経費削減、両館の連携・協力による効率的・効果的運営、新たな収入確保策
- 意味のある事業・企画を行うために必要な経費をかけていることを示していく必要がある。企画ごとの経費管理が重要であり、より少ない経費でよい企画ができていければよい。
- 黒字化できる施設ではないので、施設を維持していくために許容できる県民負担の目安として、入館者一人当たり県費負担額の目標を設定すべき。
- 経費削減の努力は当然必要だが、教育施設として、また、地域に開かれた美術館として、県民の利用度を高めて県民の理解を得ていくことが大事である。
- 現在の入館者一人当たりの県費負担額は、美術に関心がない県民からは高い印象を持つ。教育に関する取組を増やし県民に還元していく必要がある。また、関心のなくても納得できる内容のものを企画展等も含め実施し、説明やPRをしっかり行っていくことが必要である。
- 税金で維持していく意義を納税者に納得してもらうには、美術館の職員が収益は自らが責任を持って創り上げていくという意識を持って集客できる企画を立てていくことも必要である。各美術館のコンセプトもあるが、何本かは集客をねらいとする企画を行えないか。
- 美術館の中核である質的な部分は効率化になじまない。だから公立として税負担が必要なのだが、物品調達や総務事務などの運営部分については、意識改革を図り、経費削減や民活等による効率化をより積極的に進めるべき。
- 企画内容がアピールポイントであり、赤字でも良いものをやってほしいという県民の価値観があるので公立美術館は成り立っていく。そうした視点からは、経費のメリハリを大胆に付けて、ある程度経費をかけるような企画を重点的に行っていくことも必要ではないか。
- 経済情勢は厳しいが、企業も一定の広告宣伝費は計上しており、少しでもスポンサーとして負担してもらえるとよい。
- 館林美術館は、独自性を出していくという面もあるが、東毛の方の鑑賞機会を確保するという目的が出発点にあったと思うので、近代美術館との同一企画展の実施など、両館の連携を大胆に進めて効率的に運営することも必要である。
(2) 新たな利用促進策
- 建物もすばらしく、もっと施設を利用してもらって良さを知ってもらうことが必要である。
- 地域の作家を掘り起こすような取組も必要である。館林美術館については、近隣の西邑楽高校に県内では数少ない美術コースがあるので、展示スペースの一画を開放するなどの連携も可能ではないか。
- 教員を新たに配置するなどして教育普及事業を活性化させたことは評価できる。今後も活性化した状況を継続していく必要がある。
- 近代美術館のスクールサポート活動は各学校まで出張して説明している。実施回数が大幅に増えているが、多くのボランティアと協働で対応しており、すばらしい仕組みである。
- 近代美術館のファミリータイムは、全国にも例のない取組で、また、子ども連れが多く訪れる「群馬の森」の中にある特色を生かしたものであり、大変評価できる。
- 近代美術館の「駅からハイキング」はおもしろい発想である。今後も地域に根ざした美術館にしていってほしい。
3 管理運営主体に係る取組について
- 指定管理者制度を導入した場合に信頼性等の懸念が生じているとのことだが、指定管理者制度を導入したとしても行政が責任をもってしっかりやることに変わりはないので、民間業者が指定管理者となっている施設がうまくやっているかどうかをさらに分析していってほしい。
(参考2) 公共施設のあり方検討委員会答申後の近代美術館・館林美術館の取組状況
1 館林美術館のあり方検討
館林美術館運営懇談会(21年)。
県立美術館として、美術館機能の強化、施設の有効活用や地域開放等の地域に根ざした機能の発揮、地元市町村、住民等の運営への参画推進を図る。
2 入館者数の増
23年度は震災の影響があったが取組実施前(20年度実績)を大きく上回った。
- 近代美術館
20年度実績 101,771人 → 23年度実績 111,931人(+10%)(22年度 128,853人 +27%)
民間企業との共催によるアンコールワット展(22年)などの開催 - 館林美術館
20年度実績 30,870人 → 23年度実績 39,328人(+27%)(22年度 41,096人 +33%)
藤牧義夫展(23年)、開館10周年企画展(23年)などの開催
3 館林美術館における地域との連携
地元スーパー、金融機関でのポスター掲示、ミュージアムショップでの地元商品販売、友の会主催コンサートへの地元関係者出演、展覧会に関連した地元企業製品や市民・学校活動の紹介(館林)
4 両館の連携・協力
両館学芸員の兼務(21・22年度)、両館収蔵作品の展示活用
5 経費削減
- 近代美術館
20年度実績 職員27人 353,767千円 → 23年度実績 職員27人 322,605千円(-9%)
歴史博物館の庶務・経理部門との統合による実質的な人員削減(6名→4名)(21年)、企業協賛制度の創設(22年度~)など - 館林美術館
20年度実績 職員19人 260,757千円 → 23年度実績 職員16人 239,669千円(-8%)
6 利用促進
「県民の意見を聞く会」の開催、ラッピングバス(以上両館)、駅からハイキング、絵本コーナー設置、ファミリータイム導入、スクールプログラム紹介DVD作成・全校配付(以上近代)、地元小学生による「夏休み木版画展」(館林)、地域に関わりの深いテーマや作家の作品展示(以上館林)など
※ 教育普及事業参加者数
- 近代美術館
20年度実績 5,211人 → 23年度実績 16,121人(+209.4%) - 館林美術館
20年度実績 2,929人 → 23年度実績 4,755人(+62.3%)
7 ボランティアとの協働による運営
- 近代美術館
ボランティア登録者数 23年度 126人、スクールサポート活動(23年度42回)、美術館アートまつり(23年度2回1,497人参加)など - 館林美術館
「みんなのアトリエ」ボランティア参加者数 23年度 21人など
(参考3) 公共施設のあり方に関する中間報告書における答申内容(平成20年10月20日)
1 施設の必要性について
- 県立の美術館として2館ある必要性については疑問があるが、2館とも美術館として一定の役割は果たしていることなどから存続とする。ただし、当面運営を継続するとしても、その役割分担や位置づけについて早急に検討するとともに、利用者増加の積極的な努力を強く求める。
- 近代美術館は県の中心的美術館として、今後とも幅広い役割をより効果的に果たすことが望まれているが、館林美術館は、より地域に密着した形の美術館として、その役割を検討すべきであり、運営についても地域の方々の理解と連携協力により行われるべきである。
2 管理運営方法について
- 管理運営に多額の経費を要する施設であることから、両館の連携・協力による効率的・効果的な運営や施設全体としての経費削減について、具体的な検討を行う必要がある。また、施設のプラスイメージを生かした新たな歳入確保策についても、具体的な検討を行う必要がある。
- 両館ともに優れた景観の中に位置する芸術・文化施設であることから、観光施設としての利用も視野に入れ、新たな利用促進策について検討するなど、県民に親しまれ、多くの県民が訪れる施設運営について検討する必要がある。
3 管理運営主体について
- 館林美術館については、地域に根ざした美術館としての機能をより発揮させる観点から、地元の館林市や市民等の運営への参画、館林市等を指定管理者とする運営形態について検討するとともに、将来的な館林市等への移管・譲渡の可能性を含めて、館林市等とよく話し合いをする必要がある。
- 両館とも、ボランティアとの協働による運営をさらに進めるほか、指定管理者制度導入について、他県での導入事例の検証を行うなど、同制度の導入の可能性についても検討する必要がある。
4 その他
- 当面2館の運営を継続するとしても、その管理運営について、徹底した点検と見直しを求めるものであり、今後行う改善等の取組については、一定の年限を区切って、目標を設定して行い、その取組や結果の検証を行う必要がある。