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景観は、地域の自然、歴史、文化や日常の様々な活動の結果として形成されるものです。
そのため、良好な景観を形成するためには、自然や歴史的な景観の保全や利活用だけでなく、私たちが暮らす地域の景観を創造し、そのための活動を育成するとともに、阻害要因を除去する取組も重要になります。
県では、平成5年に制定した景観条例に基づき、大規模行為(一定規模以上の建築や土地の形質変更など)の届出などにより、良好な景観づくりを進めています。平成24年度には238件の届出がありました。
景観形成の取組は地域に根ざした活動が重要であるため、市町村が、景観法に基づく景観行政団体になって、景観計画を策定して積極的に景観施策を展開することが望まれます。平成24年度には、新たに藤岡市と嬬恋村が景観行政団体になり、表2-3-5-1のとおり14市町村が景観法の下で景観行政に取り組んでいます。
市町村が景観計画の策定や世界遺産の緩衝地帯を設定するための経費の一部を補助しており、平成24年度には、伊勢崎市、藤岡市、富岡市、昭和村に交付しました。
従来の景観審議会と屋外広告物審議会を統合して、新たに景観審議会を平成22年3月に設置しました。今後、本県の景観行政推進の在り方などについて審議会の意見を聞きながら、積極的に景観行政を推進します。
良好な景観の形成や風致の維持、公衆に対する危害防止のために、看板や広告塔などの屋外広告物について、設置場所や形状・面積等を規制しています。また、規制を効果的に講じるため、屋外広告業者の登録制度を設けています。
県では、屋外広告物法及び屋外広告物条例に基づき、屋外広告物の設置場所、表示面積、高さ及び表示方法等の基準を設け、設置の許可事務を行い、良好な景観づくりを進めています。平成24年度には980件を許可しました。
平成16年の屋外広告物法の改正を受け、県では平成18年度から屋外広告業者の登録制度を施行し、不良業者を排除するとともに、良質な業者の育成を進めています。平成24年度には109件の業者登録がありました。
各土木事務所において、違反広告物の是正指導及び除却を行うとともに、平成24年度においても「屋外広告物美化キャンペーン」(9月1日から9月30日)を実施しました。
都市公園は多目的な機能を持つ、都市の重要な生活基盤です。
平時は緑あふれる県民の交流拠点として、自然とのふれあいやレクリエーション施設を通じて児童や青少年をはじめとする県民の心身の健康の維持増進に寄与し、住み良い生活環境を整えています。
また、災害時には避難所としての機能はもちろん、復旧・救援の拠点としても都市住民の安全を確保する重要な役割を果たしています。
平成24年度の都市公園事業は、県立公園として「つつじが岡公園」のリニューアル整備を継続して進めたほか、敷島公園においても、陸上競技場の改修等を実施しました。
また、市町村の都市公園事業として、前橋市の荻窪公園や高崎市の観音山公園をはじめ、4市1町の5か所で公園整備を実施しました。
本県の都市公園の整備状況は、平成24年3月末現在で1,402か所、2,415ヘクタールが供用開始しており(榛名・妙義公園を除く)都市計画区域内の一人当たりの都市公園面積は10.88平方メートル/人で、平成23年3月末に比べると約0.1平方メートル/人の増加となっています。
森林や緑は、水源の涵養・国土保全・地球温暖化の防止等さまざまな機能を持ち、私たちの豊かな生活を支え、多くの恵みを与えてくれます。
緑化は従来から家庭や地域、市町村で取り組まれていますが、社会情勢の変化とともに、県民や行政、NPO法人等が一緒に、あるいは役割を分担して緑化・森林整備の展開を図る取組もなされてきています。
県では、森林や緑の持つ公益的機能を十分に発揮させ、緑豊かで暮らしやすい生活環境づくりを推進するため、植樹祭等各種イベントの開催や緑の募金活動などを通じて、広く県民に緑化思想の高揚を図るとともに、身近な環境の緑づくりを推進しました。
また、県緑化センターを運営し、見本林管理や各種緑化講座の開催など緑化技術の指導・普及を実施しました。
空き缶やペットボトル、たばこの吸殻などのポイ捨てによるごみの散乱は、私たちに最も身近な環境問題ですが、これは私たち自身のモラルやライフスタイルにも関わることから、一朝一夕に解決し得ない困難な問題となっています。
そのため、県では、環境美化の意識を啓発し、快適で住みよい「美しい郷土群馬県」をより一層推進するために「春・秋の環境美化運動」をはじめとする様々な施策を展開しています。
県では、平成24年5月1日から6月30日を春の環境美化月間と定め、市町村やボランティア団体等と連携して、県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しました。
また、群馬県の生活環境を保全する条例で定める「環境美化の日(5月30日)」及び関東甲信越静環境活動推進連絡協議会が提唱する「一斉清掃日(5月27日)」にちなみ、榛名湖周辺を県クリーン重点地区に設定し、清掃活動を実施しました。
県と群馬県環境美化運動推進連絡協議会は、空き缶等の散乱防止と次代を担う子どもたちの環境意識を啓発する目的として、標語コンテストを実施しました。また、優秀作品を「関東甲信越静環境活動推進連絡協議会」が行う標語コンテストに出品しました。
ごみの散乱防止や3Rを進めるための啓発活動の一環として、ポスターコンテストを実施しました。
ポイ捨て防止を呼びかけるティッシュを作成し、春・秋の環境美化運動等で配布しました。
公害に係る紛争では、司法制度(裁判)による解決以前に、簡易迅速・少ない費用で行政的解決を図るため、昭和45年に公害紛争処理法が制定され、公害紛争処理制度が確立されました。
この法律に基づき、国の公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等においては、公害紛争についてのあっせん、調停、仲裁及び裁定の制度を設けています。
また、公害苦情相談員制度を設けることによって、苦情の適切な処理を図っています。
昭和45年11月に設置された公害審査会における最近の調停事件の状況は表2-3-5-2のとおりです。
公害に関する苦情は、地域に密着した問題であるとともに、公害紛争に発展する可能性もあるため、迅速な処理が必要となります。
このため、昭和45年11月に群馬県公害苦情相談員設置要綱を制定し、関係する地域機関の公害苦情相談員が、住民からの苦情相談に応じ、苦情の解決のために必要な調査、指導及び助言等を行っています。
公害苦情相談員は、以下の地域機関に合計34名が設置されています。
平成24年度において公害苦情相談員及び市町村の公害担当課で、新規に受理した公害苦情の件数は1,453件でした。
典型7公害に関する苦情を種類別にみると、大気汚染(364件)、騒音(199件)、悪臭(167件)、の順となっています。
苦情を受付機関別にみると、市町村での受付が90.0%、県での受付が10.0%となっています。
なお、処理にあたっては、関係機関との連携により対応しています。
特定工場における公害防止組織の整備に関する法律により、製造業等で公害を発生するおそれのある施設が設置されている工場には、公害防止の仕事をまとめる公害防止統括者、公害防止の専門知識や技能を持った公害防止管理者及び公害防止主任管理者を選任することを義務付け、企業内での公害防止の自主管理体制の整備の強化を図っています。
さらに、同法の適用を受けない工場においても、大気汚染や水質汚濁等公害の発生源となるおそれのある工場には、群馬県の生活環境を保全する条例により、公害防止責任者の設置を義務付けています。
本県では、環境月間において公害防止管理者等選任工場を対象に公害防止総点検運動を実施し、公害防止意識の高揚を図りました。
産業公害を防止するために、公害防止管理者等が設置された工場又は事業場が会員となり、県内10地区に産業環境の保全に関する連絡協議会が自主的に組織されています。
また、各地区の協議会や商工会議所連合会等の関係団体計25団体が集まり、群馬県産業環境保全連絡協議会が組織されています。これらの協議会では、環境保全活動事例発表会や研修会、会員相互及び行政機関との情報交換・交流事業などを行い、より良い環境づくりに努めています。
環境生活保全創造資金は、公害防止や廃棄物対策、さらには循環型社会づくりや地球環境問題に取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
昭和43年度に「公害防止対策資金」として発足し、制度内容の充実とともに、平成11年4月に「環境保全創造資金」、平成15年4月に「環境生活保全創造資金」へと改称しました。
平成24年度における融資実績は、10件、50,384千円でした。近年の融資状況は表2-3-5-3、平成25年度における制度概要は表2-3-5-4のとおりです。
我が国の文化財は、豊かな自然環境のもとで、長きにわたる先人の営みによって形作られてきました。文化財保護行政の目指すところは、有形無形の様々な文化財とそれらが守り伝えられてきた事実を、その環境とともに後世に伝えていくことにあります。国・県・市町村は、それらのうち特に重要なものを法的に保護し、またその質と価値を高めるための保存整備を行っています。これによって、文化財の価値を正確に分かりやすく社会に還元することができ、人々の地域に対する理解と関心の深化へと繋がっていきます。
文化財は、有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群、保存技術、埋蔵文化財の8つに分類されますが、それぞれの中で重要なものや保護が必要なものが指定、登録、選択、選定され、法的な保護や整備が行われます。
文化財の保護と整備に関する近年の特徴としては、従来の静的保存のほかに動的保存という考え方が出てきたこと、単体の文化財のみならず周辺の歴史景観や環境も保護し整備する方針が打ち出されたこと、文化財を生かした地域づくりの取組がしやすいように法制度が整備されたことが掲げられます。これにより、文化財と環境を重視した、総合的な地域づくりへの取組が各地で始まりつつあります。市町村にとっては、こうした取組が地域の振興や再生への有益な手段として、今後の施策の柱となっていくものでもあります。
文化財のうち、名勝・天然記念物は自然環境及び自然景観の保護に直結しています。
現在、県で指定する名勝・天然記念物としては、動物繁殖地や植物など計103件にのぼっています。
また、国の名勝・天然記念物には24件が指定され、名勝妙義山や楽山園、特別天然記念物尾瀬等々、内容は多岐にわたります。日本列島中央部に位置する本県は、山岳地帯と平野部からなり、変化に富んだ地形及び気候条件のもと、全国的に特筆すべき名勝・天然記念物の宝庫と言えます。
天然記念物のうち、動物の種として地域を定めず指定されているものは、国指定が96件、県指定が5件あります。国指定の動物種のうち、特に本県で生息が確認できる野生動物は、カモシカやヤマネ、イヌワシなどです。県指定天然記念物はヒメギフチョウやミヤマシロチョウなどです。
これらの動物のうち、特別天然記念物に指定されているカモシカは、保護地域が設定されており、保護地域及び周辺地域の生息状況、生息環境調査を毎年実施しています。また、保護地域周辺での食害を防止するため、防護柵の設置といった施策も用意されています。
現在県内には、史跡は国指定47件、県指定85件、重要文化財(建造物)は国指定21件、県指定53件、国登録有形文化財(建造物)が302件所在し、それぞれ歴史景観が保たれています。また一部で史跡公園等に整備され、学習及び憩いの場ともなっています。
これら県内の国・県指定の史跡等には、広大な領域を有し、自然景観が展開する例も少なくありません。こうした自然環境と歴史景観が共存している例として、岩宿遺跡や金山城跡などがあります。また山間地に重要文化財の仏堂や社殿がたたずみ、周囲の自然環境と調和した歴史的風致が守られている例として、妙義神社や榛名神社などがあります。近代の文化財も、国重要文化財の碓氷峠鉄道施設や国登録文化財のわたらせ渓谷鐵道関連施設は山間地の自然の景観の中に溶け込んでおり、国指定史跡・国指定重要文化財の旧富岡製糸場や国登録文化財の桐生市内の織物工場の建物などは、それぞれ今後のまちづくりの核となる歴史景観を形成しています。
人々の生活又は生業、地域の風土の中で形成された景観で、我が国の国民の生活・生業の理解のために不可欠のものです。日常の風景として見過ごされがちでしたが、棚田や水郷など自然と人との調和の中で長い年月をかけて形成されてきた価値ある景観です。県内では板倉町において利根川・渡良瀬川合流域の水場景観の保護に取り組んでおり、平成23年9月には国の重要文化的景観に選定されました。県もこの取組を支援しています。
町並みや農村集落など歴史的建造物が群として良好に保存された場所です。県内には中之条町と桐生市の2か所に所在します。
中之条町六合赤岩地区は平成18年に北関東で初めて選定されました。養蚕農家集落とともに、墓地、お宮やお堂、耕作地、そして山林などで構成される広大なエリアを占めます。平成24年度は、重要な構成要素に対する保存修理事業等に補助を行いました。
桐生市の桐生新町地区は、平成24年7月に選定されました。近代桐生の繁栄を物語る数多くの町屋や蔵、織都桐生を象徴するノコギリ屋根の織物工場など、多彩な歴史的建造物の町並みが展開します。今後の建造物の修理・修景や環境整備に対して県も支援する予定です。
平成24年度は、国及び県指定文化財を良好な状態で保存するための事業や、学習や憩いの場として活用するための整備事業など、文化財保存修理等事業に対し補助を行いました。
28件の保存修理、保護養生等整備活用事業に対して補助金を交付しました。
18件の保存修理及び整備活用事業及び5件の史跡等買上げ事業に対して補助金を交付しました。
個人・法人が所有する7件の重要文化財(建造物)の防災保守点検等に対して補助金を交付しました。
13市町村が行う埋蔵文化財発掘調査及び2件の埋蔵文化財保存活用整備事業に対して補助金を交付しました。
文化財保護課では、県内文化財の保護・管理のため、主に次の各種業務を行っています。
県内に所在する国の史跡のうち、史跡観音山古墳及び史跡上野国分寺跡については県で管理運営を行っています。
特に、史跡上野国分寺跡では、平成24年度から整備事業を再開しました。将来的に復元整備を行うための基礎的情報を収集する目的で発掘調査を行っています。
両史跡は、本県の古代を語る上で欠くことができない県民共有の文化財として保護、活用されています。また、住宅密集地における緑地帯として、生活環境の向上や環境保全にも役立っています。
国・県指定等文化財及び重要な埋蔵文化財包蔵地の維持管理に万全を期すため、県で委嘱した文化財保護指導委員(平成24年度:31名)が定期的に巡視し、保存状態を確認し県に報告します。報告は、県において保存修理事業計画立案の際の資料とします。
県文化財保護審議会では、県内文化財の保存及び活用等に関する重要事項についての調査・審議を行うほか、県内文化財のうち特に重要なものについては県の指定文化財とするよう、県教育委員会に対し答申します。
国・県及び国県が設立した公社公団が実施する開発に対し調整を行います。埋蔵文化財の所在や範囲を確認するために工事前に試掘調査を実施します。平成24年度は県内各地で61件実施しました。
国県指定文化財の移動、現状変更許可申請、き損届・復旧届などに係る諸手続、未指定文化財の国又は県指定への手続や既指定文化財の追加指定手続、埋蔵文化財包蔵地への開発及び発掘調査に係る手続、刀剣に係る審査及び手続等を行います。
近年、歴史・文化を生かした地域づくりを実現するための制度が整備されつつあります。
平成20年に歴史まちづくり法(正式名称:地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)が施行されました。人々の伝統的な活動と、歴史的建造物(国指定文化財が条件)及びその周囲が一体となった良好な環境(歴史的風致)を維持向上させ、後世に継承できるまちづくりを国が支援するものです。この法律により、核となる文化財とその周辺も併せて整備することが可能となり、景観の乱れを修景するなど歴史的景観の維持・向上への取組がしやすくなりました。
県内では甘楽町において、名勝楽山園を中心に旧小幡藩城下町など周辺文化財を含めた歴史的風致維持向上計画が国に認定され(平成22年3月)、歴史的景観を活かしたまちづくりに取り組んでおり、県もこれを支援しています。
地産地消を推進し、消費者と生産者の相互理解を促進することで食と農の距離を縮めた「顔の見える関係」を構築します。また、地元の良質な食材を使った豊かな食生活の実現を目指します。
なお、推進母体は平成16年7月に設置した「ぐんま地産地消県民運動推進会議」とし、地産地消の推進に官民一体となって取り組みます。
地産地消を県民運動として推進するため、推進母体である「ぐんま地産地消県民運動推進会議」の運営を行うとともに、関係団体による関連イベントの開催を支援します。
県では、県産農産物等の地産地消を促進するため、県産農産物やその加工品等の販売や利用をしている小売店・旅館・飲食店等を「ぐんま地産地消推進店」として認定するほか、県産の食材を積極的に利用している企業や団体を「ぐんま地産地消協力企業・団体」として登録します。また、これら推進店等を対象に啓発資材の配布や県産農産物等の商談会を開催します。
県内農産物直売所の活性化対策の基礎データとするため、農産物直売所・朝市に対する実態調査を行います。また、農産物直売所をテーマとした全国会議への参加等による先進事例収集や、放射性物質の検査結果等の情報提供に努めます。
本県産農産物のブランド化、消費拡大を図るため、県産農産物、地産地消推進店、農産物直売所を紹介する冊子に情報を掲載します。
平成17年2月に京都議定書が発効し、我が国は「京都議定書目標達成計画」に基づき地球温暖化対策を推進してきたところです。平成20年3月にはこの計画が改正され、増加傾向にある民生部門からの二酸化炭素排出量の削減を強力に進めるため、追加対策として住宅・建築物の省エネルギー性能の向上が挙げられています。
これらを受けて平成20年5月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」が改正され、住宅・建築物の省エネルギー対策の強化が図られているところです。本県でも、今後とも住宅・建築物の省エネルギー対策を推進する必要がありますが、その一環として、環境対応型県営住宅の整備が位置づけられています。
具体的には次のとおりです。