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家庭等から出されるごみやし尿などの一般廃棄物を衛生的に処理することは、私たちの生活環境を守り、公衆衛生の向上を図るうえで大変重要です。
一般廃棄物の処理は、市町村が計画(一般廃棄物処理計画)を定めて、その計画に基づいて行われています。
県では、市町村における一般廃棄物の処理が適正に安定して行えるよう、ごみ処理施設等の建設や維持管理に係る情報提供や技術指導を実施しています。
平成28年度のごみ総排出量は約734千トンであり、県民一人一日当たり1,005グラムとなっています。(県民一人一日当たりの内訳は、生活系ごみが756グラム、事業系ごみが249グラムです。)
し尿は、下水道終末処理施設、浄化槽、し尿処理施設等により処理が行われています。
平成28年度では約1,882千人(約94.1%)が、し尿を浄化槽や公共下水道等を使用し、水洗化による処理を行っています。また、くみ取りし尿や浄化槽汚泥は、平成28年度では約47万kLがし尿処理施設で処理されました。
市町村、一部事務組合及び県で構成する「群馬県一般廃棄物処理施設等連絡協議会」を組織し、処理施設の維持管理担当者を対象とする研修と情報交換を行っています。平成29年度は、ごみ減量(生活系・事業系)と廃棄物処理施設の役割について外部講師による研修会のほか、一般廃棄物処理施設の視察研修(県内3施設、県外1施設)を実施しました。
県内の市町村及び一部事務組合における、ごみ処理及びし尿処理は、焼却施設(22か所)、粗大ごみ処理施設・資源化施設(28か所)、ごみ固形燃料化施設(3か所)、高速堆肥化施設(3か所)、最終処分場(22か所)、し尿処理施設(20か所)で行われています。
これらの施設の適正な維持管理の確保を目的に、県は、平成29年度に、これらのうち67施設の立入調査を実施し、施設の維持管理に係る基準等の遵守状況について監督指導を行いました。
循環型社会形成推進交付金(環境省)等の交付金制度を活用して廃棄物処理施設を適切に整備できるよう、市町村等が施設整備のための計画(循環型社会形成推進地域計画)を策定し、交付金を活用して施設設備をする際に、助言指導を行いました。
循環型社会形成推進交付金等の交付を受けて行った県内の事業の実施状況は表2-5-3-4のとおりです(表は省略)。
県内の市町村が整備する一般廃棄物処理施設について、効率性、経済性及び環境に与える負荷の低減、さらには循環型社会形成の推進の観点から、一般廃棄物処理の広域化を推進することを目的に、平成20年1月に「群馬県一般廃棄物処理マスタープラン」(平成19年度~平成28年度)、平成29年3月に「群馬県一般廃棄物処理広域化マスタープラン」(平成29年度~平成38年度)を策定しました。
県では、本マスタープランにおいて、県全体として最適と考える広域化のためのブロック区分、施設集約の将来像、市町村間の協議の方法、県による支援等を示すことにより、市町村による広域化に向けた検討及び協議を促進し、もって県全体として調和のとれた広域化を推進します。
また、本マスタープランを実効性のあるものにするため、広域ブロックごとに、順次その構成市町村を対象に、広域化処理を構築するための組織設立の支援を行っています。
平成29年度は、藤岡富岡ブロック及び吾妻ブロックの市町村等に対し、広域化に向けた事務の進め方や広域的な施設整備のための交付金の交付手続等に係る相談対応や情報提供等を行いました。
様々な事業活動に伴って県内で排出される産業廃棄物は、平成28年度実績(環境省「平成29年度廃棄物の広域移動対策検討調査」)では、年間約304万トンと推計されています。
産業廃棄物の種類別の取扱量については、がれき類が最も多く、以下、汚泥、廃プラスチック類、木くずの順となっています。このうち、中間処理(*注2)量については、県内処理では、がれき類が最も多く、次いで木くずであり、県外処理では、汚泥、廃プラスチック類、がれき類の順となっています。一方、最終処分(埋立)については、県内処理では、がれき類、ガラスくず等、廃プラスチック類の順に多く、県外処理では、廃プラスチック類、がれき類、汚泥の順となっています。
また、県内で発生した産業廃棄物の広域移動量は、表2-5-3-8のとおり(表は省略)で、中間処理量及び最終処分量の合計は、県内処理が年間約208万トン、県外処理が年間約96万トンであり、7割程度が県内で処理されています。なお、約80万トンが県外から搬入されるなど、産業廃棄物の処理は広域的に行われています。
さらに、産業廃棄物の再生利用率は、平成25年度の推計値(平成26年度群馬県廃棄物実態調査)で、49%でした。利用量の多いものでは、がれき類が土木・建設資材へ、汚泥が肥料やセメント原材料へと利用されていました。
(*注1)産業廃棄物:廃棄物のうち、事業活動に伴って生じた燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定めるものを産業廃棄物といい、20種類が定められています。また、そのうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものは特別管理産業廃棄物として区分されています。
(*注2)中間処理:産業廃棄物を埋立処分などする前に、減容化・無害化・安定化などの処理をすることをいいます。
県民生活や産業活動を維持する上で、産業廃棄物の「処理施設」の整備は不可欠ですが、生活環境への悪影響を懸念する周辺住民の反対等がある中で、新たな施設の設置は依然として難しい状況にあります。
県では、生活環境に配慮した優良な処理施設を確保するため、排出業者や処理業者に対する指導と廃棄物処理に対する県民の信頼の向上に努めています。
産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任で適正に処理することが義務付けられています。県では、排出事業者に対して、排出者責任の啓発や適正処理に関する指導を行うため、産業廃棄物相談員を県内3か所(廃棄物・リサイクル課、西部環境森林事務所、東部環境事務所)に配置しています。
平成29年度は、362事業所を訪問し、廃棄物の排出抑制や再生利用、適正処理等に関する指導・相談を行いました。
また、併せて廃棄物・リサイクル課ホームページ「群馬県産業廃棄物情報」により、関係法令や処理業者に関するデータ等、廃棄物に関する各種最新情報をわかりやすく排出事業者や県民にお知らせしています。
産業廃棄物は、排出事業者が自ら適正に処理するほか、その責任において、収集運搬業・処分業の許可を有する処理業者に委託して処理することとされています。
処理業者に対しては、不適正処理につながるような行為が行われていないかを確認するため、毎年度、定期的に立入検査を実施しています。
平成29年度は、、延べ432事業所に対して立入検査を実施しました。
また、排出事業者の身近な良きアドバイザーとなる産業廃棄物処理業者を育成するため、法改正等に関する研修を実施しています。
なお、不適正処理等により廃棄物処理法に違反したり、欠格要件に該当した処理業者に対しては、許可取消等の行政処分を行っており、平成29年度は11業者に対して許可取消の行政処分を行いました。
廃棄物処理施設の設置にあたり、廃棄物処理法やその他関係法令の手続を行う前段階として、事前協議制度を実施しています。この制度は、持続可能な循環型社会づくりに向けて、地域理解の促進や廃棄物の適正処理の推進を図り、また、周辺地域の生活環境の保全や周辺施設への適正な配慮を図ることを目的としています。
平成25年4月は、施設の立地規制の追加や事業計画の周知方法の改善、手続の長期化防止策等について、見直しを行いました。
また、現行制度は、平成29年度末で、施行後5年が経過し、経済界から最終処分場の建設促進の要望がなされていることなどから、事前協議規程の内容を含め、公共関与の在り方について、点検作業を行っています。
平成22年の廃棄物処理法の改正により、優良産廃処理業者認定制度が新たに設けられ、事業の実施に関する能力・実績が一定の基準を満たす処理業者は、優良認定を受けられるようになりました。
この認定は、排出事業者が安心して廃棄物処理を委託できる優良業者を選ぶ目安になっています。なお、処理業者にとっては、認定を受けることで通常5年である許可の有効期間が7年に延長され、許可更新に要する負担軽減が図られています。
また、遵法性や事業の透明性等、法令の基準に適合し優良認定を受けた処理業者に対して、県の融資制度において優先的支援を行う等により、優良な処理業者を育成し、より信頼できる産業廃棄物処理体制の整備を進めています。
県では、新たな設置の理解を得ることが難しい状況にある最終処分場について、周辺住民にとって安全で安心できる施設を確保するため、最終処分場モデル研究事業として、平成14年2月に桐生市新里町地内に安定型モデル処分場を設置しました。
モデル処分場は、1地元地区代表、事業者及び行政で組織する運営連絡協議会を定期開催、2地域住民の見学の積極的受入れ、3県嘱託職員が常駐し、許可品目以外の廃棄物が混入しないよう監視するなど、地域に開かれた運営に努めました。
なお、モデル処分場は、平成29年1月で埋立てが終了したことから、廃止までの間、事業者に対して指導監督を行うとともに、地元地区代表、県及び桐生市で組織する跡地利用策定委員会で協議し、跡地利用計画を策定します。
使用済自動車から発生する廃棄物の減量、適正処理や資源の有効な利用の確保等を目的に、平成17年1月1日に「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(自動車リサイクル法)が本格施行されました。
この法律では、自動車所有者、引取業者や解体業者等に次のような役割を定めています。
自動車リサイクルを推進する上では、自動車の所有者や関連事業者の理解と協力が必要なことから、県では、各種の広報媒体を通じて、制度の仕組み等について周知を行っています。
県と中核市(前橋市・高崎市)は、法の規定を満たした使用済自動車の引取業者及びフロン類回収業者の登録、解体業者及び破砕業者の許可を行っています。
県と中核市では、登録業者や許可業者が、法で定められた作業を遵守しているか、施設が基準に適合しているかを確認するために、立入検査を実施しています。
また、併せて、登録や許可を受けずに使用済自動車の保管や解体を行っている疑いがある業者についても、監視指導を行いました。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、難分解性で、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であることなどから、PCB廃棄物の保管、処分等について必要な規制等を行うことを目的に、平成13年7月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が施行されました。
この法律に基づき、変圧器(トランス)、コンデンサーなどPCBを含む廃棄物を保管する事業者は、毎年度、知事又は中核市長(前橋市・高崎市)に保管・処分状況を届け出る義務があり、届出状況は表2-5-3-19のとおり(表は省略)となっています。届出を行った事業場に対しては、適正な保管等を行うよう指導しています。
PCB廃棄物を安全・適切に処理するために、平成16年4月に国が全額を出資して、中間貯蔵・環境安全事業(株)(JESCO)が設立されました。県内の事業場に保管等されている高濃度のPCBを含有する機器については、平成20年5月から室蘭市にある同社の北海道PCB処理事業所において、処理が行われています。この事業所における処分期間は、変圧器(トランス)・コンデンサー等は平成33年度末まで、安定器・汚染物等は平成34年度末までであり、期間内に必ず処分を終えるよう計画的に準備を進める必要があります。
低濃度のPCBを含有する廃棄物については、国が認定した無害化処理認定施設等で、平成38年度末までに処分する必要があります。
また、PCBの処理費用が高額であることから、県では、毎年度、独立行政法人環境再生保全機構に設けられた基金に補助し、JESCOで処理を行う中小企業者等の負担軽減を図っています。
さらに、PCB廃棄物は処分期間が定められていますが、未届出の事業者がいるおそれがあることから、県や中核市ではアンケート等による掘り起こし調査を実施しています。未届出の事業場が確認された場合は、届出を指導するとともに、期間内に処分するよう指導していきます。
水銀に関する水俣条約(平成29年8月16日発効)を踏まえた水銀対策として、平成27年6月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」が制定され、同年11月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」が、同年12月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」が改正されました。
新たに、「廃水銀等」「水銀含有ばいじん等」「水銀使用製品産業廃棄物」を定義したほか、産業廃棄物処理施設への追加や、処理基準の追加などが定められ、平成29年10月1日に全面施行されました。
県では、これまで、水銀廃棄物の排出者である家庭や事業者及び処理主体である市町村や処理業者に対して、法令や処理に関する情報提供を行ってきました。
特に、処理業者に対しては、県内各地域で説明会を開催し、水銀廃棄物の確実な収集・処理の推進を図っています。
平成29年度に県内で新たに認知した不法投棄は、52件・1,464トンでした。県が認知した11件のうち、平成29年度中に撤去等により解決に至ったものは3件で、不法投棄早期解決率は27%でした。
不法投棄の大規模な事案は減少し、全体として小規模化傾向にありますが、依然として後を絶たない状況です。
不法投棄された廃棄物の種類では、建設系の廃棄物が半数以上を占めています。
不法投棄や不法焼却、不適正保管などを総称して「不適正処理」と呼んでいます。
平成29年度に県内で新たに認知した不適正処理は、121件・2,045トンでした。
不適正処理の種類では、不法投棄、不適正保管及び不法焼却が大部分を占めています。
不適正保管と不法焼却は、30件前後で推移しており、依然として後を絶たない状況です。不適正保管は、事業者が一時保管と称して資材置場等に解体廃材をため込む事案が増加しています。不法焼却については、廃棄物の焼却は原則禁止されていますが、いわゆる野焼きで廃棄物を処分しようとした事案が多くを占めています。
県では、廃棄物の不法投棄等の不適正処理事案を未然に防止し、また、早期に発見するとともに、発生した事案については、早期に解決することにより、本県の良好な生活環境の保全に努めています。
主な取組内容は、次のとおりです。
(ア)事業者向け実地調査 県警、市町村及び関係団体の協力のもと、主に県外から流入する産業廃棄物を対象に、「産業廃棄物収集運搬車両の路上調査」を実施しています(平成29年10月13日国道17号新町検問所)。
(ア)情報の入手
a「産業廃棄物110番」の設置
廃棄物・リサイクル課にフリーダイヤルの「産業廃棄物110番」を設置して広く県民から情報を入手しています(平成29年度は57件を受理)。
産業廃棄物110番
ハイ ゴミ通報
0120-81-5324
b「廃棄物不法投棄の情報提供に関する協定」の締結
人口減少期を迎え、空き家、空き地など、不法投棄場所として狙われやすい箇所の増加が懸念されることから、不法投棄の情報収集網の強化を図るため、12機関・団体と協定を締結しています。
協定締結機関・団体
日本郵便株式会社
群馬県農業協同組合中央会
群馬県森林組合連合会
東京電力パワーグリット株式会社
一般社団法人群馬県タクシー協会
一般社団法人群馬県トラック協会
赤十字飛行隊群馬支隊
一般社団法人群馬県自動車整備振興会
一般社団法人群馬県フロン回収事業協会
群馬県電気工事工業組合
公益社団法人群馬県不動産鑑定士協会
公益財団法人群馬県環境検査事業団
(イ)監視指導(パトロール)
a 「産業廃棄物不適正処理監視指導員」
(通称:産廃Gメン)の設置
警察官OBの嘱託職員である産廃Gメンが、4班8名体制で監視指導(パトロール)を行っています(年間延べ1,440人・日)。
b 休日・夜間における監視の民間警備会社への委託
行政機関による監視が手薄になる休日と夜間における監視の目を確保するため、民間警備会社に委託して監視業務を行っています(年間140日)。
c スカイパトロールの実施
県警の協力を得て、県警ヘリコプター「あかぎ」による空からの監視(スカイパトロール)を行っています(平成29年度は22回)。
d 「廃棄物適正処理推進強化月間事業」の実施(6月・12月)
環境月間である6月と、清掃活動が盛んになり企業や家庭から大量の廃棄物が排出される12月を廃棄物適正処理推進強化月間と定め、通常監視以外に重点的に対策を講じています。
e 建設リサイクル法遵守状況調査の実施(5月・10月)
建築物等の解体工事における、「建設リサイクル法」の遵守状況を調査し、適正な処理を指導するため、建設部局等と連携してパトロールを行っています。
ウ 早期解決
(ア)警察・市町村等関係機関との連携強化
認知した事案に対しては、廃棄物・リサイクル課(出向警察官を含む)及び環境(森林)事務所の担当職員が、警察や県職員に併任発令された市町村職員と連携を図り、迅速かつ綿密な調査を行った上、原因者に対し強力な是正指導を行い、現場の原状回復を図るとともに不適正処理の再発防止に努めています。
県では、廃棄物の不法投棄等の不適正処理事案の未然防止、早期発見のため、上毛新聞、FM群馬、群馬テレビ及び県広報資料等の各種広報媒体や特命産廃Gメン「G-FIVE」による啓発活動により、廃棄物不適正処理防止に係る事業者、県民等の意識啓発を図っています。
また、廃棄物の不適正処理を防止し、適正処理の気運を高めるため、県警、(公社)群馬県環境資源創生協会、産業界及び市町村と連携して、「不適正処理防止啓発県民の集い」を開催しています(平成29年9月30日ヤマダ電機LABI1高崎)。
県警察では、悪質・巧妙化する廃棄物事犯に迅速に対応するため、生活安全部生活環境課に経済・環境事犯特別捜査係を設置し、各警察署と連携して環境犯罪に対する取締りを積極的に推進するほか、県や中核市に警察官を出向・派遣し、関係機関との情報交換や共同臨場等行政と連携した活動を行っています。
また、環境被害の拡大防止と早期の原状回復を図るため、関係機関に必要な情報提供を行っています。
出向・派遣数
平成29年4月1日現在、県知事部局に2人、前橋市及び高崎市に1人ずつ出向し、又は派遣しています。
ア 市町村職員の県職員併任発令 不適正処理事案への対応を強化するために、市町村職員を群馬県職員に併任して産業廃棄物に関する立入検査権を付与しています(平成30年3月30日現在、中核市2市を除く33市町村110人)。
イ 不法投棄監視カメラの貸出し 市町村と連携した廃棄物不法投棄監視体制の整備・強化を図り、不法投棄の未然防止、拡大防止及び原因者の特定をするため、市町村に不法投棄監視カメラを貸し出しています。
警察・市町村等関係機関の担当者を集めた連絡会議を定期的に開催し、情報交換を図るとともに、広域的な事案に対しては、共同で対応するなどの連携を図っています。
本県は、山間地や河川が多く、廃棄物の不法投棄が行われやすい環境にあることから、県警ヘリコプター「あかぎ」によるスカイパトロールを定期的に実施し、目の届きにくい山間部等を上空から監視することで、不法投棄等の発見に努めています。
また、県警察では、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を重点に取締りを強化しています。
検挙状況
平成29年度中における「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)違反の検挙状況は、表2-5-3-24のとおり(表は省略)であり、平成25年度以降の推移は図2-5-3-3のとおり(図は省略)です。
最近の特徴としては、大規模な不法投棄等は減少し、小規模な不法投棄や違法焼却が目立つ傾向にあります。
具体的には、家屋の解体工事に伴って排出される木くず、がれき類等の不法投棄やビニール類の違法焼却のほか、家庭から排出される粗大ごみ等の不法投棄や違法焼却も目立っています。
大同特殊鋼(株)渋川工場の製鋼過程で副産物として排出された鉄鋼スラグは、路盤材として出荷されていました。
平成25年6月、渋川市内の道路の改修工事に際し、路盤材として使用されていた当該スラグを検査したところ、土壌環境基準・「土壌汚染対策法」の指定基準(土壌環境基準等)を超えるふっ素及び六価クロムが検出されました。
県では、これを契機に調査を開始し、平成26年1月以降、同工場及び関係会社に対して廃棄物処理法に基づく立入検査を実施するとともに、鉄鋼スラグの取扱い状況等について報告を求めました。
ア 鉄鋼スラグの利用と土壌汚染の発生
平成13年にふっ素の土壌環境基準が設定され、平成15年にふっ素の指定基準を設定した土壌汚染対策法が施行されました。
これに伴い、鉄鋼業界では、ふっ化物(蛍石)を使用しない操業への移行や、鉄鋼スラグに含まれる有害物質の検査を行い、環境安全性を確認して路盤材等に再生利用する方法がとられてきました。
しかし、同工場は、その後もふっ化物(蛍石)の添加を止めることなく、また、鉄鋼スラグの大半がふっ素の土壌環境基準等を超過していることを承知したうえで出荷を続け、当該スラグが使用された施工箇所の一部で基準を超える土壌汚染を生じさせました。
イ 廃棄物認定
ふっ素の土壌環境基準等が設定されて以降、同工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり、また、平成14年4月から平成26年1月までの間、関係者の間で逆有償取引等が行われていたことから、当該スラグを廃棄物と認定しました。
記録が確認できた平成14年4月から出荷を停止した平成26年1月までの間、同工場から出荷された鉄鋼スラグの総量は、29万4,330トンです。
ア 調査結果の公表と行政処分等
県は、平成27年9月、廃棄物処理法に基づく調査の結果を公表するとともに、廃棄物処理法違反で関係者を県警に告発しました。また、平成28年8月、関係会社に対して廃棄物処理法に基づく許可取消処分を行いました。
イ 使用箇所に係る調査要請等
大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグの使用箇所について、公共工事は工事実施主体に調査を要請、民間工事は大同特殊鋼(株)に対し、調査及び県への報告を指示しています。
ウ 使用箇所の状況と環境影響
平成29年12月末現在、当該スラグの使用が確認された工事は、公共工事347か所、民間工事112か所の計459か所です。このうち、土壌汚染が確認された141か所について、県が直接周辺地下水の調査を実施したところ、これまでの調査の結果では、地下水への影響は認められませんでした。
エ 今後の取組
今後とも当該スラグの使用箇所の解明を進め、判明した使用箇所はすべて県がリスト化します。新たに使用箇所が判明した場合には、これまでと同様の方法で環境調査を行い、県民の皆様の安全・安心の確保に努めていきます。
近年、建設工事に伴い排出された土砂等による埋立て等について、周辺住民から有害な物質の混入や堆積された土砂等の崩落を心配する声が増えています。
そこで、生活環境を保全するとともに、土砂災害の発生を防止するため、平成25年6月に「群馬県土砂等による埋立て等の規制に関する条例」
(県土砂条例)を制定しました。
県では、厳正な許可審査や立入検査等により土砂等の埋立て等の適正化を推進するとともに、広報啓発、不適正処理対策と同様の監視指導、警察及び関係機関との連携により、不適正事案等の未然防止・早期発見・早期解決に取り組んでいます。
なお、主な規制内容は次のとおりです。
埋立て等のために搬入される土砂等の汚染に関する基準(土壌基準)を規則で定め、土壌基準に適合しない土砂等による埋立て等を禁止しています。
土砂等による埋立て等を行う区域以外の場所から排出又は採取された土砂等により、3,000平方メートル以上の埋立て等を行う事業(特定事業)を許可の対象とし、特定事業を行おうとする者(事業者)は、原則として知事の許可を要することとしています。
排出現場の確認及び土壌の安全性を担保するため、許可を受けた事業者は、土砂等を搬入する10日前までに、排出現場ごとの土砂等排出元証明書及び当該土砂等に係る土壌検査証明書を添付のうえ、届出書を提出しなければなりません。
許可を受けた事業者に対し、特定事業区域の定期的な土壌検査及び検査結果の報告を義務付けるとともに、立入検査を実施しています。
県土砂条例の規制が及ばない3,000平方メートル未満の土砂の埋立て事案に対応するためには、各市町村において、地域の実情に合わせた市町村土砂条例を制定することが不可欠です。
このため、県では、市町村に対して市町村条例“例”の提供、条例の必要性の説明など、市町村条例の制定促進に取り組んでいます。
公共事業から発生する土砂(建設発生土)については、工事間の利用調整を行うことで、他工事における有効利用及び、それに伴う不要な残土の抑制を図ってきたところですが、施工時期の不整合等により、その調整が進まない状況でした。
このため、建設発生土を一時的に仮置きできる「建設発生土ストックヤード」を整備することにより、建設発生土の工事間での有効利用を促進し、建設発生土の適正な処理を図ります。
現在、前橋地域において、建設発生土ストックヤードを運用しております。今後は、ほかの地域においても、新たな整備・運用に向け、検討を進めていきます。