本文
碓氷川圏域河川整備計画
本計画は、河川法第16条の2に基づき、碓氷川圏域の一級河川において今後20年間に行う整備の具体的な内容を、学識経験者、地域住民及び関係市長の意見を聞いて定めたものであり、平成29年6月に国の認可を受けたものです。
なお、適宣その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものとします。
碓氷川圏域河川整備計画(平成29年6月2日認可) (PDF:7.13MB)
目次
- 第1節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
- 第2節 河川の利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
- 第3節 河川環境の整備と保全に関する事項
- 第1節 計画対象区間及び計画対象期間
- 第2節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する目標
- 第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標
- 第4節 河川環境の整備と保全に関する目標
- 第5節 河川の維持に関する目標
- 第1節 河川工事の目的及び種類
- 第2節 河川工事の施行場所及び設置される河川管理施設の機能
- 第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
- 第4節 河川環境の整備と保全に関する事項
- 第5節 河川の維持の目的、種類及び施行場所
第5章 河川情報の提供、地域や関係機関との連携等に関する事項
- 第1節 河川情報の提供に関する事項
- 第2節 地域や関係機関との連携等に関する事項
第1章 圏域の概要
(1)河川の概要
碓氷川は、利根川水系烏川の支川で、群馬県安中市と長野県軽井沢町の境界に位置する一ノ字山に源を発し、途中で霧積川、中木川、
九十九川、柳瀬川等を合流しながら安中市を貫流し高崎市高松町付近で烏川に合流する流域面積約291平方キロメートル、本川流路延長約36.8キロメートルの本県西部地域を代表する一級河川である。
碓氷川の支川は39河川あり、流路延長は碓氷川を含めて約212キロメートルである。
なお、碓氷川の下流0.8キロメートルは国管理区間であり、その上流が県管理区間である。
碓氷川には坂本ダム(県管理)、霧積川には霧積ダム(県管理)、中木川には中木ダム(安中市管理)があり、ダム下流域の洪水防御並びに健全な水利用や流水の正常な機能の維持を目的として運用されている。
(2)圏域の地形・地質
圏域の地形は、北西部が山地、中央部から東部にかけて丘陵地や河岸段丘により構成されている。特に河岸段丘は、碓氷川の特筆すべき地形的特徴であり、分布範囲は、碓氷川と中木川の合流点付近から岩井川合流点付近まであり、面積は約46平方キロメートルに及ぶ。
圏域の地質は、山地を中心とした高標高部には火山砕屑岩(凝灰角礫岩、凝灰岩)を主体とする秋間層群が分布し、中下流域の低標高部には陸海成の堆積岩(礫岩、砂岩、泥岩)を主体とする板鼻層群及び富岡層群が分布している。
(3)圏域の気候
圏域の気候は、積雪も少なく比較的温暖でしのぎやすい内陸性の気候である。年平均降水量は約1,600ミリメートルであり、圏域北東部に多雨な榛名山があることから、県中央部と比較してやや多い状況にある。
(4)圏域の歴史
穏やかな気候を有し、河川水にも恵まれている当該圏域は、旧石器・縄文・弥生・古墳時代の遺跡が多く認められ、古代より人々の生活に適した地域であったことが伺える。また、江戸時代の五街道の一つである中山道が圏域東西方向に横断し、関東と中部、関西相互の人と物流の要衝でもあった。
(5)圏域の自然環境
圏域の自然環境は、中下流域で耕作地や市街地等の人為的な利用が進んでいる一方、上流域には上信越高原国立公園及び妙義荒船佐久高原国定公園があり、全体としてみれば豊かな自然環境が残っていると言える。また、少林山、観音山、碓氷湖、小根山及び妙義の5箇所が鳥獣保護区の指定を受けている。
(6)圏域の社会環境
圏域を構成する市は、高崎市及び安中市の2市であり、下流の高崎市は八幡、豊岡、鼻高及び乗附地区が、安中市は全域が碓氷川圏域に含まれている。
流域内の人口は、約95,000人であり、市別の人口構成比率は、高崎市が約22パーセント、安中市が約78パーセントである。近年の人口の推移は、高崎市は横ばい、安中市が減少傾向となっており、圏域全体としては、近年10年で約5パーセント減少している。
圏域の産業は、高崎市及び安中市ともに一次産業の比率が低く、三次産業の比率が高い割合となっており、土地利用及び人口分布からも、下流域ほど都市化が進んでいる状況である。
圏域の交通は、安中市内に新幹線駅1駅、高速道路インターチェンジ2箇所と立地条件に恵まれ、交通・輸送の要衝として栄えており、磯部温泉や旧碓氷峠など恵まれた環境を活かした観光事業の発展や、交通の便を利点とした商・工業の充実などを支えている。
第2章 河川の現況と課題
第1節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
(1)洪水被害の状況
碓氷川の治水事業は、明治43年の水害を契機に復旧事業が始められ、その後、昭和10年の大水害によって、碓氷川、九十九川、秋間川、後閑川等の主要河川の河川改修が国によって行われた模様である。
その後、群馬県で実施してきた治水事業は局部的な改修事業が多い。
一定計画での改修事業としては、碓氷川下流部(昭和53年~昭和54年)、柳瀬川(昭和40年~昭和63年)、天神川(昭和46年~平成6年)、板鼻川(昭和59年~平成13年)、猫沢川(平成9年~平成21年)等が挙げられる。
また、長足川、八咫川、苅根川、日向川、岩井川等でも災害関連事業として改修事業を行っている。
さらに、昭和51年には、群馬県最初のダムとして霧積川及び碓氷川の洪水被害軽減を図ることを目的に霧積ダムを建設した。
これらの治水事業により、近年では主要河川での大きな水害は減少しているものの、主要河川に流入する中小河川からの溢水及び内水による被害は相変わらず発生している状況である。
(2)河川の状況と課題
碓氷川下流部や九十九川では、市街地が広がり資産が集積している地域の一部において、堤防が整備されていない区間や、堤防の高さや断面が不足している区間が見られ、堤防の越水や決壊により甚大な氾濫被害が生じることが懸念される。
また、碓氷川上流部では、砂礫の堆積が少なく、比較的大きな礫の転石や露岩も見られ、洗掘により河床低下も断続的に発生し、護岸等の河川構造物の安全性や取水等の水利用に影響が生じている。
第2節 河川の利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
碓氷川やその支川では、沿川に水田等の農地が広がっており、農業用水を河川から取水している。また、都市用水として、安中市の水道用水や工業用水等に利用されている。
このように、河川水が様々な目的で利用されている碓氷川やその支川では、霧積ダム、坂本ダム及び中木ダムが水源としての役割を果たしている。しかし、昭和53年、昭和62年、平成2年、平成6年、平成8年等の夏期においては水不足が生じている。
農業用水 | 水道用水 | 工業用水 | その他 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
取水量 (立方メートル毎秒) |
12.33立方メートル毎秒 | 0.50立方メートル毎秒 | 0.96立方メートル毎秒 | 0.79立方メートル毎秒 | 14.58立方メートル毎秒 |
割合 (パーセント) |
84.6パーセント | 3.4パーセント | 6.6パーセント | 5.4パーセント | 100.00パーセント |
第3節 河川環境の整備と保全に関する事項
(1)自然環境
碓氷川圏域は、妙義山塊等の山地をはじめ、良好な自然環境を有した地域で、碓氷川及びその支川についても、動植物の生息・生育・繁殖場所として貴重な場となっている。
1)植生
圏域の植生については、海抜450~600メートル付近を境として、下部の常緑広葉樹林帯から上部の夏緑広葉樹林帯に移行する。
常緑広葉樹林帯は、自然植生の大部分が失われ代償植生になっている。平坦地には市街地や耕地が広がり、周辺の丘陵地にはコナラ、クリ、エゴノキ、あるいはアカマツなどの植生するクヌギ-コナラ林やクリ-コナラ林、アカマツ林などの雑木林、スギ・ヒノキ植林、モウソウチク林、マダケ林等の人為植生が見られる。支川流域には谷津田が多く、ため池や雑木林と一体となり、生物多様性の高い里山を形作っている。九十九川左岸の湯沢温泉付近のシラカシ林や桂昌寺のツクバネガシ-シラカシ林は、原植生の名残として県内でも貴重な存在である。
夏緑広葉樹林帯においても、代償植生のミズナラ林やスギ・ヒノキ植林が広い面積を占め、自然植生は急峻で特異な山体をもつ妙義山周辺等に残されているだけである。
妙義山周辺は、夏緑広葉樹林帯下部が中間温帯林となり、モミ、ツガ、イヌブナ、カエデ類が多く、人手の加わることの少ない急傾斜地にアブラツツジ-イヌブナ林、岩稜地や尾根状地にツガ林が見られる。それより上部には、イヌブナ-ブナ林が分布し、山稜上はネズミサシ、アカマツ、ジゾウカンバ、ヒメコマツなどをまじえるミズナラ低木林となっている。なお、表土のほとんど無い岩壁には、まばらな草本群落が見られる。また、沢筋にはオオモミジ-ケヤキ林が分布するほか、一部にシオジ林が見られるなど、変化に富んだ生物多様性の高い地域となっている。
2)魚類
圏域の魚類については、重要種であるカマツカ、シマドジョウ、ギバチ等が確認されており、支川においてはスナヤツメやホトケドジョウも確認されている。
3)鳥類
圏域の鳥類については、中山間部においては留鳥のカイツブリ、ダイサギ、アオサギ、他にもスズメ目、キジ目、ハト目、渡り鳥のガン・カモ類、猛禽類のタカ目等、多くの種が確認されてしている。岩場のある山地には樹林性の留鳥、猛禽類等が確認されている。
4)哺乳類
圏域の哺乳類については、大型哺乳類ではツキノワグマ、ニホンジカ、イノシシ、そして国の天然記念物であるニホンカモシカが山岳地帯に生息しており、中型のホンドタヌキ、キツネ、ニホンザル、小型のノウサギ、ニホンリス、そして重要種であるテンやムササビも確認されている。
(2)水質
圏域の水質については、環境及び利水状況に応じて類型指定し、その類型ごとに環境基準が定められている。碓氷川圏域の河川では、碓氷川上流がA類型(中瀬橋、鉱泉橋地点)、下流がB類型(柵橋、伝新橋、岩井橋、鼻高橋地点)に指定されている。
生物化学的酸素要求量(BOD)(75パーセント水質値)で評価すると、全ての地点で環境基準を満足しており、良好な水質が確保されている。
(3)河川利用
圏域の河川利用については、碓氷川には運動公園や親水空間が多数整備され、堤防は周辺住民の通勤や通学などの生活道路としても利用されるなど、地域との関係は深く、水遊び、魚釣りなど住民に潤いを与える身近な安らぎの場となっている。
なお、碓氷川全区間は、アユ、マス(ヤマメ、イワナを含む)、コイ、フナ、ウグイ、オイカワ、ウナギ、ドジョウ及びワカサギを対象に漁業権が設定されている。
また、碓氷川と烏川の合流点から九十九川と後閑川の合流点付近までの碓氷川及び九十九川の堤防上は、「碓氷川・九十九川サイクリングロード」として整備され、地域の住民に利用されている。
(4)景観
圏域上流には、霧積ダム(霧積湖)、坂本ダム(碓氷湖)及び中木ダム(妙義湖)の3ダム湖があり、地域の住民のみならず観光客等の憩いの場となっている。
特に、坂本ダム付近には「めがね橋」の通称で親しまれている旧信越本線の4連の雄大なアーチ橋があり、橋梁は全てが煉瓦造りで国重要文化財に指定されている。
碓氷川沿川には、江戸と信州、京都を結んだ中山道があり、坂本ダム近傍の「坂本宿」や板鼻川沿川の「板鼻宿」といった宿場があった。板鼻宿には、農業用水路として約400年前に造られた板鼻堰を始めとした全長約15キロメートルの用水路があり、かつての宿場の町並みに溶け込み、建物の影を水面に映しながら流れる風景は、現在でも情緒溢れるものである。
第3章 河川整備計画の目標に関する事項
第1節 計画対象区間及び計画対象期間
計画対象区間は、碓氷川圏域内河川において、県が管理する一級河川全てとする。
計画対象期間は、碓氷川圏域内の一連の河川事業の完成によって効果が期待できる今後おおむね20年間とする。
第2節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する目標
碓氷川圏域の河川においては、沿川の人口、資産の状況、現況の流下能力、河道形態、災害の発生状況等及び下流河川との治水バランスを考慮して、目標とする治水安全度を設定する。
碓氷川上流部や九十九川においては、おおむね10年に1回程度発生すると予想される洪水による氾濫を防止することを目標とし、人口及び資産が集中する高崎市及び安中市の市街地を流下する碓氷川下流部においては、おおむね20年から30年に1回程度発生すると予想される洪水による氾濫を防止することを目標とする。
碓氷川圏域内に発生する内水による家屋の浸水については、関係する市と連携を図って被害の軽減に努める。
これまで整備してきた治水施設の調査及び点検結果に応じて、必要な対策を実施することにより、その機能の向上を目指すとともに、適切な時期に適切な整備を実施することにより、長期にわたり施設の有効活用を図る。
なお、社会状況、災害の発生状況等に応じて、おおむね10年ごとに河川整備計画の見直しを行うこととする。
第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標
碓氷川においては、景観、水質及び動植物の生息・生育・繁殖に配慮した水環境が保全され、かつ、河川水の利用が支障なく行われるために、松井田地点(非かんがい期:約1.2~1.4立方メートル毎秒、かんがい期:約1.4~1.9立方メートル毎秒)及び板鼻地点(非かんがい期:約1.5立方メートル毎秒、かんがい期:約1.5~1.6立方メートル毎秒)において最低限維持する流量を確保するよう努める。
第4節 河川環境の整備と保全に関する目標
治水、利水及び流域の自然環境、社会環境との調和を図りながら、自然環境との保全と河川利用の促進を目指す。
人と河川との豊かなふれあいの確保については、親水性を考慮した緩傾斜護岸等の整備を推進する。
景観については、歴史・文化・人との関わりを踏まえ、沿川と調和した河川景観の保全、形成に努める。
水質については、地域住民や関係機関と連携を図り、その改善を目指す。
第5節 河川の維持に関する目標
堤防、護岸、床止め、堰、樋門等の河川管理施設に関して、定期的に点検、巡視等を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行うなど、洪水時等にその機能が確実に発揮されるよう、適切に維持管理を実施する。
第4章 河川整備の実施に関する事項
第1節 河川工事の目的及び種類
本整備計画の目標は、洪水による災害の発生の防止又は軽減、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持並びに河川環境の整備及び保全としている。
河川整備計画の目標を達成するための方策として、氾濫域の資産の集積状況、土地利用の状況等を総合的に勘案し、流量配分図に示す目標流量に対して、堤防の整備等により、洪水を安全に流下させるための対策を実施する。
また、護岸や橋梁に影響を与えるような河床低下が進行している区間に対しては、河床低下を防ぐ対策を講ずる。
その際、水質の保全及び動植物の生息・生育・繁殖等に適した環境の保全に配慮するとともに、河川の水利用の現状を調査し、支障なく適正な水利用が行えるよう、また、水辺の環境に配慮し、人々が川に親しむことができるよう考慮する。
また、工事期間中、長期にわたる濁水の流出により、魚類等に影響を与えることが懸念される場合には、関係機関と連携し、必要な措置を講ずることに努める。
第2節 河川工事の施行場所及び設置される河川管理施設の機能
河川工事の施行場所及び設置される管理施設の機能の概要は以下のとおり。
(1)洪水を安全に流下させるための対策
堤防が整備されていない区間や堤防の高さが不足している以下の区間において、堤防の整備等を実施し、流下能力の向上を図る。
河川名 | 番号 | 整備対象区間 | 延長 | ||
---|---|---|---|---|---|
碓氷川 | 下流 | 1 | 乗附地区 | 八千代橋上流約2,000メートルから同橋上流約2,300メートルまで(右岸) | 約300メートル |
2 | 鼻高地区 | 鼻高橋から石井橋まで | 約2,200メートル | ||
3 | 中宿地区 | 鷹之巣橋から扇城橋下流付近まで | 約1,650メートル | ||
下流 | |||||
上流 | |||||
九十九川 | 4 | 碓氷川合流部付近から湯沢橋まで(左岸) | 約1,000メートル |
碓氷川
堤防が整備されていない区間や堤防の高さが不足している以下の区間において、築堤工、護岸工及び橋梁架替を実施する。
1)乗附地区
施行区間:八千代橋上流約2,000メートルから同橋上流約2,300メートルまで(右岸)
延長:約300メートル
整備内容:築堤工、護岸工
2)鼻高地区
施行区間:鼻高橋から石井橋まで
延長:約2,200メートル
整備内容:築堤工、護岸工、橋梁架替
3)中宿地区
施行区間:鷹之巣橋から扇城橋下流付近まで
延長:約1,650メートル
整備内容:築堤工、護岸工、橋梁架替
九十九川
堤防が整備されていない区間や堤防の高さが不足している以下の区間において、築堤工及び護岸工を実施する。
4)九十九川地区
施行区間:九十九川下流端から湯沢橋まで
延長:約1,000メートル
整備内容:築堤工、護岸工
(2)堤防強化対策
これまで実施してきた堤防点検結果で、堤防強化の必要性が確認された箇所において、背後地の資産状況等を勘案し、堤防の浸透破壊や法面滑り破壊への対策工事を実施する。
また、今後の堤防耐震点検結果を踏まえ、必要に応じて耐震対策を実施する。
河川名 | 番号 | 施行の場所 | 延長 |
---|---|---|---|
碓氷川 | 1 | 八千代橋上流約650メートルから同橋上流約2,400メートルまで(左岸) | 約1,750メートル |
2 | 八千代橋上流約650メートルから同橋上流約1,200メートルまで(右岸) | 約550メートル | |
3 | 石井橋付近から鷹之巣橋付近まで(左岸) | 約650メートル | |
九十九川 | 4 | 碓氷川合流部付近から湯沢橋下流付近まで(右岸) | 約500メートル |
(3)河床低下・洗掘対策
碓氷川上流部は河床低下・洗掘が断続的に発生しているため、洗掘により河川構造物が破損するおそれがある箇所、背後地が住宅である箇所、流速が早い箇所、河川の湾曲している箇所等に注目して計画的にモニタリングを行う。
河床低下・洗掘が顕在化しつつある箇所に対しては、魚類の生息・生育・繁殖等の環境を考慮して河床低下・洗掘対策を実施する。
(4)長寿命化対策
霧積ダム、坂本ダム、板鼻樋門等の河川管理施設の機能を適切に維持していくために、点検、巡視等を行い、施設の状態把握に努め、必要に応じて補修や更新を行い、長寿命化を図る。
第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持を図るため、松井田地点及び板鼻地点における水位観測並びに流量観測を実施し、河川流況の監視を行う。また、圏域上流にある霧積ダム、坂本ダム及び中木ダムを連携して運用するなど、水利用の効率化を図るよう関係機関と協力して、目標とする流量の確保に努める。
第4節 河川環境の整備と保全に関する事項
河川環境の整備と保全を図るため、動植物の生息・生育・繁殖環境、景観、河川利用等について配慮し、自然と調和を図った整備と保全を行う。
- 動植物の生息・生育・繁殖場所については、設計段階や工事着手前など段階ごとに専門家の意見を聴くなどして保全に努める。
- 自然豊かな河川を有する圏域上流の河川においては、現在の河川環境をできる限り保全する。また、河床低下・洗掘が顕著で対策が必要な箇所については、魚類等の生息・生育・繁殖に適した環境及び周囲の景観の保全に努め、環境負荷が小さい工法を採用する。
- 河岸保全のためコンクリートによる護岸整備を行う場合でも、瀬や淵の保全や川の流れを固定化しないようにするなど、河川の自然の営みを活かした川づくりにより、地域の河川景観を活かし、動植物の生息・生育・繁殖に適した水辺環境の創出に努める。併せて、地域の暮らし、歴史及び文化との調和並びに多様な河川風景に配慮し、沿川と調和した河川景観の保全及び形成に努める。
- 河川に触れたい人が水辺に近づけるよう、緩傾斜護岸、斜路、階段など河床に降りられる施設を整備する。特に、市街地を流れる河川や公園など人々が集まる施設がある河川では、地域の住民の意見を聴きながら、人と河川とのふれあいの場となるよう整備する。
- 水辺景観の保全及び河川利用推進の観点から、河川の豊かな水量を保持するため、農業用水、工業用水等の利水者と調整を図るとともに、関係機関の環境部局及び地域の住民と連携して河川の水質の改善に取り組む。
第5節 河川の維持の目的、種類及び施行の場所
河道に堆積した土砂や繁茂した草木等が河川管理上支障となる場合は、河川環境に配慮しつつ、堆積土の除去、立木の伐採、草刈り等の必要な対策を行う。
堤防の変状、異常、損傷等を早期に発見することを目的として、適切に堤防点検、巡視等を実施する。堤防が不等沈下、法崩れ、ひび割れ等により弱体化した場合は、堤防の嵩上げや腹付け等の必要な対策を実施し、堤防の機能が維持されるよう努める。
護岸の亀裂等、河川管理施設の異常を早期に発見するため、定期的な河川の巡視を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行う。なお、修繕、改築等を行う場合にも、河川環境の回復及び保全に努める。
取水堰や橋梁などの占用施設で、河床及び河岸の洗掘や流下断面の阻害など河川管理上支障となるものについては、施設管理者と調整し、適切な処置に努める。また、施設の新築や改築に当たっては、施設管理者に対して、治水上の影響及び河川環境の保全について指導する。
霧積ダム、坂本ダムについては、ダム本体、貯水池及びダムに係わる施設等を常に良好に保つために必要な計測及び点検を行い、その機能の維持に努める。また、中木ダムその他河川占用施設については、施設管理者に対して施設の機能が常に良好に保たれるよう指導する。
地域の住民と協力して良好な河川環境を維持するため、草刈り、河川清掃等の河川愛護活動を積極的に支援する。また、環境調査や保全活動の情報を共有するなどして、地域との協働による環境保全に努める。
第5章 河川情報の提供、地域や関係機関との連携等に関する事項
第1節 河川情報の提供に関する事項
河川整備目標の実現までには長期間を要すること、また、計画を上回る規模の降雨が発生する可能性もあることから、河川整備によるハード対策と併せ、情報提供等のソフト対策を実施する。降雨の状況や河川水位の情報をリアルタイムで収集し、関係機関や地域の住民に提供することにより、水防活動等の対策の支援を迅速に行い、洪水被害の軽減を図る。
ホームページへの掲載、パンフレットの配布、イベントの開催等により、河川に関する様々な情報の提供を行い、河川整備に関し広く理解を得られるように努める。
洪水時の住民の的確な避難行動につながるよう、市による洪水ハザードマップ作成支援のため、洪水浸水想定区域図の作成及び更新を行う。
住民の防災意識の向上を図るため、洪水や被害の記録を残し、これを周知するとともに、地域に伝わる歴史的な治水の技術や水防の知恵が継承されるように努める。
第2節 地域や関係機関との連携等に関する事項
(1)常時の連携
河川整備の実施に当たっては、河川事業、排水事業等の関連事業を実施する国や関係市と連携を図る。
洪水時の連携強化のために、防災情報伝達演習や重要水防箇所の点検などを関係機関と実施する。
圏域全体を視野に入れて適正な河川管理を行うために、開発行為や土地利用について関係市や関係機関と連携を図る。
良好な河川環境の保全を継続するために、地域の住民の理解を求めるとともに、地域の住民との連携及び協力体制の確立に努める。
水質事故による油等の流出が発生した場合は、事故状況の把握、関係機関への連絡、被害の拡大防止措置、河川や水質の監視、事故処理等を原因者や関係機関と協力して迅速に行う。
(2)洪水時の連携
流域住民の避難判断が速やかに行われるよう、国、市、報道機関、消防、警察等の防災関係機関との連携を強化し、防災情報の共有や情報伝達体制の充実に努める。
(3)渇水時の連携
渇水対策が必要となる場合は、関係利水者等で構成する烏・神流・利根川筋利水者懇談会等を通じ、関係利水者による円滑な協議が行われるよう、情報提供に努めるなど、関係機関と連携して被害の軽減に努める。