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これまで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減については、平成4年に開催された「地球サミット」や平成9年に締結された「京都議定書」などにより、人々の関心が高まってきました。
このような中、東日本大震災の発生を契機とするエネルギー供給の安全性や安定性に対する考え方の変化に加え、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(*注1)」(以下「固定価格買取制度)」の開始に伴い、太陽光発電、小水力発電、バイオマス発電等の様々な再生可能エネルギーの導入が進んでいます。
平成27年7月に国が公表した「長期エネルギー需給見通し」では、平成42年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を22~24%としており、今後の国におけるエネルギー政策の中で、我が国の自然条件等を踏まえながら、各再生可能エネルギーを最大限導入することとしています。
(*注1)再生可能エネルギーの固定価格買取制度:再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調達を義務づける制度のことで、平成24年7月に開始しました。
本県では、平成28年3月に策定した「群馬県再生可能エネルギー推進計画」に基づき、再生可能エネルギーの計画的な普及を図ることとしており、平成26年度の年間発電量40億キロワットアワーについて、平成31年度には1年当たり52億キロワットアワー、平成42年度には1年当たり62億キロワットアワーまで拡大させることを目標としています。
また、平成21年に開始された「太陽光発電の余剰電力買取制度(*注2)」は、平成31年で制度開始から10年が経過します。制度の初期に導入した発電設備は買取期間が終了するため、その活用方法について考えていく必要があります。
(*注2)太陽光発電の余剰電力買取制度:太陽光発電による電気が、設置者で使う電気を上回る量の発電をした際、余剰となった電力を、10年間固定価格で電力会社に売ることができる制度です。「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」に基づき、平成21年11月1日より開始されました。その後、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の開始とともに、同制度に移行しました。
本県は、全国でも有数の日照時間を誇ることから太陽光発電に適した地域であり、普及が進んでいます。導入ポテンシャルは、設備容量にして867万キロワットと推計されており、今後も有力な再生可能エネルギーとして期待されています。
一方、太陽光発電の継続的かつ安定的な普及を進めていくにあたっては、天候や時間に左右される太陽光発電の出力変動や、売電単価の低下による経済的メリットの減少といった課題に対応していく必要があります。
また、出力が不安定な再生可能エネルギーが電力系統に多く接続されると、電力系統の電圧の上昇、周波数の変化など、電力品質の維持に支障を来すようになります。
このような電力の出力変動に対処する手段のひとつとして、蓄電池の活用が考えられます。蓄電池は、太陽光発電の余剰電力を蓄え、夜間や悪天候時などに使用することにより、太陽光発電の出力変動の抑制に貢献することができます。さらに、「固定価格買取制度」による買取期間の終了後は、買取価格が電気料金を下回るとみられ、そうなった場合、電力を売るより自家消費した方が優位となります。蓄電池は、太陽光発電を自家消費する上で効果的であることから、蓄電池の活用を推進していくことが重要です。
また、現在は、蓄えた電力は蓄電池を設置した建物で使用するのが一般的ですが、地域単位で蓄電池を活用する方法も考えられます。このような考えに基づいた取組の一つとして、太陽光発電などの発電設備や蓄電池、デマンドレスポンス(電力の需給調整)を組み合わせてEMS(*注3)により運用することで、あたかも1つの発電所のように電力の需給バランスを調整する「仮想発電所」の構築に向けた実証試験が行われています。このように、再生可能エネルギーを地域のエネルギーとして活用していくためにも、蓄電池の更なる普及が望まれます。
(*注3)EMS(エネルギー管理システム):ICT(情報通信)技術を活用して、電力使用量を可視化したり、発電設備やエネルギー消費機器を制御することにより、効率的なエネルギーの使用・管理を行うためのシステムです。
社会経済活動を安定的に行うためには、天候等に左右されないベースロード電源を確保することも重要です。再生可能エネルギーの中でベースロード電源になるものは、水力発電のほかにバイオマス発電、地熱発電があります。
本県は、首都圏の水がめとして豊富な水資源を有しており、関東一の水力発電量を誇りますが、それに加えて、県土の3分の2が森林である関東一の森林県でもあり、木質バイオマス発電においても有望地であると言えます。木質バイオマス発電では、従来は捨てられていた低質材に燃料用チップの原料としての価値が生じますが、ベースロード電源とするには、電源としての安定性が求められるため、燃料の安定供給も同時に求められることとなります。そのためには、林業の生産性を高めて低質材の安定供給体制を構築することが必要です。このことにより、県産材利用量の増加や森林資源の循環利用に大きく寄与し、ひいては林業の再生を通じた山村の活性化といった、電源の確保にとどまらないメリットが得られると考えられます。
再生可能エネルギーは、CO2を発生させないクリーンなエネルギーであり、資源が枯渇することのない持続可能なエネルギーとして、しっかりと社会に定着させることが必要です。事業用の太陽光発電については、固定価格買取制度が開始されて20年が経過する平成44年頃から、設置された太陽電池モジュールが事業廃止に伴い廃棄され、排出量が急増することが危惧されます。そのため、太陽電池モジュールの適切な処理やリサイクルの推進とともに、買取期間終了後も地域の発電インフラとして継続的に活用されるための仕組みづくりが重要になります。
また、近年、各地で大規模な太陽光発電所が設置されていますが、地域住民の理解や自然環境への配慮、適切な災害防止対策等が求められるようになりました。このため、地域や環境と調和した発電所の整備促進が必要です。
再生可能エネルギーは、従来の化石燃料と異なり、低炭素で持続可能なエネルギーであり、地域の資源を活用する国産エネルギーとして地域振興の面からも期待されています。私たちの生活や経済を支える大切なエネルギーの一つとして、地域社会や環境との調和を図りながら、一層の普及・拡大ができる環境を整備していくことが重要です。