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空き缶やペットボトル、たばこの吸殻などのポイ捨てによるごみの散乱は、私たちに最も身近な環境問題です。ごみの散乱は私たち自身のモラルやライフスタイルにも関わることから、容易には解決しない困難な問題となっています。
そのため、県では、環境美化の意識を啓発し、快適で住みよい「美しい郷土群馬県」をより一層推進するために「春・秋の環境美化運動」をはじめとして、様々な施策を展開しています。
県では、5月1日から6月30日を春の環境美化月間と定め、市町村やボランティア団体等と連携して、県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しています。
県では、9月1日から10月31日を秋の環境美化月間と定め、市町村やボランティア団体等と連携して、県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しています。
ア ごみの散乱防止と3Rを進めるための標語コンテストの実施
県と「群馬県環境美化運動推進連絡協議会」では、次代を担う子どもたちの環境美化の意識とごみの適切な処理を啓発することを目的に、標語コンテストを実施しています。
イ ポイ捨て防止啓発品の作成配布
ポイ捨て防止を呼びかけるティッシュを作成し、春・秋の環境美化運動等で配布しました。
公害に係る紛争では、司法制度(裁判)による解決以前に、簡易迅速・少ない費用で行政的解決を図るため、昭和45年に「公害紛争処理法」が制定され、公害紛争処理制度が確立されました。
この法律に基づき、国の公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等においては、公害紛争についてのあっせん、調停、仲裁及び裁定の制度を設けています。
また、公害苦情相談員制度を設けることによって、苦情の適切な処理を図っています。
昭和45年11月に設置された公害審査会における最近の調停事件の状況は表2-4-5-1のとおりです(表は省略)。
公害に関する苦情は、地域に密着した問題であるとともに、公害紛争に発展する可能性もあるため、迅速な処理が必要となります。
このため、昭和45年11月に「群馬県公害苦情相談員設置要綱」を制定し、関係する地域機関に設置された公害苦情相談員が、住民からの苦情相談に応じ、苦情の解決のために必要な調査、指導及び助言等を行っています。
公害苦情相談員は、以下の地域機関に合計32名が設置されています。
平成29年度において公害苦情相談員及び市町村の公害担当課で、新規に受理した公害苦情の件数は1,277件でした。
典型7公害に関する苦情を種類別にみると、大気汚染(311件)、騒音(232件)、悪臭(158件)の順となっています。
苦情を受付機関別にみると、市町村での受付が91.5%、県での受付が8.5%となっています。
なお、処理にあたっては、関係機関との連携により対応しています。
環境生活保全創造資金は、公害防止や廃棄物対策、さらには循環型社会づくりや地球環境問題に取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
昭和43年度に「公害防止対策資金」として発足し、制度内容の充実とともに、平成11年4月に「環境保全創造資金」、平成15年4月に「環境生活保全創造資金」へと改称しました。
平成29年度における融資実績は、1件、8,000千円でした。
森林や緑は、水源の涵かん養・国土保全・地球温暖化の防止等さまざまな機能を持ち、私たちの豊かな生活を支え、多くの恵みを与えてくれます。
緑化は従来から家庭や地域、市町村で取り組まれていますが社会情勢の変化とともに、県民や行政、NPO法人等が一緒に、あるいは役割を分担して緑化・森林整備の展開を図る取組もなされてきています。
県では、森林や緑の持つ公益的機能を十分に発揮させ、緑豊かで暮らしやすい生活環境づくりを推進するため、植樹祭等各種イベントの開催や緑の募金活動などを通じて、広く県民に緑化思想の高揚を図るとともに、身近な環境の緑づくりを推進しています。
なお、平成29年度の県植樹祭は、神流町で開催され、約1,000人が参加しました。
また、県緑化センターを運営し、見本園管理や各種緑化講座の開催など緑化技術の指導・普及を実施しました。
「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、たい肥等による土づくりと化学肥料・農薬の低減を一体的に行う生産方式の導入を支援し、導入計画を策定した農業者を、県知事が認定しています。
エコファーマーに認定されると、エコファーマーマークが使用できるほか、融資の優遇策などが利用できます。
平成30年3月末現在、エコファーマーの認定者数は1,229人です。
「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」の基準に従い、化学肥料と化学合成農薬の使用量を地域での一般的な使用量から50%以上減らして栽培された農産物を認証しています。
認証された農産物は、「特別栽培農産物」として表示し、流通することができます。
平成30年3月末現在、本制度に取り組んだ栽培面積は174ヘクタールです。
有機農業とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業のことです。
県では、群馬県有機農業推進計画を策定し、有機農業の取組を支援しています。
平成29年3月末現在、有機JAS規格に基づく県内の有機農業認定事業者数(農家戸数)は88戸です。
化学農薬による防除だけでなく、様々な防除手段の中から適切なものを組み合せ、経済的な被害が生じないように、病害虫や雑草を管理することです。
IPM により、難防除病害虫の効率的な防除や、環境への負荷軽減による持続的な農業生産の実現を目指すことができます。
IPM=Integrated(総合的な)
Pest(病害虫)
Management(防除)
IPMを実践するにあたっては、予防、判断、防除の3分野の基本的要素について、それぞれ検討する必要があります。ア 予防
輪作、抵抗性品種の導入や土着天敵等の生態系が有する機能を可能な限り活用すること等により、病害虫・雑草の発生しにくい環境を整える。
イ 判断 病害虫・雑草の発生状況を把握して、防除の要否及びそのタイミングを的確に判断する。
ウ 防除 防除が必要と判断された場合には、多様な防除手段の中から適切な手段を組み合わせ、環境負荷を低減しつつ病害虫・雑草の発生を経済的な被害が生じるレベル以下に抑制する。
近年、環境に優しく、環境と調和した農業の推進が求められています。
国では、農作物の病害虫防除対策としてIPMを普及推進することで、環境保全を重視した農業生産に転換していくこととしています。
本県でも、環境保全及び難防除病害虫等の効率的な防除対策を推進するため、IPMに取り組むことが重要なことと考えています。
県では、国が示した主要作物別IPM実践指標をベースに、本県の栽培技術体系に適合した群馬県版の作物別IPM実践指標を主要な17作物について策定しました。
また、今後、新たなIPM技術が開発された段階で農作物を付け加えることとします。
さらに、IPM技術を体系化した指導者用作物別技術集(半促成ナス、施設キュウリ)を作成・配布し、指導力強化を図っています。これにより一層の普及推進を行うとともに、IPMの導入を目指す農家の技術向上及び定着を図ります。
有機リン系農薬とは、炭素と水素から成る有機基にリンが結合した構造をもつ農薬で、主に殺虫剤として広く使われています。
有機リン系殺虫剤は、神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害することで、昆虫や哺乳動物に対し毒性を示し、残留性は一般的に低いとされています。
有機リン系農薬は、最近の研究などで慢性毒性の危険性や子どもに及ぼす影響等が指摘されています。
特に、無人航空機による空中散布においては、地上散布と比較して、高濃度の農薬(通常1,000倍程度に希釈して散布するところ、8倍程度で散布)を細かい粒子で散布します。そのため、農薬成分がガス化しやすく、呼吸により直接体内に取り込まれるため、農薬を経口摂取する場合に比べ、影響が強く出る可能性があるといわれています。
慢性中毒では免疫機能の低下や自律神経症状などが現れることがあります。
現在は、有機リン系農薬の空中散布を規制する法的根拠はありませんが、有機リン系農薬に代わる薬剤の使用が可能であることや、速やかに対応すべきであるとの判断などから、平成18年から、防除実施者や関係団体に無人航空機による有機リン系農薬の空中散布の自粛を要請しています。
その結果、関係者の理解を得ることができ、平成18年度以降、無人航空機による有機リン系農薬の空中散布は実施されていません。
無人航空機による最近の空中散布の実施状況は表2-4-5-6のとおり(表は省略)です。
景観は、地域の自然、歴史、文化や日常の様々な活動の結果として形成されるものです。
そのため、良好な景観を形成するためには、自然や歴史的な景観の保全、利活用だけでなく、私たちが暮らす地域の景観を創造し、そのための活動を育成するとともに、阻害要因を除去する取組も重要になります。
県では、平成5年に制定した「景観条例」に基づき、大規模行為(一定規模以上の建築や土地の形質変更など)の届出などにより、良好な景観づくりを進めています。平成29年度には168件の届出がありました。
景観形成の取組は地域に根ざした活動が重要であるため、市町村が、「景観法」に基づく景観行政団体になって、景観計画を策定して積極的に景観施策を展開することが望まれます。平成29年度には、新たに桐生市で「屋外広告物条例」が施行され、甘楽町で「景観条例」が施行されました。17市町村が景観法の下で景観行政に取り組んでいます。
市町村が景観計画の策定や世界遺産の緩衝地帯を設定するための経費の一部を補助しており、平成29年度には、玉村町、みなかみ町及び片品村に交付しました。
県内の主要な観光地への観光ルート等として、新規路線の「上信自動車道」及び既存路線である「日本ロマンチック街道」の2路線を「広域景観形成モデル路線」として選定し、市町村や庁内関係課とともに、
「眺望景観」の保全・形成について、必要とされる制度や施策の調査・研究を行っています。
平成28年度には、観光ルート等における良好な景観形成を図るための「景観誘導地域」新設を盛り込んだ県屋外広告物条例の一部改正を行い(平成29年4月施行)、上信自動車道(未供用区間)を景観誘導地域に指定しました。
道路における無電柱化は、「安全で快適な通行の確保」や「防災機能の向上」とともに、「景観の改善」にも大きく寄与しています。県では、緊急輸送道路や市街地の幹線道路、富岡製糸場周辺や桐生市の重要伝統的建造物群保存地区などの景観に配慮すべき地域において、無電柱化事業を進めています。
良好な景観の形成や風致の維持、公衆に対する危害防止のために、看板や広告塔などの屋外広告物について、設置場所や形状・面積等を規制しています。また、規制を効果的に講じるため、屋外広告業者の登録制度を設けています。
県では、及び「屋外広告物条例」
「屋外広告物法」に基づき、屋外広告物の設置場所、表示面積、高さ及び表示方法等の基準を設け、設置の許可事務を行い、良好な景観づくりを進めています。平成29年度には807件を許可しました。
平成16年の「屋外広告物法」の改正を受け、県では平成18年度から屋外広告業者の登録制度を施行し、不良業者を排除するとともに、良質な業者の育成を進めています。平成29年度には116件の業者登録がありました。
各土木事務所において、違反広告物の是正指導及び除却を行うとともに、平成29年度においても「屋外広告物美化キャンペーン」(9月1日~9月30日)を実施しました。
県民の自然とのふれあいや文化的余暇利用を向上させるため、民間等が持つ創造的で柔軟な発想や豊富な知識を活用することにより、管理運営経費の縮減を図りながら、施設の効用を最大限発揮し、県民サービス向上を図るため、4公園で指定管理者制度を導入しています。
都市公園は多目的な機能を持つ、都市の重要な生活基盤です。
平時は緑あふれる県民の交流拠点として、自然とのふれあいやレクリエーション施設を通じて児童や青少年をはじめとする県民の心身の健康の維持増進に寄与し、住み良い生活環境を整えています。
また、災害時には避難所としての機能はもちろん、復旧・救援の拠点としても都市住民の安全を確保する重要な役割を果たしています。
平成29年度の県の都市公園事業は、県立「敷島公園」の補助陸上競技場第3種公認の更新を見据えた天然芝生の張り替えや老朽化した陸上競技場のエレベーター更新など、5か所の県立都市公園で施設整備を実施しました。
また、市町村の都市公園事業として、前橋市の「前橋市総合運動公園」や高崎市の「浜川運動公園」をはじめ、5市6か所で公園整備を実施しました。
本県の都市公園の整備状況は、平成29年3月末現在で1,457か所、2,556ヘクタールが供用開始しており、都市計画区域内の一人当たりの都市公園面積は11.75平方メートル/人(「榛名・妙義公園」を除く)で、平成28年3月末に比べると約0.03平方メートル/人の増加となっています。
河川内に繁茂する草木は、洪水時に流水の正常な流下を妨げたり、堤防に根を張ることで堤防の機能を弱めてしまうなど、河川の安全性に悪影響を与えます。また、防犯上あるいは良好な景観を形成する上でも、河川内の草木を適切に管理することが求められています。
このため、県内の河川のうち、伐木除草が必要となる区間を調査し、順次伐木及び除草を実施しました。
除草は、専門業者へ委託して実施したほか、自治会等へ委託して実施しました。平成29年度の除草面積は699ヘクタールで、そのうち189ヘクタールを自治会等により除草していただきました。また、24ヘクタールの伐木を行いました。
「ぐんま“まちづくり”ビジョン」に掲げる「人口減少局面でもぐんまらしい持続可能なまち」の実現に向け、本県の緑豊かな自然環境や豊富な水資源、伝統的な街並みをはじめとする歴史・文化資源など地域の誇る魅力的な地域資源を有効活用しつつ、建て替えや新設に併せて、教育・文化施設、商業施設、病院等の都市機能を、中長期的に中心市街地や役所・駅周辺地区などへ集約を図ることで、「まちのまとまり」を維持します。
また、「まちのまとまり」をつなぐ、利便性の高い、多様な移動手段を確保することで、徒歩や公共交通での移動が容易な、誰もが暮らしやすく、環境にもやさしいまちづくりを推進します。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」は平成26年6月25日に世界遺産に登録されました。
世界遺産は、人類が過去から現在へと引き継いできたかけがえのない宝物です。現在を生きる私たちは、この世界遺産を人類共有の財産として未来へ伝えていく責務を負っています。遺産の保護は「世界遺産条約」で定められており、世界遺産としての価値が破壊されたときは、登録抹消の可能性もあります。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」を、人類共通の遺産として将来に伝えていくという責務を果たすためには、具体的に何を行えばよいのかについて、行政、資産の権利者、来訪者、そして地域の人々が意識を共有しておく必要があります。県では文化庁、富岡市、伊勢崎市、藤岡市及び下仁田町と共同し、
「包括的保存管理計画」を策定しました。個別資産の保存管理計画を基に、世界遺産としての観点から、資産周辺を含めた保存管理を網羅したものが「包括的保存管理計画」です。この計画は「富岡製糸場と絹産業遺産群」の推薦書とともにユネスコに提出されています。
この計画を円滑に推進するため、県と関係市町で「群馬県世界遺産協議会」を組織し、平成29年度までに会議を10回開催しています。
以下に、構成資産の保存管理のために行われた事業と、各資産の周辺環境を含めた一体的な保全の仕組みについて紹介します。
各資産は「文化財保護法」に基づく史跡(4資産全て)、国宝・重要文化財(富岡製糸場のみ)に指定され、保護されています。
同法に基づき、平成29年度は主に次のような文化財保存事業を行い、それに対して県では事業費の補助を行いました。
世界遺産の構成資産の価値を守るため、緩衝地帯を設定し、各資産とその周辺環境について一体的な保全を図っています。緩衝地帯においては、世界遺産にふさわしい周辺環境に、悪影響を及ぼす開発行為等を未然に防ぐため、次のとおり様々な法令が適用されています。
構成資産名 資産面積 緩衝地帯面積
富岡製糸場 5.5 151.1
田島弥平旧宅 0.4 60.8
高山社跡 0.8 54.1
荒船風穴 0.5 148.6
我が国の文化財は、豊かな自然環境のもとで、長きにわたる先人の営みによって形作られてきました。文化財保護行政の目指すところは、有形無形の様々な文化財とそれらが守り伝えられてきた事実を、その環境とともに後世に伝えていくことにあります。国・県・市町村は、それらのうち特に重要なものを法的に保護し、またその質と価値を高めるための保存整備を行っています。これによって、文化財の価値を正確に分かりやすく社会に還元することができ、人々の地域に対する理解と関心の深化へと繋がっていきます。
文化財は、有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群、保存技術、埋蔵文化財の8つに分類されますが、それぞれの中で重要なものや保護が必要なものが指定、選定、登録、選択され、法的な保護や整備が行われます。
文化財の保護と整備に関する近年の特徴としては、単体の文化財のみならず、周辺の歴史景観や環境も保護し整備する方針が打ち出されたこと、文化財を生かした地域づくりに向けて法制度が整備されたことが掲げられます。これにより、文化財と周辺環境を重視した、総合的な地域づくりへの取組が各地で始まりつつあります。市町村にとっては、こうした取組が地域の振興や再生への有益な手段として、今後の施策の柱となっていくものでもあります。
国・県指定等文化財及び重要な埋蔵文化財包蔵地の維持管理に万全を期すため、県で委嘱した文化財保護指導委員(平成29年度:31名)が定期的に巡視し、保存状態を確認し県に報告しています。報告は、県において指定文化財等の現状把握とともに、保存修理事業計画立案の際の資料とします。
文化財のうち、名勝・天然記念物は自然環境及び自然景観の保護に直結しています。県で指定する名勝・天然記念物は、動物繁殖地や植物など計100件です。また、国の名勝・天然記念物には26件が指定され、名勝妙義山や楽山園、特別天然記念物尾瀬、六合チャツボミゴケ生物群集の鉄鉱生成地等、内容は多岐にわたります。
天然記念物のうち、動物の種として地域を定めず指定されているものは、全国の国指定110件のうち県内に生息もしくは飼育されているものが10件、県指定が7件あります。国指定の動物種のうち、特に本県で生息が確認できる野生動物は、カモシカやヤマネ、イヌワシなどです。県指定天然記念物はヒメギフチョウやミヤマシロチョウなどです。
これらの動物のうち、特別天然記念物に指定されているカモシカは、保護地域が設定されており、保護地域及び周辺地域の生息状況、生息環境調査を毎年実施しています。また、保護地域周辺での食害を防止するため、防獣柵の設置といった施策も用意されています。
史跡は国指定49件、県指定85件、重要文化財(建造物)は国指定23件(うち国宝1件)、県指定56件、国登録有形文化財(建造物)が335件所在し、それぞれ歴史景観が保たれています。また、一部で史跡公園等に整備され、学習及び憩いの場ともなっています。
自然環境と歴史景観が共存している例として、岩宿遺跡や金山城跡などがあります。また、山間地に重要文化財の仏堂や社殿がたたずみ、周囲の自然環境と調和した歴史的風致が守られている例として、妙義神社や榛名神社などがあります。近代の文化遺産も、国重要文化財の碓氷峠鉄道施設や国登録文化財のわたらせ渓谷鐵道関連施設は山間地の自然の景観の中に溶け込んでおり、国宝・国指定史跡・国指定重要文化財の旧富岡製糸場や国登録文化財の桐生市内の織物工場の建物などは、それぞれ今後のまちづくりの核となる歴史景観を形成しています。
重要文化的景観は、人々の生活又は生業、地域の風土の中で形成された景観で、我が国の国民の生活・生業の理解のために不可欠のものです。日常の風景として見過ごされがちでしたが、棚田や水郷など自然と人との調和の中で長い年月をかけて形成されてきた価値ある景観です。県内では板倉町が利根川・渡良瀬川合流域の水場景観の保護に取り組んでおり、平成23年9月には国の重要文化的景観に選定されました。県もこの取組を支援しています。
重要伝統的建造物群保存地区は、町並みや農村集落など歴史的建造物が群として良好に保存された場所です。県内には中之条町と桐生市の2か所に所在します。
中之条町六合赤岩伝建地区は、平成18年に北関東で初めて選定されました。養蚕農家集落とともに、墓地、お宮やお堂、耕作地、そして山林などで構成される広大なエリアを占めます。平成29年度も、平成19年度から毎年実施されている重要な構成要素に対する修理修景事業等に補助を行いました。
桐生市桐生新町伝建地区は、平成24年7月に選定されました。近世・近代桐生の繁栄を物語る数多くの町屋や蔵、織都桐生を象徴するノコギリ屋根の織物工場など、多彩な歴史的建造物の町並みが展開します。建造物の修理・修景や環境整備に対して県も支援しています。
平成29年度は、指定文化財を管理するため、県指定文化財16件、国指定文化財19件の保存修理等に対して、また防災設備保守点検等事業として個人・法人が所有する7件の重要文化財(建造物)の防災保守点検等に対して補助金を交付しました。
埋蔵文化財については、国・県及び国県関係の法人が実施する開発に対し調整を行います。埋蔵文化財の所在や範囲を確認するために、工事前に試掘調査を実施します。平成29年度は、県内各地で61件実施しました。開発事業により埋蔵文化財の破壊が免れない場合は、記録保存のための発掘調査を行うよう、開発事業者と調整します。発掘調査は、公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団が行います。
上野国分寺跡は、奈良時代に聖武天皇の命により国家鎮護の寺として建立された本県を代表する遺跡で、大正15年10月に国史跡に指定されました。
上野国分寺跡の整備は、
「史跡上野国分寺跡整備基本設計(昭和63年3月策定)」に基づき逐次実施し、南辺築垣復元等の整備を関係方面の協力を得て実施してきました。また、平成24年度から整備事業を再開し、将来的に復元整備を行うための基礎的情報を収集する目的で発掘調査を行い、報告書を刊行しました。
上野国分寺跡は、本県の古代を語る上で欠くことができない県民共有の文化財として保護、活用されています。また、住宅密集地における緑地帯として、生活環境の向上や環境保全にも役立っています。見学者対応並びに日常の管理は、臨時職員3名が交代でガイダンス施設「上野国分寺館」に年中無休で常駐し、来訪者へのサービス向上と地元住民との交流を図っています。除草については、直営の除草に加えて、地元に国分寺遺跡愛好会があり、除草作業をボランティアで年3回ほど実施していただいています。
史跡観音山古墳は、群馬県を代表する大型前方後円墳の一つとして高く評価され、教科書にも採り上げられたこともあります。遺跡と出土品の学術価値は極めて高く、群馬県地
域の歴史の特色を明らかにする上で欠くことのできないものとなっています。史跡は県立歴史博物館の展示内容と結びつきをもった活用がなされ、大きな効果を上げてきました。石室内出土品は、県立歴史博物館の中心的な展示品となります。遺跡と博物館が近接していることから、両者を一体化した積極的な活用が図られています。
古墳の見学者対応並びに日常の古墳管理は、地元区長を代表とする史跡観音山古墳保存会に委託して、史跡レンジャーが年中無休で対応しています。古墳の石室見学は自由ですが、団体見学のみ事前に電話・見学申込書郵送等で文化財保護課宛に申し込みのうえ、進めています。
農業団体、消費者団体等の関係機関・団体と連携した施策を展開するとともに、県民行事として定着している「収穫感謝祭」をはじめとする関連イベントを通じて、食と農への理解促進を図っています。
また、地場産農産物の販売や、料理を提供する
「ぐんま地産地消推進店」の取組の情報発信など、地場産農畜産物の利用促進や理解促進を図るとともに、「地産地消の日(*注1)」をさらに普及、浸透させ、地産地消を県民運動として推進していきます。
「ぐんま地産地消推進店」「同協力企業・団体」
、認定登録数の増加に努めるとともに、農産物直売所相互の連携により消費者が一年を通して新鮮で、安全・安心な農畜産物を手に入れられる体制づくりを支援しながら、それらの情報発信に努めています。
さらに、県産農畜産物情報サイト「ぐんまアグリネット」や冊子「ぐんま食材セレクション100」を活用して、実需者に向け、旬の食材や特色ある農産物、入手方法等の情報を発信しマッチングを図るとともに、学校給食での県産農畜産物の利用を促進しています。
おっきりこみに代表される郷土料理など食文化を継承するため、ホームページ等を活用して情報提供することにより、食と農への理解を促進していきます。
本県農畜産物のブランド化、消費拡大を目的に、観光資源としての「食」の活用促進を図っています。全ての食材を県産でまかなえることから、本県を代表するおもてなし料理として推進している
「すき焼き」をはじめとして、旅館・飲食店における県産農畜産物を活用した料理の提供を促進するとともに、地場産食材を使った料理などの「食」と「農」を関連付けた情報発信や、観光果樹園、グリーン・ツーリズムに関する情報発信を、「ぐんまアグリネット」を通じて行っています。
「ぐんまアグリネット」ホームページ<外部リンク> アドレスhttp://www.aic.pref.gunma.jp/
(*注1)「地産地消の日」:毎月第1日曜日を含む金曜日~日曜日