本文
河川(BOD75%値) 75.0%(40地点中30地点)
湖沼(COD75%値) 75.0%(12地点中9地点)
10ミリメートル以上の地盤沈下面積 3.83平方キロメートル
地下水環境基準達成状況 88.7%(151地点中134地点)
水質汚濁防止法の規定により、都道府県知事は公共用水域(注1)の水質の汚濁の状況を監視することになっています。
このため、本県では、国土交通省や各市とともに毎年度、主要な河川と湖沼の水質を測定しています。平成24年度は、73河川・16湖沼における229地点で水質の測定を行いました。
測定項目は、環境基準(注2)が定められている“人の健康の保護に関する項目(注3)”(カドミウム・シアンなど)と“生活環境の保全に関する項目(注4)”(BOD・CODなど)、“水生生物の保全に関する項目(注5)”(全亜鉛)が中心です。
測定を行った全166地点のうち165地点で環境基準を達成しましたが、1地点においてカドミウムが基準値を超過しました。
環境基準の類型が指定(注1)されている21河川・38水域における40地点と12湖沼の12地点、計52地点(環境基準点(注2))について評価を行いました。
40か所の環境基準点において、汚濁の程度を示す代表的な指標であるBODで評価を行うと30地点で環境基準を達成し、達成率は75.0%となりました。昨年度の77.5%より低下するとともに、平成20年度に一時的に87.5%となった以外、達成率はここ数年横ばいとなっています。
水域別にみると、全38水域のうち環境基準を達成している水域は28水域であり(注)、水域単位での達成率は73.7%(参考値)となります。環境基準を達成していない河川は、前年度と同様に県央・東毛地域の利根川中流の支川と渡良瀬川下流の支川に多く見られました。
12か所の湖沼の環境基準点の達成状況をCODで評価を行うと、赤城大沼、尾瀬沼、奈良俣ダム貯水池(ならまた湖)を除き9湖沼で環境基準を達成し、達成率は75.0%となりました。昨年度、集中豪雨による土砂くずれ等の影響から基準が達成できなかったダム湖沼等について、基準が達成されたことから、大幅な改善(平成23年度達成率50.0%)となりました。
水生生物保全水質環境基準の類型が指定されている21河川・39水域における41地点については、環境基準を38地点で達成しました(達成率92.7%)。参考として水域単位で見ると、全39水域中、36水域で環境基準を達成しています(達成率92.3%:参考値)。
水生生物保全水質環境基準の類型が指定されている11湖沼の達成状況をみると、全湖沼で環境基準を達成しました(達成率100%)。
本調査は、身近な自然と触れ合うことで、環境問題への関心を高めるとともに広く水環境保全の普及啓発を図ることを目的に実施しています。
平成24年度はこどもエコクラブ等4団体が調査を実施しました。
渋川市には、県内の代表的な化学工場や製鋼工場があり、これらの工場周辺地域では排出ガス及び悪臭等の被害が過去にあり、県及び市において必要な調査を実施しています。
平成24年度も、渋川市大崎周辺の利根川の水質と底質について「総水銀(注)」を調査しました。水質については、利根川の4地点と工場排水路の1地点でそれぞれ年2回調べたところ、いずれの地点でも環境基準値(0.0005ミリグラム/リットル)及び排水基準値(0.005ミリグラム/リットル)を下回りました。
底質については、利根川の4地点で年1回調べたところ、いずれの地点でも底質の暫定除去基準(25ppm)を下回りました。
水中の微生物が水中の汚濁物(有機物)を分解するときに消費する酸素の量で、単位は一般的にミリグラム/リットルで表します。河川水、排水及び下水などの汚濁の程度を示すもので数値が大きいほど水が汚れていることを示します。
酸化剤(過マンガン酸カリウム)が水中の汚濁物を酸化する時に消費する酸素の量で、単位は一般的にミリグラム/リットルで表します。湖沼や海の汚れを測る代表的な目安として使われます。この値が大きいほど水が汚れていることを示します。
公共用水域及び地下水の水質汚濁を防止し、人の健康を保護するため、水質汚濁防止法及び群馬県の生活環境を保全する条例等により、特定施設を設置する工場・事業場(特定事業場)に対し排水濃度の基準を設けて排出水を規制しています。
県では、水質汚濁防止法よりも厳しい排水基準(上乗せ基準(注))を設定する条例(排水基準上乗せ条例)を設け、規制対象を排水量10立方メートル/日以上の特定事業場に拡大、基準値もより厳しいものとしています。
また、平成18年度から一部を改正した群馬県の生活環境を保全する条例が施行され、それまで排水濃度の基準の対象となっていなかった特定事業場以外の工場・事業場に対しても一部の項目で排水濃度の基準を設け、水質汚濁物質の発生源対策のさらなる充実を図っています。
水質汚濁防止法に基づく特定施設の届出状況及び群馬県の生活環境を保全する条例に基づく水質特定施設の届出状況は表2-3-2-7のとおりです。
ただし、括弧内は前橋市、高崎市、伊勢崎市及び太田市(水質汚濁防止法施行令により事務委任されている政令市)における件数で内数となります。(以下、同じです。)
また、平成24年度の水質汚濁防止法の改正で新たに届出された有害物質貯蔵指定施設は65件(政令市を含む)でした。
平成24年度は、排水量が10立方メートル/日以上、又は有害物質を使用している特定事業場のうち、延べ700(435)事業場に対し水質汚濁防止法に基づく立入検査を実施し、このうち延べ545(425)事業場について、排水基準の適合状況を調査しました。
その結果、表2-3-2-7のとおり排水基準に適合していたのは、延べ476(373)事業場で全体の87.3%(87.8%)でした。業種別の排水基準不適合状況を図2-3-2-3、項目別の排水基準不適合状況を図2-3-2-4に示しました。排水基準に不適合の69(52)事業場に対しては、文書により改善を指導しました。
平成24年度の異常水質汚濁事故は78件で事故の種類別を図2-3-2-5、事故原因別を図2-3-2-6に示します。図に示すとおり発生原因の大半は油の流出事故で、機械の破損や操作ミスなどの人的ミスなどが多くなっています。
水質汚濁物質が河川等の公共用水域に流出すると、浄水場での取水障害や魚の死亡といった水産被害など生活環境に重大な被害をもたらすことになります。
このため、事故による被害の拡大及び事故の再発を防ぐため、原因者への指導が重要であるとともに、人的ミスによる水質汚濁事故を減らすため、県民や事業者への啓発が重要となります。
平成24年5月に利根川水系の複数の浄水場で水道水質基準を超える有害なホルムアルデヒドが検出され、流域の都県で取水制限等が実施されるという大規模な水質事故が発生しました。
これを受けて、本県独自の取組方針について意見を求めるために平成24年6月に群馬県環境審議会に対して「利根川水系におけるホルムアルデヒドによる利水障害に関する今後の措置について」諮問を行いました。同年8月の答申を踏まえて、「群馬県の生活環境を保全する条例」の一部改正を12月に行い、水道水への影響が大きい化学物質についての適正管理制度を創設し、平成25年4月から施行しました。
川や湖を汚す大きな原因として、家庭から出る雑排水が直接川や湖に流れ込んでいることがあげられます。
川や湖をきれいにするためには、この雑排水をきれいにして川や湖に戻すことが大切です。
汚水を処理する施設には下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽やコミュニティ・プラントなどがあります。しかし、無秩序にこれらの施設をつくっても効果的に地域の汚水を浄化することはできません。
そこで、県では市町村の協力のもと、効果的な汚水処理施設の整備を行うために平成10年3月に「群馬県汚水処理計画」を策定しました。その後、財政状況等の社会環境の変化、さらに将来人口の予測や使用水量などの要因の変化に合わせ、平成16年度、平成20年度、平成24年度に、それぞれ見直しを行ってきました。
これに基づき各施設の整備を進めると、汚水処理人口普及率(注)が現在74.9%(平成24年度末)であるものが中期計画後(おおむね平成34年頃)には約92%になります。また、川や湖に流れ込む汚濁負荷量も、汚水処理施設の普及により昭和60年頃をピークに減少傾向になり、中期計画終了後には、高度経済成長期前の昭和30年頃の負荷量を下回ることになり、水質改善がなされます。
よりよい水環境を一日も早く創生するためにも、市町村と協力しながら汚水処理施設の効率的な整備を本計画に従って推進していきます。
公共下水道は、家庭及び事業場からの下水を排除し又は処理するために各市町村が設置、管理する下水道です。現在、29市町村で公共下水道事業を実施しています。
平成24年度末での本県の下水道処理人口普及率(処理区域内人口÷行政人口)は、50.5%で、今後も一層整備を促進する必要があります。
流域下水道は、二つ以上の市町村の公共下水道から汚水を集めて処理するものです。主に公共用水域の水質保全を効率的に行うことを目的として都道府県が設置、管理するものです。本県では、以下の整備を進めています。
沼田市、みなかみ町を処理区域とする奥利根処理区及び前橋市、高崎市を含む10市町村を処理区域とする県央処理区で事業を実施中です。奥利根処理区については昭和56年4月から、県央処理区については昭和62年10月からそれぞれ供用を開始しています。
平成2年度から太田市、千代田町、大泉町、邑楽町を処理区域とする西邑楽処理区の事業に着手し、平成12年4月から供用を開始しています。
太田市を処理区域とする新田処理区及び桐生市、みどり市を処理区域とする桐生処理区の事業を実施しています。新田処理区については平成18年7月に供用を開始しました。桐生処理区については、当初、桐生市公共下水道(広沢処理区)として整備されましたが、平成3年度に周辺2町1村を含めた流域下水道事業に着手し、平成7年度に桐生市広沢処理場と幹線管渠が県に有償移管され、平成7年4月から流域下水道として供用しています。
平成13年度から伊勢崎市、太田市を処理区域とする佐波処理区の事業に着手し、平成20年9月から供用を開始しています。
私たちの身近な水路や小川には、生活雑排水(台所、風呂、洗濯などの汚水)が流れ込んでおり、これが河川や湖沼の汚濁の主要な原因になっています。
公共用水域の水質を保全していくためには、し尿のみを処理する単独処理浄化槽ではなく、し尿と併せて生活雑排水を処理できる合併処理浄化槽を計画的に整備していくことが有効です。
本県では、昭和62年度から市町村が実施する浄化槽設置整備事業に対して、また、市町村が自ら実施主体となって合併処理浄化槽を整備する事業(浄化槽市町村整備推進事業)についても、平成8年度から県費補助制度を設け、その推進を図っています。
県内の合併処理浄化槽の設置状況は表2-3-2-10、浄化槽設置整備事業及び浄化槽市町村整備推進事業の実施状況は表2-3-2-11に示すとおりです。
なお、平成12年6月に浄化槽法が改正され平成13年度から下水道予定処理区域を除いて、浄化槽を設置する場合は合併処理浄化槽の設置が義務化されたほか、既設の単独処理浄化槽の設置者に対しても合併処理浄化槽への転換努力が規定されました。
浄化槽の機能を生かすための維持管理として、
が必要です。
県では、法定検査の受検を促進するため、50人槽までの小規模な浄化槽の定期検査(浄化槽法第11条に基づく検査のため、「11条検査」といいます)について、保守点検契約と併せて法定検査の受検を行える「効率化11条検査」の制度を設けています。
11条検査は、浄化槽法で毎年受検することを義務付けている検査であるため、県では受検率向上のため、未受検者に対する受検指導等を行いました。この影響もあり、11条検査の受検率は、平成24年度で約66%となりました。
農業集落排水事業は農村下水道とも呼ばれ、1集落から数集落を単位として実施する、農村の集落形態に応じた比較的小規模な下水道事業です。
この事業は、農村地域を対象に農業用水の水質保全と生活環境の改善を図るとともに、河川等の公共用水域の水質保全に役立たせるため、し尿や生活雑排水の処理を行うもので、処理された水を農業用水として再利用したり、処理の過程で発生した汚泥を肥料として農業に利用したり、資源循環型社会の構築にも役立っています。
平成25年4月までに117地区で事業に着手し、その内113地区が完了しました。
近年では、河川環境において水質の問題が重要視されています。
都市部では生活雑排水の流入が多いため、河川の水質が悪化し、特に東毛地域では環境基準を上回っている河川が多くあります。
河川の水質を良くするためには、流域における下水道等の整備を進め、河川に生活雑排水を流入させないことが最も重要です。
しかし、これらの整備進捗にも限界があることや、悪臭等により生活環境にも影響するほど水質汚濁が著しい河川では、その対策が急務となっていることから、河川の水を直接浄化する河川浄化対策を進めることも必要となっています。
県では、館林市の市街地を流下し、水質悪化の著しい鶴生田川において、この河川浄化対策に取り組んでいます。
浄化対策の内容は、多々良沼からの浄化用水の導入(平成6年度完成)、鶴生田川及び城沼の底泥浚渫(平成4年度から平成16年度)、鶴生田川の礫間浄化施設(平成13年度完成)、城沼北岸の植生浄化施設(平成16年度完成)等を実施し、水質改善に努めてきました。
その結果、鶴生田川本川では大幅な水質改善が図られました。一方、城沼では改善傾向にあるものの、アオコの大量発生など未だ水質目標を達成できない状況であり、引き続き、環境新技術なども導入して水質浄化対策を進めていきます。
地盤沈下とは、過剰な地下水の採取によって、主として粘土層が収縮するために生じる現象です。
地下水は、雨水や河川水等の地下浸透により補給されますが、この補給に見合う以上の汲み上げが行われることで、帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し、粘土層に含まれる水(間隙水)が帯水層に排出され粘土層が収縮します。そのため、地表部では地盤沈下として認められます。(図2-3-2-9)
地盤沈下は、比較的緩慢な現象で徐々に進行し、他の公害と異なり、いったん地盤沈下が起こると元に戻ることはありません。
本県では、「一級水準測量」と「地下水位計・地盤沈下計による観測」を行い、これら地盤の変動を把握しています。
本県では、地盤変動の状況を経年的に調査するため、昭和50年度から一級水準測量を実施しています。広域的な測量を行うことにより、どの場所がどれくらい地盤が変動しているかを把握することができます。
平成24年度は、県の平坦地域12市町の水準点180点、測量延長400キロメートルの規模で実施しました。
平成24年度の地盤変動量は、平成25年1月1日現在の標高(T.P.)(注2)から平成24年1月1日現在の標高(T.P.)を差し引いて求めたものです。
平成24年度における観測の結果、沈下の注意が必要となる20ミリメートル以上沈下した地域はなく、10ミリメートル以上20ミリメートル未満の沈下域は3.83平方キロメートルでした。館林市上赤生田町(水準点番号59-01)の年間沈下量11.0ミリメートルが最大となっています。
なお、観測開始からの累積沈下量としては、明和町新里(水準点番号50−08)で最大の467.5ミリメートルとなっています。
地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げが原因とされており、地下水位の変化と地盤沈下量を観測・分析することで、地盤沈下防止のための貴重な資料となります。このため、本県では一級水準測量に加え、県で管理する地下水位観測井に地盤沈下計を併設し、地下水位と地盤沈下量(地層収縮量)を調査しています。
平成24年は、地下水位観測井(地下水位のみ観測)15井、地盤沈下観測井(地下水位と地盤沈下量を観測)5井の合計20井で観測を行いました。
主な観測井での観測開始からの変化を、図2-3-2-12に示します。一般的に地下水位は毎年同じような変化を繰り返しています。十数年前までは、地下水位は下降傾向でしたが、現在はほぼ横ばい傾向にあります。
深度の異なる3本の地盤沈下観測井を設置している明和西観測井の結果(図2-3-2-13)から、次のことが読みとれます。
群馬県の生活環境を保全する条例により、一定規模以上の井戸を揚水特定施設として設置の届出と地下水採取量の報告を義務付けています。
揚水特定施設設置者からの報告による平成24年の各市町村別の地下水採取量は表2-3-2-14、採取量の経緯は、図2-3-2-14に示すとおりです。
地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げによって生じるため、その防止には地下水利用の適正化が重要です。
このため、群馬県の生活環境を保全する条例に地盤沈下に関する規制等を盛り込み、地盤沈下対策に取り組んでいます。また、地下水の採取量を制限するためには、代替水源の確保が不可欠であることから、東部地域水道(平成9年度に通水開始)などの各種整備を進めています。
今後の地下水利用にあたっては、健全な水循環を目指し、地下水障害を発生させず、かつ持続的な利用が可能な範囲において適正利用を図っていきます。
群馬県の事業所では、高度経済成長の過程で工場等による地下水採取量が増大したため、特に東部地域の地盤沈下が著しく進行したと考えられています。
こうした状況を回避するため、地下水保全(地盤沈下)対策として東毛工業用水道事業(給水区域:伊勢崎市、太田市、館林市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)を計画・事業化し、また東部地域水道用水供給事業(給水区域:太田市、館林市、板倉町、明和町、千代田町、大泉町、邑楽町)も供用開始されました。
今後とも、引き続き地下水から表流水への転換を進め、地盤沈下の防止に努めます。
地下水は、水温の変化が少なく一般に水質も良好であるため、貴重な水資源として水道、農業及び工業などに広く利用されていますが、いったん有害物質に汚染されると、その回復は困難で影響が長期間持続するなどの特徴があります。
有害物質による地下水汚染の未然防止を図るため、水質汚濁防止法では有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する措置や地下水の水質の監視測定体制の整備などの規定が設けられています。
県内の地下水の水質監視は水質汚濁防止法に定める水質測定計画に基づき、県、前橋市、高崎市、伊勢崎市及び太田市が行っています。
県内の地下水の状況を把握するため全県を4キロメートル四方の151区画に区分し、1区画につき1本(県99、前橋市13、高崎市18、伊勢崎市9、太田市12)の井戸について調査しました。
151井戸のうち77井戸は28項目を、26井戸は15項目を、48井戸は3項目を調査しました。
なお、1,2-ジクロロエチレンの濃度は、シス体の濃度及びトランス体濃度の和です。
図2-3-2-15のとおり、16本の井戸で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素(注)が、1本の井戸で砒素が環境基準を超過して検出されました。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、下記(4)にあるような総合的な対策を行っています。
それ以外の項目について、環境基準の超過はありませんでした。
地下水環境基準達成率は88.7%(151地点中134地点)で平成23年度(79.5%)を上回りました。
概況調査で地下水質が環境基準を超過した地区の汚染の推移を監視するため、継続的に調査をしています。
平成20年度以前にトリクロロエチレン等の有害物質が環境基準値を超過して検出された、前橋市6地区、高崎市2地区、伊勢崎市1地区、桐生市2地区、渋川市1地区、館林市1地区、富岡市1地区、下仁田町1地区、甘楽町1地区及び藤岡市1地区の計17地区で汚染状況の監視のための継続監視調査を実施しています。また、平成19年度からは硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について、20井戸を選定して継続監視調査を実施しています。
継続監視調査において環境基準を下回る状態が継続している地区の汚染状況を確認し、同地区の継続監視調査の終了時期を検討する資料を得るため実施するものです。
平成24年度は終了調査は行っていませんが、環境基準を継続して下回っている地区については、順次周辺調査を行うこととしています。
平成15年度に学識経験者と関係機関の職員を構成員とする地下水質改善対策連絡協議会を設置し、大間々扇状地をモデルに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水の汚濁機構及び対策手法について検討を行いました。この結果、地下水汚染は農業、畜産、生活排水等による複合的な影響を受けているものと推定され、現在、環境への負荷が少ない施肥の技術の普及、家畜排せつ物の管理指導、生活系廃水処理施設の整備推進などの対策を行っています。
土壌・地下水は一度汚染されてしまうと、元の状態に戻すためには多くの時間と費用が必要です。このため、土壌・地下水汚染の未然防止を図ることが重要であり、有害物質を使用している事業者に対して、平成24年3月の群馬県の生活環境を保全する条例改正、平成24年6月に施行された改正水濁法の周知と併せて、有害物質の地下浸透防止の徹底を指導しています。
土壌の汚染状況の把握や汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めた土壌汚染対策法により、土地所有者等に対し、一定の契機をとらえた土壌汚染状況調査が義務付けられています。
この調査により、土壌中に一定の基準(指定基準)を超える有害物質が検出された土地については、県知事・政令市長(政令市:前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市)は区域指定し、土地所有者等は汚染状況に応じ汚染除去等の必要な措置を実施しなければなりません。
県内においては、平成25年3月末現在、区域指定されているのは13区域(富岡市内(2か所)・玉村町内・明和町内・前橋市内(4か所)・高崎市内(2か所)・伊勢崎市内・太田市内(2か所)の土地)です。
平成24年度における一定規模以上の土地改変時の県への届出状況は100件(政令市は120件)であり、3件に調査命令(政令市は3件)を発出しました。
なお、汚染土壌処理業については、平成24年度中には許可申請がなされませんでした。
汚染土壌処理施設は、設置に当たって廃棄物処理施設と同様な過程を経るとともに、廃棄物処理施設と兼用・併設されることが多く、また、人の健康を害するおそれがある特定有害物質等で汚染された土壌を受け入れるものであることから、平成25年3月に廃棄物の事前協議規程を改正し、同規程の対象施設に汚染土壌処理施設等を追加することで、設置の適正化と手続きの合理化を図りました。
坂東工業団地(渋川市北橘町)周辺においては、昭和30年代後半に埋設されたカーバイド滓を原因とする土壌汚染によって、地下水汚染(テトラクロロエチレン)が顕在化しています。
この事案の解決を図るために、これまで次のような取組を行ってきました。
今後も専門家会議の意見を伺いながら、解決に向け関係者と協議を継続していきます。
肥料価格の高騰対策や環境に配慮した農業生産の取組として、県内各地で施肥技術改善の取組が行われています。その技術の特徴は、作物に共通な対策として(1)土壌診断に基づいた適正施肥(2)たい肥のように低価格・緩効性で、土壌の物理性を改善するような資材を利用する(3)作物の生育ステージに応じて溶出量を調整できる肥効調節型肥料を局所施用する、といったことがあげられます。特に、たい肥利用の場面では、県畜産試験場で開発された「堆肥施用量計算ソフト」を活用し、土壌診断データを基に施肥を行っています。
平成24年度に県内で行われた施肥技術に関連した現地実証ほの概要は以下のとおりです。
前橋市、伊勢崎市の露地野菜の中で重要品目に位置づけられるブロッコリーの育苗期間において、亜リン酸資材を利用して、健苗育成の実証を行いました。高温期育苗の徒長予防技術としての実用性が期待できます。
吾妻地域では、コンニャク栽培において、県畜産試験場で開発された「堆肥施用量計算ソフト」を利用し、堆肥の有効活用による肥料費削減と安定生産に向けた取組を強化しました。発酵鶏ふんと肥効調節型肥料を施用することにより、コストの削減が可能になりました。
東部地域には大規模畜産経営があり、地域内での堆肥流通が課題となっています。一方、管内では露地野菜栽培が盛んですが、連作障害や土壌病害の発生が問題になっています。そこで輪作体系の実証を行うため、ハクサイを栽培しました。堆肥施用により収量の向上が見られました。
イチゴの育苗では必要以上の養分が施用され、花芽分化の時期が遅れるという問題が発生しています。そこで、挿し芽の活着後に置き肥を施用することによって、花芽分化時期の安定化を検討しました。その結果、充実した苗作りが可能となり、省力的な管理ができることを実証しました。
嬬恋村の夏秋キャベツの生産コスト低減のため、多量に施用されているリン酸資材の削減と、化学肥料代替としての鶏ふん堆肥の利用試験に取り組みました。その結果、リン酸を施用しなくても収量、品質とも同程度となり、資材削減の可能性が高いことがわかりました。また、鶏ふん施用により、化学肥料の減肥が可能であるという結果になりました。
長野原町北軽井沢応桑地区は、ハクサイ、キャベツ、レタスなどの高原野菜栽培が盛んです。そこで、モデル農業者を選定してチェックリスト等作成のための作業調査を実施し、JAあがつまの契約出荷生産者に対してGAP(農業生産工程管理)の推進を図りました。その中で、CEC(塩基置換容量)分析結果に基づく適正施肥指導を行いました。
近年、片品村の夏ダイコンは高温及び集中豪雨により黒班細菌病が多発する傾向があります。品種、施肥量が関係していると言われており、高温期の生産安定を目的として、窒素施用量と品種間差を調べました。平成24年は干ばつ傾向であったため、同病の発生しにくい条件となり、明確な結果は得られませんでした。
家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(以下、家畜排せつ物法)が完全施行され、畜産農家は家畜排せつ物の管理について、法律の基準を遵守することが義務づけられました。県はこれに基づき、家畜排せつ物処理施設を整備する事業を実施し、適正な管理を指導してきました。
また、同法に基づく国の基本方針変更に伴い、平成20年5月に「群馬県家畜排せつ物利用促進計画」を見直し、平成27年度を目標年度として堆肥の利活用を積極的に進めることにしました。
畜産農家には、家畜排せつ物の適正管理に加え、耕種農家と連携し、家畜ふん堆肥の農地への還元を基本とした有機質資源としての有効活用を図ることを指導しました。
家畜排せつ物法に対応するため、家畜排せつ物処理施設を整備し、畜産農家の周辺環境の保全を支援してきましたが、平成24年度からは地域における資源循環型農業の推進及び畜産経営の健全な発展を図ることを目的とし、堆肥の流通利用を促進するために必要な機械等の整備を支援する事業を開始し、中部地域2か所、西部地域3か所、東部地域1か所で機械整備を実施しました。
(財)畜産環境整備機構が実施した畜産環境整備リース事業の特別緊急対策(2分の1補助付きリース事業)を利用し、畜産農家が設置したふん尿処理施設や機械等のリース代金について利子の一部を助成しました。
県では、大学、企業、試験研究機関が結集して「環境に調和した地域産業創出プロジェクト」(平成18年1月から平成22年12月)に取り組み、家畜排せつ物をエネルギーに変換して有効利用するとともに、環境への負荷を低減する技術等の開発を行いました。
平成24年度は、本プロジェクト研究成果の普及啓発に努めたことで、県内はもとより、県外にも高性能脱臭装置の設置が実現しました。
今後は、事業化・商品化につなげる研究開発を推進するとともに、研究成果の普及促進を図ります。