本文
大気汚染の状況を正確に把握し、実態に即応した適切な防止対策を進めるため、県内各地に測定局を設置し、自動測定器による監視測定を行っています。
県では10市3町1村に16測定局を設置し、二酸化硫黄、窒素酸化物、浮遊粒子状物質、オキシダントなどの測定を実施しています。
その他、前橋市が2測定局、高崎市が5測定局で測定を実施しています。
県では6市に6測定局を設置し、一酸化炭素、窒素酸化物、非メタン炭化水素、浮遊粒子状物質などの測定を実施しています。
その他、環境省が1測定局、高崎市が1測定局で測定を実施しています。
測定局の適正配置や測定項目の再検討、固定局では調査できない大気汚染状況調査のために、平成14年度から大気汚染移動観測車による測定を行っています。
大気汚染監視測定の状況は、群馬県大気汚染常時監視システムホームページやテレホンサービスにてお知らせしています。
インターネット 群馬県大気汚染常時監視システム<外部リンク>
電話 027-220-1017 (音声案内後、Faxで受信することも選択できます。)
硫黄酸化物は、石炭、石油などの硫黄分を含む燃料を燃やすことに伴って発生します。二酸化硫黄と三酸化硫黄とがありますが、大部分は二酸化硫黄として排出されます。濃度の測定は二酸化硫黄で行い、環境基準も二酸化硫黄で設定されています。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。
窒素酸化物は、一酸化窒素と二酸化窒素の総称で、発生源は工場、事業場及び自動車などがあり、燃料の燃焼過程において空気中の窒素と酸素の反応により生ずるものと、燃料中の窒素が酸化されて生ずるものがあります。大部分は一酸化窒素の形で排出され、大気中で二酸化窒素に変化します。
窒素酸化物は、それ自体が有害であるばかりでなく、光化学オキシダントや酸性雨の原因物質でもあります。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、二酸化窒素の年平均値の経年変化は、低下傾向にあります。
一酸化窒素については、環境基準は定められていません。平成25年度の測定結果は、年平均値0.001ppmから0.004ppm(前年度年平均値0.001から0.004ppm)の範囲となっています。
浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状物質のうち粒径10マイクロメートル以下のものです。大気中に比較的長時間滞留し、私たちの健康に影響を与えるといわれています。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。浮遊粒子状物質の年平均値の経年変化は、やや低下傾向にあります。
一酸化炭素は有機物の不完全燃焼により発生し、大気汚染の原因として問題となるのは、主に自動車の排出ガスです。
平成25年度の測定結果によると、前橋局における年平均値が0.2ppm(前年度年平均値0.2ppm)となり、環境基準を達成しています。
光化学オキシダントは、工場や自動車から直接排出されるものではなく、大気中に存在する様々な物質が化学反応して生成します。こうした大気中で新たに生成する汚染物質を二次汚染物質といいます。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成していません。これは全国的にも同様であり、二次汚染物質による大気汚染対策が困難であることを顕著に示しています。夏季を中心にその濃度が著しく上昇し、光化学オキシダント注意報(注G-2)が発令される場合もあります。光化学オキシダントの年平均値の経年変化は、ほぼ横ばいです。
近年では大陸からの移流の影響も指摘されており、広域的な問題になっています。
平成21年度から新しく環境基準が設けられた項目です。県内では、平成23年度から前橋局で測定を開始し、順次測定機を増設し平成25年度末時点では県内10箇所で測定を行っています。
平成25年度の測定結果によると、前橋局・太田局では環境基準を超過しましたが、沼田局は環境基準を達成しました(他の局は有効測定期間が短く、環境基準判断対象外)。
また、微小粒子状物質の発生原因や、大気中の挙動等を明らかにするため、平成25年度は前橋局及び沼田局で成分分析を実施しました。
成分分析結果等に基づく研究により、微小粒子状物質の一次生成・二次生成の割合(注H-2)、自動車やバイオマス燃焼等によるものの割合、国外から移流してくるものの割合など、今後数年かけて明らかにしていく計画としています。
想定される濃度域では直接的な健康影響は認められないため、環境基準は定められていません。しかしながら、光化学オキシダントの原因物質(メタンを除く)の一つであるため、その低減が必要となっています。
平成25年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.08ppmCから0.28ppmC(注J)(前年度年平均値0.08ppmCから0.28ppmC)の範囲でした。
非メタン炭化水素に係る光化学オキシダント生成防止のための指針には「午前6時から午前9時までの3時間平均値が0.20ppmCから0.31ppmCの範囲」と定められています。
平成25年度の測定結果で、各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は、0日から63日でした。
平成25年度の測定結果は、各測定局における年平均値が1.88ppmCから1.99ppmCの範囲でした。
自動車排ガス測定局(自排局)は一般大気測定局(一般局)と比較して、自動車の影響を受けやすいと考えられる交通量の多い道路沿道に設置されています。
自動車排ガスに含まれる下記の項目について、全体的に自排局は一般局より濃度が高くなっています。しかしながら、その程度はわずかであり、群馬県内で大気環境に及ぼす自動車の影響はそれほど大きくない状況です。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、各測定局における年平均値は0.012ppmから0.019ppmの範囲となっています。
平成25年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.004ppmから0.025ppmの範囲でした。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。各測定局における年平均値は0.015ミリグラム/立方メートルから0.025ミリグラム/立方メートルの範囲となっています。
平成25年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、各測定局における年平均値は0.3ppmから0.5ppmの範囲となっています。
平成25年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.07ppmCから0.27ppmCの範囲でした。
また、各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は、0日から121日でした。
平成25年度の測定結果は、各測定局における年平均値が1.87ppmCから1.97ppmCの範囲でした。
国設前橋局における年平均値は15.3マイクログラム/立方メートルで、環境基準を上回りましたが、有効測定日数に達していないため参考値です。
大気汚染防止法では、大気の汚染が著しくなり人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある場合に、被害を防止するため、住民への周知、ばい煙排出者への排出量減少の協力要請等の措置を行うよう決められています。
このため、光化学オキシダント等の濃度が高くなった際に「群馬県大気汚染緊急時対策実施要綱」に基づき、注意報の発令などの措置を行っています。
平成25年度は、光化学オキシダントについて、注意報を6回発令しました。
光化学オキシダント注意報の発令時には、その旨を関係機関に周知するとともに、
等の対策をとるよう注意喚起しています。
微小粒子状物質(PM2.5)については、平成25年2月に環境省から「注意喚起のための暫定的な指針」が示されました。
群馬県では、環境省の指針に基づき、「日平均値が70マイクログラム/立方メートルを超えると見込まれるとき」に県民に向けてPM2.5注意報を発令して注意喚起を行うことにしています。
ア 注意報発令基準
県内を6区域に区分し、1局でもイの判断基準に該当し、かつ日平均値が70マイクログラム/立方メートルを超えると見込まれる場合に、その局が該当する発令区域に対して発令する。
イ 判断基準
大気中PM2.5濃度1時間値において
従来、大気汚染事故(自然災害、事故災害によるものも含む)が発生した際は、群馬県地域防災計画に基づいて対応を行ってきましたが、小規模の大気汚染事故など規定対象外の事故についても迅速に対応を行うため「大気汚染事故対応要綱」を制定し、平成15年4月1日から施行しています。
この要綱において、環境保全課、環境森林事務所、環境事務所及び衛生環境研究所の対応や県関係機関相互の連絡対応について必要な事項を定め、当該事故による環境への影響を最小限にとどめるよう、より一層連携して対応していきます。
有害大気汚染物質とは、継続的に摂取すると人の健康に影響を与えるおそれのある大気汚染物質で、現在該当する可能性があるとされている物質は248物質あります。その中で、大気汚染による人の健康被害が生ずるおそれがある程度高い物質は優先取組物質とされています。県では、優先取組物質(21項目)について、県内5地点(伊勢崎市、沼田市、渋川市、安中市、太田市)で調査しました。なお、このうちダイオキシン類については別途測定していますので、ここでは除きます。ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンの4物質は環境基準値が、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、ニッケル及びその化合物、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,3−ブタジエン、ヒ素及びその化合物の8物質については、健康リスク低減のための指針値が設定されています。
これらすべての物質において、調査した5地点ともにそれらの値を下回っていました。
降水のpHなどを把握するため、平成3年度から前橋市郊外で酸性雨調査を実施しています。
平成25年度の降水について通年観測したところ、pHは4.6~6.1の範囲で、平均値は5.1でした。過去のpH年平均値の経年変化は、ゆるやかな上昇(改善)傾向にあります。
また、山岳部に発生する酸性霧について、その性状を長期的に把握するため、衛生環境研究所が赤城山で酸性霧調査を実施しています。平成25年度の酸性霧について観測したところ、pHは3.3~6.6の範囲で、平均値は3.9でした。
大気汚染防止法では、下記の施設を対象として規制しています。この他に、特定粉じん(アスベスト)についても規制していますが、これについては次節に記述します。
それぞれの施設ごとに、ばい煙発生施設及び揮発性有機化合物発生施設については排出基準が、一般粉じん発生施設については管理基準が定められています。
群馬県の生活環境を保全する条例では、下記の施設を対象として規制しています。
ばい煙発生施設等の届出状況は以下のとおりです。(前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市が所管する届出件数を含む)
項目 | 事業所数 | 施設数 |
---|---|---|
ばい煙発生施設(大防法) | 1,453事業所 | 4,067施設 |
ばい煙特定施設(保全条例) | 136事業所 | 824施設 |
粉じん発生施設(大防法) | 137事業所 | 623施設 |
粉じん特定施設(保全条例) | 851事業所 | 3,003施設 |
規制対象となるばい煙・粉じん発生施設及び揮発性有機化合物排出設備を設置している工場・事業場等に対して立入検査を実施しました。
平成25年度は、ばい煙発生施設等を設置する354事業所等に対して立入検査を実施し、排出ガス中のばい煙量、ばい煙濃度の測定、施設の維持管理及び自主分析の確認などについての確認・指導を行いました。
また、ばい煙等濃度の測定を18事業所、19施設で行ったところ、全て排出基準に適合していました。
騒音・振動公害は、発生源の周辺地域に限られ、大気汚染や水質汚濁のように広域的に影響を及ぼす恐れがありません。そのため、生活実態のない地域等について規制する必要がないことから、騒音規制法及び振動規制法では、地域指定制を採用しています。この指定地域には、工場騒音・振動の規制、建設作業騒音・振動の規制、自動車騒音・振動測定に基づく要請等が適用され、本県では全市町村について地域指定しています。(ただし、全域ではありません。)
群馬県の生活環境を保全する条例においては、飲食店営業等から深夜発生する騒音や航空機による商業宣伝放送について規制しています。また、騒音規制法の規制対象外である3施設(コンクリートブロックマシン、製瓶機、ダイカストマシン)と、振動規制法の規制対象外である5施設(圧延機械、送風機、シェイクアウトマシン、オシレイティングコンベア、ダイカストマシン)及び1作業(空気圧縮機を使用する作業)を規制対象としています。
騒音・振動については、市町村長に事務が委任されており(航空機による商業宣伝放送を除く。)、騒音規制法、振動規制法及び群馬県の生活環境を全する条例に基づき、規制基準の遵守及び施設設置届出が適正に行われるよう指導しています。
平成25年度は49回実施がありました。宣伝内容は、自動車販売関係が98%を占め、1回あたりの実施時間は120分でした。
各高速自動車道における環境基準の達成及びその維持については、県内の沿線市町村から遮音壁設置要望をまとめ、平成25年8月に東日本高速道路(株)高崎管理事務所に要望を行いました。
また、平成25年10月には関係県で構成する「東北・上越・北陸新幹線、高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて同社に要望を行いました。
上越・北陸新幹線における環境基準の達成及びその維持については、平成25年10月に関係都県で構成する「東北・上越・北陸新幹線、高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて東日本旅客鉄道(株)本社及び(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構に要望を行いました。
また、測定の結果、環境基準未達成地域があることから、平成26年3月に東日本旅客鉄道(株)高崎支社に発生源から出る騒音の防止対策をより一層強化するよう強く要望しました。
現在、騒音に係る環境基準は等価騒音レベル(注L)をもって評価しています。
時間帯別では、夜間の環境基準達成率が低くなっています。
平成25年度は、県内主要道路沿線の28地点で、市町村により自動車騒音の測定が行われました。
測定地点のうち21地点(75%)が昼間及び夜間の時間帯で環境基準を達成しました。
また、自動車騒音の要請限度(公安委員会に対する要請及び道路管理者に意見を述べる際に自動車騒音の大きさを判定する基準)では、2地点(7%)で要請限度を超えました。
東北縦貫自動車道、関越自動車道新潟線、関越自動車道上越線(上信越自動車道)及び北関東自動車道における沿線地域の騒音の状況を把握するため、沿線市町村により自動車騒音測定を行いました。
上越新幹線及び北陸新幹線における沿線地域の騒音・振動の状況を把握するため、新幹線騒音・振動測定を行いましたが、結果は次のとおりです。
線路に近い25メートル地点における多くの測定地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過していました。
また、振動については、環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70デシベル)を各測定地点とも下回っていました。
線路に近い25メートル地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過している地点がありました。
また、振動については、環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70デシベル)を各測定地点とも下回っていました。
道路交通騒音面的評価は、県内全域の主要な道路に面する地域における自動車騒音について、原則5年間(最長10年間)で測定評価を行い、自動車騒音の環境基準達成状況を調査しています。
平成25年度に群馬県及び県内12市が道路交通騒音面的評価を行いました。
県では、これまでの路線に加え玉村町における1路線で行いました。この評価は、環境省から示されている「騒音に係る環境基準の評価マニュアル・地域評価編(道路に面する地域)」に基づき実施したものです。
なお、達成率は、道路端から両側50メートルの範囲内にある住居等について推計した騒音レベルを基に、その範囲内の住居総戸数のうち環境基準を達成している数の割合を算出した結果です。
悪臭防止法では、事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うことによって、生活環境を保全し、県民の健康を保護することを目的としています。規制の方法として、アンモニア(注M-1)等の特定の22物質を対象とした物質濃度規制と、複合臭(注M-2)や未規制物質にも対応できる臭気指数規制の2種類あり、いずれかにより、悪臭の排出等が規制されています。それぞれの規制値は、地域の実情を考慮して地域ごとに定められています。
悪臭に関する苦情は、物質濃度規制では解決できない事例や、規制地域外での事例があるため、本県では県内全市町村で臭気指数による規制を行うことを基本方針に、市町村と調整を行ってきました。
平成26年4月1日現在、前橋市、高崎市、桐生市、伊勢崎市、太田市、沼田市、館林市、渋川市、藤岡市、富岡市、安中市、みどり市、榛東村、吉岡町、上野村、神流町、下仁田町、南牧村、甘楽町、中之条町、嬬恋村、草津町、高山村、東吾妻町、片品村、川場村、昭和村、みなかみ町、玉村町、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町の12市14町8村全域が臭気指数規制地域として指定されています。
今後とも、県内全市町村、全区域への臭気指数規制導入を目指し調整を行っていきます。
また、臭気指数規制を導入した際に必要となる実務知識の取得のため、市町村職員を対象に、平成16年度より「嗅覚測定法研修会」を開催するなど、実際に規制の運用にあたる市町村の支援に努めています。
さらに規制地域内の事業者に対しては、説明会の実施等によって制度の普及啓発に努めるとともに、今後も地域の実情を十分に考慮しながら、悪臭防止対策を推進していきます。
県内の畜産経営に関する苦情の約7割が悪臭関連であり、畜産業の健全な発展のためには悪臭防止対策が重要です。
本県で開発した脱臭装置を平成21年度に11か所設置し、平成25年度まで実証データを収集し、その効果を確認するとともに、地域と調和した畜産経営を確立するため、普及を図ってきました。
本県で開発した脱臭装置等の導入費を補助し、畜産臭気の問題を抱えている地域の生活環境を改善する事業を平成22年度から開始し、平成22年度には利根沼田地域に脱臭装置を2か所設置しました。
また、平成24年度には中部地域に脱臭装置を2か所と常緑樹の生垣を1か所設置しました。
平成25年度には「水質汚濁防止法」の硝酸性窒素等及び窒素・燐の暫定排水基準の改正に対応するため、事業を拡充し、高度処理装置等の追加設置に対する排水処理対策メニューを追加しました。
地域の環境保全を図るため、畜産に関する苦情の実態調査及び巡回指導等を実施しました。
また、堆肥流通を促進するため、堆肥施用による実証展示ほを4地域に設置し、地域の特徴を活かした資源循環型農業の推進を図りました。
悪臭防止法や水質汚濁防止法に対応するため、臭気指数測定や尿汚水浄化処理施設維持管理の研修会を開催するとともに、環境保全に対する意識向上を図るための冊子を作成・配布しました。
畜舎臭気の主な原因は、家畜が排せつするふん尿です。家畜の種類によってえさや消化生理が異なるため、発生する臭気も異なります。牛ふんの主な臭気はアンモニアですが、豚ぷんでは酪酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸も含まれます。鶏ふんではアンモニア意外にアミン類も発生します。
臭気成分のうち、アンモニアは100万分の1の濃度(ppm)で悪臭として感じます。低級脂肪酸類ではア10億分の1(ppb)でも悪臭として感じるため、臭気を低減させるのは大変難しくなります。また、畜舎ではそのほとんどが開放型となっているため、畜舎全面から臭気は拡散します。加えて、気象条件でも臭気の発生や広がり方も異なるため、対策はさらに難しくなります。
畜産試験場では、低コストな臭気低減技術や装置について検討していますので、その概要について紹介します。
家畜ふんを堆肥化処理する時には、高濃度のアンモニア主体の臭気が発生します。臭気を脱臭するため、軽石を用いた脱臭装置を開発しました。この装置は、堆肥化処理施設から発生した高濃度臭気を、水を散布した軽石脱臭槽に送り込み、アンモニアを捕集するとともに、軽石に生息させたアンモニア酸化細菌により亜硝酸や硝酸に変化させ、継続的に脱臭します。アンモニア濃度400ppm以下の臭気を90%以上除去できます。
この装置は堆肥化処理施設で発生する高濃度の臭気ばかりでなく、畜舎から発生する低濃度の臭気の除去も可能です。
密閉できる堆肥化処理施設や畜舎の臭気は、脱臭装置を利用することで対応できますが、ほとんどの畜舎や堆肥舎は開放型であるため、脱臭装置による脱臭はできません。
そこで、現在、開放型の畜舎や堆肥舎に化学繊維のネットを取付けて脱臭する方法を検討しています。
脱臭効果測定実験施設での小規模試験の結果では、ネットの網目が1.0×1.0センチメートル酸性水溶液を浸潤させたところ、アンモニア濃度15から20ppmの臭気を約半分にすることができました。ネットの選定や酸性水溶液の浸潤方法などの改良を行い、安定して75%以上のアンモニア除去ができる装置の開発を目指しています。
密閉できるふん発酵施設や畜舎の脱臭については、脱臭装置を設置し、畜舎内の臭気を装置へ送りこむことで脱臭できますが、ほとんどの畜舎や堆肥舎は開放型であるため、脱臭装置による脱臭はできません。そこで、現在、開放された畜舎や堆肥舎にネットを張ることにより脱臭する方法を検討しています。
ビニールハウスを利用した小規模試験の結果では、網目が1.0センチメートル×1.0センチメートルのネットを使用したところ、アンモニア濃度15ppmから20ppmの臭気を約半分にすることができました。また、ネットに水や酸性溶液を浸潤させることにより、アンモニア除去能力が上がることが確認されています。現在は、安定した臭気除去能力を確保するための改良を実施しています。
「軽石を利用した脱臭装置」は、比較的規模の大きな畜産農家を対象としているため、施設の設置費用がかかります。そこで、中小規模の畜産農家が導入しやすい低コストな脱臭装置を開発しています。
脱臭槽に充填する資材として安価で手に入りやすいモミガラを利用し、汚水浄化処理施設の活性汚泥を添加して、その微生物により脱臭する装置を開発しました。
小規模試験では、堆肥化処理施設から発生する平均20ppm程度のアンモニアを90%以上除去することができました。しかし、冬季は脱臭能力が低下するので、年間を通して安定した除去能力が得られるように改良を進めています。
また、畜舎で悪臭が発生しやすい場所であるバーンクリナー(畜舎内の家畜ふんを集めトラックまで搬出する装置)の搬出部にモミガラ脱臭装置を設置し、脱臭効果があることを確認しました。