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「水質汚濁防止法」では、「知事は公共用水域(*注1)の水質の汚濁の状況を監視しなければならない。」ことになっています。
本県では、国土交通省や各市など、関係機関と協同で、主要な河川と湖沼の水質を測定し、環境基準の達成状況を確認しています。
平成28年度は、81河川・12湖沼における222地点で水質の測定を行いました。
測定項目は、環境基準*2が定められている人の健康の保護に関する項目*3(カドミウム・シアンなど)と生活環境の保全に関する項目*4(BOD・CODなど)、水生生物の保全に関する項目*5(全亜鉛など)が中心です。
測定を行った全164地点全てで環境基準を達成しました。
環境基準の類型が指定*6されている21河川・38水域における40地点と12湖沼の12地点、計52地点(環境基準点*7)について評価を行いました。
a 河川
40か所の環境基準点において、汚濁の程度を示す代表的な指標であるBODで評価を行うと32地点で環境基準を達成し、達成率は80.0%となりました。水域別にみると、全38水域のうち環境基準を達成している水域は30水域であり*8、水域単位での達成率は78.9%(参考値)となります。環境基準を達成していない河川は、前年度と同様に県央・東毛地域の利根川中流の支川と渡良瀬川下流の支川に多く見られました。
b 湖沼
12か所の湖沼の環境基準点をCODで評価を行うと、9湖沼で環境基準を達成し、達成率は75.0%となりました。
a 河川
環境基準の類型が指定されている21河川・26水域の41地点のうち、38地点で環境基準を達成しました(達成率92.7%)。
水域単位では、全26水域中、23水域で環境基準を達成しています(達成率88.5%:参考値)。
b 湖沼
環境基準の類型が指定されている全11湖沼で環境基準を達成しました(達成率100%)。
渋川市には、県内の代表的な化学工場などがあり、過去には、これらの工場でも水銀を使った生産活動が行われていたことから、昭和48年以来、環境調査を続けています。
平成28年度も、渋川市大崎周辺の利根川の水質と底質について「総水銀*9」を調査しました。
水質は、利根川の2地点と工場排水路の1地点について、それぞれ年2回調査しましたが、いずれの地点でも環境基準値(0.0005mg/L)及び排水基準値(0.005mg/L)を下回りました。
底質については、利根川の2地点で年1回調べたところ、いずれの地点でも底質の暫定除去基準(25ppm)を下回りました。
水中の微生物が汚濁物(有機物)を分解するときに消費する酸素の量で、単位はmg/Lで表します。河川水、排水などの汚濁の程度を示すもので数値が大きいほど水が汚れていることを示します。
酸化剤(過マンガン酸カリウム)が水中の汚濁物を酸化する時に消費する酸素の量で、単位はmg/Lで表します。湖沼や海の汚れを測る代表的な目安として使われます。この値が大きいほど水が汚れていることを示します。
(*注1)公共用水域:河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝きょ、かんがい用水路その他公共の用に供される水路(公共下水道及び流域下水道であって終末処理場を有しているものを除く。)です。
(*注2)環境基準:人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準で、環境施策に係る行政上の目標のことです。大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音について定められています。
(*注3)人の健康の保護に関する項目:公共用水域の水質汚濁に係る環境基準で、人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準として設定された項目です。これには、シアンをはじめ蓄積性のある重金属類のカドミウム、鉛、クロム(6価)、ヒ素、水銀、アルキル水銀と人工的に作り出されたPCB及びトリクロロエチレン等の計27項目があります。基準値は項目ごとに定められています。
(*注4)生活環境の保全に関する項目:生活環境の保全に関する項目として定められたものです。水質汚濁に関しては、pH、BOD、COD、SS、DO、大腸菌群数、全窒素、全りん等の11項目について、河川、湖沼など公共用水域の水域類型ごとに環境基準が定められています。
(*注5)水生生物の保全に関する項目:生活環境を構成する有用な水生生物やその餌生物の生息や生育環境を保全するため、平成15年に定められました。生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として位置付けられています。
(*注6)類型指定:河川、湖沼及び海域別に、それぞれの利水目的に応じて水域の類型が定められています。
(*注7)環境基準点:環境基準の水域類型指定が行われた水域において、環境基準の達成状況を把握するための地点です。
(*注8)水域単位による環境基準達成の評価:同一水域に複数の環境基準点が存在する場合、その水域内のすべての環境基準点が環境基準を達成したときに、その水域が環境基準を達成したと見なします。水域単位による達成率の評価は、この白書では参考値として扱います。また、群馬県の湖沼では、1水域に1環境基準点が設定されており、湖沼の場合には、達成した水域数で評価した場合と、達成した環境基準点数で評価した場合の環境基準の達成率は等しくなります。
(*注9)総水銀:アルキル水銀等の有機水銀と無機水銀を合算したものの総称です。
地下水は、水温の変化が少なく一般に水質も良好であるため、貴重な水資源として水道、農業及び工業などに広く利用されていますが、いったん有害物質に汚染されると、その回復は困難で影響が長期間持続するなどの特徴があります。
有害物質による地下水汚染の未然防止を図るため、「水質汚濁防止法」では有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する措置や地下水の水質の監視測定体制の整備などの規定が設けられています。
県内の地下水の水質監視は、「水質汚濁防止法」の規定により作成した水質測定計画に基づき、県及び同法で定める4市(前橋市、高崎市、伊勢崎市及び太田市)が行っています。
a 調査方法等
県内の地下水の状況を把握するため全県を4キロメートル四方の151区画に区分し、1区画につき1本(県99、前橋市13、高崎市18、伊勢崎市9、太田市12)の井戸について調査しました。
県が実施する99井戸では、地下水環境基準が定められている項目を、過去の調査結果等を勘案し、対象物質をA~Dの4段階に区分し、各区画の井戸における調査項目を選択しています。ひとつの井戸で複数の項目を調査することもあります。
平成28年度の地下水質概況調査では、項目Aを99井戸で、項目Bを47井戸で、項目Cを24井戸で、項目Dを19井戸で調査しました。
なお、4市実施分の計52井戸では、50井戸ですべての項目を、2井戸でトリクロロエチレン等15項目を調査しました。
b 平成28年度の結果
24本の井戸で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素(*注11)が環境基準を超過して検出されました。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、エにあるような総合的な対策を行っています。
地下水環境基準達成率は84.1%(127/151地点)で平成27年度(81.5%)を上回りました。
概況調査等で地下水質が環境基準を超過した地区において汚染の推移を監視するため、継続的に調査をしています。
過去の概況調査でトリクロロエチレン等の有害物質が環境基準値を超過して検出された、前橋市4地区、高崎市2地区、伊勢崎市3地区、桐生市1地区、渋川市1地区、館林市1地区、富岡市1地区及び藤岡市1地区の計14地区で汚染状況の監視のための継続監視調査を実施しています。その結果、汚染物質の濃度は概ね前年並みでした。
また、平成19年度からは硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について、20井戸を選定して継続監視調査を実施していますが、基準値以下になる井戸があるなど、濃度は低下傾向となっています。そのため、平成26年度に、複数年基準値を下回った井戸のモニタリングを終了し、著しい汚染が確認された井戸において新たにモニタリングを開始しました。
継続監視調査において環境基準を下回る状態が継続している地区の汚染状況を確認し、同地区の継続監視調査の終了を検討するため実施するものです。
平成28年度は、伊勢崎市内の1地区について終了調査を実施し、調査結果から地下水汚染の浄化が確認できたため、平成28年度をもって同地区における継続監視調査を終了しました。
平成15年度に学識経験者と関係機関の職員を構成員とする「地下水質改善対策連絡協議会」を設置しました。大間々扇状地をモデルに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水の汚染機構について検討を行い、農業、畜産、生活排水等による複合的な影響によるものと推定されました。
現在、それぞれの汚染原因の影響を確認できる地点を選定し、汚染の推移について継続的に調査しています。
(*注11)硝酸性窒素・亜硝酸性窒素:生活排水やし尿の汚染があったり田畑の窒素肥料の影響などがあると、地下水中に多量に含まれていることがあります。
公共用水域で発生した水質汚濁事故については、関係機関が連携して原因調査と被害拡大防止策を講じるとともに、速やかに下流域の利水関係機関に通報します。
水質汚濁事故は目視により発見されるケ-スがほとんどで、その中でも油の流出事故が多くなっています。事故の発生原因としては、人的ミスや交通事故が多くなっていますが、原因不明の事故も多い状況です。
原因者が判明すれば、事故の再発を防ぐなどの指導を行っています。
水質汚濁物質が河川等の公共用水域に流出すると、下流の浄水場が取水を停止するなど利水障害を起こしたり、水生生物が斃死したりする場合があります。
そのため、水質汚濁事故を極力未然に防止できるよう、県民や事業者へ啓発することが重要となります。
平成24年5月に利根川水系の複数の浄水場で水道水質基準を超える有害なホルムアルデヒドが検出され、流域の都県で取水制限等が実施されるという大規模な水質事故が発生しました。
これを受けて、「群馬県の生活環境を保全する条例」の一部改正を行い、水道水への影響が大きい化学物質(特定指定物質)についての適正管理制度を創設し、平成25年4月から施行しました。
平成29年3月31日時点で209社から適正管理計画の届出がありました。業種は製造業や上水道業が多く、取扱物質種類ではアルミニウムや鉄が多くなっています。
公共用水域及び地下水の水質汚濁を防止し、人の健康を保護するため、「水質汚濁防止法」及び「群馬県の生活環境を保全する条例」等により、特定施設を設置する工場・事業場(特定事業場)に対し排水濃度の基準を設けて排出水を規制しています。
県では、「水質汚濁防止法」よりも厳しい排水基準(上乗せ基準*12)を設定する条例(排水基準上乗せ条例)を設け、規制対象を排水量10立方メートル/日以上の特定事業場に拡大し、基準値もより厳しいものとしています。
また、平成18年度に「群馬県の生活環境を保全する条例」を改正施行し、それまで排水規制の対象となっていなかった特定事業場以外の工場・事業場に対しても一部の項目で排水濃度の基準を設け、水質汚濁物質の発生源対策のさらなる充実を図っています。
平成24年度の「水質汚濁防止法」の改正で新たに届出対象とされた有害物質貯蔵指定施設の設置事業場数は68件(32件) でした。
平成28年度は、排水量が10立方メートル/日以上、又は有害物質を使用している特定事業場のうち、延べ651(402)事業場に対し「水質汚濁防止法」に基づく立入検査を実施し、このうち延べ447(386)事業場について、排水基準の適合状況を調査しました。その結果、排水基準に適合していたのは延べ377(325)事業場で全体の84.3%(84.2%)でした。なお、排水基準に不適合の70(61)事業場に対しては、文書又は口頭により改善を指導しました。
(*注12)上乗せ基準:排出水の排出の規制に関して環境省令で定める全国一律の排出基準または排水基準にかえて適用するものとして、都道府県が条例で定めた、より厳しい排出基準または排水基準です。
水質環境基準(BOD75%値)を達成できない河川は市街地内を流下し、河川流量が少なく生活排水が流入する河川が多い状況にあります。
このため、ぐんまウォ-タ-フェア等のイベントを通じて、県民の方に洗剤等の界面活性剤の適正な使用について啓発を行っています。
「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(以下、「家畜排せつ物法」)が完全施行され、畜産農家は家畜排せつ物の管理について、法律の基準を遵守することが義務付けられました。これに基づき、家畜排せつ物処理施設を整備する事業を実施し、適正な管理を指導してきました。
また、同法に基づく国の基本方針変更に伴い、平成28年3月に「群馬県家畜排せつ物利用促進プラン」として見直し、平成37年を目標年度として堆肥の利活用を積極的に進めることにしました。
畜産農家には、家畜排せつ物の適正管理に加え、耕種農家と連携し、家畜ふん堆肥の農地への還元を基本とした有機質資源としての有効活用を図ることを指導しました。
ア 耕畜連携堆肥流通支援事業(平成24年度~28年度)
「家畜排せつ物法」に対応するため、家畜排せつ物処理施設を整備し、畜産農家の周辺環境の保全を支援してきましたが、平成24年度からは地域における資源循環型農業の推進及び畜産経営の健全な発展を図ることを目的とし、堆肥の流通利用を促進するために必要な機械等の整備を支援する事業を開始し、平成25年度は西部地域3か所、東部地域1か所、平成26年度は中部地域1か所、西部地域1か所で機械整備を実施しました。また、平成27年度からは推進事業に移行し、耕種農家の堆肥利用に関する調査、耕畜連携先進地視察、堆肥利用の研修会を行うとともに、米麦を主体とする耕種農家向け啓発資料を作成、配布し、さらには、平成28年度は、米麦以外の耕種農家向け啓発資料の作成、配布を行い、堆肥利用の促進を図りました。
イ 畜産環境リース整備促進事業(平成14年度~28年度)
(一財)畜産環境整備機構が実施した畜産環境整備リース事業の特別緊急対策(1/2補助付きリース事業)を利用し、畜産農家が設置したふん尿処理施設や機械等のリース代金について附加貸付料の一部を助成しました。
河川の水質を悪化させる主な原因として、生活雑排水の河川や湖沼への流入が問題視されています。
特に、都市部では生活雑排水の流入が多く、水質は悪化する傾向にあります。この生活雑排水を河川へ流入させないため、公共下水道や浄化槽の整備が行われていますが、計画が長期にわたることや、進捗が自治体によって異なることから、悪臭等生活環境にも影響するほど水質悪化が著しい河川においては、その対策が急務となっています。
県では、館林市の市街地を流下し、水質悪化の著しい一級河川鶴生田川において、河川の水を直接浄化する水質浄化対策に取り組んでいます。
浄化対策としては、多々良沼からの浄化用水の導入(平成6年度完成)、鶴生田川及び城沼の底泥浚渫(平成4年度~16年度)、鶴生田川の礫間浄化施設(平成13年度完成)、城沼北岸の植生浄化施設(平成16年度完成)等を実施し、その結果、鶴生田川本川では水質が改善傾向にあり、近年安定しています。
一方、城沼では近年アオコの発生が見られていませんが、未だ水質目標を達成できない状況であることから、平成28年度は引き続き水質調査や水質浄化施設を稼働し、水質浄化対策に取り組みました。
川や湖を汚す大きな原因として、家庭からの汚水が直接川や湖に流れ込んでいることがあげられます。
川や湖などの汚れをなくすには家庭からの汚水をきれいにして川や湖に戻すことが大切です。
汚水を処理する施設には下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽やコミュニティ・プラントなどがあります。しかし、無秩序にこれらの施設をつくっても効果的に地域の汚水を浄化することはできません。
そこで、県では市町村の協力のもと、効果的な汚水処理施設の整備を行うために平成10年3月に「群馬県汚水処理計画」を策定しました。その後、財政状況等の社会環境の変化、さらに将来人口の予測や使用水量などの要因の変化に合わせ、平成16年度、平成20年度、平成24年度に、それぞれ見直しを行ってきました。
これにより各施設の整備を進めると、汚水処理人口普及率(*注13)が現在78.5%(平成27年度末)であるものが中期計画終了後(おおむね平成34年頃)には約92%になります。
また、川や湖に流れ込む汚濁負荷量も、中期計画終了後には、高度経済成長期前の昭和30年頃の汚濁負荷量を下回ることになり、水質改善がなされます。
よりよい水環境を一日も早く創生するためにも、市町村と協力しながら汚水処理施設の効率的な整備を本計画に従って推進していきます。
(*注13)汚水処理人口普及率:下水道処理のほか、農業集落排水処理施設、合併処理浄化槽、コミュニティ・プラント処理施設が整備されている人口が、県の行政人口に対して占める割合のことです。
流域下水道は、二つ以上の市町村の公共下水道から汚水を集めて処理するものです。主に公共用水域の水質保全を効率的に行うことを目的として都道府県が設置、管理するものです。県では、以下の整備を進めています。
ア 利根川上流流域下水道
沼田市、みなかみ町を処理区域とする奥利根処理区及び前橋市、高崎市を含む10市町村を処理区域とする県央処理区で事業を実施中です。奥利根処理区については昭和56年4月から、県央処理区については昭和62年10月からそれぞれ供用を開始しています。
イ 東毛流域下水道
太田市、千代田町、大泉町、邑楽町を処理区域とする西邑楽処理区、桐生市、みどり市を処理区域とする桐生処理区、太田市を処理区域とする新田処理区、伊勢崎市、太田市を処理区域とする佐波処理区で事業を実施しています。
西邑楽処理区は、平成12年4月から、新田処理区は平成18年7月から、佐波処理区は平成20年9月から供用を開始しています。
また、桐生処理区については、桐生市公共下水道(広沢処理区)として整備された施設を平成3年度に桐生市のほか、周辺2町1村を新たに取り込んだ事業に着手し、平成7年4月から流域下水道(桐生処理区)として供用しています。
公共下水道は、家庭及び事業場からの下水を排除し又は処理するために各市町村が設置、管理する下水道です。現在、29市町村で公共下水道事業を実施しています。
県では、県立公園内に位置する赤城大沼及び榛名湖の汚水処理施設の更新に重点的に支援を行うとともに、下水道処理人口普及率の向上を進め、公共用水域の水質を保全するため、市町村に対して管渠整備費の一部を補助しています。また、接続率の向上を図るため、個人が行う下水道へ接続するための排水設備工事に対して、市町村補助額の一部を補助します。
平成27年度末での本県の下水道処理人口普及率(処理区域内人口÷行政人口)は、52.6%で、今後も一層整備を促進する必要があります。
「農業集落排水事業」は農村下水道とも呼ばれ、1集落から複数集落を単位として実施する、農村の集落形態に応じた比較的小規模な下水道事業です。
この事業は、農村地域を対象に農業用水の水質保全と生活環境の改善を図るとともに、河川等の公共用水域の水質保全に役立たせるため、し尿や生活雑排水の処理を行うもので、処理された水を農業用水として再利用したり、処理の過程で発生した汚泥を肥料として農業に利用したり、資源循環型社会の構築にも役立っています。
平成27年度末までに115地区で事業に着手し、その内111地区が完了しました。
私たちの身近な水路や小川には、生活雑排水(台所、風呂、洗濯などの汚水)が流れ込んでおり、これが河川や湖沼の汚濁の主要な原因になっています。
公共用水域の水質を保全していくためには、し尿のみを処理する単独処理浄化槽ではなく、し尿と併せて生活雑排水を処理できる合併処理浄化槽を計画的に整備していくことが欠かせません。
県では、昭和62年度から市町村が実施する「浄化槽設置整備事業」に対して、県費補助制度を設け、単独処理浄化槽やくみ取り槽から合併処理浄化槽への転換(切り換え)推進を図っています。
市町村が自ら実施主体となって合併処理浄化槽を整備し、維持管理する「浄化槽市町村整備推進事業」についても、平成8年度から県費補助制度を設け、その推進を図っています。
ただし、平成27年度からは、新設に対する補助は廃止し、単独処理浄化槽等から合併処理浄化槽へ転換を行ったもののみ補助を実施しています。
単独処理浄化槽等を使用している個人等が、合併処理浄化槽へ転換した場合が対象となります。原則として単独処理浄化槽やくみ取り槽を撤去処分等するものが対象となり、「浄化槽設置整備事業費補助」に上乗せして、10万円/基を平成23年度から補助しています。
なお、平成12年6月に「浄化槽法」が改正され平成13年度から下水道予定処理区域を除いて、浄化槽を設置する場合は合併処理浄化槽の設置が義務化されたほか、既設の単独処理浄化槽の設置者に対しても合併処理浄化槽への転換努力が規定されています。
浄化槽は、主に微生物の力を使って、し尿や生活雑排水を浄化し、きれいになった水を放流するものです。
浄化槽の機能を生かすための維持管理として、
浄化槽の定期的な検査(「浄化槽法」第11条に基づく検査(11条検査))は、浄化槽設置者が毎年受検することが義務付けられていることから、県では、11条検査を受検していない方を対象に受検指導等を行いました。
また、県では、11条検査の受検を促進するため、50人槽までの小規模な浄化槽の11条検査について、保守点検と併せて法定検査を行う「効率化11条検査」の制度を設けています。
これらの効果により、11条検査の受検率は、平成28年度で約73%となり、全国平均の約39%(平成27年度)を大きく上回りました。
地盤沈下とは、過剰な地下水の採取によって、主に粘土層が収縮するために生じる現象です。
地下水は、雨水や河川水等の地下浸透により補給されますが、この補給に見合う以上の汲み上げが行われることで、帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し、粘土層に含まれる水(間隙水)が帯水層に移動して粘土層が収縮します。そのため、地表部では地盤沈下として認められます。
地盤沈下は、比較的緩慢な現象で徐々に進行し、他の公害と異なり、いったん地盤沈下が起こると元に戻ることはありません。
県では、「一級水準測量」と「地下水位計・地盤沈下計による観測」を行い、これら地盤の変動を把握しています。
県では、地盤変動の状況を経年的に調査するため、昭和50年度から一級水準測量を実施しています。広域的な測量を行うことにより、どの場所でどれくらい地盤が変動しているかを把握することができます。
平成28年度は、県の平坦地域10市町の水準点134点、測量延長286kmの規模で実施しました。
平成28年の地盤変動量は、平成29年1月1日現在の標高(T.P.)*注15から平成28年1月1日現在の標高(T.P.)を差し引いて求めたものです。
平成28年度における観測の結果、沈下の注意が必要となる20mm以上沈下した地域はなく、10mm以上20mm未満の沈下域は0.12平方キロメートルでした。
また、測量を実施した各市町村における年間沈下量のうち最大のものは、板倉町大字海老瀬(水準点番号5-03)の9.2mmです。
なお、観測開始からの累積沈下量としては、明和町新里(水準点番号50-08)で最大の474.3mmとなっています。
*注14 水準測量:地盤沈下現象を把握する方法として、一般的に行われているのが水準測量です。水準測量は、2地点に標尺を立て、その中間に水準儀の望遠鏡を水平に置いて、2つの標尺の目盛りを読み、その差から高低差を求める作業をいいます。遠く離れた地点の高さはこの作業の繰り返しによって求めることができます。公共測量における水準測量は、その精度により、一級、二級、三級、四級及び簡易水準測量に区分されます。本県の地盤沈下観測では、最も精度の高い一級水準測量が行われています。
*注15 標高(T.P.):東京湾の平均中等潮位からの高さです。実用的には、地上のどこかに高さの基準となる点を表示することが必要です。このため、明治24年に東京都千代田区永田町(国会議事堂前、憲政記念館南)に水準原点が作られました。内部に置かれた水晶板のゼロ目盛りの高さが東京湾平均海面(T.P.)上24.3900メートルと定められています。(平成23年10月21日改正)
地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げが原因とされており、地盤沈下の現状を把握するためには地下水位の変化と地盤沈下量を観測、分析することが有効です。このため、県では一級水準測量に加え、県で管理する地下水位観測井に地盤沈下計を併設し、地下水位と地盤沈下量(地層収縮量)を調査しています。
平成28年は、地下水位観測井(地下水位のみ観測)15井、地盤沈下観測井(地下水位と地盤沈下量を観測)5井の合計20井で観測を行いました。
一般的に地下水位は毎年同じような変化を繰り返しています。十数年前までは、地下水位は下降傾向でしたが、現在はほぼ横ばい傾向にあります。
深度の異なる3本の地盤沈下観測井を設置している明和西観測井の結果から、次のことが読みとれます。
「群馬県の生活環境を保全する条例」により、一定規模以上の井戸を揚水特定施設として設置の届出と地下水採取量の報告を義務付けています。
県では、高度経済成長の過程で工場等による地下水採取量が増大したため、特に東部地域の地盤沈下が著しく進行したと考えられています。
こうした状況を回避するため、県企業局では地下水保全(地盤沈下)対策として東毛工業用水道事業(給水区域:伊勢崎市、太田市、館林市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)及び東部地域水道用水供給事業(給水区域:太田市、館林市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)を計画・事業化しました。
平成28年度は地下水から表流水への新たな転換はありませんでしたが、引き続き転換を進め、地盤沈下の防止に努めます。
土壌・地下水は一度汚染されてしまうと、元の状態に戻すために多くの時間と費用が必要となり、原因事業者を主として多大な負担が発生します。そのため、土壌や地下水の汚染は未然に防止することが重要です。平成24年6月に改正「水質汚濁防止法」が施行され、新たに有害物質の地下浸透防止のための構造基準等について遵守義務が創設されました。県では、構造基準等の適合状況を立入調査により確認し、指導・助言を行っています。
また、「群馬県の生活環境を保全する条例」では、「有害物質を使用する事業者は、定期点検や事故時に有害物質が地下に浸透するおそれがあれば調査をして知事に報告する。」ことを義務付けています。
土壌の汚染状況の把握や汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めた「土壌汚染対策法」により、土地所有者等に対し、一定の契機をとらえた土壌汚染状況調査が義務付けられています。
この調査により、土壌中に一定の基準(指定基準)を超える有害物質が検出された土地について、県知事・政令市長(前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市)が区域指定し、土地所有者等は汚染状況に応じ汚染の除去等の必要な措置を実施しなければなりません。
県内においては、平成29年3月末現在、区域指定されているのは22区域(渋川市内・富岡市内(5か所)・安中市内(2か所)・東吾妻町内・玉村町内・明和町内・前橋市内(6か所)・高崎市内(4か所)・太田市内の土地)です。
平成28年度における一定規模以上の土地改変時の県への届出状況は134件(政令市は104件)であり、14件に調査命令(政令市は3件)を発出しました。
なお、汚染土壌処理業については、平成28年度中には許可申請がなされませんでした。
汚染土壌処理施設は、設置に当たって廃棄物処理施設と同様な法手続を経るとともに、廃棄物処理施設と兼用・併設されることが多く、また、人の健康を害するおそれがある特定有害物質で汚染された土壌を受け入れるものであることから、平成25年3月に廃棄物の事前協議規程を改正し、同規程の対象施設に汚染土壌処理施設等を追加することで、設置の適正化と手続きの合理化を図りました。
坂東工業団地(渋川市北橘町)周辺においては、昭和30年代後半に埋設されたカーバイド滓を原因とする土壌汚染によって、地下水汚染(テトラクロロエチレン)が顕在化しています。
この事案の解決を図るために、これまで次のような取組を行ってきました。
今後も専門家会議の意見を伺いながら、事案の解決に向けて取り組んでいきます。