ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 環境白書 > 第2部第2章第2節 野生鳥獣対策と外来生物対策の推進

本文

第2部第2章第2節 野生鳥獣対策と外来生物対策の推進

更新日:2015年10月8日 印刷ページ表示

第1項 野生鳥獣害対策の推進

1 野生鳥獣による被害の現状

 野生鳥獣はその習性から、生息環境等によっては時期的、地域的に農林水産物を食害するなどの行動をとるため、県内の多くの地域で被害が発生しており、農林業被害額は年8億円を超えています。
 また、生活環境の被害や生物多様性の劣化なども顕在化しており、野生鳥獣と人との軋轢は増大しているのが現状です。

(1)農村地域における被害

 イノシシ、ニホンジカ、カモシカなどの食害や踏み荒らしによる農作物被害が発生し、被害額は高水準で推移するとともに、農業者の生産意欲の減退が問題となっています。

(2)都市部における被害

 家屋をねぐらとするアライグマやハクビシンの目撃数が増加し、屋根裏の糞尿被害などの生活環境の悪化が懸念されています。

(3)林業における被害

 ツキノワグマやニホンジカの林業被害が多く発生しています。
 スギやヒノキの人工林では、ツキノワグマにより数十年かけて育てた造林木が剥皮される被害が発生し、木材の価値がなくなるとともに、林業者の生産意欲の減退が問題となっています。

(4)自然環境における被害

 尾瀬ヶ原におけるシカによるミズバショウなどの希少な植物の食害や湿原の踏みつけが深刻化するなど、貴重な自然環境が損なわれ、生物多様性の劣化が問題となっているとともに、裸地化による土壌の流出などが懸念されています。

(5)河川における被害

 カワウによる放流魚の食害により、被害とともに漁業関係者の意欲の減退が問題となっています。
 カワウは、大型の魚食性鳥類で、県内では昭和57年に飛来が初めて確認されました。その後平成2年頃から飛来数が増加し、平成9年には営巣地が確認され、現在では県西部の上野村、東部の渡良瀬川流域、北部のみなかみ町まで飛来しています。また、ねぐらについては県内各地で確認の報告があります。
 カワウの採食量は1日500グラム(体重の3分の1から4分の1)と非常に多く、アユ等の食害により県内の内水面漁業に深刻な被害を与えています。

2 有害鳥獣対策

 増えすぎた野生鳥獣による人との軋轢の軽減のため、特定の鳥獣に対して適正管理計画(特定鳥獣保護管理計画)を策定し、「生息環境の管理」、「防護」、「捕獲」、「調査・研究」を行っています。
 また、県では平成22年度に「鳥獣害対策支援センター」を設置し、市町村、被害地域、関係機関と連携・協力しながら、総合的・計画的な被害対策を支援するとともに、被害対策指導者の育成を図り、現地対応力の強化と地域ぐるみの実効ある被害対策を進めています。

(1)生息環境の管理

 被害地周辺における野生鳥獣のすみかや繁殖地となる笹や藪を刈り払いしたり、野生鳥獣の出没を抑制するために、見通しの悪い藪の刈り払いや樹木を伐採して見通しをよくするなど、野生鳥獣からの被害を守るための生息環境の管理を行っています。

(2)防護

 野生鳥獣が耕作地に入らないように電気柵や侵入防止柵を設置したり、野生鳥獣の食害から守る樹木に防護資材を設置したり、忌避剤を散布するなどの対策を講じています。

(3)捕獲

 増えすぎた野生鳥獣については個体数を減らすため、有害捕獲への捕獲奨励金の交付や捕獲の担い手確保など、捕獲を強化する対策を講じています。

(4)調査・研究

 野生鳥獣の生息や被害の実態の把握に努めるとともに、効果的な被害対策方法について調査・研究を行っています。

第2項 外来生物対策の推進

1 外来生物対策

 外来生物とは、本来の生息地とは異なる地域に人為的に持ち込まれた生物のことをいいます。
 人間の移動や物流が活発になったことで、多くの動植物がペットや展示・食用・研究等の目的で世界中で取引されています。また、荷物や乗り物等に紛れ込んだり付着して、知らないうちに持ち込まれてしまう場合もあります。
 野生生物は、本来その地域特有の自然環境の中で相互に関係し合い、複雑なバランスを保って生存しています。このため、人為的に外来生物が持ち込まれてしまうと、もともとその地域にいた生物が駆逐され地域特有の自然環境のバランスが崩れてしまうほか、人間に直接危害を加えたり、農作物が被害を受けるなど、様々な問題を引き起こすおそれがあります。このため、国は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法
律」(通称:外来生物法)を平成17年に施行し、問題を引き起こす外来生物を「特定外来生物」として指定(113種類 平成27年3月1日現在)、その飼養・栽培・保管・運搬・輸入といった取り扱いを規制して国内への侵入や拡散を防ぐとともに、既に定着してしまったものについては駆除や隔離等の防除を行うこととしています。
 平成17年度から平成19年度にかけて県内で行った調査でも特定外来生物が確認されており、動物ではアライグマやオオクチバスなど19種が、植物ではオオハンゴンソウやオオキンケイギクなど8種が確認されました。
 近年、アライグマやカミツキガメといった特定外来生物が身近な所で見つかったり、捕獲されることが増えていますが、これらはもともとペットや観賞用として輸入され、人間に飼われていたものが逃げ出したり、飼うことができなくなって捨てられてしまったものが自然界で繁殖し、問題を起こしているケースです。生き物を飼育する場合は、その生き物の寿命や成長したときの大きさ、性格や生態等について十分調べた上で、責任を持って終生飼育するよう指導しています。

<外来生物被害予防三原則>

  1. 入れない:悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに国内に入れない
  2. 捨てない:飼っている外来生物を野外に捨てない
  3. 拡げない:野外に既にいる外来生物は他地域に拡げない

2 コクチバス駆除

 平成11年に奥利根湖で発見されたコクチバスは翌年には繁殖が確認され、県では地元漁業協同組合に委託して駆除作業を開始しました。
 コクチバスは北米原産の魚食性外来魚で、冷水域・流水域でも定着が可能です。旺盛な食欲と繁殖力で水産資源や生態系に悪影響を及ぼすとして、特定外来生物に指定され、放流はもとより、飼育や運搬が規制されています。また、群馬県内水面漁場管理委員会の指示として採捕したコクチバスの再放流を禁止し、コクチバスの駆除推進に努めています。
 奥利根湖での駆除事業では、平成17年度以降の駆除尾数から生息尾数の減少も示唆され、駆除効果が出ていると考えられます。
 しかし、平成22年に烏川で、平成23年に鏑川と渡良瀬川でコクチバスの生息が確認され、利根川下流域での生息域の拡大が懸念されています。
このため、県では、平成23年より群馬県漁業協同組合連合会に委託して河川におけるコクチバスの駆除を開始しました。

平成27年版環境白書のページに戻る