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自然とのふれあいに対する需要の高まりに伴い、自然公園に対する多様化した要求に応えるべく、公園利用と自然環境の保護・保全を考慮した施設の整備補修、維持管理を行っています。
4つの国立・国定公園(上信越高原・尾瀬・日光・妙義荒船佐久高原)における登山道や標識、避難小屋等の県有施設の管理・整備などを実施し、貴重な自然環境の保全と適正な利用に配慮しつつ、利用者の快適性向上に取り組んでいます。
赤城・榛名・妙義公園では、公衆トイレの清掃や遊歩道の下草刈りなどについて地域住民が中心となって実施する地域密着型公園管理のほか、各種県有施設の管理・整備に取り組んでいます。
県立公園は地域の貴重な観光資源となっていることから、その保護に努めるとともに、更なる利用を図っていきます。
県内には7箇所の県立森林公園があり、森林浴や自然観察など、それぞれの公園で森林が持っている優れた自然環境を楽しむことができます。
この森林公園をフィールドに、ボランティア団体等が開催する自然観察会や森林整備活動が催され、社会全体で森林を守る意識の醸成にもつながっています。
このため、森林公園の園内整備はもとより、老朽化した施設や遊歩道の改修・修繕を行いました。
また、引き続き良好な自然環境の保全に努めるとともに、多くの方に保健休養や学習の場を提供するため、各公園の魅力や特徴を生かした管理運営を行いました。
長距離自然歩道は、沿線の自然や歴史、文化にふれながら手軽に歩くことができる道で、群馬県内には35コースが設定されています。
地元市町村の協力を得ながら管理に努めるとともに、利用者からの声を反映した標識整備に取り組んでいます。
平成5年10月に群馬県人口200万人達成を記念して、ぐんま天文台が高山村に建設されることとなり、平成11年4月から一般公開されました。建設に伴い、群馬県では美しい星空を守り将来を担う子供たちに伝えるために「ぐんま星空憲章」を制定しました。さらに、高山村では平成10年3月「村民の夜間の安全性や社会的活動に必要な照明を確保しつつ人工光の増加を抑制し、美しい星空と光環境を維持すること」を目的として「光環境条例」を制定し、観測しやすい星空の維持に村ぐるみで協力頂いています。天文台でも駐車場を600メートル離れた場所に設置するなど周辺の自然環境・光環境に配慮しつつ、ぐんま天文台の管理運営を行っています。
恵まれた光環境の中、多くの県民の皆様が「大型望遠鏡による観望会」「流星群観察会」などの本物を体験できるイベントを通して自然とふれ合うことができます。また、天体観察など本物と触れ合う体験を重視し、県内の学校の天文分野の授業支援を継続しており、好評を得ています。ぐんま天文台は直接体験の中から宇宙の不思議さにふれ、天文現象を科学的に考える機会をもてる施設です。
「デジカメや携帯で月を撮ろう」は、天文台ボランティア(総勢33名)の自主企画のひとつです。平成25年度は時期を変えて4回企画し、合計で約1,200名の利用者がありました。身近な機器である携帯電話のカメラ機能を用いた天体写真撮影は、天文現象への関心を一層深めたり、広げたりすることにつながります。天文を含めて自然現象を記録することは、科学の第一歩です。また、客観的な事実に基づいて考察することは、自然に対して畏敬の念をもち、尊重する態度づくりにつながります。人類にとって最も身近な天体である月の画像撮影は、科学への入り口となるのです。さらに、撮影した天体画像が撮影者自身によって他の方々にメール等で配信・拡散されることは天文台事業の広報になります。また、ボランティア活動は、参加する方々の自己実現の場であり、生涯にわたって学ぶ意欲を高めたり、継続したりすることに発展します。ぐんま天文台はその活動を支援しつつ、事業への協力を頂いています。
平成11年度より毎年開催している取り組みです。平成25年は、8月13日(火曜日)午前3時頃にペルセウス座流星群の極大が予想されていたため、8月12日(月曜日)の夜に観察会を実施しました。流星群の活動が極大になり、放射点の高度が高く、観察に邪魔な月明かりの影響がないなどの好条件がそろうことが事前に各メディアが取り上げていたことに加え、観察会当日は天候に恵まれました。そのため、平日にもかかわらず昨年を大幅に上回る数の参加者があり、たくさんの流星を観察することができました。説明会と観察会の参加者は合わせて約2,500名でした。また、観察会実施中に流星の写真撮影も行い、観察会開催中にぐんま天文台のWebサイトに速報を掲載しました。
桐生市新里町不二山地域の面積約45ヘクタールの里山を利用して、雑木林や棚田、小川、畑など様々な環境が再現され、身近な昆虫の生態を観察することができるフィールドと、様々な昆虫に関する写真や標本、生体展示で学習でき、クラフト体験もできる昆虫観察館などからなる「ぐんま昆虫の森」の管理運営を行いました。
この施設では、恵まれた自然環境の中で、子どもから大人までの幅広い県民が、昆虫をはじめとする様々な動植物とふれあい、生命、自然、環境を体験しながら学習することができます。
自然と人間が調和した新しい社会「自然と人にやさしい群馬」の創造に寄与するための施設です。
平成17年オープン当初からホタルの生息環境を整備し、平成21年度から観賞会を開催しています。平成22年度には地元ボランティアの協力により『ホタル沢』が整備されました。以来、継続的な整備を行いホタルの舞など魅力向上に一層努め、1,100人程の来園者が魅了されました。
また、夜の雑木林の昆虫や夜鳴く虫の観察会を実施し、350人程度の来園者が夜の樹液に集まるカブトムシやセミの羽化、ライトトラップやフルーツトラップに集まる昆虫たちに見入ったり、昆虫たちのいろいろな鳴き声に聞き入っていました。
昆虫の森では、多くの県民が整備や管理運営に参画できる県民参加型事業として、様々な取り組みを行っています。
自然観察の解説や昆虫飼育及びクラフト体験指導などを行う「ボランティア」、茅葺きの赤城型民家の維持管理を行う「新里町老人クラブ」、また、株式会社ミツバ(桐生市)と園内の森林整備について協定を締結し、5月及び11月に下草刈りなどの整備活動を実施しました。
自然史博物館は、豊富な展示物と映像、多くのジオラマ、タッチ式の情報端末等を用いて地球の生い立ちや生命の進化の歴史、群馬県の豊かな自然と現状を紹介しています。また、子どもから大人まで、楽しみながら自然について学べる国内でも有数規模を誇る参加体験型博物館です。さらに、県内の自然や古環境を学術調査し、その成果を研究論文やWeb、講座等を用いて公開しています。加えて、県民やマスコミ等からの問い合わせにお答えする機関でもあります。平成25年度の来館者数は230,155名でした。
「地球の時代」、「群馬の自然と環境」、「博物学者の部屋」、「自然界におけるヒト」、「かけがえのない地球」の5つのコーナーで計3,387点の標本を展示しています。特に、「群馬の自然と環境」では、群馬の自然を標高別に4つの地域に分け、代表的な生態系を、多くの動植物や、地質・岩石等の標本とともにジオラマで紹介しています。また、「群馬県レッドデータブック」をもとにした絶滅種・絶滅危惧種のラベルや、特定外来生物等のラベルを色分けして表示し、群馬の生物多様性の現状をわかりやすく説明しています。さらに、高層湿地の貴重な自然が残されている尾瀬については、ジオラマや写真だけでなく、尾瀬シアターで映像を駆使して紹介しています。「かけがえのない地球」では、自然環境を見つめ、守り、子孫に伝えることの大切さが学べるよう環境学習に特化した展示を行っています。
また、今年度は、ESCO事業により空調設備の更新、照明機器のLED化、太陽光発電システムの設置等による省エネ化を行いました。そして、エントランスのパネルに気温、日射量、太陽光発電の発電量を表示し、来館者に省エネに興味を持ってもらえるよう工夫しました。
平成25年度は、「サンゴ−共生の海・ささえあう生命−」「甦れカミツキマッコウ古代ゾウ~関東に眠る太古の生きものたち~」「コレもソレもアレもみんなイネ科」「生き物をまねるネイチャー・テクノロジー」「自然のフォトギャラリーわたしの尾瀬~四季の彩り~」を開催しました。
「甦れカミツキマッコウ古代ゾウ」では、関東の新生代新第三紀に生息していた海や陸の哺乳類にスポットをあてました。高崎市吉井町で発見された新種のジョウモウクジラ、古代のマッコウクジラであるカミツキマッコウの全身骨格と世界初となる全長5mの生体復元模型、アケボノゾウの全身骨格や桐生市で発見されたトラの牙などを展示し、太古の生き物たちを通して,現在の日本周辺における哺乳動物相の成立過程と生物多様性を紹介しました。
「コレもソレもアレもみんなイネ科」では、人間の主食であるイネやムギ類、トウモロコシをはじめススキ、ヨシ、シバ、タケなど種子植物の中で第4位の一大グループをなすイネ科植物の変化に富んだ生態を紹介しました。また、人間生活とイネ科植物の関わりについて解説するとともに、籾摺り体験や雑穀の分類体験など体感しながら学べる展示を提供しました。
「生き物をまねるネイチャー・テクノロジー」では、「カワセミのくちばしのかたちをまねて作られた500系新幹線の車両」や「モルフォチョウの翅の構造色のしくみから生まれた色あせない生地」など生き物のもつかたちやしくみが私たちのライフスタイルに生かされている事例について、生物標本と工業製品を比較できるように展示しました。また、ネイチャー・テクノロジーは、自然生態系への影響を極力少なくした循環型のテクノロジーであることを紹介しました。
自然に関する情報発信センターとして、博物館に蓄積されている豊富な情報を館内の情報コーナーやWebを通じて提供しています。また、世界の博物館と情報を共有するネットワークに参加し、収蔵資料の情報を他の博物館や研究者に提供しています。
群馬の貴重な自然を調査し県民に紹介するため、県内をいくつかの地域に区分して、職員の専門分野を活かした調査・研究を実施しています。平成25年度は、上野村総合学術調査3ヶ年計画の3年目にあたり、3月に「群馬県立自然史博物館自然史調査報告書第6号上野村地域学術調査」を発行しました。また、担当分野別調査研究20本、大学や専門機関等との連携による調査研究31本等、県内を中心に多方面で調査研究を進めています。調査研究の公開としては、「群馬県立自然史博物館研究報告18号」の発行、研究論文29本、学会発表15本等があります。
野外へ出て豊かな自然を観察する「ファミリー自然観察会」や、地域の自然や科学をテーマとした「講演会」、県内の遠隔地で博物館資料を展示する「移動博物館」等、多くの事業を実施することで、県民の方々に自然に親しむ機会を提供するとともに、人と自然との関わりを理解し、自然を愛する心を育む場を提供しています。また、小中学生を対象にした「ミュージアムスクール」や、高校生を対象とした「高校生学芸員」等において、野外調査を基本とした活動をとおして、自然に関心を持つ次世代の人材育成を行っています。平成25年度は、教育普及事業および学校への支援の総計で、延べ63,622名の参加者を得ています。
森林の持つ公益性や多面的機能に対する県民の関心、森林や環境を大切にする意識を高めるため、森林環境教育を推進しています。憩の森・森林学習センターでは、子供から大人まで幅広い年代を対象にしたイベントや講演会などを年間を通して開催しました。
また、県立森林公園等をフィールドにした県民参加型の森林環境教育イベントの企画プログラムを募集し実施する「森の体験ふれあい事業」を行い、森林の特徴や機能について、幅広く学ぶ場を提供しました。
水資源を安定的に確保するための水源林の保全、水源地域対策、水質保全などの課題は、流域全体で取り組んでいかなければ解決できません。
本県は、日本一の流域面積を持つ利根川の上流県「水源県ぐんま」として、下流域の自治体や住民と協力・連携しながらこれらの課題に取り組んでいます。
水源地域への理解を深め、水の大切さについて考えてもらうため、本県と東京都とで利根川水系上下流交流事業を行っています。その中のひとつ「夏休み水のふるさと体験会」では、都県の親子が水源地域へ訪問して、ダムや森林の役割を学びながら、上流(群馬県)と下流(東京都)との交流を促進しています。
農村地域に滞在しながら、「自然、文化、人々との交流」を楽しむグリーン・ツーリズムを推進し、都市住民が農村生活体験を通じて自然とふれあい、同時に農村地域の活性化にも繋がるような機会づくりに取り組んでいます。
次世代を担う子どもたちに、農業や食料の大切さを伝え、賢い消費者づくり、将来の担い手づくりにつながる「食農教育」に取り組んでいます。
食農教育フォーラムを開催し、「食」と、それを支える「農」の大切さを伝えています。
また、学校給食への地場産(県産)農産物の利用拡大を進めるため、地場産農産物の利用促進策に関する検討や地場農産物を利用したメニュー集の利用促進に努めます。
川や湖沼などの水辺環境は単に水がある場所ではなく、たくさんの植物や動物など生き物が生息し育つ場であり、子供達が水生生物と接する絶好の機会を与えてくれるとともに、生態系を理解する上でも貴重な学習フィールドといえます。
しかしながら、子供達が日常生活の中で川や湖沼へ行って自然に親しむ機会は極端に少なくなっており、水辺環境での遊びの中で自然発生的にできていた環境教育が衰退してしまうことが心配されています。
そこで、県では漁業協同組合や市民団体などが行っている水生生物の観察会や希少魚等の保護活動、子供釣り教室など子どもたちに水辺環境と接する機会を与え、水生生物とその生息環境の理解促進に役立つ活動を支援しています。
北毛青少年自然の家は、昭和43年4月、県下4番目の青年の家として設置され、青年の家と少年自然の家の機能を併せ持つ青少年健全育成施設として「北毛青年の家」の名称で運営されてきました。
施設は、子持山・小野子山の鞍部に位置し、約15ヘクタールの広大な敷地と300名を収容する教育キャンプ場・体育館・総合グラウンド・野外施設等を有しています。豊かな緑に恵まれた自然環境の中で、野外活動や登山、オリエンテーリング、各種スポーツなどが体験できる最適の場です。
妙義青少年自然の家は、昭和46年8月に「妙義少年自然の家」の名称で設置されました。妙義山の自然林の中に位置し、豊かな自然に囲まれ、四季をとおして野鳥をはじめ多くの動植物の姿が見られます。近くには、日本三奇勝の一つに数えられる石門群、妙義神社、さくらの里、富岡市立妙義ふるさと美術館や自然史博物館などがあります。
東毛青少年自然の家は、昭和54年秋に「東毛少年自然の家」の名称で開所しました。大間々扇状地の中に連なる八王子丘陵のほぼ中央に位置し、アカマツ、コナラ、クヌギ林に囲まれた中にあります。
八王子丘陵は、古生層を始め、金山流紋岩、藪塚凝灰岩などから構成されており、動植物の種類も多く自然観察に適しています。近くには、茶臼山ハイキングコース、スネークセンター、石切り場、北山・西山古墳、岩宿遺跡などの学習環境にも恵まれ、多くの団体が利用しています。
3施設ともに、平成22年4月1日、「青少年自然の家」に名称を変更しました。
各施設とも前述の資源を活かした自然体験事業を展開しています。例えば、野外炊事、テント泊等の体験活動や登山、動植物観察、星座観察等の自然体験活動があげられます。
これらの活動を通して、子どもたちの感受性や自主性、社会性を育てています。また、親子で取り組む自然体験事業では、親子の協働作業・共通体験により親子の絆を深めたり、自然体験不足といわれている保護者世代への自然体験活動の普及・啓発を図っています。
また、夏季休業中には県内の小中学生を対象に、3泊4日の長期キャンプを開催しています。これは、子どもたちの社会性や生きる力を育むため、異年齢集団を編成し、テント泊や野外炊事等の生活プログラム、動植物観察や冒険プログラム等を実施しているものです。
ボランティア事業は、「青少年ボランティア体験」と「青少年ボランティア講座」にわけられます。「青少年ボランティア体験」は青少年が自然の家でボランティア活動に取り組むものです。施設設備や自然環境の整備や手入れ、施設利用者への指導補助、主催事業における指導や補助をとおして青少年の社会性を涵養しています。
「青少年ボランティア講座」では、自然体験活動をとおして、地域社会の一員として、温かで住みよい地域づくりや地域を支える人づくりに貢献しようとする青少年を育成しています。
青少年自立支援事業では、様々な要因により社会とうまく関われない青少年に、自然体験や生活体験等様々な体験活動の場を提供し、忍耐力や協調性、社会性を育むとともに心の居場所づくりを図っています。また、保護者への支援も併せて行っています。
自然保護に対する関心が高まるなか、正しい鳥獣保護思想の普及を図るため、次の事業等を実施しました。
「県民探鳥会」を渡良瀬遊水地で開催しました。41名の県民の皆様からの参加がありました。
野鳥に関する知識を深め、愛鳥思想を育む目的のもと、愛鳥モデル校に指定した24校のうち5校において、巡回指導等を行いました。
また、愛鳥週間ポスターの原画募集に169の小・中・高・養護学校から3,432点もの作品の応募がありました。
けがや病気により保護された野生鳥獣(傷病鳥獣)を傷病鳥獣救護施設(林業試験場内・野鳥病院)及び桐生が岡動物園(桐生市に委託)に収容し、野生復帰を行いました。