本文
群馬県介護研修センター及びぐんま昆虫の森の取組の検証結果についての答申
答申書
平成24年8月9日
群馬県知事 大澤 正明 殿
群馬県教育委員会教育長 吉野 勉 殿
群馬県行政改革評価・推進委員会 委員長 佐藤 徹
群馬県公共施設のあり方検討委員会の答申を受けた群馬県介護研修センター及びぐんま昆虫の森の取組の検証結果について(答申)
本委員会に諮問された標記の件について、別紙のとおり答申します。
県及び県教育委員会におかれては、本答申を参考に、費用対効果をより高め、県民サービスの向上に努めてください。
また、今後、改善の取組を行う際は、期限を区切って検証し、自律的かつ持続的に更なる改善が図られていくよう求めます。
答申書別紙
群馬県公共施設のあり方検討委員会の答申を受けた取組状況の評価及び提言(群馬県介護研修センター)
- 介護部門について、研修の実習等の場としての利用や施設職員の処遇に配慮しつつ民間譲渡したことは、答申の考え方を踏まえた対応であり評価できる。
- 一方で、研修内容や職員体制を拡充したことで管理運営費への一般財源の充当額が介護部門の譲渡前よりも増加している。費用対効果を分析し、受益者負担や管理運営方法について、25年度の予算や組織体制の検討から継続的に見直していくことが必要である。
- 管理運営主体について、介護職員の確保及び資質向上は社会的な重要課題であり、研修や事業の企画立案は、引き続き県が責任を持ち特色ある研修等を行っていくことが必要とされているが、講義・実習や事業実施は、外部委託の活用も含め、効率的な実施方法を合わせて検討すべきである。
(参考1) 委員会での主な意見
- 見直し前後の管理運営費を比較すると現在の方が一般財源の額が増えてしまっている。
- 研修内容や人員を増やした分の効果があればコストをかけること自体が悪いとは思わないが、県民に対してそれだけの効果があったか。
- 研修について、他県での実施状況や民間での研修能力を考えたときに、コストをかけても県が直営した方がよい内容か。
- 民間委託と比較した上で、質的なレベルの維持と経費との釣り合いをどこで取っていくかを考え、県直営か委託かを継続的に検討していくことが必要である。
- 受講料を徴収していない研修がある。県民の福祉の向上につながるので県費で負担するという考えもあるが、受講者の受益者負担という考えもあり、十分な説明又は再検討が必要である。
- 何でも予算を削るのがよいことだとは思わない。例えば「ぐんま認定介護福祉士」は群馬オリジナルのものであり、介護に関する群馬スタンダードのようなものを明風園と連携して作ることができたらよい。
- 高齢者介護の分野でも、よい意味で群馬らしさを出していけるよい。
(参考2) 公共施設のあり方検討委員会答申(中間報告書)後の介護研修センターの取組状況
「県立高齢者介護総合センター」の見直し(平成22年4月1日)
- 介護部門
社会福祉法人群馬県社会福祉事業団へ譲渡(建物は無償譲渡、敷地は無償貸与)→「特別養護老人ホーム明風園」 - 研修部門
県の地域機関として「群馬県介護研修センター」を設置し県直営で継続
明風園の移譲後の状況
利用状況
平成22年度は、稼働率が引継ぎ直後に落ち込んだが夏以降は回復した。定員増やデイサービスの土曜日開所など利用者増加策にも取り組んでいる。
収支状況
平成22年度の事業活動収支は、収入354,798,269円、支出368,663,319円で-13,865,050円の赤字だが、引継ぎ初年度の特殊要因によるものであり、平成23年度以降は改善の見通しが立っている。
介護研修センターとの連携等
当初は手探りの状況もあったが、事業団にも研修指導センターを設置し、職員の意識は前向きに変化している。
介護研修センターの取組状況
職員体制
11人
実施事業
- 認知症介護研修
県独自の2研修のほか、厚生労働省のカリキュラムに沿った5研修を実施(うち3研修は市町村の介護保険の事業所指定要件である)。平成22年度は延べ1,226人が受講。 - 高齢者ケア専門研修
必要とされる研修を毎年度見直しながら実施。平成22年度は5研修を実施し、延べ283人が受講。 - ぐんま認定介護福祉士(基本過程)養成講習
県独自の認定制度である「ぐんま認定介護福祉士」認定試験の要件研修。平成22年度は2回実施し、149名受講し、142名が認定取得。 - 認知症コールセンター事業
平成22年9月から、専用電話を設置して一般県民からの相談に応じている。
平成22年度 |
平成23年度 |
(参考)平成21年度 |
|
---|---|---|---|
収入 |
108,943千円 |
141,014千円 |
405,249千円 |
雑入(研修負担金等) |
11,850千円 |
10,580千円 |
9,607千円 |
一般財源 |
96,543千円 |
120,377千円 |
73,182千円 |
介護保険料 |
265千円 |
0 |
321,920千円 |
その他(受託収入、国庫補助等) |
285千円 |
10,057千円 |
540千円 |
支出 |
108,943千円 |
141,014千円 |
405,249千円 |
人件費 |
90,636千円 |
96,624千円 |
306,852千円 |
介護研修等実施 |
18,307千円 |
44,390千円 |
9,803千円 |
介護部門運営費 |
0 |
0 |
88,594千円 |
注)平成21年度は旧高齢者介護総合センターの決算額(介護部門の人件費、事業費を含む。職員数は全体で64人(うち研修専担3.5人程度)。)
(参考3) 公共施設のあり方に関する中間報告書における答申内容(平成20年10月20日)
(1) 施設の必要性について
- 民間にできることは民間に任せるのが基本であり、県が特別養護老人ホームを直営する必要性は低いので、介護サービス部門は民営化することが適当である。
- 研修部門については、介護職員等の質的な向上は大きな課題であり、介護現場での研修の実施が不可欠であることから、県の財政負担も含めて、県が責任をもって、介護現場と一体化した形で実施していく必要がある。
(2) 管理運営主体について
- 介護サービス部門の譲渡の検討に当たっては、県との連携による介護研修の実習等の場としての一体的な運営を考慮し検討すべき。
- 特別養護老人ホームは県が引き続き設置し、その運営に責任を果たしていく必要性の低い施設であることから、県立を前提とする指定管理者制度の導入は適当でない。
(3) その他
民営化に当たっては、施設職員の処遇について十分配慮願いたい。
群馬県公共施設のあり方検討委員会の答申を受けた取組状況の評価及び提言(ぐんま昆虫の森)
- 答申を踏まえた4か年の改善計画を立案して、人員や経費の削減により管理運営費を大幅に削減させつつ、展示リニューアルや各種プログラム実施などにより、入園者数を大幅に増加させており、大変評価できる。
- 以下の点に留意し、今後も県民サービスの向上を図りつつ費用対効果も高め、魅力ある施設運営を引き続き行っていくことが必要である。
- 各種自然体験プログラムの実施内容や学校等の利用状況から自然環境学習の場としての有効性はあるので、今後も教育施設としてプログラムの企画実施や学校等の受入れを円滑に行うことができる体制を維持していくべきである。
- その上で、今後もコスト意識を持って歳入・歳出を見直し、教育施設として県民の理解の得られる経費水準を維持することが必要である。
- 旧生態温室については、入園者の評価も高いことから、「昆虫ふれあい温室」として、加温を停止し大幅に経費を削減する抜本的な見直しを図った上で今後も維持していこうとする方向性は理解できる。ただし、加温停止の影響により植物の植え替え等の経費増が生じないように進めていくことが必要である。
- ボランティアとの協働や地元・民間も入った利用促進委員会の意見を参考にした運営の見直しが行われており、今後も、地域やボランティアの方々と連携・協働し、施設運営の改善に取り組むことが大事である。
- 来園者の約1/4が首都圏からであり、県立の教育施設であることを踏まえつつ、観光部局と一層連携した首都圏等へのPR強化が必要である。また、交通事業者等に対して入園者数が大幅に増加した状況を示して、公共交通の便の向上が図られるよう働きかけに努めるべきである。
(参考1) 委員会での主な意見
- 昆虫の森・天文台ともに、多大な努力と工夫をして経営改善が図られている。
- あり方検討委員会の調査時は魅力が薄く、営業に長けた民間による指定管理も検討すべきとの答申だったが、3年間の成果で、県職員でもやればできることが証明できた。
- 大幅な経費削減と利用者の増加とを県職員自らで実際に達成した経営改善の成果や取組姿勢をもっと広く周知すべき。県の他の施設や事務事業における取組の道しるべになる。
- 地元や民間の方も入った利用促進委員会の意見も参考にして、運営を見直してきている。
- 開園当初から、地元やボランティアとよい関係にあるとの印象を持っている。
- 今後もコスト意識を持った歳出管理が必要である。教育施設として県民の理解の得られる入園者1人当たり経費の限度額基準を設定し、存廃を含めて検討する目安とすべき。
- 入園者1人当たり経費は大幅に下がったが、県の税金で負担している割合は依然高い。入園料の値上げや県外者料金の設定(県外小中学生の有料化を含む)の検討も考えられる。
- 昆虫ふれあい温室の加温停止について、停止の影響を検証した結果、元に戻すこととなったときに、枯れてしまった植物の植え替え等、逆に経費がかかることが懸念される。
- 職員の削減によって、学校利用の受入れを制限するようなことになると本末転倒である。
- 学校利用数は増えて来ているが、教育施設として見た場合に、県内小学校の6割、全体の利用者の1/4「しかない」ので、もっと増やしていくべきという見方もできる。
- 子ども達に豊かな自然を体験させるプログラムも多く用意されており、特に都会の子ども達に体験させてほしい。
- 県民に対しての行政サービスということも踏まえた上で、観光部局等をもっと利用してPRすれば、首都圏からさらに人が呼べる余地があるのではないか。
- 99%がマイカー利用である。首都圏からも他に交通手段がないので、東武鉄道の特急と接続するバスがあればよい。
- 公共交通を利用して県内の小中学生が友達同士で来られるのが理想である。入園者も増えているので、事業者に改めて検討してもらってもよいのではないか。
(参考2) 公共施設のあり方検討委員会答申(中間報告書)後のぐんま昆虫の森の取組状況
- 職員体制の見直し
20年度実績 職員数17人、人件費151,817千円→24年度予算 職員数10人、人件費89,307千円(-41%) - 経費削減
20年度実績 268,278千円 → 24年度予算 105,797千円(-61%)
うち昆虫ふれあい温室(旧生態温室)等関連費用 23,917千円 → 8,648千円(-64%) - 学校利用の促進
20年度実績 297校 → 23年度実績 448校 (+51%) - 施設リニューアル、フィールド整備、企画の充実、地元や他団体との連携企画、広報等PR
入園者数 20年度実績 88,212人 → 23年度実績 110,923人 (+26%)
注)21年度には過去最高を記録 117,265人 (+33%)
(参考3) 公共施設のあり方に関する中間報告書における答申内容(平成20年10月20日)
(1) 施設の必要性について
- 提供されているサービスは県として必ずしもなくてはならないものではない。開園4年目の新しい施設であり、直ちに廃止すべきとまでは言えないが、運営内容等の徹底した見直しと利用者増加の積極的な努力が強く求められる。必要性に疑問のある生態温室の存廃、里山(フィールド部分)のあり方、運営経費の見直し、利用者の拡大等について、速やかに具体的な検討を行うべき。
- 生態温室については、亜熱帯の環境やそこに住むチョウ等の展示の必要性は低いと考えられるので、根本的な見直しが必要。
- 里山(フィールド部分)は、昆虫に触れる場だけではなく、里山という自然に触れる場として明確に位置付けて利用を拡大すべきであり、その観点から提供するサービスの内容や施設の名称、入園料のあり方について検討が必要。
(2) 管理運営方法について
- 教育施設ではあるが、観光施設としての利用も視野に、利用者の拡大を図るとともに、施設全体としての経費削減について、具体的な検討が必要。
- 生態温室の新たな活用方法、映像トンネルなどの既存施設・設備や職員体制の見直しなど、管理運営の効率化について抜本的な検討が必要。
- 広く県民を対象とした施設として、できる限り利用の制約をなくすなど、利便性を高める努力を行うとともに、昆虫だけではなく、里山の自然を生かし、野外で楽しめる要素を増やす方向での運営の検討が必要。
- 広く県民に開かれた施設運営を行っていくため、県民の声を広く反映した運営に努めるとともに、今まで以上に地元桐生市との連携・協力やボランティアとの協働を重視した運営となるよう工夫することが必要。
- 県内外へのPRや学校等の団体利用の促進など、新たな利用促進策の検討が必要。
(3) 管理運営主体について
民間の持つノウハウを積極的に活用することで新たな試みも生まれることから、民間事業者の意向を広く聴取するなど、指定管理者制度導入の可能性についても検討が必要。
(4) その他
当面運営を継続するとしても、その管理運営について徹底した点検と見直しを求める。今後行う改善等の取組については、一定の年限を区切って目標を設定して行い、その取組や結果の検証が必要。