本文
四万川ダムと奥四万湖(一級河川四万川 中之条町)
本計画は、河川法第16条の2に基づき、吾妻川圏域の一級河川において今後20年間に行う整備の具体的な内容を、学識経験者、地域住民及び関係市町村長の意見を聞いた上で定めたものであり、令和3年10月に国の認可を受けた計画を掲載するものです。なお、適宜その内容ついて点検を行い、必要に応じて変更するものとします。
吾妻川圏域河川整備計画(令和3年10月14日認可)(PDFファイル:2.77MB)
吾妻川圏域河川整備計画の概要(PDFファイル:598KB)
第1節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
第2節 河川の利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
第3節 河川環境の整備と保全に関する事項
第1節 計画対象区間及び計画対象期間
第2節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
第4節 河川環境の整備と保全に関する事項
第5節 河川の維持に関する事項
第1節 河川工事の目的、種類及び施行場所並びに設置される河川管理施設の機能
第2節 河川の維持の目的、種類及び施行の場所
第5章 河川情報の提供、地域や関係機関との連携等に関する事項
第1節 河川情報の提供に関する事項
第2節 地域や関係機関との連携に関する事項
吾妻川は、群馬県・長野県境の群馬県吾妻郡嬬恋村の鳥居峠付近に源を発し、途中で万座川、白砂川、四万川等と合流しながら、嬬恋村、長野原町、東吾妻町、中之条町を流下し、渋川市の大正橋上流で利根川に合流する本川流路延長約76.2キロメートル、流域面積約1,352平方キロメートルの本県北西部地域を代表する一級河川である。吾妻川圏域に関連する市町村は、前述の市町村に草津町、高山村を加えた1市4町2村で構成されている。
本圏域を流れる河川は、吾妻川本川及び支川の名久田川、四万川、白砂川、万座川等の計77河川と榛名湖の1湖沼であり、合計流路延長は約469.3キロメートルである。
なお、吾妻川(34.6キロメートル~46.3キロメートル)及び当該区間に流入する久森沢川の下流約1.5キロメートル、白砂川の下流約1.5キロメートルの区間、また、湯川(1.8キロメートル~5.9キロメートル)及び当該区間に流入する大沢川の下流5.9キロメートル、谷沢川の下流6.4キロメートルの区間は国直轄区間であり、それぞれの区間には八ッ場ダム(吾妻川)、品木ダム(湯川)が整備・運用されている。
本圏域を地形的特徴から吾妻川の上流域・中流域・下流域に大別し、各区間に流入する主な支川とあわせて流域の特徴を以下に示す。
本圏域の上流域(源流域~白砂川合流点付近)は、山間地域及び草津白根山や浅間山の山麓に広がる高原地帯であり、キャベツをはじめ全国有数の高冷地野菜の産地である。さらに、標高差が大きいことから、吾妻川に位置する大津ダムをはじめとして民間企業が管理する複数の発電用ダム・堰堤が運用されており、首都圏の電力需要を支えている。
万座川は、嬬恋村大字干俣の万座山付近を源流として西南方向に流下し、途中、東南方向へ方向を変え、西窪地区において吾妻川と合流する流路延長約14.5キロメートルの一級河川である。源流域には渓流に沿って万座温泉郷が位置し、周囲の渓谷とあわせて観光資源として活用されている。
白砂川は、中之条町大字入山付近の山中を源とし、国道405号及び292号に沿って西南方向に流下して長野原町長野原地区において吾妻川と合流する流路延長約21.0キロメートルの一級河川である。流域には白砂ダムをはじめとして民間企業が管理する複数の発電用ダム・堰堤が運用されており、地域の産業に寄与している。また、渓流に沿って草津温泉郷など複数の温泉が湧出しており、我が国を代表する観光地となっている。これらの温泉水はpH2.0程度の強い酸性水であり、かつては河川に直接流入していたため利水に支障をきたしていたが、中和事業により、草津中和工場(湯川)及び香草中和工場(谷沢川)や中和生成物を貯留するための品木ダム(湯川)が整備され、現在、管理は県から国に移管され運用されている。
本圏域の中流域(白砂川合流後~名久田川合流点付近)では、吾妻川に国土交通省管理の八ッ場ダムが整備・運用されており、首都圏の治水・利水を支えている。また、四万川及び名久田川の合流付近には中之条盆地が形成されており、他の区間と比較して緩やかな流れとなっている。さらに、吾妻川本川及び名久田川、四万川の侵食により多段の発達した河岸段丘を形成しており、このような平坦地に東吾妻町及び中之条町の中心市街が形成されている。
四万川は、群馬県・新潟県境の稲包山を源流とし、国道353号に沿って東南方向に流下して中之条町山田地区において吾妻川と合流する延長19.8キロメートルの一級河川である。流域には群馬県(県土整備部)管理の四万川ダム、群馬県(企業局)管理の四万取水ダム、中之条ダム、民間企業管理の山田川ダムが運用されており、下流の洪水被害軽減に貢献するとともに、発電、農業利水及び水道用水等に広く利用されている。ダム湖である奥四万湖(四万川ダム)及び四万湖(中之条ダム)では、湖水がコバルトブルーに見えるなど良好な景観を形成し、近接する四万温泉郷等とあわせて貴重な観光資源となっている。
名久田川は、高山村大字中山の権現峠付近を源とし、国道145号に沿って西南方向に流下し、中之条町大字青山付近で吾妻川と合流する延長約15.2キロメートルの一級河川である。上~中流の盆地状の平坦地に高山村の市街地が形成されている。下流側は中之条盆地を流下しており、田畑及び住居地が広がっている。
本圏域の下流域(名久田川合流後~利根川合流点)は、中之条盆地を過ぎて再び急勾配で流下した後、榛名山等から広がる傾斜地及び吾妻川沿川から利根川に至る平坦地域から構成され、渋川市の大正橋上流で利根川と合流する。平坦部には渋川市の市街地が形成されている。
流域の西南~北部にかけて、浅間・烏帽子火山群、四阿山、御飯岳、草津白根山、鉢山、三国山地等の標高2,000メートル級の山地に囲まれた吾妻川流域では、急峻な山地がほとんどを占めており、吾妻川本川・支川ともに、吾妻峡、白砂渓谷に代表される巨石や滝の点在する渓谷が連続する。浅間山、草津白根山、子持山及び榛名山等の山麓部では、これらの火山からの噴出物でできた洪積層による緩い台地・平坦地が存在し、田畑や居住域として利用されている。十二ヶ岳、赤沢山、薬師岳等の第三紀火山岩類の山地に囲まれた吾妻川沿川には中之条盆地が形成され、約50万年前の榛名火山等の火山活動によってできた古中之条湖の湖成層が作った平坦面が広がる。
流域の地質は、上流部の嬬恋村付近に浅間山・烏帽子山火山群及び草津白根山に代表される火山からの火山噴出物及び火砕流堆積物である両輝安山岩、溶結凝灰岩等が多く、中流部の長野原町付近では普通輝石・しそ輝石安山岩等から成る。中之条盆地では、古中之条湖に堆積した土礫、砂、関東ローム層などで構成される。下流部については、基盤がグリーンタフ(緑色凝灰岩類)、上層には渋川泥流堆積物(凝灰角礫岩)から成る。
東日本火山帯の火山フロントの屈折部に位置し、現在も活動中の浅間山の火山活動により形成された地形、その地に生息・生育する動植物や共生する人々の歴史・文化を有する群馬県嬬恋村吾妻川流域以南と群馬県長野原町の全域を含む面積約280平方キロメートルの範囲は、平成28年9月に「浅間山北麓ジオパーク」に認定されている。
吾妻川圏域の気候は、基本的に太平洋側気候となっている。しかし、山地と平野部が混在することから、標高の高い上・中流域では寒冷・寡雪な中央高地型気候、県境に近い北部山地では多雪な日本海側気候が見られるなど多様である。このため、標高の高い上・中流域と下流域(渋川市街外縁部)では気候特性に差が見られる。年間平均降水量は上流域の田代で1,523.7ミリメートル、中流域の中之条で1,307.9ミリメートル、下流域の渋川で987.2ミリメートルである。また、冬季積雪量の多い北部山岳地帯の草津で1,843.1ミリメートル、南海上からの暖湿流の影響をうける榛名山で2,180.9ミリメートルなど、全国平均の約1,600ミリメートルと比較して降水量が少ない地域と多い地域を併せ持っている。月ごとの降水量は、基本的には梅雨時期と台風通過時期である6月~9月に多く、冬季の降水量は少ないものの、上流域の田代や草津では同様に6月~9月に多く、更に12月~3月に降水量(降雪量)のピークを記録する。
本圏域の年間平均気温は上流域の田代で7.7度前後、下流の渋川で14.1度前後と7度程度の差がある。また、夏季と冬季の気温差が大きい。
吾妻川圏域は、縄文時代の遺跡が多く発見されている。石組み炉を有する中山敷石住居跡(高山村)、勘場木石器時代住居跡(長野原町)は県指定史跡になっている。他にハート形土偶が出土した郷原遺跡(東吾妻町)、上沢渡遺跡群の久森環状列石遺跡(中之条町)などが存在する。弥生時代の岩陰遺跡として岩櫃山鷹の巣岩陰遺跡(東吾妻町)、古墳時代には、三島四戸地区の四戸の古墳群(東吾妻町)をはじめ、多くの古墳が築かれた。また、榛名山の噴火で埋没した金井東裏遺跡や黒井峯遺跡(ともに渋川市)が存在する。古代には、律令制度のもと吾妻郡が建置され、中之条盆地に所在したと考えられている郡衙を中心に伊参・太田・長田の三郷(中之条町等)など開発が促進された。この時代の遺物としては、天神遺跡(中之条町)で出土した銅印や四戸遺跡(東吾妻町)から出土した奈良三彩短頸壺などがある。その後、平安時代の天仁元年(1108)の浅間山の噴火による被害もあったが、中世には鎌倉幕府御家人であった吾妻氏、海野氏などの支配地として開発が活発になった。宝塔(外輪原、長野原町)、稲裏神社の懸仏(中之条町)など、町指定重要文化財の遺物も多数残されている。さらに、室町時代末期の唐草建築で国指定重要文化財の日向見薬師堂(中之条町)が現存する。
戦国時代になると、越後や信濃にとっての関東の玄関口として交通の要衝であったことから、国指定史跡である岩櫃城をはじめ、羽根尾城など多数の城が築かれ、齋藤氏(吾妻氏)、海野氏、羽根尾氏、武田氏などの諸氏が支配を争ったが、天正8年(1580)には武田氏の支配地となった。武田領を引き継いだ真田氏の支配は元和元年(1681)の真田氏改易まで続き、その後は江戸幕府直轄地として代官所の支配下に入った。江戸時代には中山道、三国街道など上州・信州を結ぶ街道が整備され、沿道に大戸関所(東吾妻町)・狩宿関所(長野原町)などの関所や宿場が設置された。以降流域は、中之条・原町・伊勢町などの市場町、中山宿(高山村)・狩宿宿(長野原町)などの宿場町が発展し、化政期以降は、草津・川原湯などの温泉地が大いに賑わうなど発展したが、天明3年(1783)の浅間山噴火では鎌原村(現・嬬恋村内)で多くの犠牲者を出すなど、浅間山の噴火による深刻な被害も受けている。浅間山噴火で発生した泥流は吾妻川・利根川を流下し、最終的には銚子や江戸に達した。鎌原村の被災地については、天明三年浅間やけ遺跡として県指定史跡に指定されており、「日本のポンペイ」として知られている。
明治11年(1885)には中之条に郡役所や諸官庁が設立され、各種学校の創設、明治42年(1909)の草津軽便鉄道の営業開始など「文明開化」が進められ発展した。旧草軽電鉄北軽井沢駅駅舎(長野原町)は国登録有形文化財になっている。昭和20年(1945)には国鉄長野原線(現・JR吾妻線)が開通し中之条町など流域市町村の発展が促進された。
戦後、昭和22年(1947)のカスリーン台風により利根川流域は大洪水に見舞われ、利根川治水計画の見直しが始まり、昭和24年(1949)に利根川改修改訂計画が策定され、洪水調節目的をもつ上流ダム群の建設が計画された。その後も、昭和34年(1959)伊勢湾台風、昭和56年(1981)台風第15号など、吾妻川流域に大きな被害を及ぼしたことを受け、本圏域内には、国による八ッ場ダム建設計画をはじめとして、複数の多目的ダムが計画・竣工された。これらのダム群は、洪水調節だけでなく、吾妻川流域の流水の正常な機能の維持、農業用水、上水道水、電源開発等に大きく寄与している。
八ッ場ダム建設に伴う川原湯温泉街をはじめとした水没地区の代替地移転にあたっては、既存の地域コミュニティを保持するため、地区ごとに水没地区の山側に造成した代替地に移転する「現地再建方式(ずり上がり方式)」が採られた。
また、ダム建設工事に伴い実施した埋蔵文化財調査では、川原湯地区上湯原で、前述の浅間山噴火後に発生した泥流で覆われた縄文時代・古代・近世に帰属する石川原遺跡が発掘されている。
吾妻川圏域は、浅間・烏帽子火山群、草津白根山、三国山地等の標高2,000メートル級の山地に囲まれている。これら浅間・烏帽子火山群~三国山地にかけての一帯は上信越高原国立公園の一部として指定されており、また、ラムサール条約湿地に登録されている芳ヶ平湿地群(上信越高原国立公園の一部)のほか、国指定名勝に指定されている吾妻峡、県立榛名公園(榛名山・榛名湖)等、県内でも特に多くの動植物が生息・生育する貴重な自然環境を有する地域を含んでいる。本圏域内では、国の特別天然記念物に指定されているニホンカモシカ、天然記念物に指定されているイヌワシ、県の天然記念物に指定されているミヤマモンキチョウ等の重要種が確認されているほか、「六合チャツボミゴケ生物群集の鉄鉱生成地」、「湯ノ丸レンゲツツジ群落」、「草津白根のアズマシャクナゲおよびハクサンシャクナゲ群落」等の国指定の天然記念物や、「親都神社の大ケヤキ」、「唐堀のモクゲンジ」、「四万の甌穴群」などの県指定の天然記念物が数多く存在している。
こうした良好な自然環境を有する本圏域では、県により「王領地の森」が自然環境保全地域に指定されている。
また、野生鳥獣の保護を図るため、浅間鳥獣保護区が国により、榛名山鳥獣保護区、草津鳥獣保護区が県により鳥獣保護区として指定されている。
吾妻川圏域の関連市町村(渋川市は小野上地区のみ)の人口は約5.4万人で、県全体の約2.8%を占めている。中之条町の人口が最も多く、次いで東吾妻町、嬬恋村、草津町、長野原町、高山村、渋川市(小野上地区)と続いており、全域の人口は平成10年頃から減少傾向である。
本圏域の産業構成としては、昭和30~40年代までは林業を中心とした第一次産業が発達していたが、現在では、全域で第三次産業の比率が高くなっており、渋川市、中之条町、東吾妻町では卸売業・小売業の比率が高い。一方、長野原町及び高山村では建設業、嬬恋村及び草津町では宿泊業・飲食サービス業の比率が高い。また、嬬恋村では第一次産業の比率が第三次産業に次いで高くなっている。
土地利用状況は、山地が全体の約80%と大部分を占めており、宅地が約3%、農地が約9%となっている。
本圏域には、JR吾妻線、国道353号、国道145号、国道406号、国道292号等の都市基盤が整備されているほか、地域高規格道路として上信自動車道を整備中である。
吾妻川圏域における過去の主な水害は、昭和22年、34年、56年、62年、平成11年、令和元年に発生している。その中でも昭和22年のカスリーン台風及び昭和34年の伊勢湾台風では本圏域だけでなく、群馬県全域で大洪水や河川の氾濫、堤防・道路・橋梁の流失や決壊が発生、また山間部や丘陵地帯では、山津波(土石流)が発生した。
近年では、平成9年の豪雨、平成11年の熱帯低気圧豪雨、令和元年東日本台風等において住宅の全・半壊及び農地・宅地浸水被害が発生し、中でも令和元年東日本台風(台風第19号)においては、県内で初めて大雨特別警報が発令され、本圏域では吾妻川において国道144号の鳴岩橋が流出するなどの甚大な被害を受けた。
吾妻川圏域における治水事業として、吾妻川、名久田川、桃瀬川等では、昭和42年~平成11年にかけて、局部改修事業として部分的な改修が順次実施されているほか、逆川では、昭和48年に小規模河川改修事業として改修に着手し、平成16年に完了した。四万川では、四万川沿川の洪水被害の軽減、中之条町、太田市など東毛地域の水道用水の確保、発電を目的として、昭和55年に四万川ダム建設に着工し、平成11年に竣工した。また、吾妻川において、国による利根川改修改訂計画の一環として、昭和27年より調査が開始された八ッ場ダムは、その後、洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道及び工業用水の新たな確保並びに発電を目的とする多目的ダムとして事業が進められ、令和2年に竣工、運用を開始した。
令和元年東日本台風の際には、試験湛水中の八ッ場ダムで約7,500万立法メートル、利根川上流ダム群全体で約1億4,500立方メートルを貯留し、利根川八斗島地点のピーク水位を約1メートル(速報値)低下させたと推定されるなど、圏域の治水安全度は着実に向上してきているが、その一方で、未改修の区間等においては氾濫による浸水被害が発生している。
さらに、気象庁の観測では、降水量は約30年前と比較して1時間降水量50ミリメートル以上の短時間降雨の発生回数が約1.4倍に、1時間降水量80ミリメートル以上の短時間強雨の発生回数が約1.7倍に増加し、今後20~30年は豪雨の更なる増加傾向は続くと見込まれていることから、気候変動の影響により、今後豪雨災害が激甚化、頻発化するおそれがある。
吾妻川圏域における河川の水利用は主に発電用水と農業用水である。発電用水は、吾妻川上流ダム群や本川・支川の堰より取水されている。農業用水は、約200箇所で取水され、かんがいに利用されている。水道用水は、四万川ダム及び美野原用水により中之条町に供給するため、最大0.035立方メートル毎秒を取水しているほか、東吾妻町、高崎市(旧榛名町)による小規模な取水が行われている。
八ッ場ダムからは、流水の正常な機能の維持のため、ダム直下流において2.4立方メートル毎秒の流量を確保するための放流が行われている。
近年の渇水の状況として、利根川全体では昭和47年から令和元年の48年間に16回の渇水が発生している。渇水時の取水制限は2か月以上(一時緩和期間を含む)の長期にわたることもあり、社会生活、経済活動等に大きな影響を与えた。このうち昭和62年、平成6年及び平成8年の渇水では、取水制限が最大30%に至っている。平成8年渇水では、少雨の影響により、利根川では冬期、夏期の2度の渇水に見舞われ、冬期では最大10%の取水制限が76日間(一時緩和期間を含む)、夏期では最大30%の取水制限(30%の取水制限期間は6日間)となり、県内でも群馬用水が取水制限を受けるなど、1都5県で一時断水や受水企業の操業時間の短縮等の影響が生じた。
また、農業用水は番水等水管理に要する労力、費用の増加や作物の植え付けが出来ない等の事態が生じた。近年では、平成28年には、記録的な少雪や5月以降の少雨等の影響により、取水制限は79日間(取水制限は10%、一時緩和期間を含む)と最長の期間となった。
なお、水利用にかかる堰等の施設が多数あることから、その機能を適切に維持していくことも重要な課題となっている。
吾妻川圏域は、群馬県の中でも自然が豊かで、標高差が大きいという特徴がある。良好な自然環境を有した本圏域では、河川についても、国・県に指定された絶滅危惧種が見られるなど、動植物の生息・生育・繁殖場所として貴重な場となっていることから、これらに配慮した河川環境の整備と保全が必要である。
本圏域は、標高によって4つの植生帯に区分される。標高500~600メートル付近を境として常緑広葉樹林域から落葉広葉樹林域に移行し、標高1,600~1,700メートル以上で亜高山針葉樹林域となる。また、浅間山、草津白根山の山頂及び稜線では高山帯に該当する植生が分布する。
高山帯では、矮生低木群落のコメバツガザクラ-ミネズオウ群落などが風衝地に分布する。
亜高山針葉樹林域には自然植生が広く残されている。草津白根山では、海抜1,500メートル付近から亜高山性の植物種が混生したコメツガ林、海抜約1,600メートル以上の寡雪地にシラビソ-オオシラビソ群落、多雪地にオオシラビソ群落、海抜1,800メートルより上部の風衝地などにハイマツ林が分布する。また、浅間山~草津白根山の火山噴出物上にはカラマツ林、白砂山付近ではハッコウダゴヨウなどの低木林やチシマザサ群落が見られる。
落葉広葉樹林域には、ミズナラ林が広く分布する。ミズナラ林の多くは二次林であるが、火山地帯である榛名山~浅間山麓~草津白根山麓では、自然林としてミヤコザサ-ミズナラ群落が分布している。ブナ林は少なく、榛名山等の県央山地周辺にスズタケ-ブナ林が、北部の多雪山地にチシマザサ-ブナ林が分布する。また、吾妻渓谷、四万温泉付近の北部山地下部を中心とした河畔急斜面地や尾根などでは、中間温帯林などと呼ばれるイヌブナ林、コナラ林、アカシデ林及びモミ林などが、浅間山麓の湿性地ではオニヒョウタンボク-ハルニレ群落やハンノキ群落が見られる。
常緑広葉樹林域となる中之条盆地より低標高地では、クリ-コナラ林やクヌギ-コナラ林等の二次林、スギ等の植林地、耕作地となっており、表層土の薄い急崖地斜面を中心にシラカシ林も分布する。中之条町周辺の市城山及び吾妻川河畔ではアカマツ林がみられる。
本圏域では、これまでにイワナ、ヤマメ等の河川上・中流域に生息する遊泳魚を中心に21種の魚類が確認されている。希少種としては、絶滅危惧1(※注)B類(国)に指定されるウナギ、絶滅危惧2(※注)類(国・県)に指定されるギバチ、絶滅危惧2(※注)類(国)に指定されるアカザ、準絶滅危惧(国・県)に指定されるヤマメ及びカジカ、準絶滅危惧(国又は県)に指定されるイワナ等の4種がそれぞれ確認されている。
また、魚類以外では、マルタニシ、テナガエビ、サワガニ等が本圏域で確認されており、希少種としては、絶滅危惧2(※注)類(国又は県)に指定されるマルタニシ、モノアラガイ等の4種、準絶滅危惧(国又は県)に指定されるタテヒダカワニナ、スジエビ等の6種が確認されている。
また、外来種としては、本圏域にもアメリカザリガニが確認されている。
(※注)本文ではローマ数字
本圏域では、15目40科116種の鳥類が確認されている。特徴として、オオルリ、アカゲラ等の森林性の種、コサギ、カワセミ等の水辺に生息する種、そして猛禽類が多く見られる。希少種としては、絶滅危惧1(※注)A類(県)に指定されるイヌワシ、絶滅危惧1(※注)B類(国又は県)に指定されるクマタカ、サシバ等の5種、絶滅危惧2(※注)類(国又は県)に指定されるサンショウクイ、ヨタカ等の5種、準絶滅危惧(国又は県)に指定されるハチクマ、オオタカ等の12種がそれぞれ確認されている。このうち、イヌワシは国の天然記念物に指定されている。
また、外来種としては、ガビチョウが確認されている。
さらに、魚食性のカワウが平成以降確認され、魚類等の生息領域を脅かしている。
(※注)本文ではローマ数字
本圏域では、カジカガエル、シュレーゲルアオガエル等の13種の両生類が確認されている。希少種としては、絶滅危惧2(※注)類(県)に指定されるニホンアカガエル、トウキョウダルマガエル等の4種、準絶滅危惧(国又は県)に指定されるクロサンショウウオ、モリアオガエル等の4種がそれぞれ確認されている。
爬虫類は、カナヘビ、アオダイショウ、ジムグリ等の6種が確認されている。
哺乳類は、モグラ、ニホンジカ、キクガシラコウモリ等の35種が確認されている。希少種としては、絶滅危惧2(※注)類(県)に指定されるカヤネズミ、準絶滅危惧(国又は県)に指定されるムササビ、テン等の5種が確認されている。また、本圏域では国の特別天然記念物に指定されているニホンカモシカが確認されている。
また、外来種としてはハクビシンが確認されている。
(※注)本文ではローマ数字
本圏域では、14目139科1308種の陸生昆虫、10目72科248種の水生昆虫が確認されており、キリギリス、オンブバッタ等の草原性の種、アオオサムシ、ニワハンミョウ等の地上性の種、カブトムシ、ジャノメチョウ等の森林性の種など、多様な環境に生息する昆虫類が生息している。このほか、ニホンヒメフナムシ、ブイリワラジムシの陸生甲殻類、ウズグモ、ヤマヤチグモ等の19科76種以上のクモ類が生息している。
希少種としては、絶滅危惧1(※注)B類(国)に指定されるアサマシジミ(本州亜種)等の7種、絶滅危惧1(※注)類(県)に指定されるクロゲンゴロウ、絶滅危惧2(※注)類(国)に指定されるウラギンスジヒョウモン、ヒョウモンチョウ(本州中部亜種)等の5種、絶滅危惧2(※注)類(県)に指定されるムカシヤンマ、キトンボ、モイワサナエ等の13種、準絶滅危惧(国)に指定されるモートンイトトンボ、クロツバメシジミ(東日本亜種)、オオムラサキ等の10種、準絶滅危惧(県)に指定されるキベリマメゲンゴロウ、ヤマトヒロバネアミメカワゲラ等の24種がそれぞれ確認されている。この他、止水域では情報不足(県)のコオイムシが生息するなど、本圏域の河川及びその周辺は、希少な昆虫類が多く生息する環境を有している。
(※注)本文ではローマ数字
以上のように、本圏域の河川や湖沼の周辺では、多様な動植物の生息・生育が確認され、希少種も多く確認されている。また、水辺には水辺特有の植物が生育し、これら水際植生は、動物が生息するだけでなく繁殖地でもあり、さらに水中と陸地といった異なる環境をゆるやかに繋ぐエコトーン(移行帯)としての役割を有している。以上より本圏域の河川や湖沼における動植物の生息・生育・繁殖場所を適切に保全していくため、水際植生から背後の陸地帯へと連続した植生帯の保全が重要となっている。
また、河川を遡上・降下する種も確認されていることから、河川の縦断方向の移動の障害となる堰等の改善が課題となっている。
さらに、外来種も確認されていることから、在来種への影響を注視していく必要がある。
河川の水
計画対象区間は、吾妻川圏域において、県が管理する一級河川全てとし、計画対象期間は今後概ね20年間とする。
吾妻川圏域の河川においては、沿川の人口・資産の状況、現況の流下能力、河道形態、災害の発生状況等や群馬県の他河川とのバランスを考慮して、目標とする治水安全度を設定する。
吾妻川本川においては、合流する利根川上流圏域河川整備計画で目標とする治水安全度と整合を図ることとする。
一方、支川においては、比較的頻繁に発生する出水に対する被害を軽減するため、近年浸水被害が発生した平成19年9月台風第9号及び平成22年8月豪雨と同程度の洪水による家屋等の浸水被害を解消させることを目標として河川整備を実施する。
また、今後豪雨災害の激甚化、頻発化が進行していく可能性が高いことを踏まえ、内水による浸水被害も含め、河川整備のみならず貯留浸透対策や土地利用規制など、流域一体となった「流域治水」対策に関係市町村等と連携して取り組む。
本圏域で発生する土砂災害については、県砂防部局や森林部局との連携を図り、被害の未然防止や軽減に努める。
さらに、これまで整備してきた治水施設の機能を長期かつ確実に発揮させるよう、調査及び点検結果に応じて必要な対策を実施することにより、その機能の向上を目指すとともに、適切な時期に適切な整備を実施することにより、長期にわたり施設の有効活用を図る。
なお、社会状況、災害の発生状況等に応じて、概ね10年ごとに河川整備計画の見直しを行うこととする。
河川は、地域の方々の身近な憩いや安らぎの空間としての役割を果たしており、中でも広大なオープンスペースである高水敷は、市町村の都市公園や運動公園としてのニーズも大きい。一方で、高水敷は洪水を安全に流下させるために必要な区域であることから、増水時における利用者の安全確保や、流下阻害となるおそれのある工作物の移動のほか、水位低下後の速やかな復旧・機能回復等、占用者の管理体制を確認した上で、占用許可(更新を含む)を行うこととし、これを通じて適正な河川利用を図る。
吾妻川圏域における河川の適正な利用及び流水の正常な機能を維持するために必要な流量については、利水の現況、動植物の生息・生育・繁殖、景観及び水質を考慮し、表に示す流量を安定的に確保するよう努める。
河川名 | 地点名 | 流量(立方メートル毎秒) | |
---|---|---|---|
4月1日から6月30日 | 7月1日から3月31日 | ||
吾妻川 | 村上 | 5.3立方メートル毎秒 | 4.7立方メートル毎秒 |
吾妻川 | 三原 | 0.6立方メートル毎秒 | 0.6立方メートル毎秒 |
四万川 | 山田 | 0.7立方メートル毎秒 | 0.5立方メートル毎秒 |
水質が良好な河川や河畔林の多い河川等、自然が豊かで多くの動植物が生息・生育・繁殖している地域については、自然環境を保全し、自然を活かした水辺環境の整備を行う。
河岸保全のためコンクリートによる護岸整備を行う場合でも、瀬や淵の保全や川の流れを固定化しないようにするなど河川の自然の営みを取り入れた川づくりを行うことにより、動植物が生息・生育・繁殖できるような水辺環境の整備に努める。
市街地を流れる河川や近傍に公園等の人々が集まる施設がある河川では、地域の方々の意見をふまえ、気軽に人々が川に親しむことのできる水辺空間の整備を行うとともに、生態系に配慮し、動植物の生息・生育・繁殖に適した環境の保全・整備に努める。
上記の整備にあたっては、治水、利水及び流域の自然環境、社会環境との調和を図りながら、自然環境の保全と秩序ある利用の促進を目指す。
自然環境の保全・回復については、本圏域の動植物が生息・生育・繁殖している水辺を可能な限り保全・回復する多自然川づくりを行う。
また、環境部局と連携し河川水質の監視及び状況把握に努めるとともに、河川整備の際は工事に起因する濁水の発生や長期化による動植物への影響に留意し、その改善に努める。
水質については、地域住民や関係機関等と連携を図り、その保全・改善に努める。
人と河川とのふれあいの確保については、親水性を考慮して整備した空間の保全に努める。
景観については、地域住民や関係機関等と連携を図り、沿川と調和した地域文化としての水辺景観の保全・継承に努める。
堤防、護岸、床止め等の河川管理施設に関して、定期的に点検、巡視等を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行うなど、洪水時等にその機能が確実に発揮されるよう、適切に維持管理を実施する。
本整備計画の目標は、洪水による災害の発生の防止又は軽減、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持並びに河川環境の整備及び保全としている。
河川整備計画の目標を達成するための方策として、氾濫域の資産の集積状況、土地利用の状況等を総合的に勘案し、流量配分図に示す目標流量に対して、堤防の整備や河道掘削等により、家屋の浸水被害を解消させるための対策等を実施する。
実施にあたっては、効果的な整備の時期等について、国、関係市町村、関係機関と調整を図りつつ、計画的に整備を進める。
その際、動植物の生息・生育・繁殖環境、水質、景観等の保全に配慮するとともに、発電用水や農業用水等の河川の水利用の現状を調査し、支障なく適正な水利用が行えるよう、また、人々が川に親しむことができるよう考慮する。農業用水の取水施設に影響がある場合は、事前に関係者と協議・調整を行う。
また、工事期間中、長期にわたる濁水の流出により、魚類等に影響を与えることが懸念される場合には、漁協等の関係機関と連携し、必要な措置を講ずることに努める。
さらに、地球温暖化に伴う気候変動の影響への対応等について、関係機関と調整を行い調査・検討を行う。
河川工事の施行場所は次頁以降のとおりである。
河積の不足している区間や、堤防が整備されていない区間、堤防の高さが不足している以下の区間において、堤防整備や河道掘削等を実施し、流下能力の向上を図る。
河川名 | 整備を予定する区間 | 延長 |
---|---|---|
名久田川 | 高山村大字尻高 地先 | 約3,800メートル |
治郎兵衛川 | 嬬恋村大字田代 地先 | 約1,200メートル |
名久田川は、全川が掘込河道であり、一部区間において流下能力が不足しているため、河道計画流量を470立法メートル毎秒として掘削工及び護岸工等を実施し、洪水による家屋の浸水被害を解消させることを目標とする。
改修にあたっては、水際部の改変は可能な限り避け、現況の自然環境の保全に配慮した整備を行う。
治郎兵衛川は、全川が掘込河道であり、一部区間において流下能力が不足しているため、河道計画流量を60立法メートル毎秒として、放水路整備等を実施し、洪水による家屋の浸水被害を解消させることを目標とする。
改修にあたっては、現況の自然環境の改変は可能な限り避け、自然環境の保全に配慮した整備を行う。
今後の堤防点検結果を踏まえ、必要に応じて堤防強化対策を実施する。
河川管理施設の機能を適切に維持していくために、群馬県河川構造物長寿命化計画(平成28年7月)に基づき、点検、巡視等を行い、施設の状態把握に努め、必要に応じて補修や更新を行い、長寿命化を図る。
応急対策や氾濫水の排除、迅速な復旧・復興活動に必要な管理用通路の整備、災害復旧のための資材の備蓄等を検討し、必要に応じて実施する。
また、雨量、水位等の観測情報や河川監視用CCTVカメラによる映像情報を収集・把握し、適切な河川管理を行うとともに、その情報を関係機関へ伝達し、円滑な水防活動や避難誘導等を支援するため、これらの施設を整備する。
さらに、流域治水への転換として、国・県・市町村、企業・住民など流域全体のあらゆる関係者による治水対策、河川区域や氾濫域のみならず、集水域を含めた流域全体で対策を実施する。
河川の適正な利用及び流水の正常な機能を維持するため必要な流量を定めた地点において必要な流量を確保するため、水位観測並びに流量観測の実施、圏域での取水量・系統の把握により、河川流況を監視するとともに、四万川ダムの効率的な運用により低水管理を実施する。
さらに、地球温暖化に伴う気候変動の影響への対応等について、関係機関と調整を行い調査・検討を行う。
河川環境の整備と保全を図るため、動植物の生息・生育・繁殖環境、景観、河川利用等について配慮し、自然と調和を図った整備と保全を行う。自然環境の保全・再生にあたっては、地域住民や関係機関と連携し、流域に広がる動植物の生息・生育・繁殖場所を広域的に結ぶ生態系ネットワークの形成に努める。
1)動植物の生息・生育・繁殖場所については、設計段階や工事着手前など段階ごとに、学識関係者や漁協等の専門家の意見を聴くとともに必要に応じて調査を行い、それをもとに対応策を検討・実施するなどして保全に努める。落差工等の横断構造物を設置する場合は、砂防部局とも連携し、必要に応じて魚類の遡上に配慮した設計を行う。
2)絶滅危惧種等の希少な動植物が生息・生育する可能性があるため、必要に応じて環境調査の実施を検討するとともに、実施した場合はその調査結果を基にした絶滅危惧種等の保全対策を検討する。
3)河岸保全のためコンクリートによる護岸整備を行う場合でも、川の流れを固定化しないようにするなど、河川の自然の営みを活かした川づくりにより、地域の河川景観を活かし、動植物の生息・生育・繁殖に適した水辺環境の創出に努める。併せて、地域の暮らし、歴史及び文化との調和並びに多様な河川風景に配慮し、沿川と調和した河川景観の保全及び形成に努める。
4)水辺に近づけるよう、必要に応じて緩傾斜護岸、斜路、階段等を整備する。特に、市街地を流れる河川や公園等、人々が集まる施設がある河川では、地域の住民の意見を聴きながら、人と河川とのふれあいの場となるよう配慮する。
5)水辺景観の保全及び河川利用推進の観点から、河川の豊かな水量を保持するため、農業用水等の利水者と調整を図るとともに、関係機関の環境部局及び地域の住民と連携して河川の水質の改善に取り組む。
河道に堆積した土砂や繁茂した草木等が河川管理上支障となる場合は、河川環境に配慮しつつ、堆積土の除去、立木の伐採、草刈り等の必要な対策を行う。
堤防の変状、異常、損傷等を早期に発見することを目的として、適切に堤防点検、巡視等を実施する。堤防が不等沈下、法崩れ、ひび割れ等により弱体化した場合は、堤防の嵩上げや腹付け等の必要な対策を実施し、堤防の機能が維持されるよう努める。
護岸の亀裂等、河川管理施設の異常を早期に発見するため、定期的な河川の巡視を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行う。なお、修繕、改築等を行う場合にも、河川環境の回復・保全に努める。
取水堰や橋梁等の占用施設で河床及び河岸の洗掘や流下断面の阻害など河川管理上支障となるものについては、施設管理者と調整し、適切な処置に努める。また、施設の新築や改築にあたっては、施設管理者に対して、治水上の影響及び河川環境の保全について指導する。
四万川ダムについては、ダム本体、貯水池及びダムに係わる施設等を常に良好に保つために必要な計測及び点検を行い、その機能の維持に努める。また、河川占用施設については、施設管理者に対して施設の機能が常に良好に保たれるよう指導する。
地域の住民と協力して良好な河川環境を維持するため、草刈り、河川清掃等の河川愛護活動を積極的に支援する。また、環境調査や保全活動の情報を共有するなどして、地域との協働による環境保全に努める。
河川整備には長期間を要すること、また、計画を上回る規模の降雨が発生する可能性もあることから、河川整備によるハード対策と併せ、情報提供等のソフト対策を実施する。降雨の状況や河川水位の情報をリアルタイムで収集し、関係機関や地域の住民に提供するとともに迅速な避難行動等の支援を行うことにより、「逃げ遅れゼロ」を目指す。
ホームページへの掲載、パンフレットの配布、イベントの開催等により、河川に関する様々な情報の提供を行い、河川整備に関し広く理解を得られるように努める。
洪水時の住民の的確な避難行動につながるよう、「施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水に備える水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、危機管理型水位計や河川監視カメラの整備、水位周知河川等の追加指定、及び洪水浸水想定区域図の作成等を行う。
住民の防災意識の向上を図るため、カスリーン台風等の既往災害の記録の収集に努め、それらを伝承することはもとより、今後発生する洪水についても被害の記録を残し、これを周知するとともに、地域に伝わる歴史的な治水の技術や水防の知恵が継承されるように努める。
第2節 地域や関係機関との連携に関する事項
河川整備の実施にあたっては、河川事業、農業集落排水事業、砂防事業、治山事業、土地改良事業等の関連事業を実施する国や関係市町村、県関係部局と連携を図る。
また、圏域内の市町村や企業、住民等の主体的な参画のもとで「流域治水」を推進していくため、水田等を活用した一時貯留(流出抑制対策)、土地利用規制などの対策について、関係する市町村と連携して検討、実施する。
洪水時の連携強化のために、防災情報伝達演習や重要水防箇所の点検等を関係機関と実施する。
本圏域は観光地が多いため、外部から来訪した観光客が洪水時に円滑に避難出来るよう、避難経路の掲示や音声案内機器の設置等について関係市町村や関係機関と連携し、検討する。
良好な河川環境の保全を継続するために、地域の住民の理解を求めるとともに、地域の住民との連携及び協力体制の確立に努める。
従来から行われてきた流域住民の河川愛護及び美化活動等の取り組みについては、それらの活動を行うための場の提供等、今後も協力や支援を行う。また、河川を身近な環境教育の場とし、河川に関わるイベントや学習を通じて、地域住民の河川愛護や美化に対する意識の高揚に努める。
住民の防災意識を高めるために、出前講座等による防災教育を実施するとともに、自主防災組織の立ち上げ支援等について、関係市町村や関係機関と連携し、検討する。
水質事故による油等の流出が発生した場合は、事故状況の把握、関係機関への連絡、被害の拡大防止措置、河川や水質の監視、事故処理等を原因者や関係機関と協力して迅速に行う。
公園等の占用施設の管理者と連携し、洪水時の避難経路の確認や流下断面阻害物の有無の確認等を行い、問題があれば指導する。
水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、水害ホットラインや水害対応タイムラインなど、さまざまな手段により国、市町村、報道機関、消防、警察等の防災関係機関との連携を強化し、防災情報の共有や情報伝達体制の充実に努める。
さらに、住民が逃げ遅れることなく自発的に避難行動を起こせるよう、水位情報や映像の配信など、河川の状況をリアルタイムに把握できる情報発信の強化を図るとともに、市町村や地域の自主防災組織等と連携し、住民一人ひとりの防災行動計画となる「マイ・タイムライン」の普及に取り組む。
国及び関係都県等で構成する利根川水系渇水対策連絡協議会で渇水対策(取水制限)が必要と判断された場合は、関係利水者による円滑な協議が行われるよう、群馬県渇水対策本部等を通じ情報提供に努めるなど、関係機関と連携して被害軽減に努める。