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自然とのふれあいに対する需要の高まりに伴い、自然公園等に対する多様化した要求に応えるため、利用の快適性と自然環境の保護・保全を考慮した施設の整備補修、維持管理を実施します。
4つの国立・国定公園(上信越高原・尾瀬・日光・妙義荒船佐久高原)における県管理の登山道や標識、避難小屋等の県有施設の管理・整備などを実施し、貴重な自然環境の保全と適正な利用に配慮しつつ、利用者の快適性向上に取り組んでいます。
沿線の自然や歴史、文化にふれながら、手軽に歩くことができる道として、群馬県内には首都圏自然歩道と中部北陸自然歩道の2ルート、計41コースが設定されています。
地元市町村の協力を得ながら管理に努めるとともに、利用者からの声を反映した標識整備等に取り組んでいます。
赤城・榛名・妙義公園の県立公園は、地域の貴重な観光資源となっていることから、その保全に努めるとともに、更なる利用促進を図っていきます。
また、地域住民が中心となって、公衆トイレの清掃や遊歩道の下草刈りなどを行う地域密着型公園管理を実施するほか、各種県有施設の管理・整備に取り組んでいます。
県内には7つの県立森林公園があり、園内散策や自然観察など、それぞれの森林公園が兼ね備えた優れた自然環境を楽しむことができます。
また、公園では自然観察会やトレイルラン、森林整備活動などが催され、森林の保全や自然との共生に対する意識の醸成にもつながっています。
森林公園では園内整備はもとより、老朽化した施設や遊歩道の修繕・改修を実施して、引き続き良好な自然環境の保全に努めると共に、県民の保健休養や学習の場とするため、各公園の魅力や特長を生かした管理運営を行います。
一般的に中山間地域(*注1)等は平坦地と比べ、農業の生産条件が不利です。このため、中山間地域等における農業生産活動等の維持を通じて、耕作放棄地の発生防止、環境保全機能の確保等を図るため、平成12年度から「中山間地域等直接支払制度」が開始されました。
本県の平成27年度の取組状況は、対象25市町村のうち、18市町村で187の協定(185集落協定、2個別協定)が締結され、1,372ヘクタールの農用地で制度に取り組んでいます。
この取組により、棚田の保全や景観作物の作付け、ビオトープの設置なども行われています。
(*注1)中山間地域:平野周辺部から山間地域に至る地域の総称で、中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域として一般的に使われることが多いです。総農地面積の約4割を占め、農作物生産のみならず、資源管理・環境保全に極めて重要な役割を果たしていますが、地勢等の地理的条件が悪く、農業等の生産条件の不利に加え、人口の流出・高齢化、耕作放棄地の増大等により地域社会の活力が低下しつつあります。
県立都市公園の施設は、建設後20年以上経過している施設が多く、これから更新・維持管理費用が増大することが見込まれています。そこで、遊具・建物といった施設について、定期点検や修繕・補修等を行い施設の長寿命化を図り、現存の施設をより長く大切に使用していきます。それに合わせ、部分的な修繕では対応できない施設や利用者・社会ニーズの変化により陳腐化した施設については 適宜更新を行います。
なお、平成24年11月に4公園(敷島公園、金山総合公園、群馬の森、観音山ファミリーパーク)において、「群馬県公園施設長寿命化計画」を策定しています。
また、高齢者や障害者等の方々に、より安全・快適に公園を利用していただけるよう「群馬県移動等円滑化のために必要な特定公園施設の設置に関する基準を定める条例」を平成25年4月1日に施行し、その基準に基づき改修・整備を行っています。
私たちの身近にある川は、治水や利水の目的だけでなく、潤いをもたらす水辺空間や多様な生物を育む環境の場でもあります。
このため、川づくりにあたっては「多自然川づくり」を進め、河川が本来有している生物の生息・生育環境の保全・再生に配慮するとともに、地域の暮らしや文化とも調和した川づくりを行います。
このため、河川改修工事の設計時から地域住民の意見を取り入れるなどして、憩いの場を整備するなど、地元に親しまれる川づくりに取り組んでいます。
ぐんま昆虫の森は、「感動は人を育てる。」という発想から、身近な自然(里山)の中で生きものを見つけ、その体験を通して生命の大切さに気づき、豊かな感性を育む役割を果たすため、桐生市新里町不二山地域の面積約45ヘクタールの敷地内に、雑木林や棚田、小川、畑などの様々な環境を含む里山を再現し、平成17年8月に開園しました。
この施設では、緑あふれる里山の自然の中で、子どもから大人、お年寄りまで幅広い世代が、昆虫を始めとする様々な動植物とふれあい、生命、自然、環境について学習することができます。また、昆虫観察館では、様々な昆虫に関する写真や標本、生きている昆虫や小動物の展示に加え、生きた昆虫や身近な生き物を実際に手にとって観察できる「ふれあいコーナー」や自然素材を使った「クラフト体験」などを行っています。
人間が生活のために手を加え、管理してきた「里山」という環境は、昆虫たち生き物にとっても暮らしやすい場所です。その環境を保全するため、下草刈りや園路整備を行い、日本人の原風景ともいえる「里山」を、かやぶき民家を中心に再現しており、自然と共生してきた暮らし方などを体験することができます。
理科や自然・環境についての学習を行う小学校等を支援するため、教員向け利用説明会や個別の下見などに対応するほか、「学校団体利用の手引き」を配布しています。また、学校利用に際して、野外に観察ポイントを設置するなど、学習ニーズに合わせたきめ細かなプログラムの相談に応じています。その結果、平成27年度は、491団体、28,736人の利用がありました。
ぐんま昆虫の森では、多くの県民が整備や管理運営に参画できる県民参加型事業として、様々な取組を行っています。
自然観察の解説や昆虫飼育及びクラフト体験指導、田植えや稲刈りなどをボランティアの協力により実施しています。
平成27年度は、民話や養蚕、もちつき体験などを地元有志に依頼しました。また、園内の一部を株式会社ミツバ(桐生市)と協定を締結し、下草刈りなどの森林整備活動を実施しました。さらに、地元商工会主催のイベント、県内大学の吹奏楽部や地元有志の音楽会などを開催しました。
ぐんま昆虫の森では、「記録することは、環境の多様性を保全することの第一歩」であることから、昆虫標本の収集を行っています。標本は収蔵庫に保管されており、平成27年3月現在、約10万点を収蔵しています。この中にはぐんま昆虫の森周辺で採集された標本をはじめ、県内の市町村が実施した環境調査等で収集された標本、職員が良好な自然環境を有する地域学術調査、尾瀬地域学術調査などで採集した標本も含まれています。これらの標本は展示や教育普及における利用のほか、「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物(群馬県レッドデータブック)」の作成における証拠標本として、また各種レファレンスにおける参照標本などにも利用されています。
ぐんま天文台は、天文学への理解を通して、教育や文化の発展に寄与するため、高山村に建設され、平成11年4月に開館されました。建設に伴い、県では美しい星空を守り将来を担う子どもたちに伝えるために「ぐんま星空憲章」を制定しました。
また、高山村では平成10年3月「村民の夜間の安全性や社会的活動に必要な照明を確保しつつ人工光の増加を抑制し、美しい星空と光環境を維持すること」を目的とした「光環境条例」を制定し、観測しやすい星空の維持に村ぐるみで協力いただいています。天文台でも駐車場を600メートル離れた場所に設置するなど周辺の自然環境・光環境に配慮しながら、管理運営を行っています。恵まれた光環境の中、多くの県民が「大型望遠鏡による観望会」「流星群観察会」などの本物を体験できるイベントを通して自然と親しむことができます。また、県内学校の天文分野の授業に対して、天体観察など本物とふれ合う体験を重視した支援を継続しており、好評を得ています。ぐんま天文台は直接体験の中から宇宙の不思議さにふれ、天文現象に興味をもち、科学的に考える機会がもてる施設です。
「星空さんぽ」をはじめ、「アンドロメダ銀河を見よう」、「バレンタインはペア星を見よう」など、天文台ボランティア(総勢38名)は多くの自主企画を運営しています。平成27年度は時期を変えて年間14回企画し、合計で約1,600名の参加がありました。道具も使わずに直接星空を眺めることは、天文現象はもちろん、身近な自然への興味・関心を一層深めたり、広げたりすることの第一歩です。そして、それはさらに詳しく調べたり、学んだりするために機器の活用を工夫することへと発展していきます。
また、天文台ではより多くの来館者が星空に興味をもてるよう支援するため、ボランティア活動参加者を募り、その協力を得るとともに活動を支援しています。ボランティア活動は参加者自身の自己実現の場です。この活動に参加することで、生涯に渡って学ぶ意欲を高めたり、継続したりしようとする意欲が育まれ、やがて主体的な学習活動へと発展していきます。
本物の天体を間近に感じることで、自然にふれる感動は生まれます。しかし、自然を相手に常に一定の条件下で天体を観ることはできません。そこで、天文台では天候不良の場合には、映像による星空や宇宙の案内を行って、疑似体験を提供し、来館者が次の機会を楽しみにできるよう工夫しています。土日祝日の午後に投影する国立天文台提供の4D2Uプロジェクトの成果物を「3Dシアター」と命名して、太陽系はもちろん、宇宙の果てまでを立体映像で案内しています。このなかで、大気や水、温度などについて、他の惑星と地球とを比較しながら私たちを取り巻く自然のすばらしさを改めて実感する機会としています。また、案内映像を通して、星空が身近に感じられるよう心がけています。このようにぐんま天文台では、かかわる人すべてに対して自然にふれあう機会を提供しています。
自然史博物館は、豊富な展示物と映像、多くのジオラマ、タッチ式の情報端末等を用いて地球の生い立ちや生命の進化の歴史、群馬県の豊かな自然と現状を紹介しています。また、子どもから大人まで、楽しみながら自然について学べる国内でも有数規模を誇る参加体験型博物館です。さらに、県内の自然や古環境を学術調査し、その成果を研究論文やWeb、講座等を用いて公開しています。
加えて、県民やマスコミ等からの問い合わせにお答えする機関でもあります。平成27年度の来館者数は248,435名でした。
「地球の時代」、「群馬の自然と環境」、「ダーウィンの部屋」、「自然界におけるヒト」、「かけがえのない地球」の5つのコーナーで計3,490点の標本を展示しています。特に、「群馬の自然と環境」では、群馬の自然を標高別に4つの地域に分け、代表的な生態系を、多くの動植物や、地質・岩石等の標本とともにジオラマで紹介しています。また、「群馬県レッドデータブック」をもとにした絶滅種・絶滅危惧種のラベルや、特定外来生物等のラベルを色分けして表示し、群馬の生物多様性の現状をわかりやすく説明しています。さらに、高層湿地の貴重な自然が残されている尾瀬については、ジオラマや写真だけでなく、尾瀬シアターで映像を駆使して紹介しています。「かけがえのない地球」では、自然環境を見つめ、守り、子孫に伝えることの大切さが学べるよう環境学習に特化した展示を行っています。
平成27年度は、「恐竜時代の海の支配者」「たべる。」、「よろいをまとった生きものたち」「特別展:ぐんまの自然のいま」を開催しました。「恐竜時代の海の支配者」では、恐竜時代の水域における様々な生物についてスポットライトを当て、大型爬虫類であるフタバスズキリュウに代表されるクビナガリュウ、ギョリュウ、モササウルスの仲間等を紹介しました。
「たべる。」では、私たちヒトを含む生き物が、生きていくための基本である他の生き物を「食べて」、いかに効率よくエネルギーを摂取しているかに焦点をあて、標本展示、体験型展示、映像展示等を用いて紹介しました。
「よろいをまとった生きものたち」では、身の周りに多数生息している、鎧をまとった生物であるダンゴムシからエビ・カニ類のほか、オオグソクムシ生体等、約5億年前から現在まで定常的に生息する生物を紹介しました。
自然に関する情報発信センターとして、博物館に蓄積されている豊富な情報を館内の情報コーナーやWebを通じて提供しています。また、世界の博物館と情報を共有するネットワークに参加し、収蔵資料の情報を他の博物館や研究者に提供しています。
群馬の貴重な自然を調査し県民に紹介するため、県内をいくつかの地域に区分して、職員の専門分野を活かした調査・研究を実施しています。平成27年度は、平成23年度から25年度までの「上野村地域総合学術調査」を継続し、上野村での事象を考察する上で必要不可欠な近隣地域を含めた「奥多野及び周辺地域学術調査」として行いました。
担当分野別調査研究19本、大学や専門機関等との連携による調査研究43本等、県内を中心に多方面で調査研究を進めています。調査研究の公開としては、「群馬県立自然史博物館研究報告20号」の発行、研究論文19本、学会発表等20本があります。
野外へ出て豊かな自然を観察する「ファミリー自然観察会」や、地域の自然や科学をテーマとした「講演会」、県内の遠隔地で博物館資料を展示する「移動博物館」等、多くの事業を実施しました。
県民の方々に自然に親しむ機会を提供するとともに、人と自然との関わりを理解し、自然を愛する心を育む場を提供しています。また、小中学生を対象にした「ミュージアムスクール」や、高校生を対象とした「高校生学芸員」等において、野外調査を基本とした活動をとおして、自然に関心を持つ次世代の人材育成を行っています。平成27年度は、教育普及事業および学校への支援の総計で、延べ59,755名の参加者を得ています。
緑豊かな農村地域にゆっくり滞在して「自然、文化、生活、人々との交流」を楽しむグリーン・ツーリズムを推進し、都市住民等が農村生活体験を通じて自然とふれあい、同時に農村地域の活性化にも繋がるような機会づくりに取り組んでいます。
平成27年度は5回のグリーンツーリズム・キャラバンを実施し、都市と農村の交流機会を提供するとともに、地域連携システムの整備や人材育成講座の開催により、農村地域の受け入れ体制整備を支援しました。
自然保護に対する関心が高まるなか、正しい鳥獣保護思想の普及を図るため、平成27年度は次の事業等を実施しました。
広く県民に野生鳥獣の保護について普及啓発を図り、身近な自然環境の重要性を理解してもらうために「県民探鳥会」を阿左美沼で開催し、38名の県民の皆様の参加がありました。
野鳥に関する知識を深め、愛鳥思想を育む目的のもと、愛鳥モデル校に指定した5校の巡回指導等を行いました。
また、愛鳥週間ポスターの原画募集に141の小・中・高・特別支援学校から2,624点もの作品の応募がありました。
けがや病気により保護された野生鳥獣(傷病鳥獣)を傷病鳥獣救護施設(林業試験場内・野鳥病院)及び桐生が岡動物園(桐生市に委託)に収容し、野生復帰を行いました。
北毛青少年自然の家は、昭和43年4月、県下4番目の青年の家として設置され、青年の家と少年自然の家の機能を併せ持つ青少年健全育成施設として「北毛青年の家」の名称で運営されてきました。
施設は、子持山・小野子山の鞍部に位置し、約15ヘクタールの広大な敷地と300名を収容する教育キャンプ場・体育館・総合グラウンド・野外施設等を有しています。豊かな緑に恵まれた自然環境の中で、野外活動や登山、ウォークラリー、各種スポーツなどの体験に最適の場です。
妙義青少年自然の家は、昭和46年8月に「妙義少年自然の家」の名称で設置されました。妙義山の自然林の中に位置し、豊かな自然に囲まれ、四季をとおして野鳥をはじめ多くの動植物の姿が見られます。近くには、日本三奇勝の一つに数えられる石門群のほか、妙義神社、さくらの里、富岡市立妙義ふるさと美術館や自然史博物館などがあります。
東毛青少年自然の家は、昭和54年秋に「東毛少年自然の家」の名称で開所しました。大間々扇状地の中に連なる八王子丘陵のほぼ中央に位置し、アカマツ、コナラ、クヌギ林に囲まれた中にあります。
八王子丘陵は、古生層を始め、金山流紋岩、藪塚凝灰岩などから構成されており、動植物の種類も多く自然観察に適しています。近くには、茶臼山ハイキングコース、スネークセンター、石切り場、北山・西山古墳、岩宿遺跡などの学習環境にも恵まれ、多くの団体が利用しています。
これらの青少年教育施設は、主に学校等の林間学校等で利用され、自然体験や集団宿泊体験等をとおして青少年の健全育成に寄与している施設です。また、自然体験等の主催事業をとおして、子どもたちの社会性や生きる力の育成に努めています。
各施設とも前述の資源を活かした自然体験事業を展開しています。例えば、野外炊事、テント泊等の体験活動や登山、星座観察等の自然体験活動があげられます。
これらの活動を通して、子どもたちの感受性や自主性、社会性を育てています。また、親子で取り組む自然体験事業では、親子の協働作業・共通体験により親子の絆を深めたり、自然体験不足といわれている保護者世代への自然体験活動の普及・啓発を図っています。
また、夏季休業中には県内の小学生等を対象に、3泊4日の長期キャンプを開催しています。これは、子どもたちの社会性や生きる力を育むため、異年齢集団を編成し、テント泊や野外炊事等の生活プログラム、冒険プログラム等を実施しています。
北毛青少年自然の家
妙義青少年自然の家
東毛青少年自然の家
3所
ボランティア事業は、「青少年ボランティア体験」と「青少年ボランティア講座」にわけられます。
「青少年ボランティア体験」は青少年を対象に、自然の家でボランティア活動に取り組むものです。
施設設備や自然環境の整備や手入れ、施設利用者への指導補助、主催事業における指導や補助をとおして青少年の社会性を涵(かん)養しています。
「青少年ボランティア講座」では、自然体験活動をとおして、地域社会の一員として、温かで住みよい地域づくりや地域を支える人づくりに貢献する青少年を育成しています。
青少年自立支援事業では、様々な要因により社会とうまく関われない青少年に、自然体験や生活体験等様々な体験活動の場を提供し、忍耐力や協調性、社会性を育むとともに心の居場所づくりを行っています。また、保護者への支援も併せて行っています。