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県民一人一日当たりのごみ排出量 986グラム(平成29年度)
県民一人一日当たりの生活系収集可燃ごみ排出量 565グラム(平成29年度)
一般廃棄物の再生利用率(リサイクル率)15.1%(平成29年度)
県では、循環型社会づくりを県民、事業者、行政が協力して進めていくために、具体的な目標を掲げた「第二次群馬県循環型社会づくり推進計画」(二次計画)を平成28年3月に策定しました。
二次計画は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)第5条の5に基づき、廃棄物の減量その他その適正処理に関する事項を定めた法定計画です。また、県が進める循環型社会づくりにあたっての基本的事項を定めたものとなっています。
県では、二次計画に基づき、ごみの減量化やリサイクルを推進し、循環させる資源の「量」に着目した取組に加え、資源の性質を活かす「質」の高い資源の循環的な利用を実現する循環型社会づくりを目指しています。
二次計画では、概ね2030年を展望し、群馬県における廃棄物の適正処理及び循環型社会づくりに向けた基本理念、基本目標を次のとおり定めています。
マイバッグ等の利用は、ごみの減量化や省エネ・省資源をはじめ、循環型社会の構築や温暖化防止に配慮したライフスタイルへの変革に向けて大きな役割を担っています。
県では、低炭素・循環型社会の実現に向けたライフスタイルの普及のため、平成25年度に消費者(環境)団体、事業者、行政(県及び35市町村)の3者で構成される「群馬県環境にやさしい買い物スタイル普及促進協議会」を設置しました。
この協議会では、消費者(環境)団体を中心に店頭でマイバッグの持参を呼びかける啓発活動を実施し、県民の環境活動を後押ししています。平成30年度は県内12市及び2町にモデル店を設定し、10月から隔月で啓発活動を実施しました。
また、環境に配慮した取組を行う事業者を支援するため、協議会の協力店に登録した事業者を県の環境情報ホームページ「ECOぐんま」に掲載し、情報発信を行っています。
県民一人ひとりが身近なところから3R(リデュース、リユース、リサイクル)に取り組んでもらえるよう、インターネット等を活用した普及啓発を図りました。
県では、群馬県環境情報ホームページ「ECOぐんま」の3R宣言のページから、県民に継続して取り組むことのできる3Rの行動を宣言していただき、日頃から3Rの活動を意識してもらえるように、名前入りの宣言書を印刷できる仕組みを設け、平成24年度から運営しています。
平成29年度からは、「ECOぐんま」の3R宣言のページを改修し、インターネットで、子ども向けの宣言書を印刷できるようにしています。
また、イベント会場でも、3Rの活動を啓発するため来場者が簡単に宣言できるよう、インターネットを使用しない記入式の宣言書を準備し、平成26年度から呼びかけています。平成28年度からは、子ども向けの宣言書も用意し、子どもたちにも宣言してもらっています。
平成30年度末の宣言者の累計数は、4,991人です。
3Rリーダーは、県内で積極的に3R活動に取り組み、3Rについての知識やノウハウを持った3Rの推進者です。
地域や職場、学校等で実施される3Rに関する学習会への3Rリーダーの紹介、派遣をしています。
二次計画普及啓発冊子として作成した「ぐんまちゃんのごみBOOK」を地域の環境学習の場などで活用しています。
平成29年度の本県における一人一日当たりのごみの排出量は986グラムで、前年度の1,005グラムから19グラム減少しました。
これは、市町村と連携強化してきた、県民に対する意識啓発や事業者に対する適正排出指導による成果が現れてきたためであると考えられます。
平成29年度は、全国平均値の920グラムに比べて66グラム多くなっています。
県民の日々の3Rの実践の成果を「見える化」するため、二次計画において、一人一日当たりのごみ排出量のうち日常的に家庭から排出される可燃ごみの量を指標としました。
平成29年度の本県における一人一日当たりの生活系収集可燃ごみの排出量は565グラムで、前年度の567グラムから2グラム減少しました。
減少はわずかであり、引き続き市町村と連携し、県民に対する意識啓発等を行い、生活系収集可燃ごみの排出量の減少に努めます。
平成29年度は、全国平均値の413グラムに比べて152グラム多くなっています。
平成29年度の本県におけるリサイクル率は15.1%で、前年度の15.7%から0.6ポイント減少しました。近年は、概ね横ばい傾向で推移しています。
集団回収量が減少傾向にあることや、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」に基づき市町村が分別収集する容器包装廃棄物について、品目・量ともに横ばい傾向にあることが、リサイクル率の「横ばい傾向」につながっていると考えられます。
平成29年度は、全国平均値20.2%と比べ5.1ポイント低くなっています。
住宅のストックが量的に充足し、環境問題や資源・エネルギー問題がますます深刻化する中で、これまでの「住宅を造っては壊す」社会から、「いいものを造って、きちんと手入れをして長く大切に使う」社会へ移行することが重要となっています。
住宅の長期使用により、解体や除却に伴う廃棄物の排出を抑制するとともに、建て替え費用の削減によって県民の住宅に対する負担を軽減します。また、より豊かでやさしい暮らしへの転換を図るため、長期優良住宅等の良質な住宅の供給、適正な維持管理の推進及びリフォームの促進等を進め、住宅をより長く大切に使う社会の実現を目指します。
県では平成29年3月に策定した「群馬県住生活基本計画2016」において、以下の2つの指標を掲げ施策を実施しています。
県では、市町村が2R事業を推進するため、会議等を通じて全国の先進的な取組や、参考事例の紹介をしています。
平成30年度は、群馬県のごみ排出に関する調査結果の分析や、全国で取り組まれている食品ロス削減の取組について情報提供をしました。
「みんなのごみ減量フォーラム」を群馬県環境アドバイザー連絡協議会と共催し、ごみ減量に関する講演会、ごみ減量等に積極的に取り組む団体等の事例発表、意見交換等を行っています。
市町村や食品関連事業者、農業者団体等に対し、各部局を通じて、食品ロス削減に係る制度や事業等の情報を周知します。
食品の食べ残しや食材の使いきりに取り組む飲食店や旅館・ホテル、食料品小売店を「ぐんまちゃんの食べきり協力店」として登録し、生ごみの減量や食品ロスの削減を推進しています。
平成30年度末の、ぐんまちゃんの食べきり協力店数は、次のとおりです。
飲食店 183店舗
旅館・ホテル 17店舗
食料品小売店 148店舗
合計 348店舗
また、食品の使いきり、料理の食べきり、生ごみの水きりを行う「ぐんまちゃんの3キリ運動」の周知と実施を呼びかけ、食品ロス削減と生ごみの減量を推進しました。
バイオマス利用率 77%(平成29年度)
第1項 質の高い資源の循環的な利用に向けた普及・啓発
ごみの分別区分の現状や分別品目の拡大に当たっての課題などについて、県内全市町村を対象にアンケートを実施しました。
回答のあった効果的な取組・内容については、ごみ分別区分やルールの標準化の契機となるよう、市町村と情報共有しています。
一般廃棄物の処理実態等について県民に正しく認識してもらうとともに、ごみの分別排出等を適切に進めるため、「ぐんま3R宣言」や「みんなのごみ減量フォーラム」を活用した普及・啓発等を行っています。
平成30年度は、「みんなのごみ減量フォーラム」の展示コーナーにおいて、雑紙を分別する際の混入の禁忌品についての実例を紹介しています。
容器包装廃棄物は家庭から排出されるごみのうち容積比で約60%を占めると推定され、その中にはリサイクル可能な資源が多く含まれています。
これら廃棄物を適正処理し、資源の有効利用を図るため、平成9年4月に「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が完全施行されました。
当初、分別・収集等の対象は7品目でしたが、平成12年4月に「段ボール」「その他プラスチック製容器包装」(その他プラスチック)「その他紙製容器包装」(その他紙)が加わり、現在は10品目が対象となっています。
この法律では、消費者、市町村、事業者に次のような役割を定めています。
県内市町村における分別収集の状況については、「その他紙」や「白色トレイ」などの収集は一部の市町村のみですが、「茶色ガラス」や「ペットボトル」などは全市町村で収集されるなど、多くの品目で分別収集が行われています。
平成30年度の対象品目毎の分別収集量は、「ペットボトル」「その他プラスチック」「その他紙」は増加しましたが、他の品目は横ばい又は減少傾向でした。
また県では、平成29年3月に、平成29年度から33年度までの5年間を計画期間とする、「第8期群馬県容器包装廃棄物分別収集促進計画」を策定し、市町村と協力して容器包装廃棄物の分別収集の一層の促進を図っています。
家庭用として製造・販売されたテレビやエアコン等の適正処理及び資源の有効利用を目的に、平成13年4月に「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)が施行されました。
この法律では、消費者、小売業者、製造業者等に次のような役割を定めています。
当初、リサイクルの対象品目は、エアコン、ブラウン管式テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機の4品目でしたが、平成21年4月から液晶・プラズマ式テレビ、衣類乾燥機が対象品目に追加されました。
また、平成27年4月には、ブラウン管式テレビ以外の再商品化率が引き上げられ、更なるリサイクルの推進、廃棄物の減量と資源の有効利用が図られることになりました。
県内の廃家電の指定引取場所5か所における引取台数は、表2−5−2−1のとおりで、法施行後、廃家電の収集やリサイクルは概ね順調に行われています。
廃家電を処分する場合は、購入した小売店に持ち込むなど適正に処理する必要があります。一方で、不法投棄される廃家電もあります。
そのため、県や市町村では未然防止対策として、パトロールの実施や日本郵便株式会社等との不法投棄の情報提供に関する協定の締結、広報媒体を通じた適正処理の周知等の取組を行っており、不法投棄台数は減少傾向にあります。
使用済小型電子機器等に含まれている、有用資源のリサイクル等を目的に、平成25年4月に「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が施行されました。
この法律では、消費者、小売業者、自治体等に次のような役割を定めています。
リサイクルの対象品目は、携帯電話、デジタルカメラ、ヘアードライヤーやゲーム機など身近な小型電子機器の28品目です。
具体的な回収方法や対象品目は市町村により異なっていますが、県内の市町村における回収実施状況は表2−5−2−2のとおりで(表は省略)、回収を実施している市町村、人口割合とも年々増加しています。
家電リサイクル法の対象となる廃家電のうち小売業者が引取義務を負わないもの(義務外品)については、消費者の排出利便性を確保し、不法投棄や不適正処理を防ぐ観点から、市町村が、地域の実情に応じ、小売業者や一般廃棄物収集運搬業者と連携した回収体制を構築する必要があります。
回収体制は、1市町村が回収する2協定等により小売業者が回収する3協定等により一般廃棄物収集運搬業者等が回収する、に大別されます。
県では、関係団体への協力を求めるなど、県内全ての市町村で回収体制を構築できるよう助言等をしています。
市町村が小型家電を効果的に収集する方法には、ボックス回収、ステーション回収、ピックアップ回収、イベント回収等があり、市町村は地域に適した回収方法を検討する必要があります。
県では、小型家電の回収未実施の市町村に対し比較的取り組みやすい回収方法からの開始を、既に回収に取り組んでいる市町村には回収品目の拡大・回収量の増加が図れるよう、助言等しています。
県が回収した使用済小型家電からは、金メダル、銀メダルであれば約2分の1個、銅メダルであれば約43個が製作できるものと試算されます。
県では、このプロジェクトを一過性のものとせず、市町村との連携により、小型家電リサイクル制度の普及・定着に引き続き努めてまいります。
プロジェクト終了後も、市町村が行う使用済小型家電の回収に引き続き御協力をお願いします。
県では、産業廃棄物の再生利用を行う施設を整備しようとする事業者を対象とした融資制度(産業廃棄物処理施設整備資金)を設け、支援等を行っています。
平成30年度実績は1件でした。
ラジオや新聞等の広報により制度の活用を呼びかけたほか、平成29年度に作成した「ぐんまちゃんのごみBOOK」において、事業所(工場・製造業など)における3Rの取組例を紹介しています。
廃棄物等の有効活用を図る優良事業者の取組事例を、群馬県環境情報ホームページ「ECOぐんま」や、「ぐんまちゃんのごみBOOK」に掲載し、幅広く情報提供しています。
産業廃棄物処理施設の設置許可申請等の事前手続として、適正処理の推進、周辺地域の生活環境の保全等を図るため、「群馬県廃棄物処理施設等の事前協議等に関する規程」を定めています。
この規程では、資源化に寄与するとともに、周辺の生活環境への配慮がなされている再生利用施設で、工業地域等周辺地域の生活環境への影響の程度が低い場所に施設が計画される場合には、手続を簡素化することで、処理施設の確保に向けた支援を行っています。
資源を有効に活用し循環を基調とした社会を構築するためには、環境への負荷が少ないものを意識して購入する、いわゆる「グリーン購入」を推進し、需要面から環境物品等の市場拡大を促進することが必要です。
そのため、平成12年度に「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)が制定され、国や地方公共団体は、率先して環境物品等の調達に努める旨が規定されました。
県では、平成13年6月に「循環型社会県庁行動プラン−エコDo!−」を策定し、県庁の行政事務に必要な物品等の購入にあたって、グリーン購入達成率100%を目標に取り組んできました。また、平成23年に策定した「地球温暖化防止実行計画(事務事業編)」においても、引き続きグリーン購入100%を目標に取り組んでいます。
平成30年度の特定品目におけるグリーン購入実績については、表2−5−2−3のとおりです(表は省略)。
表中の「その他繊維製品」は、必要な機能を備えかつグリーン購入基準を満たす製品がなかったという理由で、購入実績が低くなっています。
グリーン購入について更に周知を図るとともに、より環境に配慮したものを選択していくことが、今後の課題となります。
農業の生産現場から排出されるプラスチック等の廃資材は、排出者である農業者の責任で適正に処理する必要があります。
廃資材は、可能な限り再資源化を図ることにより、循環型社会の構築に寄与するとともに、農村環境の保全を図ることとしており、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルによる処理を推進しています。
なお、それぞれの農業者から排出される廃資材は少量であるため、適正かつ効率的な処理をするための体制を整える必要があります。
県内各地に農業用廃資材の集団回収やリサイクルの普及啓発を行う地域協議会が設立され、活動しています。
廃石膏ボードは産業廃棄物として、管理型の最終処分場で処分されています。しかし、処分場の数は少なく、その処分には多額の費用がかかっています。
この廃石膏ボードを再資源化し、循環型社会の構築を図るため、平成22年度から群馬大学との共同研究により、廃石膏ボードを焼成乾燥させることによって生成される「半水石膏」の公共工事への利用を進める取組を行っています。
バイオマスとは生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、動植物に由来する有機性資源(石油などの化石資源を除く)のことです。
バイオマスは、植物が成長過程で光合成により大気中の二酸化炭素を固定して作り出した有機物に由来するため、燃焼しても実質的には大気中の二酸化炭素を増加させることにはなりません。このように二酸化炭素の増減に影響を与えない性質のことを「カーボンニュートラル」といいます。そのため、バイオマスは、化石燃料に代替する再生可能エネルギーとして注目されています。
平成21年9月に「バイオマス活用推進基本法」が施行され、平成22年12月には、国の「バイオマス活用推進基本計画」が策定されました。
これを受け、県ではバイオマス活用施策を効果的に推進するため、平成24年3月に「群馬県バイオマス活用推進計画」を策定しました。
これまで計画の進捗状況について点検・評価を行ってきましたが、計画の策定から5年が経過したことから、バイオマスを取り巻く状況の変化や計画の進捗状況等を踏まえ、平成29年3月に計画を改定しました。
豊豊富に存在するバイオマスを有効活用した地域循環型システムを構築し、新たな技術の開発と産業の育成により、環境負荷の少ない低炭素・循環型社会を実現する『バイオマス先進県ぐんま』を目指すことを基本理念としています。
バイオマスの種類ごとに令和3年度の利用率の目標値を定めています。
計画策定時(平成22年度)と比べ、バイオマスの利用率が6ポイント上昇しています。
本県では、バイオマス活用推進計画の基本理念・基本目標の達成を目指して、学識経験者・市民活動団体・NPO・事業者・行政から構成される「群馬県バイオマス活用推進委員会」を中心に、県庁各部局で構成される「群馬県バイオマス利活用推進連絡会議」と協力・連携し、持続可能な低炭素・循環型社会の実現に向けた取組を総合的・計画的に推進します。
生ごみは、家庭から排出される可燃ごみの3割以上を占めています。生ごみの主なバイオマス利用の現状は、焼却施設での熱回収です。
現在、家庭から排出される生ごみを活用して堆肥等にリサイクルしている自治体もあります。
今後は、堆肥化に加え飼料化やバイオマスエネルギー利用など、多様で質の高いバイオマス利活用が期待されます。
平成29年度の家庭から排出される生ごみのバイオマス利用率(炭素換算)は78%でした。
木質バイオマスの利用は、森林資源の有効活用や木材需要の拡大だけでなく、高齢化や労働人口流出等の課題を抱える山村地域にとって、新たな雇用創出や産業振興にもつながることが期待されています。
特に、地域資源である地元の森林から産出される未利用な低質材を、木質バイオマスエネルギーとして地元で発電や熱に利活用する「地産地消」の取組は、持続可能な森林資源を活用した循環型社会づくりにつながることから、それらの取組を支援します。
平成13年5月に施行された食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)では、食品製造等で生じる加工残さ、売れ残りや食べ残し等の「発生抑制」を行い、発生した食品廃棄物等については、飼料や肥料として「再生利用」に取り組む事で、廃棄処分を減らすとともに、環境負荷の少ない循環型社会の構築を目指しています。
平成24年4月からは食品関連事業者を16の業種に設定し、各業種ごとに食品廃棄物等の発生量の目標値が設定されました。
これを契機にフードチェーン全体における「発生抑制」の取組の更なる推進が期待されています。
食品廃棄物の再生利用を促進していくために、国は地域における食品廃棄物等のリサイクルの実践、リサイクル技術の普及等の取組に対しての支援を行うほか、年間100トン以上の食品廃棄物を発生させている食品関連事業者に対しては定期報告義務を設け、再生利用等の取組を確保するためその把握に努めています。
また県では、企業に対して認定制度や補助制度の紹介を行うなど、国と連携して食品リサイクルの普及促進を図っています。
公共事業で発生する木くず(建設発生木材)について、再資源化を図り、有効利用を促進しています。
「建設発生木材」のチップ化による、木質ボード、堆肥等の原材料としての利用とともに、チップ化による利用が技術的に困難な場合や環境への負荷が大きい場合には、燃料として利用を促進しています。
第3節 廃棄物等の適正処理の推進
〈主な指標と最新実績〉
一般廃棄物の最終処分量 71千トン(平成29年度)
産業廃棄物の最終処分量 118千トン(平成29年度)
産業廃棄物の再生利用率 51.6%
不法投棄早期解決率 64%
市町村土砂条例制定数 25
家庭等から出されるごみやし尿などの一般廃棄物を衛生的に処理することは、私たちの生活環境を守り、公衆衛生の向上を図るうえで大変重要です。
一般廃棄物の処理は、市町村が計画(一般廃棄物処理計画)を定めて、その計画に基づいて行われています。
県では、市町村における一般廃棄物の処理が適正に安定して行えるよう、ごみ処理施設等の建設や維持管理に係る情報提供や技術指導を実施しています。
平成29年度のごみ総排出量は約717千トンであり、県民一人一日当たり986グラムとなっています。(県民一人一日当たりの内訳は、生活系ごみが751グラム、事業系ごみが236グラムです。)
し尿は、下水道終末処理施設、浄化槽、し尿処理施設等により処理が行われています。
平成29年度では約1,892千人(約95.0%)が、し尿を浄化槽や公共下水道等を使用し、水洗化による処理を行っています。また、くみ取りし尿や浄化槽汚泥は、平成29年度では約48万kLがし尿処理施設で処理されました。
市町村、一部事務組合及び県で構成する「群馬県一般廃棄物処理施設等連絡協議会」を組織し、処理施設の維持管理担当者を対象とする研修と情報交換を行っています。平成30年度は、一般廃棄物処理施設の視察研修(県内3施設、県外1施設)を実施しました。
また、当協議会の活動とは別に、市町村等の一般廃棄物実務担当係長を対象とした、一般廃棄物処理実態調査の分析結果等の説明会及び外部講師による紙類リサイクルの研修会を実施しました。
県内の市町村及び一部事務組合における、ごみ処理及びし尿処理は、焼却施設(23か所)、粗大ごみ処理施設・資源化施設(27か所)、ごみ固形燃料化施設(3か所)、高速堆肥化施設(2か所)、最終処分場(23か所)、し尿処理施設(20か所)で行われています。
これらの施設の適正な維持管理の確保を目的に、県は、平成30年度に、これらのうち45施設の立入調査を実施し、施設の維持管理に係る基準等の遵守状況について監督指導を行いました。
循環型社会形成推進交付金(環境省)等の交付金制度を活用して廃棄物処理施設を適切に整備できるよう、市町村等が循環型社会形成推進地域計画を策定し、交付金を活用して施設設備をする際に、助言指導を行いました。
循環型社会形成推進交付金等の交付を受けて行った県内の事業の実施状況は表2−5−3−4のとおりです(表は省略)。
県内の市町村が整備する一般廃棄物処理施設について、効率性、経済性及び環境に与える負荷の低減、さらには循環型社会形成の推進の観点から、一般廃棄物処理の広域化を推進することを目的に、平成20年1月に「群馬県一般廃棄物処理マスタープラン」(平成19年度~平成28年度)、平成29年3月に「群馬県一般廃棄物処理広域化マスタープラン」(平成29年度~令和8年度)を策定しました。
県では、本マスタープランにおいて、県全体として最適と考える広域化のためのブロック区分、施設集約の将来像、市町村間の協議の方法、県による支援等を示すことにより、市町村による広域化に向けた検討及び協議を促進し、もって県全体として調和のとれた広域化を推進します。
また、本マスタープランを実効性のあるものにするため、広域ブロックごとに、順次その構成市町村を対象に、広域化処理を構築するための組織設立の支援を行っています。
平成30年度は、吾妻ブロック及び利根沼田ブロックの市町村等に対し、広域化に向けた事務の進め方や広域的な施設整備のための交付金の交付手続等に係る相談対応や情報提供等を行いました。
様々な事業活動に伴って県内で排出される産業廃棄物は、平成29年度実績(環境省「平成30年度廃棄物の広域移動対策検討調査」)では、表2−5−3−7のとおり、年間約315万トンと推計されています(表は省略)。
産業廃棄物の種類別の取扱量については、がれき類が最も多く、以下、木くず、廃プラスチック類、汚泥の順となっています。このうち、中間処理*2量については、県内処理では、がれき類が最も多く、次いで木くずであり、県外処理では、汚泥、廃プラスチック類、がれき類の順となっています。一方、最終処分(埋立)については、県内処理では、がれき類、ガラスくず等、廃プラスチック類の順に多く、県外処理では、廃プラスチック類、がれき類、汚泥の順となっています。
また、県内で発生した産業廃棄物の広域移動量は、表2−5−3−8のとおりで、中間処理量及び最終処分量の合計は、県内処理が年間約216万トン、県外処理が年間約99万トンであり、7割程度が県内で処理されています。なお、約104万トンが県外から搬入されるなど、産業廃棄物の処理は広域的に行われています。
さらに、産業廃棄物の再生利用率は、平成29年度の推計値(平成30年度群馬県廃棄物実態調査)で、51.6%でした。利用量の多いものでは、がれき類が土木・建設資材へ、汚泥が肥料・土壌改良材やセメント原材料へと利用されていました。
*1産業廃棄物:廃棄物のうち、事業活動に伴って生じた燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定めるものを産業廃棄物といい、20種類が定められています。また、そのうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものは特別管理産業廃棄物として区分されています。
*2中間処理:産業廃棄物を埋立処分などする前に、減容化・無害化・安定化などの処理をすることをいいます。
産業廃棄物処理業者の状況は、表2−5−3−10のとおり、施設設置許可の状況は、表2−5−3−11のとおりです(表は省略)。
県民生活や産業活動を維持する上で、産業廃棄物の「処理施設」の整備は不可欠ですが、生活環境への悪影響を懸念する周辺住民の反対等がある中で、新たな施設の設置は依然として難しい状況にあります。
県では、生活環境に配慮した優良な処理施設を確保するため、排出業者や処理業者に対する指導と廃棄物処理に対する県民の信頼の向上に努めています。
産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任で適正に処理することが義務付けられています。県では、排出事業者に対して、排出者責任の啓発や適正処理に関する指導を行うため、産業廃棄物相談員を県内3か所(廃棄物・リサイクル課、西部森林環境事務所、東部環境事務所)に配置しています。
平成30年度は、表2−5−3−12のとおり、406事業所を訪問し、廃棄物の排出抑制や再生利用、適正処理等に関する指導・相談を行いました。
また、併せて廃棄物・リサイクル課ホームページ「群馬県産業廃棄物情報」により、関係法令や処理業者に関するデータ等、廃棄物に関する各種最新情報をわかりやすく排出事業者や県民にお知らせしています。
産業廃棄物は、排出事業者が自ら適正に処理するほか、その責任において、収集運搬業・処分業の許可を有する処理業者に委託して処理することとされています。
処理業者に対しては、不適正処理につながるような行為が行われていないかを確認するため、毎年度、定期的に立入検査を実施しています。
平成30年度は、表2−5−3−13のとおり、延べ301事業所に対して立入検査を実施しました。
また、排出事業者の身近な良きアドバイザーとなる産業廃棄物処理業者を育成するため、法改正等に関する研修を実施しています。
なお、不適正処理等により廃棄物処理法に違反したり、欠格要件に該当した処理業者に対しては、許可取消等の行政処分を行っており、平成30年度は6業者に対して許可取消の行政処分を行いました。
廃棄物処理施設の設置にあたり、廃棄物処理法やその他関係法令の手続を行う前段階として、事前協議制度を実施しています。この制度は、持続可能な循環型社会づくりに向けて、地域理解の促進や廃棄物の適正処理の推進を図り、また、周辺地域の生活環境の保全や周辺施設への適正な配慮を図ることを目的としています。
平成25年4月は、施設の立地規制の追加や事業計画の周知方法の改善、手続の長期化防止策等について、見直しを行いました。
また、現行の事前協議制度が前回改正から5年を経過したことから、県の公共関与について、これまでの検証及び今後のあり方の検討をした結果、これまでと同様に、事前協議制度によるソフト的関与を継続することとしました。
平成22年の廃棄物処理法の改正により、優良産廃処理業者認定制度が新たに設けられ、事業の実施に関する能力・実績が一定の基準を満たす処理業者は、優良認定を受けられるようになりました。
この認定は、排出事業者が安心して廃棄物処理を委託できる優良業者を選ぶ目安になっています。
なお、処理業者にとっては、認定を受けることで通常5年である許可の有効期間が7年に延長され、許可更新に要する負担軽減が図られ、特に広域的に事業展開する処理業者にとって大きなインセンティブになります。
また、遵法性や事業の透明性等、法令の基準に適合し優良認定を受けた処理業者に対して、県の融資制度において優先的支援を行う等により、優良な処理業者を育成し、より信頼できる産業廃棄物処理体制の整備を進めています。
県では、新たな設置の理解を得ることが難しい状況にある最終処分場について、周辺住民にとって安全で安心できる施設を確保するため、最終処分場モデル研究事業として、平成14年2月に桐生市新里町地内に安定型モデル処分場を設置しました。
モデル処分場は、1地元地区代表、事業者及び行政で組織する運営連絡協議会を定期開催、2地域住民の見学の積極的受入れ、3県嘱託職員が常駐し、許可品目以外の廃棄物が混入しないよう監視するなど、地域に開かれた運営に努めました。
なお、モデル処分場は、平成29年1月で埋立てが終了したことから、廃止までの間、事業者に対して指導監督を行うとともに、地元地区代表、県及び桐生市で組織する跡地利用策定委員会で協議し、跡地利用計画を策定しました。
使用済自動車から発生する廃棄物の減量、適正処理や資源の有効な利用の確保等を目的に、平成17年1月1日に「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(自動車リサイクル法)が本格施行されました。
この法律では、自動車所有者、引取業者や解体業者等に次のような役割を定めています。
自動車リサイクルを推進する上では、自動車の所有者や関連事業者の理解と協力が必要なことから、県では、各種の広報媒体を通じて、制度の仕組み等について周知を行っています。
県と中核市(前橋市・高崎市)は、法の規定を満たした使用済自動車の引取業者及びフロン類回収業者の登録、解体業者及び破砕業者の許可を行っています。
県と中核市では、登録業者や許可業者が、法で定められた作業を遵守しているか、施設が基準に適合しているかを確認するために、立入検査を実施しています。
また、併せて、登録や許可を受けずに使用済自動車の保管や解体を行っている疑いがある業者についても、監視指導を行いました。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、難分解性で、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であることなどから、PCB廃棄物の保管、処分等について必要な規制等を行うことを目的に、平成13年7月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が施行されました。
この法律に基づき、変圧器(トランス)、コンデンサーなどPCBを含む廃棄物を保管する事業者は、毎年度、知事又は中核市長(前橋市・高崎市)に保管・処分状況を届け出る義務があり、届出状況は表2−5−3−20のとおりとなっています(表は省略)。届出を行った事業場に対しては、適正な保管等を行うよう指導しています。
PCB廃棄物を安全・適切に処理するために、平成16年4月に国が全額を出資して、中間貯蔵・環境安全事業(株)(JESCO)が設立されました。県内の事業場に保管等されている高濃度のPCBを含有する機器については、平成20年5月から室蘭市にある同社の北海道PCB処理事業所において、処理が行われています。この事業所における処分期間は、変圧器(トランス)・コンデンサー等は令和3年度末まで、安定器・汚染物等は令和4年度末までであり、期間内に必ず処分を終えるよう計画的に準備を進める必要があります。
一方、低濃度のPCBを含有する廃棄物については、国が認定した無害化処理認定施設等で、令和8年度末までに処分する必要があります。
PCB廃棄物は処分期間が定められていますが、未届出の事業者がいるおそれがあることから、県や中核市ではアンケート等による掘り起こし調査を実施しています。未届出の事業場が確認された場合は、届出を指導するとともに、期間内に処分するよう指導していきます。
なお、PCB廃棄物の処理費用は高額となることから、次のとおり支援制度が設けられています。
水銀に関する水俣条約(平成29年8月16日発効)を踏まえた水銀対策として、平成27年6月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」が制定され、同年11月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」が、同年12月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」が改正されました。
その後、平成29年度に「廃水銀等」「水銀含有ばいじん等」「水銀使用製品産業廃棄物」を定義したほか、産業廃棄物処理施設への追加や、処理基準の追加などが定められ、平成30年度においては、水銀使用製品産業廃棄物の追加、廃水銀等を排出する特定施設の追加が定められ、平成31年3月3日に施行されました。
県では、ホームページ「産業廃棄物情報」における広報等で、水銀廃棄物の排出者である家庭や事業者及び処理主体である市町村や処理業者に対して、法令や処理に関する情報提供を行っています。
平成30年度に県内で新たに認知した不法投棄は、56件・780トンでした。県が認知した11件のうち、平成30年度中に撤去等により解決に至ったものは7件で、不法投棄早期解決率は64%でした。
不法投棄の大規模な事案は減少し、全体として小規模化傾向にありますが、依然として後を絶たない状況です。
不法投棄された廃棄物の種類では、建設系の廃棄物が7割を占めています。
不法投棄や不法焼却、不適正保管などを総称して「不適正処理」と呼んでいます。
平成30年度に県内で新たに認知した不適正処理は、118件・2,285トンでした。
不適正処理の種類では、不法投棄が最も多くなっています。不適正保管と不法焼却は、30件前後で推移しており、依然として後を絶たない状況です。不適正保管は、事業者が一時保管と称して資材置場等に解体廃材をため込む事案が増加しています。
不法焼却については、廃棄物の焼却は原則禁止されていますが、いわゆる野焼きで廃棄物を処分しようとした事案が多くを占めています。
県では、廃棄物の不法投棄等の不適正処理事案を未然に防止し、また、早期に発見するとともに、発生した事案については、早期に解決することにより、本県の良好な生活環境の保全に努めています。
主な取組内容は、次のとおりです。
a 事業者向け実地調査
県警、市町村及び関係団体の協力のもと、主に県外から流入する産業廃棄物を対象に、「産業廃棄物収集運搬車両の路上調査」を実施しています(平成30年10月12日国道17号尾島パーキング)。
a 情報の入手
b 監視指導(パトロール)
a 警察・市町村等関係機関との連携強化
認知した事案に対しては、廃棄物・リサイクル課(出向警察官を含む)及び(森林)環境事務所の担当職員が、警察や県職員に併任発令された市町村職員と連携を図り、迅速かつ綿密な調査を行った上、原因者に対し強力な是正指導を行い、現場の原状回復を図るとともに不適正処理の再発防止に努めています。
県では、廃棄物の不法投棄等の不適正処理事案の未然防止、早期発見のため、上毛新聞、FM群馬、群馬テレビ及び県広報資料等の各種広報媒体や特命産廃Gメン「G-FIVE」による啓発活動により、廃棄物不適正処理防止に係る事業者、県民等の意識啓発を図っています。
また、廃棄物の不適正処理を防止し、適正処理の気運を高めるため、県警、(公社)群馬県環境資源創生協会、産業界及び市町村と連携して、「不適正処理防止啓発県民の集い」を開催しています(平成30年10月13日ヤマダ電機LABI1高崎)。
県警察では、悪質・巧妙化する廃棄物事犯に迅速に対応するため、生活安全部生活環境課に経済・環境事犯特別捜査係を設置し、各警察署と連携して環境犯罪に対する取締りを積極的に推進するほか、県や中核市に警察官を出向・派遣し、関係機関との情報交換や共同臨場等行政と連携した活動を行っています。
また、環境被害の拡大防止と早期の原状回復を図るため、関係機関に必要な情報提供を行っています。
平成30年4月1日現在、県知事部局に2人、前橋市及び高崎市に1人ずつ出向し、又は派遣しています。
不適正処理事案への対応を強化するために、市町村職員を群馬県職員に併任して産業廃棄物に関する立入検査権を付与しています(平成31年3月31日現在、中核市2市を除く33市町村104人)。
市町村と連携した廃棄物不法投棄監視体制の整備・強化を図り、不法投棄の未然防止、拡大防止及び原因者の特定をするため、市町村に不法投棄監視カメラを貸出しています。
警察・市町村等関係機関の担当者を集めた連絡会議を定期的に開催し、情報交換を図るとともに、広域的な事案に対しては、共同で対応するなどの連携を図っています。
本県は、山間地や河川が多く、廃棄物の不法投棄が行われやすい環境にあることから、県警ヘリコプター「あかぎ」によるスカイパトロールを定期的に実施し、目の届きにくい山間部等を上空から監視することで、不法投棄等の発見に努めています。
また、県警察では、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を重点に取締りを強化しています。
平成30年中における「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)違反の検挙状況は、表2−5−3−25のとおりであり(表は省略)、平成26年以降の推移は図2−5−3−3のとおりです(図は省略)。
最近の特徴としては、大規模な不法投棄等は減少し、小規模な不法投棄や違法焼却が目立つ傾向にあります。
具体的には、家屋の解体工事に伴って排出される木くず、がれき類等の不法投棄やビニール類の違法焼却のほか、家庭から排出される粗大ごみ等の不法投棄や違法焼却も目立っています。
大同特殊鋼(株)渋川工場の製鋼過程で副産物として排出された鉄鋼スラグは、路盤材として出荷されていました。
平成25年6月、渋川市内の道路の改修工事に際し、路盤材として使用されていた当該スラグを検査したところ、土壌環境基準・「土壌汚染対策法」の指定基準(土壌環境基準等)を超えるふっ素及び六価クロムが検出されました。
県では、これを契機に調査を開始し、平成26年1月以降、同工場及び関係会社に対して廃棄物処理法に基づく立入検査を実施するとともに、鉄鋼スラグの取扱い状況等について報告を求めました。
平成13年にふっ素の土壌環境基準が設定され、平成15年にふっ素の指定基準を設定した土壌汚染対策法が施行されました。
これに伴い、鉄鋼業界では、ふっ化物(蛍石)を使用しない操業への移行や、鉄鋼スラグに含まれる有害物質の検査を行い、環境安全性を確認して路盤材等に再生利用する方法がとられてきました。
しかし、同工場は、その後もふっ化物(蛍石)の添加を止めることなく、また、鉄鋼スラグの大半がふっ素の土壌環境基準等を超過していることを承知したうえで出荷を続け、当該スラグが使用された施工箇所の一部で基準を超える土壌汚染を生じさせました。
ふっ素の土壌環境基準等が設定されて以降、同工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり、また、平成14年4月から平成26年1月までの間、関係者の間で逆有償取引等が行われていたことから、当該スラグを廃棄物と認定しました。
記録が確認できた平成14年4月から出荷を停止した平成26年1月までの間、同工場から出荷された鉄鋼スラグの総量は、29万4,330tです。
県は、平成27年9月、廃棄物処理法に基づく調査の結果を公表するとともに、廃棄物処理法違反で関係者を県警に告発しました。また、平成28年8月、関係会社に対して廃棄物処理法に基づく許可取消処分を行いました。
大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグの使用箇所について、公共工事は工事実施主体に調査を要請、民間工事は大同特殊鋼(株)に対し、調査及び県への報告を指示しています。
平成30年12月末現在、当該スラグの使用が確認された工事は、公共工事348か所、民間工事124か所の計472か所です。このうち、土壌汚染が確認された158か所について、県が直接周辺地下水の調査を実施したところ、これまでの調査の結果では、地下水への影響は認められませんでした。
今後とも当該スラグの使用箇所の解明を進め、判明した使用箇所はすべて県がリスト化します。新たに使用箇所が判明した場合には、これまでと同様の方法で環境調査を行い、県民の皆様の安全・安心の確保に努めていきます。
近年、建設工事に伴い排出された土砂等による埋立て等について、周辺住民から有害な物質の混入や堆積された土砂等の崩落を心配する声が増えています。
そこで、生活環境を保全するとともに、土砂災害の発生を防止するため、平成25年6月に「群馬県土砂等による埋立て等の規制に関する条例」(県土砂条例)を制定しました。
県では、厳正な許可審査や立入検査等により土砂等の埋立て等の適正化を推進するとともに、広報啓発、不適正処理対策と同様の監視指導、警察及び関係機関との連携により、不適正事案等の未然防止・早期発見・早期解決に取り組んでいます。なお、主な規制内容は次のとおりです。
埋立て等のために搬入される土砂等の汚染に関する基準(土壌基準)を規則で定め、土壌基準に適合しない土砂等による埋立て等を禁止しています。
土砂等による埋立て等を行う区域以外の場所から排出又は採取された土砂等により、3,000平方メートル以上の埋立て等を行う事業(特定事業)を許可の対象とし、特定事業を行おうとする者(事業者)は、原則として知事の許可を要することとしています。
排出現場の確認及び土壌の安全性を担保するため、許可を受けた事業者は、土砂等を搬入する10日前までに、排出現場ごとの土砂等排出元証明書及び当該土砂等に係る土壌検査証明書を添付のうえ、届出書を提出しなければなりません。
許可を受けた事業者に対し、特定事業区域の定期的な土壌検査及び検査結果の報告を義務付けるとともに、立入検査を実施しています。
県土砂条例の規制が及ばない3,000平方メートル未満の土砂等の埋立て事案に対応するためには、各市町村において、地域の実情に合わせた市町村土砂条例を制定することが不可欠です。
このため、県では、市町村に対して市町村条例“例”の提供、条例の必要性の説明など、市町村条例の制定促進に取り組んでいます。
公共事業から発生する土砂(建設発生土)については、工事間の利用調整を行うことで、他工事における有効利用及び、それに伴う不要な残土の抑制を図ってきたところですが、施工時期の不整合等により、その調整が進まない状況でした。
このため、建設発生土を一時的に仮置きできる「建設発生土ストックヤード」を整備することにより、建設発生土の工事間での有効利用を促進し、建設発生土の適正な処理を図ります。
現在、前橋地域において、建設発生土ストックヤードを運用しております。今後は、ほかの地域においても、新たな整備・運用に向け、検討を進めていきます。
平成27年7月に廃棄物処理法が一部改正され、都道府県が定める廃棄物処理計画において非常災害時における廃棄物の適正処理等に関して必要な事項を定めることとされました(法第5条の5第2項第5号等)。
そこで、県では、「第二次群馬県循環型社会づくり推進計画」に基づいて、平成29年3月に、災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理に向けて「群馬県災害廃棄物処理計画」を策定しました。
この計画では、平時における備えから大規模災害発生時の対応までの、切れ目のない対策を定めています。
災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するためには、災害廃棄物の処理主体である市町村において災害廃棄物処理計画を策定することが必要です。
このため、県内の全市町村が速やかに計画を策定できるよう、「群馬県災害廃棄物処理対策協議会」等を通じた情報提供や、担当職員を対象とした研修会を実施しました。
また、「群馬県災害廃棄物処理計画」の資料編において、市町村災害廃棄物処理計画策定マニュアル及びモデル計画を示すなど、市町村災害廃棄物処理計画の策定支援に取り組んでいます。
大規模災害時には、災害廃棄物の処理のために、市町村域や県域を越えた連携が不可欠です。
県では、災害廃棄物等の処理を円滑に実施するための相互応援協定を市町村、清掃関係一部事務組合及び関係事業者団体等と締結しています。
また、平成28年9月に「群馬県災害廃棄物処理対策協議会」を設置し、県内の市町村及び関係団体との連携体制を構築しました。
さらに、環境省関東地方環境事務所、関東ブロック10都県及び政令市、中核市等で構成する大規模災害時廃棄物対策関東地域ブロック協議会において「大規模災害発生時における関東ブロック災害廃棄物対策行動計画」(平成29年3月)が策定され、広域的な支援体制が構築されています。
大規模災害時において、早期の復旧・復興を図るためには、公共の廃棄物処理施設を、通常の廃棄物処理に加え、災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための拠点と捉え直し、平時から廃棄物処理の広域的な連携体制を築いておく必要があります。
地域の核となる廃棄物処理施設においては、地震や水害によって稼働不能とならないよう、施設の耐震化、地盤改良、浸水対策等を推進し、廃棄物処理システムとしての強靱性を確保することが重要です。
特に焼却施設については、大規模災害時にも稼働を確保することにより、地域の災害対応拠点として、電力供給や熱供給等の役割も期待できます。
そのため、県では、循環型社会形成推進交付金制度等の事務を通じ、一般廃棄物処理施設を整備する際の耐震化や災害拠点化のために必要な設備整備に係る情報提供を行う等、災害廃棄物処理体制の構築に向けた支援を行っています。
また、平成29年3月に策定した「群馬県一般廃棄物処理広域化マスタープラン」では、市町村が整備する廃棄物処理施設が災害対応拠点となるよう、広域ブロック区分の検討要素の1つに災害対策(広域施設の立地地域の避難場所への電力供給可能率)を設定しています。