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第2部第2章 生物多様性の保全・自然との共生

更新日:2019年12月25日 印刷ページ表示

第1節 生態系に応じた自然環境の保全と再生

主な指標と最新実績

尾瀬学校実施状況(平成30年度)
小学校 75校 3,902人
中学校 57校 5,277人
合計 132校 9,179人
実施率 53.3%

第1項 多様な生態系の保全

1 生物多様性に関する資料の保存と研究【文化振興課】

自然史博物館では、群馬県内の野生生物や古環境、地質や岩石鉱物の学術調査を行い、これらを明らかにする研究を行っています。学術調査時には、許可を得て資料を採取し、研究に用いるとともに標本として後世に残す活動を行っています。特に、現生の動物や植物、菌類など現在の生物多様性に関わる調査研究、資料の収集では博物館職員だけでなく多くの連携機関や協力者の支援を得て進めています。

(1)資料の収集

平成30年度に新規登録を行った資料は6,338点、現在までの登録総数は187,888点です。

(2)資料の保存

生物系収蔵庫の温湿度管理は、夏期20度50%、冬期18度55%、春秋期18~20度55~50%としています。文化財害虫等への忌避対策として、生物収蔵庫出入口に積層タイプの除塵粘着シートマットの設置を継続して行っています。全収蔵庫の点検は毎日実施しています。

(3)群馬県内を対象とした主な調査研究

平成29年度より、学術調査地域をみなかみ町及び周辺地域に設定し、5ヶ年計画で学術調査を実施しています。第2年目は、昨年度の調査を踏まえ、哺乳類、無脊椎動物、維管束植物、蘚苔類、菌類、地質・岩石・鉱物、古生物の各分野において調査を実施しました。以下の調査は、「みなかみ町及び周辺地域学術調査」を含む、群馬県内を対象とした主な調査研究の内容です。
ア 植物分野

  • 群馬県および上信越・東北地域における維管束植物の分布調査
  • 群馬県及び周辺部の絶滅危惧植物の生態と保全に関する調査
  • 尾瀬のフロラに関する調査

イ 菌類分野

  • 群馬県における菌類生息状況調査
  • 自然史博物館周辺の菌類調査

ウ 動物分野
(無脊椎動物)

  • 群馬県における無脊椎動物生息状況調査

(哺乳類)

  • 適正管理計画に関わる野生鳥獣の基礎調査
  • 群馬県における外来生物調査
  • 群馬県における野生動物放射線物質汚染状況調査
  • 群馬県における哺乳類生息状況の長期モニタリング調査
  • イノシシ個体数調整事業に伴う調査
  • ニホンジカ個体数調整事業に伴う調査
  • カモシカ個体数調整事業に伴う調査

(鳥類)

  • 群馬県における鳥類解剖調査
  • 群馬県における外来生物調査
  • 群馬県における放射線物質汚染状況調査

エ 博物館学分野

  • 自然史系博物館資料の3Dデジタル標本化

オ 古生物分野

  • 群馬県産並びに当館所蔵の脊椎動物化石、並びにそれらと関連性の深い地層や化石に関する調査研究
  • 群馬県産並びに当館所蔵の無脊椎動物化石、並びにそれらと関連性の深い地層や化石に関する調査研究
  • 群馬県産並びに当館所蔵の植物化石、並びにそれらと関連性の深い地層や化石に関する調査研究

カ 地質・岩石・鉱物分野

  • 谷川連峰西部及び東端部における地質・岩石・地質現象調査
  • 南牧村南西部の地質・岩石調査
  • 下仁田町南東部の北部秩父帯に産する

マンガン鉱床調査

  • 群馬県東部の古砂丘構成粒子に関する研究

2 自然環境保全地域等整備【自然環境課】

自然環境保全地域は、自然的・社会的諸条件から、自然環境を保全することが特に必要と認められる地域として、「自然環境保全法」や「自然環境保全条例」に基づき指定されている地域です。
県内では、国指定の自然環境保全地域が1地域、県指定の自然環境保全地域が26地域、緑地環境保全地域が5地域指定されています。これらの地域では、標識・解説板の立替え、清掃管理、保育管理、植生復元対策等の保全対策を行っています。
また、県指定自然環境保全地域等において、自然保護思想の普及啓発を行うため、県民を対象に自然観察会と保護活動を年5回程度実施しています。平成30年度は「赤城山麓」や「吾妻渓谷」などの会場で実施し、いずれも参加者から好評を博しました。

3 良好な自然環境を有する地域学術調査【自然環境課】

本調査は、「群馬県自然環境保全条例」第5条の規定に基づき、県内の自然環境の保全のために講ずべき施策の策定に必要な基礎情報の収集を目的に、昭和49年から大学教授や自然史博物館学芸員などの専門家で構成される群馬県自然環境調査研究会に委託をして実施しています。
平成30年度は、「野反湖周辺」、「朝日岳・白毛門山東面及び宝川周辺」など、合計8地域において調査を実施し、調査地において希少植物の国内最大級の生育地を発見するなど、大きな成果を収めました。

4 自然保護指導員設置【自然環境課】

「群馬県自然環境保全条例」に基づき、県内35市町村に2年間の任期で54名を委嘱しています。
主な業務は、管内の定期的な巡視を行い、自然環境における異常の発見や県自然環境保全地域、緑地環境保全地域における自然破壊等の発見・通報に努めるとともに、自然環境保全のための指導、自然保護知識の普及啓発を図ること等です。
自然保護指導員からの最近の報告内容では、希少植物の生育状況の確認、特定外来生物をはじめとした外来生物の確認、その他ハイカーや登山者に対する自然環境の解説の実施等の報告を受けています。
県では、自然保護指導員から報告された情報を蓄積し、自然保護行政の基礎資料として活用しています。また、取りまとめた情報は、必要に応じて、自然保護指導員にフィードバックするとともに、市町村にも情報提供しています。

5 絶滅危惧動植物の保全対策【自然環境課】

人間の経済活動の発展に伴い、自然環境には様々な影響が及ぶようになりました。世界中で森や川や海の良好な環境の消失が進み、そこに生息・生育する多くの野生生物種が絶滅の危機にさらされています。
昭和41年には、国際自然保護連合が世界における絶滅のおそれのある野生生物種の状況をレッドデータブックとして取りまとめ、日本でも種の保護への取組を進めるため、平成3年に環境省が国内の絶滅のおそれのある野生生物種の状況を明らかにしたレッドデータブックを発行しました。
県では、平成13年から平成14年にかけて、県内に生息・生育する絶滅のおそれのある野生生物種の現状を「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物動物編・植物編(群馬県レッドデータブック)」として公表し、学術調査等に基づく情報の蓄積や、より現況に即した内容に見直しを行い、平成24年度には改訂版を公表しました。その結果、植物編では382種から633種へと掲載種が大幅に増え、動物編では526種から529種へと微増しました。
平成30年度には植物編の部分改訂を行い、既掲載種のうち46種の評価が変更され、23種が新たにレッドリストに追加となりました。
これにより、633種から653種へ増加しています。
また、本県では自然生態系保全の観点から緊急性・環境影響等を踏まえ、保護へ向けた取組の必要性が高い種(動物53種、植物56種の計109種)を選定して詳細な調査を行い、保護・保全対策を検討する際の基礎資料となる調査報告書を平成15年に取りまとめました。そして、具体的な保護対策の一つとして、県が行う工事の影響から希少な野生動植物を保護するため、関係部局と生息・生育情報を共有して対策を講じる制度を設け、保護対策に取り組んでいます。平成30年度の調整実績は320件でした。
なお、平成24年度の群馬県レッドデータブック改訂に伴い、平成27年度に見直しを行い、保護へ向けた取組の必要性が高い種を199種(動物58種、植物141種)としています。

6 種の保護条例の推進【自然環境課】

県では、絶滅に瀕する野生動植物を保護するため、「希少野生動植物の捕獲・採取等の規制」、「生息地等を保全するための行為の規制」、「効果的・計画的な保護管理事業の取組」などを定めた「群馬県希少野生動植物の種の保護に関する条例」を平成26年12月に制定し、平成27年4月から施行しました。
さらに、同条例に基づいて、平成27年8月には、特に保護を図るべきものとして11種(動物3種、植物8種)の野生動植物を「特定県内希少野生動植物種」に指定しました。指定された種は捕獲、採取、殺傷又は損傷させることが原則として禁止され、違反した場合には罰則が科されます。
同条例等の周知を図るため、県内希少野生動植物種保護監視員を設置して、監視体制を整備しています。

7 ラムサール条約登録湿地の保全と利活用【自然環境課】

上信越高原国立公園に位置する芳ヶ平湿地群は、草津白根山の火山活動に大きな影響を受け形成されたものです。この特有な自然環境が評価され、平成27年5月にラムサール条約湿地として登録されました。この結果、県内のラムサール条約登録湿地は、尾瀬、渡良瀬遊水地と合わせて、3か所になりました。

8 魚類の繁殖と資源管理手法の研究【水産試験場】

長野、新潟の県境付近に位置する野反湖の流入河川の一つであるニシブタ沢は、水産試験場の調査でイワナが自然繁殖のみで資源を維持していることが明らかになり、1997年11月10日に本県で初めて保護水面(「水産資源保護法」により水産動植物が発生するのに適した水面であるとして水産動植物の採捕が規制される水面)に指定されました。
その後、ニシブタ沢におけるイワナの資源量の増減を把握するため、産卵床造成跡の計数調査を水産試験場が毎年実施しています。

第2項 水辺空間の保全・再生

1 漁場環境対策の推進【蚕糸園芸課】

これまで行われてきた社会基盤整備や開発などによる河川湖沼の環境変化として、堰など河川横断工作物による縦断的な不連続性、河床の平坦化、川や水路の直線化、コンクリート護岸などによる横断的不連続性、開発や人口増による水質悪化などがあります。
河川横断工作物により遮断される魚類の遡上経路を確保するため、魚道を設置しますが、河床低下などにより機能していないものがあり、また魚道自体がない箇所もあります。
平成18年度に10河川(利根川、渡良瀬川、広瀬川、烏川、神流川、鏑川、碓氷川 吾妻川、片品川、赤谷川)92か所の魚道を調査した結果、ある程度良好な魚道は28か所(30%)で、魚類などの移動に支障がある魚道は64か所(70%)でありました。
支障のある魚道は魚類などの生息にとって好ましくないと考えられることから、県では、魚道の機能回復を行い、漁場環境の改善を行っています。

2 環境に配慮した河川改修(多自然川づくり)*注1【河川課】

私たちの身近にある川は、治水や利水の目的だけでなく、潤いをもたらす水辺空間や多様な生物を育む環境の場でもあります。
このため、河川改修にあたっては、「多自然川づくり」を進め、河川が本来有している生物の生息・生育環境の保全・再生に配慮するとともに、地域の暮らしや文化とも調和した川づくりを行います。
また、希少野生動植物については、事前に生息・生育情報の有無を確認し、保護に必要な対策を講じています。
平成30年度の河川改修については、河床幅を十分確保することによって、河川が有している自然の復元力を活用できるよう配慮し、約4.0キロメートルの多自然川づくりを実施しました。

第3項 尾瀬の保全

1 尾瀬山の鼻ビジターセンター運営【自然環境課】

山ノ鼻地区にビジターセンターを設置し、入山者に尾瀬の自然や保護活動に関する情報を提供しています。管理運営を尾瀬保護財団に委託し、自然解説業務、登山者の利用安全指導、木道の点検補修や公衆トイレの清掃管理等を実施しています。
また、県有公衆トイレ(山ノ鼻、竜宮)の維持管理を行っています。水の処理等に多額の費用がかかるため、利用者からのトイレチップの協力をお願いしています。

  • ビジターセンター開所期間
    平成30年5月16日~10月28日(166日間)
  • 入館者数:102,550人

2 尾瀬の適正利用推進【自然環境課】

尾瀬への入山者は、平成8年度の647,500人(旧日光国立公園尾瀬地域)をピークとして、その後は減少傾向にあります。尾瀬国立公園全体での入山者数としても、東日本大震災直後の平成23年度は281,300人、平成24~27年度は震災以前の入山者数に回復し30万人台で推移していましたが、平成28年度に30万人を割り、平成30年度は269,700人でした。
また、入山者が特定の時期や特定の入山口に集中する傾向は、入山者数がピークだった頃よりも緩和されつつありますが、ミズバショウ(6月上旬頃)、ニッコウキスゲ(7月中旬頃)の開花時期及び紅葉時期(9月下旬~10月上旬頃)のとくに週末への集中は依然として続いており、入山口としては鳩待峠利用者が全体の約5~6割を占めています。このため、利用の分散化及び適正利用に向けた取組を、関係者と連携し、協力しながら行っています。

(1)尾瀬地区利用安全対策

残雪期の遭難防止対策、歩道の点検補修、危険木の伐採を行っています。

(2)尾瀬の入山口のあり方の見直し

環境省と連携し、尾瀬関係者の協力のもと、尾瀬の多様な魅力をゆっくり楽しむ利用の促進を目指し、アクセスの利便性の変化が尾瀬を訪れる方に与える影響を把握することにより、入山口の魅力づくりや自動車利用のあり方の見直しを行っています。
平成23~25年度の3年間は「尾瀬らしい自動車利用社会実験」として、鳩待峠においてバス・タクシーの乗降場所を入山口に近い鳩待峠第1駐車場から第2駐車場にできる限り変更して車の無い静かで落ち着いた雰囲気の入山口の実現を目指す取り組みを実施しました。また、通常は車の通行が禁止されている大清水~一ノ瀬間において、電動マイクロバス等の実験運行を実施し、平成26年度は、約70日間にわたる試験運行などを実施しました。それらの成果を踏まえ、鳩待峠では、第1駐車場を閉鎖し第2駐車場を拡張する工事が行われ、平成28年度から供用を開始するとともに、大清水では、平成27年度から大清水~一ノ瀬間で民間事業者による低公害車の営業運行が開始されています。

3 尾瀬シカ対策【自然環境課】

尾瀬ヶ原では、ニホンジカによるミズバショウなどの希少な植物の食害や湿原の踏みつけが深刻化するなど、貴重な自然環境が損なわれ、生物多様性の劣化が問題となっているとともに、裸地化による土壌の流出などが懸念されています。そこで、群馬県では、ニホンジカによる尾瀬ヶ原の湿原及び尾瀬沼を含めた尾瀬全体の植生の荒廃を防ぐため、平成25年度から、関係機関と連携し、国等の支援を受け、「尾瀬からのシカの排除」を目指し、捕獲を実施しました。平成30年度は、春と秋冬合わせて131頭を捕獲しました。

4 尾瀬環境学習推進【自然環境課】

尾瀬を通して、子どもたちの環境問題に対する認識を深めるとともに、群馬県、福島県、新潟県の子どもたちの交流や触れ合いを図るため、平成6年度から3県合同で「尾瀬子どもサミット」を実施しています。24回目となる平成30年度は、3県あわせて57名の児童生徒が、尾瀬沼を中心に尾瀬の動植物や自然保護への取組について学びました。

5 尾瀬学校推進【自然環境課】

群馬の子どもたちが一度は尾瀬を訪れることができるよう、「尾瀬学校」を実施する小中学校に対して必要経費の補助を行いました。ガイドを伴った少人数のグループによる自然学習により、尾瀬の素晴らしい自然を体験するとともに、尾瀬の自然を守る取組を学びます。事業開始から11年目となった平成30年度は132校、9,179人が参加しました。

6 尾瀬学校充実プログラム【(教)義務教育課】

(1)教員を対象にした尾瀬自然観察会

「尾瀬学校」のより安全で効果的な実施及び参加校の一層の拡大に資するため、教員を対象とした引率指導者の実地研修(自然観察会)を実施しました。実地研修会には、平成26年までに延べ200人の教員が参加しました。また、平成27年~30年の初任者研修において、尾瀬コースを選択した266人の教員が実地研修を行いました。

(2)尾瀬学習プログラムの改善充実

県教育委員会では、「尾瀬学校」が充実したものとなるよう、実施に当たっての心構えや学習案などを掲載した「尾瀬学習プログラム」を作成し、平成20年5月に各学校に配付しました。
翌年、更に説明が必要である項目について補足版を作成し、県総合教育センターのWebページに掲載しました。
平成22年3月には、「尾瀬学校」の環境学習を進めるための学習計画例などを掲載した「尾瀬学習プログラム−学習活動編−」を各学校に配付しました。
平成25年9月には、山小屋へ宿泊する場合のメリットや留意点をまとめた「尾瀬学習プログラム−山小屋宿泊編−」を各学校に配付しました。
平成28年11月には、尾瀬学校開始10年を迎えるに当たり、「尾瀬学校」の更なる充実に向けて、学校職員代表、尾瀬ガイド代表者、尾瀬保全推進室担当者、教育委員会担当者が集まり、取組の現状や課題について意見交換を実施しました。
平成29年5月には、前年の「尾瀬学校充実のための検討会議」を受け、各学校から出された質問とその回答をQ&A形式にまとめ、県総合教育センターのWebページに掲載しました。

第2節 野生鳥獣対策と外来生物対策への取組

主な指標と最新実績

野生鳥獣による農林業被害額(速報値)5億2千4百万円
野生鳥獣の捕獲頭数(速報値)17,444頭
(5獣種)

第1項 野生鳥獣対策の推進

1 鳥獣被害対策【鳥獣被害対策支援センター】

野生鳥獣の被害対策として、防護柵の整備などを計画的に進めており、被害金額は減少傾向にあります。一方、捕獲頭数は年々増加傾向にあり、生息域や被害地域も拡大傾向となっています。さらに、生活環境被害や生態系被害も各地で顕在化しています。
そこで、県では市町村、被害地域、関係機関と連携・協力しながら、野生鳥獣を「捕る」、野生鳥獣から「守る」、野生鳥獣を「知る」対策を総合的に進めています。

(1)「捕る」対策

シカやイノシシなど、生息数の増加が著しい特定鳥獣について、捕獲目標に基づく計画的な捕獲を市町村と連携して推進するとともに、シカの高密度生息地域での指定管理鳥獣捕獲等事業の実施や捕獲の担い手確保など、捕獲を強化する対策を講じています。

(2)「守る」対策

野生鳥獣が耕作地に入らないようにするための電気柵などの侵入防止柵を設置したり、食害から樹木を守るため、樹木への防護資材の設置や忌避剤の散布などの対策を行っています。
また、野生鳥獣の出没を抑制するため、被害地の周辺で見通しの悪い薮の刈り払いや樹木を伐採するなど、野生鳥獣からの被害を守るための生息環境の管理を行っています。

(3)「知る」対策

野生鳥獣被害対策に携わる人材の育成や、日本獣医生命科学大学との連携による新たな対策技術の開発等を行っています。

2 捕獲の担い手確保対策【自然環境課】

県内における野生鳥獣による被害は、農林業だけでなく生態系や生活被害に拡がるなど深刻な状況です。これまでも、捕獲や侵入防護柵の設置等の対策に取り組んできましたが、野生鳥獣の生息数の増加や生息域が拡大している現状を踏まえると更なる捕獲の強化が必要です。しかし、捕獲の担い手である狩猟免許取得者は、昭和56年度をピークに大幅に減少しており、平成29年度には4,295人(56年度比44%)に減少、また狩猟者の65%が60歳以上であり高齢化が進行しています。このため、鳥獣害対策を継続して実施していくためには、計画的な捕獲の担い手の確保が重要となっています。

(1)狩猟免許試験

平成30年度も、出前型免許試験や休日試験の開催など、受験機会を増やすことで、免許取得者の増加を図っており、平成30年度は、353人が受験しました。

3 指定管理鳥獣捕獲【自然環境課】

県内におけるニホンジカやイノシシの状況は、急激な生息数の増加と生息分布域の拡大が確認され、農林業被害にとどまらず、自然生態系にも深刻な影響を及ぼしています。
そのため、自然環境を保全すべき地域で、鳥獣保護区等に指定されているエリア等について、「指定管理鳥獣捕獲等事業」を活用しニホンジカやイノシシの捕獲を実施しています。

(1)高密度生息地域

標高の高い地域にある牧場や自然公園等は、良好な餌環境を背景として、ニホンジカが高密度化しているため、集中的に捕獲を行っています。

(2)分布拡大地域

ニホンジカは、高密度化した地域の周辺部において、季節的に移動する個体の移動ルートや越冬場所といったニホンジカの生態が、研究機関等の調査により明らかになりつつあります。そこで、これらの知見を基に、適切な捕獲の手法、時期、場所を選定し分布拡大防止のための捕獲を実施しています。
一方、イノシシは、山岳部から続く生息域の最外縁部に位置する里山周辺で生息頭数が増加しています。生息域の拡大を防止する必要があるため、集中的な捕獲を実施しています。

4「第12次鳥獣保護管理事業計画」と適正管理計画(第二種特定鳥獣管理計画)の推進【自然環境課】

県では、鳥獣全般に関する県の基本計画である「第12次鳥獣保護管理事業計画」や、特定の鳥獣に関する計画である適正管理計画(第二種特定鳥獣管理計画)を策定しており、これらの計画に基づき鳥獣を適正に管理します。

(1)「第12次鳥獣保護管理事業計画」の推進

鳥獣は、人間の生存基盤となっている自然環境を構成する重要な要素であり、人の豊かな生活を営むうえで欠かすことのできない存在であることから、人と鳥獣の適切な関係の構築を図るため計画を推進しています。
ア 生息環境の保全
野生鳥獣の保護や繁殖を図るための区域として、県内に49箇所64,550ヘクタールの鳥獣保護区を指定(うち2箇所は国指定浅間鳥獣保護区10,646ヘクタール及び国指定渡良瀬遊水地鳥獣保護区89ヘクタール)しています。
イ 鳥獣保護管理員による鳥獣保護管理事業の推進
県下に65名の鳥獣保護管理員を委嘱し、鳥獣保護区の管理や鳥獣類の生息状況の把握、違法捕獲等の防止に努めています。

5 森林獣害防止対策【林政課】

県内では、野生獣類による林業被害が多く発生しています。伐採跡地に植栽した苗木の芽を、シカやカモシカが食べてしまって森林に戻せない状況や、数十年間かけて育てた樹木の樹皮をツキノワグマやシカが食べてしまって、木材の製品価値が下がってしまう被害が問題となっています。また、野生獣類による被害は、樹木への直接的な被害だけでなく、木が育てられないことによって林業関係者の生産意欲の減退を招き、手入れが行き届かなくなることで森林の多面的機能が衰退してしまうことが懸念されています。
県では、野生獣類による食害から守るため、造林木に動物が嫌がる忌避剤を散布したり、樹木に防護資材を巻き付ける事業を推進しています。また、苗木を植栽した周囲全体を囲うように、シカの侵入を防止する柵を設置する等の事業も行っています。

6 農作物被害対策【技術支援課】

平成30年度の野生鳥獣による農作物被害は、県内33市町村から報告があり、主な加害獣種はカモシカ、イノシシ、ニホンジカ等となっています。被害額は約2億8千5百万円で、前年比92%と減少しています。
被害は中山間地だけではなく、平坦地でも発生していますが、地域ぐるみでの被害対策や侵入防止柵の設置等に取り組んだ地域では、着実に対策の効果が現れてきています。
鳥獣被害は、農業者に経済的な損失をもたらすだけではなく、営農意欲の減退、耕作放棄地の増加など地域に深刻な影響を及ぼしています。そこで、県では各種補助事業により、市町村等が主体となって実施する鳥獣被害対策を支援するとともに、鳥獣被害対策支援センタ−を中心に、関係機関と連携し、地域ぐるみでの対策を進めています。

(1)効果的・効率的な対策支援

市町村等関係機関と連携し、地域が効果的・効率的に被害対策に取り組めるように支援します。

(2)地域ぐるみでの対策支援

鳥獣害対策は、地域ぐるみでの対策が大切です。県では地域における合意形成を図りつつ、集落環境調査に基づいた総合的な鳥獣被害対策(侵入防止柵の設置、刈り払い等による緩衝帯の設置、捕獲体制の整備等)を進めています。

7 鳥獣対策伐木【河川課】

近年、野生鳥獣の生息数の増加や生息域が拡大することにより、農林業被害の拡大や生活被害が発生しているため、その対策が強く求められています。
そこで、野生鳥獣を出没させない、定着させないことを目的に、クマやイノシシ等が市街地へ出没しないように、移動経路や生息地と考えられている河川内の樹木群を除去するため、伐木を行っています。
平成25年度から、鳥獣の捕獲数が多い区域内や狩猟制限がある区域内の河川を計画的に伐木し、平成30年度は面積にして27.6万平方メートルの区域を伐木しました。

第2項 外来生物対策の推進

1 特定外来生物対策【自然環境課】

外来生物とは、人の活動により本来の生息地とは異なる地域に持ち込まれた海外起源の生物です。
人間の移動や物流が活発になったことで、多くの動植物がペットや展示・食用・研究等の目的で世界中で取引されています。また、荷物や乗り物等に紛れ込んだり付着して、知らないうちに持ち込まれてしまう場合もあります。
野生生物は、本来その地域特有の自然環境の中で相互に関係し合い、複雑なバランスを保って生存しています。このため、人為的に外来生物が持ち込まれてしまうと、その地域にいた生物が駆逐され地域特有の自然環境のバランスが崩れてしまうほか、人間に直接危害を加えたり、農作物が被害を受けるなど、様々な問題を引き起こすおそれがあります。このため、国は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(通称:外来生物法)を平成17年に施行し、問題を引き起こす外来生物を「特定外来生物」として指定し(148種類 平成30年4月1日現在)、その飼養・栽培・保管・運搬・輸入といった取扱いを規制して国内への侵入や拡散を防ぐとともに、既に定着してしまったものについては駆除や隔離等の防除を行うこととしています。
平成17年度から平成19年度にかけて県内で行った調査でも特定外来生物が確認されており、動物ではアライグマやオオクチバスなど19種が、植物ではオオハンゴンソウやオオキンケイギクなど8種が確認されました。
近年、アライグマやカミツキガメといった特定外来生物が身近な所で見つかったり、捕獲されることが増えていますが、これらはペットや観賞用として輸入され、人間に飼われていたものが逃げ出したり、飼うことができなくなって捨てられてしまったものが自然界で繁殖し、問題を起こしているケースです。生き物を飼育する場合は、その生き物の寿命や成長したときの大きさ、性格や生態等について十分調べた上で、責任を持って終生飼育する必要があります。

外来生物被害予防三原則
  1. 入れない:悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
  2. 捨てない:飼っている外来生物を野外に捨てない
  3. 拡げない:野外に既にいる外来生物は他地域に拡げない

2 コクチバス被害対策【蚕糸園芸課】

平成11年に奥利根湖で発見されたコクチバスは翌年には繁殖が確認され、県では、平成12年度から地元漁業協同組合に委託して駆除作業を開始しました。
コクチバスは北米原産の魚食性外来魚で、冷水域・流水域でも定着が可能です。旺盛な食欲と繁殖力で水産資源や生態系に悪影響を及ぼすとして、特定外来生物に指定され、放流はもとより、飼育や運搬が規制されています。また、群馬県内水面漁場管理委員会の指示として採捕したコクチバスの再放流を禁止し、コクチバスの駆除推進に努めています。
奥利根湖での駆除事業では、平成17年度以降の駆除尾数から生息尾数の減少も示唆され、駆除効果が出ていると考えられます。
しかし、平成22年に烏川で、平成23年に鏑川と渡良瀬川でコクチバスの生息が確認され、利根川下流域での生息域の拡大が懸念されています。このため、県では、平成23年より群馬県漁業協同組合連合会に委託して河川におけるコクチバスの駆除を開始しました。

第3節 自然とのふれあいの拡大

主な指標と最新実績

県立公園利用者数 1,469千人
森林公園利用者数 446千人
自然体験活動等に係る事業への参加者数 3,474人
(県立青少年自然の家3施設合計)
ぐんま昆虫の森入園者数 134,516人
ぐんま天文台入館者数 39,786人

第1項 ふれあいの「場」の確保

1 自然公園等の管理整備(国立・国定公園、長距離自然歩道)【自然環境課】

自然とのふれあいに対する需要の高まりに伴い、自然公園等に対する多様化した要求に応えるため、利用の快適性と自然環境の保護・保全を考慮した施設の整備補修、維持管理を実施します。

(1)国立・国定公園

4つの国立・国定公園(上信越高原、尾瀬、日光、妙義荒船佐久高原)における県管理の登山道や標識、避難小屋等の県有施設の管理・整備などを実施し、貴重な自然環境の保全と適正な利用に配慮しつつ、利用者の快適性向上に取り組んでいます。

(2)長距離自然歩道

沿線の自然や歴史、文化にふれながら、手軽に歩くことができる道として、群馬県内には首都圏自然歩道と中部北陸自然歩道の2ルート、計41コースが設定されています。
地元市町村の協力を得ながら管理に努めるとともに、利用者からの声を反映した標識整備等に取り組んでいます。

2 県立公園の管理整備【自然環境課】

赤城・榛名・妙義公園の県立公園は、地域の貴重な観光資源となっていることから、その保全に努めるとともに、更なる利用促進を図っていきます。
また、地域住民が中心となって、公衆トイレの清掃や遊歩道の下草刈りなどを行う地域密着型公園管理を実施するほか、各種県有施設の管理・整備に取り組んでいます。

3 県立森林公園の管理整備【緑化推進課】

県内には7つの県立森林公園があり、園内散策や自然観察など、それぞれの森林公園が兼ね備えた優れた自然環境を楽しむことができます。
また、森林公園では自然観察会やトレッキング、森林整備活動などが催され、森林の保全や自然との共生に対する意識の醸成にもつながっています。
森林公園では園内整備はもとより、老朽化した施設の改修や遊歩道の修繕などを通じて、引き続き良好な自然環境の保全に努めるとともに、県民の保健休養や学習の場とするため、各公園の特色や魅力を生かした管理運営を行います。

4 中山間地域農業の持続的発展(中山間地域等直接支払制度)【農村整備課】

一般的に中山間地域*注1等は平坦地と比べ、農業の生産条件が不利です。このため、中山間地域等における農業生産活動等の維持を通じて、耕作放棄地の発生防止、環境保全機能の確保等を図るため、平成12年度から「中山間地域等直接支払制度」が開始されました。
本県の平成30年度の取組状況は、対象25市町村のうち、18市町村で191の協定(189集落協定、2個別協定)が締結され、1,424haの農用地で制度に取り組んでいます。

5 県立都市公園の適正な管理(長寿命化)【都市計画課】

県立都市公園の施設は、建設後20年以上経過している施設が多く、これから更新・維持管理費用が増大することが見込まれています。そこで、遊具・建物といった施設について、定期点検や修繕・補修等を行い施設の長寿命化を図り、現存の施設をより長く大切に使用していきます。それに併せ、部分的な修繕では対応できない施設や利用者・社会ニーズの変化により陳腐化した施設については適宜更新を行います。
なお、平成24年4月に4公園(敷島公園、金山総合公園、群馬の森、観音山ファミリーパーク)において、「群馬県公園施設長寿命化計画」を策定しており、平成30年3月には多々良沼公園を加えて、計画の見直しをしました。
また、高齢者や障害者等の方々に、より安全・快適に公園を利用していただけるよう「群馬県移動等円滑化のために必要な特定公園施設の設置に関する基準を定める条例」を平成25年4月1日に施行し、その基準に基づき改修・整備を行っています。

*注1 中山間地域:平野周辺部から山間地域に至る地域の総称で、中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域として一般的に使われ
ることが多いです。総農地面積の約4割を占め、農作物生産のみならず、資源管理・環境保全に極めて重要な役割を果たしています
が、地勢等の地理的条件が悪く、農業等の生産条件の不利に加え、人口の流出・高齢化、耕作放棄地の増大等により地域社会の活力が
低下しつつあります。

6 親水性に配慮した河川改修(多自然川づくり)【河川課】

私たちの身近にある川は、治水や利水の目的だけでなく、潤いをもたらす水辺空間や多様な生物を育む環境の場でもあります。
このため、川づくりにあたっては、「多自然川づくり」を進め、河川が本来有している生物の生息・生育環境の保全・再生に配慮するとともに、地域の暮らしや文化とも調和した川づくりを行います。
河川改修工事においては、設計時から地域住民の意見を取り入れるなどして、憩いの場を整備するなど、地元に親しまれる川づくりに取り組んでいます。

7 ぐんま昆虫の森の運営【(教)生涯学習課】

ぐんま昆虫の森は、里山の豊かな自然の中で、昆虫や様々な生きものとのふれあいを通して、生命あるものに共感する心を育み、自然と人間の関わりについての理解を深めるため、桐生市新里町不二山地域の面積約45haの敷地内に、雑木林や棚田、小川、畑などの様々な環境を含む里山を再現し、平成17年8月に開園しました。
この施設では、緑あふれる里山の自然の中で、子どもから大人、お年寄りまで幅広い世代が、昆虫を始めとする様々な動植物とふれあい、生命、自然、環境について学習することができます。また、昆虫観察館では、様々な昆虫に関する写真や標本、生きている昆虫や小動物の展示に加え、生きた昆虫や身近な生き物を実際に手にとって観察できる「ふれあいコーナー」や自然素材を使った「クラフト体験」などを行っています。

(1)里山の保全

人間が生活のために手を加え、管理してきた「里山」という環境は、昆虫たち生き物にとっても暮らしやすい場所です。その環境を保全するため、下草刈りや園路整備を行い、日本人の原風景ともいえる「里山」を、かやぶき民家を中心に再現しており、自然と共生してきた暮らし方などを体験することができます。

(2)学校利用の促進

理科や自然・環境についての学習を行う小学校等を支援するため、教員向け利用説明会や個別の下見などに対応するほか、「学校団体利用の手引き」を配布しています。また、学校利用に際して、野外に観察ポイントを設置するなど、学習ニーズに合わせたきめ細かなプログラムの相談に応じています。その結果、平成30年度は、23,424人の団体利用がありました。

(3)県民参加型事業

ぐんま昆虫の森では、多くの県民が整備や管理運営に参画できる県民参加型事業として、様々な取組を行っています。
自然観察の解説や昆虫飼育及びクラフト体験指導、田植えや稲刈りなどをボランティアの協力により実施しています。
平成30年度は、民話、もちつき体験などを地元有志に依頼しました。また、園内の一部について株式会社ミツバ(桐生市)と協定を締結し、下草刈りなどの森林整備活動を実施しました。さらに、地元商工会主催のイベント、県内大学の吹奏楽部や地元有志の音楽会などを開催しました。

(4)標本の収集

ぐんま昆虫の森では、「記録することは、環境の多様性を保全することの第一歩」であることから、昆虫標本の収集を行っています。標本は収蔵庫に保管されており、平成31年3月現在、約10万点を収蔵しています。この中にはぐんま昆虫の森周辺で採集された標本をはじめ、県内の市町村が実施した環境調査等で収集された標本、職員が良好な自然環境を有する地域学術調査、尾瀬地域学術調査などで採集した標本も含まれています。これらの標本は展示や教育普及における利用のほか、「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(群馬県レッドデータブック)」の作成における証拠標本として、また各種レファレンスにおける参照標本などにも利用されています。

8 ぐんま天文台の運営【(教)生涯学習課】

ぐんま天文台は、天文学への理解を通して教育や文化の発展に寄与するため、高山村中山地区の子持山西側張り出し尾根に建設され、平成11年4月に開館しました。建設に伴い、県では美しい星空を守り将来を担う子どもたちに伝えるために、「ぐんま星空憲章」を制定しました。また、高山村では平成10年3月「村民の夜間の安全性や社会的活動に必要な照明を確保しつつ人工光の増加を抑制し、美しい星空と光環境を維持すること」を目的とした「光環境条例」を制定し、観測しやすい星空の維持に村ぐるみで協力いただいています。天文台でも駐車場を施設から600m離れた場所に設置するなど周辺の自然環境・光環境に配慮しながら、管理運営を行っています。恵まれた光環境の中、多くの県民が「大型望遠鏡による観望会」、「流星群観察会」などの本物を体験できるイベントを通して自然と親しむことができます。また、県内学校の天文分野の授業に対して、天体観察など本物とふれあう体験を重視した支援を継続しており、好評を得ています。ぐんま天文台は直接体験の中から宇宙の不思議さにふれ、天文現象に興味をもち、科学的に考える機会がもてる施設です。平成30年度は15年ぶりの火星大接近などもあり、大幅な入
館者増となりました。

(1)ボランティアによる星空案内

天文台では、より多くの来館者が星空に興味をもてるよう支援するため、天文台ボランティアを募り、その協力を得るとともに活動を支援しています。平成30年度は、総勢53名のボランティアが年間12回の自主企画イベントを運営し、参加者は合計2,165名になりました。好評の「星空さんぽ」では、身近な自然への興味・関心を一層深めたり広げたりすることの第一歩として、自分の目で直接星空を眺めています。また、「スマホやデジカメで月を撮ろう」、「双眼鏡で天体を探そう」など、天文について更に詳しく調べたり学んだりするためのイベントも充実しています。ボランティア活動は、活動する人自身の自己実現の場です。ボランティア活動をすることで、生涯にわたって学ぶ意欲を高め、継続しようとする意欲が育まれ、やがて主体的な学習活動へと発展していきます。

(2)昼間の天体

夜に光って見える星は、昼間には消えてなくなるわけではなく、太陽の明るさに負けて見えにくくなっているだけです。そのことへの気付きの場として、土日祝日の午前に「昼間の星の観察会」を開催しており、惑星や1等星などの明るい星を望遠鏡で観察することができます。また、昼間の星の代表格である太陽については、常設している太陽望遠鏡でリアルタイムの姿や黒点などを確認できます。夜の天体観望だけでなく、昼間の来館者にも天体に興味を抱いていただけるような工夫を行っています。

(3)映像ホールでの星空や宇宙の案内

本物の天体を間近に感じることで、自然にふれる感動は生まれます。しかし、自然を相手に常に一定の条件下で天体を観ることはできません。そこで、天文台では天候不良の場合には、映像による星空や宇宙の案内を行って、疑似体験を提供し、来館者が次の機会を楽しみにできるよう工夫しています。土日祝日の午後に投影する国立天文台提供の4D2U*注2プロジェクトの成果物を「3Dシアター」と命名して、太陽系はもちろん、宇宙の果てまでを立体映像で案内しています。このなかで、大気や水、温度などについて、ほかの惑星と地球とを比較しながら私たちを取り巻く自然のすばらしさを改めて実感する機会としています。また、案内映像を通して、星空が身近に感じられるよう心がけています。このようにぐんま天文台では、かかわる人全てに対して自然にふれあう機会を提供しています。

*注2 4D2U:Four-Dimensional Digital Universe(4次元デジタル宇宙)。空間3次元と時間1次元を合わせた(4次元)宇宙を、デジタルデータで可視化したもの。

9 自然史博物館の運営【文化振興課】

自然史博物館は、豊富な展示物と映像、多くのジオラマ、タッチ式の情報端末等を用いて地球の生い立ちや生命の進化の歴史、群馬県の豊かな自然と現状を紹介しています。また、子どもから大人まで、楽しみながら自然について学べる国内でも有数の規模を誇る参加体験型博物館です。さらに、県内の自然や古環境を学術調査し、その成果を研究論文やWeb、講座等により公開しています。加えて、県民やマスコミ等からの問い合わせにお答えする機関でもあります。平成30年度の入館者数は284,658名でした。

(1)常設展

「地球の時代」、「群馬の自然と環境」、「ダーウィンの部屋」、「自然界におけるヒト」、「かけがえのない地球」の5つのコーナーで計3,501点の標本を展示しています。特に、「群馬の自然と環境」では、群馬の自然を標高別に4つの地域に分け、代表的な生態系を、多くの動植物や、地質・岩石等の標本とともにジオラマで紹介しています。また、「群馬県レッドデータブック」をもとにした絶滅種・絶滅危惧種のラベルや、特定外来生物等のラベルを色分けして表示し、群馬の生物多様性の現状をわかりやすく説明しています。さらに、高層湿地の貴重な自然が残されている尾瀬については、ジオラマや写真だけでなく、尾瀬シアターで映像を駆使して紹介しています。「かけがえのない地球」では、自然環境を見つめ、守り、子孫に伝えることの大切さが学べるよう環境学習に特化した展示を行っています。

(2)企画展の実施

平成30年度は、「化石動物園」、「人類進化700万年」、「谷川連峰」の3つの企画展を開催しました。
「化石動物園」では、新聞等をはじめとする様々なメディアで話題となった自然史に関する新しい知見を紹介しました。その一つに哺乳類の進化があります。今生きている哺乳類のDNAに基づいて系統関係が詳しく調べられ、私たちヒトなどの哺乳類を含む系統は3億年前まで遡り、爬虫類とは当初から別々の道を歩んできたことなどを紹介しました。

「人類進化700万年」では、以前は最古の人類は約440万年前のアルディピテクス・ラミダスとされていましたが、21世紀に入るとその年代は一気に、約700万年前のサヘラントロプス・チャデンシスまで遡り、私たち人類700万年の足跡を紹介しました。また、未来に向けて解決しなければならない諸課題などについても紹介しました。

「谷川連峰」では、谷川岳をはじめとする平標山・朝日岳など、絶景といのちが織りなすエコパークの山々をテーマとし、5つのコーナー(谷川連峰はどこにある・谷川連峰のおいたち・谷川連峰のいきものたち・豊かな谷川連峰の生態系・いつまでも美しく豊かな谷川連峰であるために)により紹介しました。

(3)情報システム

自然に関する情報発信センターとして、博物館に蓄積されている豊富な情報を館内の情報コーナーやWebを通じて提供しています。
また、世界の博物館と情報を共有するネットワークに参加し、収蔵資料の情報を他の博物館や研究者に提供しています。

(4)調査研究

群馬の貴重な自然を調査し県民に紹介するため、職員の専門分野を活かした調査・研究を実施しています。これまでの学術調査では、主に自然史博物館が位置する西毛地域を中心として行ってきましたが、平成29年度からは、学術調査地域をみなかみ町及び周辺地域に設定し、5年間をかけて学術調査を実施します。この調査では、みなかみ町及び周辺地域の動植物、古生物及び岩石・鉱物の分布を明らかにし、当館収蔵標本と所有データの充実化を図ることで、調査結果を県内外の来館者に効果的かつ正しく伝えることを目的とします。対象地域は非常に面積が大きく、調査ルートや標本の採集を希望する場所が国立公園、県自然環境保全地域、国有林などに該当する場合が多いために、分野による活動内容のばらつきはあるものの、本調査の2年目の本年度は、昨年度の調査結果を踏まえ各分野で調査を進めました。
また、博物館全体では、担当分野別調査研究、大学や専門機関等との連携による調査研究等、県内を中心に多方面で調査研究を進めています。調査研究の公開としては、「群馬県立自然史博物館研究報告23号」の発行、職員による学術論文21編の発表があります。

(5)教育普及事業

群馬県内における自然についての理解を深めるため、県内各地の自然を観察する「ファミリー自然観察会」や、地域の自然や科学をテーマとした「講演会」、県内各地域で博物館資料を展示する「移動博物館」等、多くの事業を実施することで、県民の方々に自然に親しむ機会を提供しています。また、生涯学習の視点から、幼児を対象とした「幼児のための展示解説」や小中学生を対象とした「ミュージアムスクール」、高校生を対象とした「高校生学芸員」、高齢者を対象とした「地域回想法プログラム」等、プログラムのメニューも充実させています。
学校等団体に対しては、展示解説員による随時解説やスポット解説、教職員とともに園児・児童・生徒を支援する館内授業や出前授業等を実施しています。平成30年度は、教育普及事業及び学校等への支援の総計で、延べ64,621名の参加者を得ています。

第2項 ふれあいの「機会」の提供

1 グリーン・ツーリズムの推進【農村整備課】

緑豊かな農村地域にゆっくり滞在して「自然、文化、生活、人々との交流」を楽しむグリーン・ツーリズムを推進し、都市住民等が農村生活体験を通じて自然とふれあい、同時に農村地域の活性化にもつながるような機会づくりに取り組んでいます。
平成30年度は4回のグリーンツーリズム・キャラバンを実施し、都市と農村の交流機会を提供するとともに、地域連携システムの整備や人材育成講座の開催により、農村地域の受け入れ体制整備を支援しました。
第3項 ふれあいを深めるための「人材」の育成

1 自然保護思想の普及啓発【自然環境課】

自然保護に対する関心が高まるなか、正しい鳥獣保護思想の普及を図るため、次の事業等を実施しました。

(1)愛鳥モデル校の育成指導等

野鳥に関する知識を深め、愛鳥思想を育む目的のもと、愛鳥モデル校に指定した3学校の巡回指導等を行いました。
また、愛鳥週間ポスターの原画募集に121の小・中・高・特別支援学校から2,736点もの作品の応募がありました。

(2)傷病鳥獣の救護

けがや病気により保護された野生鳥獣(傷病鳥獣)を傷病鳥獣救護施設(林業試験場内・野鳥病院)及び桐生が岡動物園(桐生市に委託)に収容し、野生復帰を行いました。

2 青少年自然体験等事業【(教)生涯学習課】

北毛青少年自然の家は、昭和43年4月、県下4番目の青年の家として設置され、青年の家と少年自然の家の機能を併せ持つ青少年健全育成施設として「北毛青年の家」の名称で運営されてきました。
施設は、子持山・小野子山の鞍部に位置し、約15haの広大な敷地と300名を収容する教育キャンプ場・体育館・総合グラウンド・野外施設等を有しています。豊かな緑に恵まれた自然環境の中で、野外活動や登山、ウォークラリー、各種スポーツなどの体験に最適の場です。また、近くにはぐんま天文台もあります。
妙義青少年自然の家は、昭和46年8月に「妙義少年自然の家」の名称で設置されました。全国でも最も早く建てられた「少年自然の家」の一つです。
施設は、妙義山の自然林の中に位置し、豊かな自然に囲まれ、四季を通して野鳥をはじめ多くの動植物の姿が見られます。近くには、日本三奇勝の一つに数えられる石門群のほか、妙義神社、さくらの里、富岡市立妙義ふるさと美術館や自然史博物館などがあります。
東毛青少年自然の家は、昭和54年秋に「東毛少年自然の家」の名称で設置されました。大間々扇状地の中に連なる八王子丘陵のほぼ中央に位置し、アカマツ、コナラ、クヌギ林に囲まれた中にあります。
八王子丘陵は、古生層を始め、金山流紋岩、藪塚凝灰岩などから構成されており、動植物の種類も多く自然観察に適しています。近くには、茶臼山ハイキングコース、スネークセンター、石切り場、北山・西山古墳、岩宿遺跡などの学習環境にも恵まれ、多くの団体が利用しています。
これらの青少年教育施設は、主に学校等の林間学校等で利用され、自然体験や集団宿泊体験等を通して青少年の健全育成に寄与している施設です。また、施設が主催する自然体験等事業を通して、子どもたちの社会性や生きる力の育成に努めています。

(1)青少年自然体験推進

各施設とも前述の資源を活かした自然体験事業を展開しています。例えば、野外炊事、テント泊等の体験活動や登山、星座観察等の自然体験活動が挙げられます。
これらの活動を通して、子どもたちの感受性や自主性、社会性を育てています。また、親子で取り組む自然体験事業では、協働作業・共通体験により親子の絆を深めたり、自然体験不足といわれている保護者世代への自然体験活動の普及・啓発を図っています。
また、夏季休業中には県内の小学生等を対象に、3泊4日程度の長期キャンプを開催しています。これは、子どもたちの社会性や生きる力を育むため、異年齢集団を編成し、テント泊や野外炊事等の生活プログラム、冒険プログラム等を提供するものです。

(2)ボランティア事業

ボランティア事業は、「青少年ボランティア体験」と「青少年ボランティア養成」に分けられます。
「青少年ボランティア体験」は青少年を対象に、自然の家でボランティア活動に取り組むものです。施設設備や自然環境の整備や手入れ、施設利用者への指導補助、主催事業における指導や補助を通して青少年の社会性を養い育てています。
「青少年ボランティア養成」では、自然体験活動を通して、地域社会の一員として、温かで住みよい地域づくりや地域を支える人づくりに貢献する青少年を育成しています。

平成30年度 主な主催事業
北毛青少年自然の家

  • 親と子の星空の夕べ
  • 北毛ふれあい塾
    (餅つき、サンドブラスト等)
    妙義青少年自然の家
  • 妙義登山
  • 冬期ホリデー(門松つくり等)
    東毛青少年自然の家
  • 焼まんじゅうづくり
  • 石がま焼きピザづくり
    3所
  • 親子キャンプ
  • 宿泊自然体験(長期キャンプ)
  • 利用学校等説明会
  • 自然の家オープンデー
(3)青少年自立支援事業

青少年自立支援事業では、様々な要因により社会とうまく関われない青少年に、自然体験や生活体験等様々な体験活動の場を提供し、忍耐力や協調性、社会性を育むとともに心の居場所づくりを行っています。また、保護者への支援も併せて行っています。

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