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守るべき松林における松くい虫被害量(被害材積)467立方メートル
ナラ枯れ被害量(被害材積)248立方メートル
保安林面積(累計)234,592ヘクタール
治山事業施工面積 36ヘクタール
森林経営計画区域内の林道・作業道新設延長 975キロメートル
(2011[平成23]年度からの累計)
1 間伐等の推進【林政課】
森林は、木材や多様な林産物を生産しながら、水源の涵養、土砂の流出や崩壊の抑制、二酸化炭素の固定、生物多様性の保全、防風・騒音緩和など生活環境の保全、癒やしやレクリエーションの場を提供するなど、多様な公益的機能を発揮しています。
スギやヒノキなどの人工林では、植栽後の樹木の成長を促すための下刈りや、樹木の成長に応じて生育密度を調整する「間伐」などの施業を適切に行うことにより、木材としての利用価値を高めるとともに、森林の健全性が高まり、公益的機能の高度発揮が期待されます。
しかしながら、適切に間伐が行われていない森林では、本数が過密になって林内が暗くなり、下層植生が衰退して防災機能や生物多様性の低下を招くほか、樹木の生育不良により、木材生産機能をはじめとする様々な機能が低下してしまいます。
県では、森林所有者等が実施する間伐等の施業実施を支援し、公益的機能の高い森林づくりを推進しています。
2 治山事業の推進【森林保全課】
近年の局地的な集中豪雨の頻発により、山地災害の発生する危険性が高まることが懸念されています。
治山事業は、森林の維持造成を通じて、森林の持つ公益的機能を発揮させることにより、山地に起因する災害から県民の生命・財産を保全するとともに、水源の涵養や生活環境の保全等を図るうえで重要な事業であり、県民の安全・安心な暮らしの実現のために必要不可欠です。
(1)治山施設による山地災害防止・軽減
荒廃した山地や荒廃のおそれの高い保安林、地すべりが発生した地域等において、治山事業を実施しています。荒廃渓流の土砂流出を抑制するための治山ダム工、崩壊斜面を安定させるための土留工、地すべりを防止するための施設等を設置することにより、公益的機能の高い森林づくりを進め、荒廃山地の復旧及び山地災害の予防に努めました。
2019(令和元)年度は、6月から9月にかけて発生した豪雨と台風、さらには記録的な大雨となった10月の令和元年東日本台風(台風第19号)により、県内だけで95か所もの山地災害が発生しました。緊急性の高い箇所から復旧整備を進め、そのほかの箇所についても計画的に事業を実施する予定です。
3 保安林の適正な管理・保全・指定の推進【森林保全課】
水源の涵養、山地災害の防止など、私たちの暮らしを守るうえで特に重要な役割を果たしている森林を、国や県が保安林に指定しています。保安林では、その働きが損なわれないように、立木の伐採や土地の形質変更を制限したり、治山事業によって適切に手を加えるなど、保安林としての機能を維持・増進するために必要な管理を行っています。
2019(令和元)年度末現在、本県の保安林面積は23万ヘクタールで、林野面積の約55%、県土面積の約37%を占めています
4 林地開発許可制度の適正な運用【森林保全課】
保安林以外の民有林については、1ヘクタールを超える開発行為に対する許可制度を通じて森林の土地の適正な利用の確保を図っています。
また、保安林を含めた民有林について森林保全巡視指導員及び森林保全推進員(ボランティア)による森林パトロールを実施し、各種森林被害の予防及び森林被害等に対する適切な応急措置を行うとともに、森林所有者や入山者に対し森林の適切な保護や管理について指導を行っています。
1 利用間伐の促進【林政課】
間伐を適切に実施することは、森林の健全性を高め、森林の持つ多様な公益的機能を高度発揮させるうえで重要です。
また、間伐の際に発生する間伐材を運び出して利用することにより、樹木が吸収した二酸化炭素を木材として固定し続けることができるだけでなく、間伐材を販売して中間収入を得ることにより、森林所有者が森林を手入れする費用の負担を軽減し、その後の適切な森林管理の継続と木材資源の循環利用につなげていくことができます。
間伐で伐った木を運び出すにはコストがかかるため、森林の状態や地形・道路条件等によっては採算が合わず、間伐材を森林内に残置することも少なくありません。そのため、間伐を行う森林をなるべく集約してまとめ、林内路網の整備や高性能林業機械の活用などと併せて施業の効率化を図ることにより、利用間伐を促進しています。
2 森林経営計画区域内における林道・作業道の整備【林政課】
民有林の人工林では、41年生以上の森林が面積で8割を占め、木材資源は量的、質的に充実しています。県では森林環境の保全と森林資源の適正利用を図るため、木材の搬出を伴う森林整備が実施される森林経営計画区域内の林道・作業道整備を推進しています。
(1)林道・作業道の整備
地域資源である県産木材を利用することは、地域の森林が再び育成される森林循環へとつながります。そして健全に育成された森林は、水源の涵養や県土の保全などの公益的な機能を発揮して人々に多大な恩恵をもたらします。
県産木材の生産と利用を進めるには、木材運搬のコストを下げるための林道や作業道が必要不可欠です。
林道は林業関係者や森林のレクリエーション利用等、森林とのふれあいを求める人々が通行する恒久的な道路で、木材生産や森林整備を進めるうえで幹線となるものです。
作業道は、木材生産や森林整備のために林業機械が走行する道路で、簡易な構造で整備が行われています。
3 集約化による計画的かつ効率的な施策の推進【林業振興課】
民有林では、5ヘクタール以下の所有者が90%を占めるなど、森林の所有規模は小さく、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を行うことは困難な状況です。そこで、効率的に施業を行うことができ、コストダウンを図ることが可能な集約化施業を推奨しています。集約化施業は、林業事業体などが隣接する複数の森林所有者から路網の作設や間伐等の施業を受託し、一括して作業を行う方法です。
集約化することで、一作業箇所の事業量が増加し、機械化による作業の効率が上がることになります。集約化施業を計画的かつ効率的に行うためには、高性能機械の導入が欠かせません。県では、高性能機械の導入支援をしています。2019(令和元)年度の調査では、187台の高性能機械が導入されて、効率的な施業が進んでいます。
1 森林病害虫、気象害、林野火災対策【林政課】
(1)森林病害虫
本県の森林に大きな被害をもたらす森林病害虫として、アカマツやクロマツが枯れる「マツ枯れ」と、コナラやミズナラなどが枯れる「ナラ枯れ」があります。「マツ枯れ」は、マツノマダラカミキリが運んでくるマツノザイセンチュウが、「ナラ枯れ」はカシノナガキクイムシが運んでくるナラ菌が、元気なマツやナラに入り込んで枯らしてしまう病気です。
県内のマツ枯れ被害は、1978(昭和53)年頃から発生し、1992(平成4)年頃の被害が最も多く、現在でも赤城山や太田の金山、館林の多々良沼周辺などで多く発生しています。
被害にあったマツは、そのままにしておくと、マツノマダラカミキリが増えたり、枯れたマツが風で倒れる危険もあるため、できる限り伐採しています。
また、マツ枯れ跡地には、シノなどが生えてしまうため、自然に元の姿に戻ることはありません。
このように荒廃した森林は、野生動物が隠れやすくなるため、森林被害の増加も考えられます。
できるだけ早く、次の世代の木を植えて森林を再生する必要があります。
今後も市町村や森林ボランティア等と協力して、マツ枯れ被害が広がらないよう、またマツ枯れ跡地の森林の再生が進むよう努めます。
ナラ枯れ被害は、2010(平成22)年度にみなかみ町で初めて確認されました。2014(平成26)年度には県内での被害が一旦終息しましたが、2015(平成27)年度の再発後、2017(平成29)年度、2018(平成30)年度と被害量が増大しましたが、2019(令和元)年度は若干減少しました。
シイタケ栽培の盛んな本県にはコナラ林がたくさんあります。ドングリの木でもある大切なナラが無くなってしまわないよう、被害の発生状況などの調査を行い、早期発見と被害拡大の防止に努めます。
(2)気象害
異常気象と呼ばれる大規模な気象災害が、いつの間にか「当たり前」になりつつあります。
本県でも、夏の台風や集中豪雨による水害や風害、冬の寒風害などが毎年のように発生しています。
被害が発生した森林は、そのままにしておくと大変危険です。少しでも早く元の姿に戻るよう、被害木を整理して植え直し、森林の再生に努めています。
(3)林野火災対策
2019(令和元)年の林野火災発生件数は13件、被害面積は0.84ヘクタールで、ともに過去5年間で最小でした。
季節的には、湿度の低い1月から5月にかけて多く発生しており、原因が特定できないものを除くと、たき火等の野外焼却や火遊びなど、人為的なものが出火原因のほとんどを占めています。
このため、県では、予防対策として、山火事予防運動実施期間(3月1日から5月31日まで)に、巡視活動、広報車によるパトロールと注意喚起、山火事用心のポスターの掲示などを関係機関と連携を図りながら実施しています。
2 林業事業体の雇用の創出及び改善、労働安全衛生対策【林業振興課】
(1)林業事業体の雇用の創出及び改善
林業の現場は、道が無い場所や傾斜地での作業であるため人手が必要です。しかし、木材価格低迷の影響により、1982(昭和57)年度に1,797人だった林業従事者は、2006(平成18)年度に604人まで減少しました。その後、2009(平成21)年度に785人にまで回復しましたが、近年は、7百人前後で推移しています。一方で、森林資源の有効利用等に向けた施策が講じられており、原木丸太等の需要増加や、手入れの必要な森林の整備による災害防止機能の維持・発揮に向け、林業労働力の確保が課題となっています。
このような状況のなか、新たに林業に就業する人を増やし、既に働いている従事者の定着を支援するため、群馬県森林・緑整備基金、群馬県森林組合連合会等と連携し、「ぐんま林業担い手対策」等の施策を講じています。
具体的には、新規就業者対策として、体験ツアー・ガイダンスの開催、学生向けの給付金支給、就業前技術研修、新人への現場技術教育(3年間の計画的な技術研修)等です。
また、既に就業している人への対策としては、資格取得支援、林業機械取扱い・森林作業道作設等の技術研修、技術研修参加への助成、退職金共済・厚生年金掛金助成、機械化による労働環境改善のための機械リース助成、OJT指導者向け研修等です。
(2)労働安全衛生対策
林業における労働災害は長期的には減少傾向にありますが、他産業に比べ、労働災害の発生率等は依然高い状況です。とりわけ伐木作業での労働災害は林業全体の60%程度を占めており、特に伐倒作業の基本を逸脱した方法や、法令、通達等を遵守しないことによって発生した事例が後を絶ちません。
こうしたことから、群馬県では林業に従事する方の労働災害の防止と労働安全衛生の促進のため、林業・木材製造業労働災害防止協会群馬県支部、群馬県森林・緑整備基金と連携した林業作業現場巡回指導、リスクアセスメント普及講習会、特殊健康診断、蜂アレルギー検査、チェーンソー作業従事者再教育講習等の施策を講じています。
3 森林組合強化対策【林業振興課】
森林組合は、森林所有者が組合員となって組織され、森林経営だけで無く、森林の保続培養という公益的機能の発揮を担う団体です。
県内の15森林組合には森林所有者の約4割が加入しており、その面積は約13万ヘクタールで、県内民有林面積の半分以上を占めています。また、2018(平成30)年度の森林組合による素材生産量は約8万6千平方メートルで県内民有林の約4割を占めるなど、地域林業の中核的担い手として大きな役割を果たしています。
県内の森林資源は量的にも質的にも充実しており、「植えて育てる」時代から、「伐って使う」時代を迎えています。「植える→育てる→使う→植える」という森林資源の循環利用を推進することによって、健全な森林が育成され、森林の持つ公益的機能が発揮されることになります。