ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 環境白書 > 第2部第3章第1節 放射線対策

本文

第2部第3章第1節 放射線対策

更新日:2015年10月8日 印刷ページ表示

第1項 一般環境における放射線量調査

1 空間放射線量等のモニタリング

(1)モニタリングポストによる監視

 県では、文部科学省(平成25年度からは原子力規制委員会)の委託事業である、「環境放射能水準調査」の一環として、放射性物質の飛来状況を監視するため、平成2年度から衛生環境研究所の屋上(地上21.8メートル)に空間放射線量測定器(モニタリングポスト)を設置し、継続して測定を行っています。
 平成23年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により、衛生環境研究所(前橋市上沖町)では一時的に空間線量の上昇が認められましたが(平成23年3月15日13時から14時:0.562マイクロシーベルト(*注1)毎時)、その後減少し、現在の同地点の空間放射線量率は0.02マイクロシーベルト毎時程度と事故前の平常値の範囲内で安定して推移しています。
 平成24年度からは、更に24基のモニタリングポスト(地上1メートル)を追加した、25基で県内全域を常時監視しています。
 平成26年度の県内の状況(地上1メートル)は、0.011から0.142マイクロシーベルト毎時の範囲で推移しています。
 なお、この水準調査ではこの他に、浮遊じん、水道水(後述)、降水、土壌、精米、野菜類、牛乳についても調査を行っています。

(*注1)シーベルト:人体が受けた放射線による影響の度合いを表す単位。

(2)サーベイメータ等による測定

 モニタリングポストによる監視とは別に、県・市町村放射線対策会議(後述)では、携行型の空間放射線量測定器(サーベイメータ)により、定期的に生活圏を中心に空間放射線量を測定しています。測定結果は地図化し、「群馬県放射線マップ」として公表しています。平成23年9月は、679地点で測定し、0.3以上0.4マイクロシーベルト毎時未満の地点が全体の0.7%(5地点)、0.2以上0.3マイクロシーベルト毎時未満の地点は全体の5.6%(38地点)ありました。
 平成26年は、11月に測定した全1,124地点で、生活圏で除染が必要な0.23マイクロシーベルト毎時を下回り、空間放射線量率の減衰が確認されました。

2 汚染状況重点調査地域

 東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性物質が降下・沈着し、平均的な空間放射線量率が0.23マイクロシーベルト毎時以上である地域については、「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」に基づき、国が市町村ごとに「汚染状況重点調査地域」として指定することとされています。県内では平成23年12月28日付けで、桐生市、沼田市、渋川市、安中市、みどり市、下仁田町、中之条町、高山村、東吾妻町、片品村、川場村及びみなかみ町の12市町村が指定を受けました。
 その後の詳細調査の結果、片品村とみなかみ町については、空間放射線量率が低いことが確認され、平成24年12月27日付けで指定が解除されました。
 現在、「汚染状況重点調査地域」に指定されている10市町村のうち9市町村(*注2)で「除染実施計画」が策定され、除染作業が実施されました。除染は、学校や公園等の子ども空間から優先的に実施され、順次住宅、公園・スポーツ施設、道路、農地等について実施されました。
 平成26年度で9市町村のうち7市町村で除染が完了し、残る2市村も平成27年度には終了予定となっています。

(*注2):安中市は、指定後の詳細調査の結果、面的除染が必要な区域は確認されていません。

第2項 食品等の放射能調査

1 上水道

(1)水道水の監視

 文部科学省(平成25年度からは原子力規制委員会)の委託事業である「環境放射能水準調査」の一環として年1回測定を行っていましたが、原子力発電所事故発生直後は、強化モニタリングとして毎日1回測定を行う体制となりました。概ね平成23年4月下旬を最後に放射性ヨウ素及び放射性セシウムは不検出が続いていたため、文部科学省の方針変更を受けて、平成24年1月からは3ヶ月分の水道水を濃縮し、精度を100倍に高めた測定を行う体制へと移行しました。
 平成26年度の測定結果は、ヨウ素131は0.00044ベクレル(*注3)毎キログラム未満、セシウム134は0.00043未満から0.00080ベクレル毎キログラム、セシウム137は0.0015から0.0021ベクレル毎キログラムでした。

(*注3)ベクレル:放射性物質が放射線を出す能力を表す単位。1秒間に崩壊する原子核の数を表す。

(2)県内の水道水中の放射性物質検査の実施

 県内の水道水は、厚生労働省が示している「今後の水道水中の放射性物質のモニタリング方針について」に基づき、各水道事業者(市町村等)が定期に実施しているほか、県食品安全検査センターにおいて、同所の水道水について毎週1回の頻度で検査を実施しています。平成23年3月の原子力発電所事故発生以降、継続して検査を実施していますが、平成23年6月3日に検出されたのを最後に、放射性物質は検出されていません。

(3)県営水道の監視体制

 企業局は水道用水供給事業者として4つの県営水道を運営しており、16市町村の経営する水道事業を通じて、県内の約160万人に水道水を供給しています。
 安全な水を供給するという事業者としての責務から、水質検査センター(太田市新田反町)において、県営水道の浄水場ごとに、放射性ヨウ素、放射性セシウムについて週1回検査し、結果を公表しています。
 なお、平成26年度の測定では、放射性物質は検出されませんでした。

2 流通食品等

 県内に流通する食品の安全性を確認するために、放射性物質の検査を実施し、結果を速やかに情報提供しています。
 平成26年度は計120検体の検査を実施し、すべての検体で基準値を下回っていました。

3 県産農畜産物

(1)農産物

 県内で生産されている農産物については、定期的に放射性物質検査を実施し、安全性を確認しています。
 県内では、平成23年3月にホウレンソウ及びカキナが暫定規制値を超えたため、出荷規制の対象となりました。その後、検査によって安全が確認されたため、平成23年4月には出荷規制は解除になりました。
 また、平成23年6月の検査で暫定規制値を超えたため出荷が制限されていた茶については、平成24年5月の検査で一部解除、さらに平成25年6月の検査で残りの地区の出荷制限が解除されました。
 平成25年6月以降、県内で生産されている農産物で出荷が制限されている品目はありません。

(2)牛肉

 平成23年7月8日に福島県産の牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことにより、牛肉の安全性への信頼性が揺らいだ状況となり、群馬県のみならず東日本各地で枝肉価格が暴落し畜産農家は大打撃を受けました。
 県では県内のと畜場に出荷された肉用牛を対象として同年7月31日から県内で全頭検査を実施しています。これまで基準値を超過する牛肉が平成24年10月に1頭検出されましたが、その後は、飼養管理の徹底により、基準値を超える牛肉は検出されていません。
 平成26年度 検査頭数:14,751頭

(3)原乳

 原乳については、平成23年3月22日から県内全域が対象となるよう毎週2~3検体ずつ検査を継続しています。
 これまで、全ての検体が暫定規制値を大きく下回っています。
 平成26年度 検査回数:50回
 検査数:125検体

(4)豚肉、鶏肉、鶏卵

 豚肉については月1回2検体ずつ、鶏肉については、四半期に1回2検体ずつ検査を行いましたが、いずれも未検出でした。

4 野生獣肉、きのこ

(1)野生獣肉

 県内各地で捕獲された野生獣肉については、環境調査及び食肉利用の面から検査を実施しています。なお、クマ、イノシシ、シカ及びヤマドリについては、原子力対策本部長から県内全域を対象として出荷制限の指示を受けています。
 また、検査結果については、県のホームページで公開しています。

(2)きのこ

 栽培されているきのこ類については、毎週定期的にモニタリング検査を行い、安全性を確認しています。また、安全なきのこ生産を推進するため、きのこ原木やほだ木等の生産資材を対象とする指標値(きのこ原木・ほだ木の放射性セシウム50ベクレル毎キログラム、菌床等の放射性セシウム200ベクレル毎キログラム)の確認検査等を実施しています。

5 各種飼料等

(1)平成26年産飼料作物、牧草等への対応について

 牛乳や肉類の安全性を確保するために、前年度に引き続き、永年生牧草について、放射性物質検査を実施しました。その結果、飼料の暫定許容値を超過した放射性物質は検出されなかったことから、飼料としての利用が可能となりました。
 なお、この他の飼料作物等については、前年度の検査結果から検査の対象とはなりませんでした。

(2)永年生牧草地の除染(草地更新)について

 飼料の暫定許容値を超過した牧草を生産した永年生牧草地について、飼料としての利用を再開するためには除染(草地更新)が必要であることから、平成26年度も、前年度に引き続き約21ヘクタールの除染(草地更新)を行いました。(前年度からの累計面積:263ヘクタール)

6 農地土壌等

 県産農畜産物の安全性を確保し、生産者が安心して営農に取り組めるよう、平成23年4月から県内の農地土壌を対象とした放射性物質にかかる土壌調査に取り組んでいます。

(1)モニタリング定点調査

 モニタリング定点調査では、県内の農地土壌における放射性セシウム濃度の平成23年度以降の推移を把握するため、平成24年度から継続的な土壌調査を実施しています。平成26年度は、県内88地点で調査を実施したところ、各地点の濃度は17~770ベクレル毎キログラム乾土の範囲で、平均すると158ベクレル毎キログラム乾土でした。
 各地点の放射性セシウム濃度は、約3年半前と比較して平均54%に減少していました。このことは放射性セシウムの崩壊による物理的減衰(約64%)以上に減少したことを示しています。その理由については、同一ほ場内
のばらつきのほかに、風雨によるほ場からの流亡・流入などの自然要因や、ほ場管理の違いなど人為的要因の差による可能性が考えられます。
 モニタリング定点調査の結果は、県のホームページで公開しています。

(2)詳細調査(水稲)

 詳細調査(水稲)では、放射性セシウムの玄米への移行低減対策のひとつであるカリ施用の効果の検証を目的として、施肥指導を行うとともに、玄米中の放射性セシウム濃度と土壌・耕作管理状況等に関する詳細な調査を実施しています。平成24年度は県内55地点、平成25年度は県内49地点で調査を実施したところ、玄米中の放射性セシウム濃度は全ての地点で不検出または基準値(100ベクレル毎キログラム)以下でした。
 玄米への放射性セシウムの移行低減については、既存の知見と同様にカリ施用の有効性を示し、水稲栽培後の土壌の交換性カリ含量が25ミリグラム毎100グラム乾土以上では、玄米の放射性セシウム濃度はおおむね不検出でした。
 2年間の調査結果から、カリ肥料を施用し土壌の交換性カリ含量を適正に管理することで玄米の放射性セシウム濃度を十分に低く抑えられることが検証できました。詳細調査(水稲)の結果は、県のホームページで公開しています。

7 下水汚泥

 福島第一原子力発電所の事故に起因し、県が管理する流域下水道終末処理場(奧利根、県央、西邑楽、桐生、利根備前島、平塚)から発生する下水汚泥は、現在、微量な放射性物質が検出されていますが、セメント・肥料の原材料基準を満たしていることから、再資源化を行っています。
 下水汚泥に含まれる放射性物質濃度については、県民への情報提供のため、平成23年5月からは約2週間に1回、平成25年10月からは検出濃度の低下により、月1回のペースで検査結果をホームページで公表しています。

平成26年度 検査結果

  • セシウム134 0から14(ベクレル毎キログラム)
  • セシウム137 0から30(ベクレル毎キログラム)

第3項 放射線対策に係わる体制整備

1 県・市町村放射線対策会議

 放射線対策について、県と市町村が連携し、総合的な対策を推進することを目的に平成24年5月7日に「県・市町村放射線対策会議」を設置しました。
 平成26年度は、5月、2月に会議を開催し、同会議から選ばれた構成員による検討結果を踏まえ、平成27年度から「群馬県放射線マップ」の更新に代わり、継続して監視が必要な地点において「全県的な放射線監視」を中長期的に実施していくこと等を決定しました。
 また、この会議に、汚染状況重点調査地域の指定を受けた12市町村(現在解除となっている2町村を含む)を構成員とする除染部会を設置し、平成26年度は2月に部会を開催し、除染対策の円滑な推進に向けた情報共有を図りました。

2 放射線対策庁内連絡会議

 県では、分野横断的に放射線対策業務の円滑な推進を図るため、平成24年4月25日に企画会議の部会として、「放射線対策庁内連絡会議」を設置し、情報の共有などを行っています。
 平成26年度は5月に会議を開催し、各分野の放射線対策の現況を網羅的に取りまとめた「放射線対策現況」の作成等を行いました。

第4項 放射性物質を含む廃棄物の処理

1 指定廃棄物の処理

(1)指定廃棄物の現状

 平成24年1月1日に完全施行された「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下、「放射性物質汚染対処特措法」)において、指定廃棄物とは、事故由来放射性物質についての放射能濃度(放射性セシウム134と137の合計値をいう。)が8,000ベクレル毎キログラムを超える廃棄物であって環境大臣が指定したものをいいます。
 環境省によれば、平成26年度末で、群馬県内には、浄水発生土が約672.8トン、下水汚泥焼却灰が約513.9トン、計約1,186.7トンが指定廃棄物として指定され、保管されています。これら指定廃棄物の処分は、国が責任をもって行うものとされています。

(2)指定廃棄物の処理方針

 指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内で行うこととされています。
 国により、各県毎に、指定廃棄物の最終処分場の設置などの処理に向けた検討がされています。

2 放射性物質汚染廃棄物処理状況監視

 県では、「放射性物質汚染対処特措法」に基づく特定一般廃棄物処理施設である焼却施設9施設及び最終処分場16施設について、測定結果の報告の求めや立入検査を実施し、排出ガスや放流水の放射能濃度の確認を行いました。検査の結果、全ての施設において基準に適合していることを確認しました。

平成27年版環境白書のページに戻る