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第2部第3章第2節 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

更新日:2012年10月1日 印刷ページ表示

公共用水域水質測定調査環境基準達成率

河川(BOD75%値) 77.5%(31/40地点)
湖沼(COD75%値) 50.0%(6/12地点)
10ミリメートル以上の地盤沈下面積 11.897平方キロメートル
地下水環境基準達成状況 79.5%(120/151地点)

第1項 水質汚濁防止対策

1 河川・湖沼の水質測定の実施と結果

 水質汚濁防止法の規定により、都道府県知事は公共用水域の水質の汚濁の状況を監視することになっています。
 このため、本県では、国土交通省や各市とともに毎年度、主要な河川と湖沼の水質を測定しています。平成23年度は、73河川・16湖沼における229地点で水質の測定を行いました。
 測定項目は、環境基準が定められている“人の健康の保護に関する項目”(カドミウム・シアンなど)と“生活環境の保全に関する項目”(BOD・CODなど)、“水生生物の保全に関する項目”(全亜鉛)が中心です。

(1)人の健康の保護に関する項目

 測定を行った全153地点で環境基準を達成しました。

(2)生活環境の保全に関する項目

 環境基準の類型が指定されている21河川・38水域における40地点と12湖沼の12地点、計52地点(環境基準点)について評価を行いました。
ア 河川
 環境基準の類型が指定されている21河川・38水域における40地点について、汚濁の程度を示す代表的な指標であるBODでみると31地点で環境基準を達成しました。
 水域別にみると、全38水域のうち環境基準を達成している水域は29水域であり、水域単位での達成率は76.3パーセント(参考値)となります。環境基準を達成していない河川は、前年度と同様に県央・東毛地域の利根川中流の支川と渡良瀬川下流の支川に多く見られました。
イ 湖沼
 環境基準の類型が指定されている12湖沼の達成状況をCODでみると、赤城大沼、榛名湖、尾瀬沼、奈良俣ダム貯水池(ならまた湖)、藤原ダム貯水池(藤原湖)、須田貝ダム貯水池(洞元湖)を除き6湖沼で環境基準を達成しました。

(3)水生生物の保全に関する項目(全亜鉛)

ア 河川
 水生生物保全水質環境基準の類型が指定されている21河川・26水域における41地点のうち、39地点で全亜鉛の環境基準を達成しました(達成率95.1パーセント)。参考として水域単位で見ると、全26水域中、24水域で環境基準を達成しています(達成率92.3パーセント:参考値)。
イ 湖沼
 水生生物保全水質環境基準の類型が指定されている11湖沼の達成状況をみると、全湖沼で環境基準を達成しました(達成率100パーセント)。

(4)全国水生生物調査

 本調査は、身近な自然とふれあうことで、環境問題への関心を高めるとともに広く水環境保全の普及啓発を図ることを目的に実施しています。
 平成23年度はこどもエコクラブ等3団体が調査を実施しました。

表2-3-2-1 河川の年度別BOD環境基準達成率(%)
  平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19 平成20 平成21 平成22 平成23
群馬県 72.5% 72.5% 72.5% 70.0% 72.5% 70.0% 87.5% 77.5% 77.5% 77.5%
全国 85.1% 87.4% 89.8% 87.2% 91.2% 90.0% 92.3% 92.3% 92.5%  
表2-3-2-2 湖沼の年度別COD環境基準達成率(%)
  平成14 平成15 平成16 平成17 平成18 平成19 平成20 平成21 平成22 平成23
群馬県 33.3% 75.0% 62.5% 90.9% 81.8% 72.7% 72.7% 75.0% 66.7% 50.0%
全国 43.8% 55.2% 50.9% 53.4% 55.6% 50.3% 53.0% 50.0% 53.2%  
表2-3-2-3 平成23年度 県内河川ベスト3(BOD75%値の比較)
順位 河川名 類型 測定地点 主な流域市町村 BOD(ミリグラム/リットル) 前年度順位
1 片品川 AA 桐の木橋 片品村 0.5未満ミリグラム/リットル 1
1 吾妻川 新戸橋 嬬恋村・長野原町・東吾妻町 0.5未満ミリグラム/リットル 1
1 神流川 森戸橋 神流町・上野村 0.5未満ミリグラム/リットル 5
1 利根川 月夜野橋 みなかみ町・沼田市・昭和村 0.5未満ミリグラム/リットル 3

※注 ベスト1同値が4地点でした。また上位20地点の値は、1.0ミリグラム/リットル以下であり、AA類型相当の良好な水質でした。

表2-3-2-4 平成23年度 県内河川ワースト3(BOD75%値の比較)
順位 河川名 類型 測定地点 主な流域市町村 BOD(ミリグラム/リットル) 前年度順位
1 鶴生田川 岩田橋 館林市・板倉町 9.6ミリグラム/リットル 1
2 谷田川 合の川橋 明和町・館林市・板倉町 8.5ミリグラム/リットル 3
3 休泊川 泉大橋 太田市・大泉町 7.1ミリグラム/リットル 2

2 工場・事業場への立入検査等

 公共用水域及び地下水の水質汚濁を防止し、人の健康を保護するため、水質汚濁防止法及び群馬県の生活環境を保全する条例等により、特定施設を設置する工場・事業場(特定事業場)に対し排水濃度の基準を設けて排出水を規制しています。
 県では、水質汚濁防止法よりも厳しい排水基準(上乗せ基準)を設定する条例(排水基準上乗せ条例)を設け、規制対象を排水量10立方メートル/日以上の特定事業場に拡大、基準値もより厳しいものとしています。
 また、平成18年度から改正群馬県の生活環境を保全する条例が施行され、それまで排水濃度の基準の対象となっていなかった特定事業場以外の工場・事業場に対しても一部の項目で排水濃度の基準を設け、水質汚濁物質の発生源対策のさらなる充実を図っています。

(1)特定施設の届出状況(平成24年3月31日現在)

 水質汚濁防止法に基づく特定施設の届出状況及び群馬県の生活環境を保全する条例に基づく水質特定施設の届出状況は表2-3-2-7のとおりです。
 ただし、括弧内は前橋市、高崎市、伊勢崎市及び太田市(水質汚濁防止法施行令により事務委任されている政令市)における件数で内数となります(以下、同じです)。

(2)特定事業場に対する立入検査

 平成23年度は、排水量が10立方メートル/日以上、又は有害物質を使用している特定事業場のうち、延べ746(476)事業場に対し水質汚濁防止法に基づく立入検査を実施し、このうち延べ601(473)事業場について、排水基準の適合状況を調査しました。
 その結果、表2-3-2-7のとおり排水基準に適合していたのは、延べ509(411)事業場で全体の84.7パーセント(86.9パーセント)でした。業種別の排水基準不適合状況を図2-3-2-3、項目別の排水基準不適合状況を図2-3-2-4に示しました。排水基準に不適合の92(62)事業場に対しては、文書により改善を指導しました。

(3)異常水質汚濁事故

 平成23年度の異常水質汚濁事故は79件で事故の種類別を図2-3-2-5、事故原因別を図2-3-2-6に示します。図に示すとおり発生原因の大半は油の流出事故で、機械の破損や操作ミスなどの人的ミスなどが多くなっています。
 水質汚濁物質が河川等の公共用水域に流出すると、浄水場での取水障害や魚の死亡といった水産被害など生活環境に重大な被害をもたらすことになります。
 このため、事故による被害の拡大及び事故の再発を防ぐため、原因者への指導が重要であるとともに、人的ミスによる水質汚濁事故を減らすため、県民や事業者への啓発が重要となります。

3 下水道、合併処理浄化槽、農業集落排水処理施設等の汚水処理施設の整備

 川や湖を汚す大きな原因として、家庭からの汚水(台所や風呂、洗濯などからでる雑排水)が直接川や湖に流れ込んでいることがあげられます。
 川や湖などの汚れをなくすには家庭からの雑排水をきれいにして川や湖に戻すことが大切です。
 汚水を処理する施設には下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽やコミュニティ・プラントなどがあります。しかし、無秩序にこれらの施設をつくっても効果的に地域の汚水を浄化することはできません。
 そこで、群馬県では市町村の協力のもと、効果的な汚水処理施設の整備を行うために平成10年3月に「群馬県汚水処理計画」を策定しました。その後、財政状況等の社会環境の変化、さらに将来人口の予測や使用水量などの要因の変化に合わせ平成16年度に第1回の見直しを、平成20年度に再度の見直しを行いました。
 これにより各施設の整備を進めると、汚水処理人口普及率が現在74.3パーセント(平成23年度末)であるものが中期計画後(おおむね平成27年頃)には約87パーセントになります。また、川や湖に流れ込む汚濁負荷量も、汚水処理施設の普及により昭和60年頃をピークに減少傾向になり、中期計画終了後には、高度経済成長期前の昭和30年頃の負荷量を下回ることになり、水質改善がなされます。
 一日も早く、よりよい水環境を創生するためにも、県は市町村と協力し、汚水処理施設の効率的な整備を本計画に従って推進していきます。

表2-3-2-8 汚水処理人口普及率の内訳(平成23年度末)
区分 人口(人) 普及率(%)
公共下水道 995,197人 50.0%
農業集落排水 130,492人 6.5%
合併処理浄化槽 328,177人 16.5%
コミュニティ・プラント 25,476人 1.3%
1,479,342人 74.3%

(1)公共下水道の整備

 公共下水道は、家庭及び事業場からの下水を排除し又は処理するために各市町村が設置、管理する下水道です。現在、29市町村で公共下水道事業を実施しています。
 平成23年度末での本県の下水道処理人口普及率(処理区域内人口÷行政人口)は、50.0パーセントで、今後も一層整備を促進する必要があります。

表2-3-2-9 公共下水道事業の普及状況 平成24年3月31日現在
区分 行政区域 処理区域 普及率(%)
(B/A)
面積(ヘクタール) 人口(千人)A 面積(ヘクタール) 人口(千人)B
市部 289,377ヘクタール 1,691.0千人 22,001.1ヘクタール 885.7千人 52.4%
郡部 346,939ヘクタール 299.9千人 4,057.7ヘクタール 109.5千人 36.5%
県計 636,316ヘクタール 1990.9千人 26,058.8ヘクタール 995.2千人 50.0%

※注 表内の市部、郡部、県全体欄の行政区域面積及び行政人口については県全体の数字であり、下水道事業を行っていない市町村のデータも含みます。

(2)流域下水道の整備

 流域下水道は、二つ以上の市町村の公共下水道から汚水を集めて処理するものです。主に公共用水域の水質保全を効率的に行うことを目的として都道府県が設置、管理するものです。本県では、以下の整備を進めています。
ア 利根川上流流域下水道
 沼田市、みなかみ町を処理区域とする奥利根処理区及び前橋市、高崎市を含む10市町村を処理区域とする県央処理区が事業を実施中です。奥利根処理区については昭和56年4月から、県央処理区については昭和62年10月からそれぞれ供用を開始しています。
イ 利根川左岸流域下水道
 平成2年度から太田市、千代田町、大泉町、邑楽町を処理区域とする西邑楽処理区の事業に着手し、平成12年4月から供用を開始しています。
ウ 利根・渡良瀬流域下水道
 太田市を処理区域とする新田処理区及び桐生市、みどり市を処理区域とする桐生処理区の事業を実施しています。新田処理区については平成18年7月に供用を開始しました。桐生処理区については、当初、桐生市公共下水道(広沢処理区)として整備されましたが、平成3年度に周辺2町1村を含めた流域下水道事業に着手し、平成7年度に桐生市広沢処理場と幹線管渠が県に有償移管され、引き続き流域下水道として平成7年4月から供用しています。
エ 利根川佐波流域下水道
 平成13年度から伊勢崎市を処理区域とする佐波処理区の事業に着手し、平成20年9月から供用を開始しています。

(3)農業集落排水事業

 農業集落排水事業は農村下水道とも呼ばれ、1集落から数集落を単位として実施する、農村の集落形態に応じた比較的小規模な下水道事業です。
 この事業は、農村地域を対象に農業用水の水質保全と生活環境の改善を図るとともに、河川等の公共用水域の水質保全に役立たせるため、し尿や生活雑排水の処理を行うもので、処理された水を農業用水として再利用したり、処理の過程で発生した汚泥を肥料として農業に利用したり、資源循環型社会の構築にも役立っています。
 平成24年4月までに114地区で事業に着手し、その内111地区が完了しました。この111地区内の定住人口は約13.0万人で、群馬県汚水処理計画での長期目標である15.3万人に対し、約85パーセントの普及率となっています。

4 河川の水質浄化対策

 近年では、河川環境において水質の問題が大きなウエートを占めています。
 都市部では生活雑排水の流入が多いため、河川の水質が悪化し、特に東毛地域では環境基準を上回っている河川が多くあります。
 河川の水質を良くするためには、流域における下水道等の整備を進め、河川に生活雑排水を流入させないことが最も重要です。
 しかし、これらの整備進捗にも限界があることや、悪臭等により生活環境にも影響するほど水質汚濁が著しい河川では、その対策が急務となっていることから、河川の水を直接浄化する河川浄化対策を進めることも必要となっています。
 本県では、館林市の市街地を流下し、水質悪化の著しい鶴生田川において、この河川浄化対策に取り組んでいます。
 浄化対策の内容は、多々良沼からの浄化用水の導入(平成6年完成)、鶴生田川及び県立つつじが岡公園に面する城沼の底泥浚渫(平成4年~16年)、鶴生田川の礫間浄化施設(平成13年完成)、城沼北岸の植生浄化施設(平成16年完成)等を実施し、水質改善に努めてきました。
 その結果、鶴生田川本川では大幅な水質改善が図られました。一方、城沼では改善傾向にあるものの、アオコの大量発生など未だ水質目標を達成できない状況であり、引き続き、環境新技術なども導入して水質浄化対策を進めていきます。

第2項 地盤沈下対策

1 一級水準測量による地盤変動調査の実施と結果

(1)地盤沈下

 地盤沈下とは、過剰な地下水の採取によって、主として粘土層が収縮するために生じる現象です。
 地下水は、雨水や河川水等の地下浸透により補給されますが、この補給に見合う以上の汲み上げが行われることで、帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し、粘土層に含まれる水(間隙水)が帯水層に排出され粘土層が収縮します。そのため、地表部では地盤沈下として認められます(図2-3-2-8)。
 地盤沈下は、比較的緩慢な現象で徐々に進行し、他の公害と異なり、いったん地盤沈下が起こると元に戻ることはありません。
 本県では、「一級水準測量」と「地下水位計・地盤沈下計による観測」を行い、これら地盤の変動を把握しています。
 しかしながら、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震時の急激な地殻変動により、水準点も影響を大きく受けています。毎年、計測を行ってきた地盤変動量には、地盤沈下量の他に地震による地殻変動量が含まれており、今回の地震による影響を見積もることができないため、平成23年度の地盤沈下量は把握できていません。
 なお、関東地区地盤沈下調査測量協議会及び国土地理院関東地方測量部と連携し、平成23年度の各水準点を基準高として、平成24年度以降の地盤沈下量を把握していく予定です。

(2)一級水準測量

 本県では、地盤変動の状況を経年的に調査するため、昭和50年度から一級水準測量を実施しています。広域的な測量を行うことにより、どの場所がどれくらい地盤が変動しているかを把握することができます。
 平成23年度は、県の平坦地域12市町の水準点180点、測量延長400キロメートルの規模で実施しました。
 平成23年度の地盤変動量は、平成24年1月1日現在の標高(T.P.)から平成23年1月1日現在の標高(T.P.)を差し引いて求めたものです。
 なお、平成23年度の地盤変動量は、地震による地殻変動の影響を含んでおり、地盤沈下量とは異なります。
 平成23年度における観測の結果、観測地域全域で10ミリメートル以上沈下しており、20ミリメートル以上の沈下域は224.58平方キロメートルでした。板倉町朝日野(水準点番号10-01)の年間変動量51.5ミリメートルが最大となっています。

(3)地下水位計・地盤沈下計による観測

 地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げが原因とされており、地下水位の変化と地盤沈下量を観測、分析することで、地盤沈下防止のための貴重な資料となります。このため、本県では一級水準測量に加え、県で管理する地下水位観測井に地盤沈下計を併設し、地下水位と地盤沈下量(地層収縮量)を調査しています。
 平成23年は、地下水位観測井(地下水位のみ観測)15井、地盤沈下観測井(地下水位と地盤沈下量を観測)5井の合計20井で観測を行いました。
 主な観測井での観測開始からの変化を、図2-3-2-10に示します。一般的に地下水位は毎年同じような変化を繰り返しています。十数年前までは、地下水位は下降傾向でしたが、現在はほぼ横ばい傾向にあります。
 深度の異なる3本の地盤沈下観測井を設置している明和西観測井の結果(図2-3-2-11)から、次のことが読みとれます。

  • 地下水位の変化は、1年周期で変動がある。
  • 一度地盤が沈下すると、地下水位が回復しても元に戻らない。
  • 浅層より深層で沈下が起きているが、地下水位の低下は今のところ現れていない。
表2-3-2-11 市町村別地盤変動状況
地域名 市町村名 総数 水準点数 地下点の内訳 最大沈下点
沈下 隆起 変動なし 20mm
未満
20mm
以上
変動量
(mm)
水準点番号 所在地
保全地域 館林市 23井 23井 0 0 0 23井 41.6mm 59-03 大島町
板倉町 17井 17井 0 0 0 17井 51.5mm 10-01 朝日野
明和町 9井 9井 0 0 0 9井 35.1mm 5-07 梅原
千代田町 8井 8井 0 0 0 8井 28.1mm 53-14 上中森
邑楽町 16井 16井 0 0 0 16井 31.0mm 53-03
邑15

中野
観測地域 太田市 36井 36井 0 0 22井 14井 30.0mm 53-29 東長岡町
大泉町 7井 7井 0 0 4井 3井 23.8mm 50-08 北小泉
伊勢崎・佐波地域 伊勢崎市 23井 23井 0 0 22井 1井 20.1mm 11-09 粕川町
玉村町 6井 6井 0 0 6井 0 15.7mm 1-05 上福島
1-09 飯倉
前橋・高崎地域 前橋市 8井 8井 0 0 5井 3井 21.2mm 3-03 六供町
高崎市 18井 18井 0 0 16井 2井 21.1mm 4150 日高町
藤岡地域 藤岡市 9井 9井 0 0 9井 0 15.1mm 4-02 下戸塚
  180井 180井 0 0 84井 96井      

※注 変動量は地震による地殻変動の影響を含んだものであり、地盤沈下量とは異なります。

(4)地下水の採取状況

 群馬県の生活環境を保全する条例により、一定規模以上の井戸を揚水特定施設として設置の届出と地下水採取量の報告を義務付けています。
 揚水特定施設設置者からの報告により平成23年の各市町村別の地下水採取量は表2-3-2-12、採取量の経緯は、図2-3-2-12に示すとおりです。

表2-3-2-12 各市町村別地下水採取量 (単位:千立方メートル)
地域名 市町村名 採取量
報告数(本)
水道用 工業用 ビル用水 農業用水 合計
保全地域 館林市 71本 7,871 4,688 275 147 12,982
板倉町 26本 2,106 214 96 54 2,470
明和町 23本 1,427 7,317 0 0 8,744
千代田町 14本 1,579 937 0 0 2,517
邑楽町 23本 2,589 155 10 273 3,027
小計 157本 15,573 13,311 382 474 29,739
観測地域 太田市(旧藪塚本町を除く) 115本 17,614 2,836 831 596 21,877
大泉町 24本 4,939 1,826 81 0 6,846
小計 139本 22,553 4,662 912 596 28,723
伊勢崎・佐波地域 伊勢崎市(旧赤堀町を除く) 161本 21,547 13,389 211 0 35,147
太田市(旧藪塚本町) 7本 0 218 0 0 218
玉村町 24本 4,852 870 897 0 6,620
小計 192本 26,399 14,477 1,108 0 41,985
前橋・高崎地域 前橋市(旧前橋市) 165本 18,576 8,606 1,256 980 29,417
高崎市(旧高崎市) 102本 1,438 9,283 188 0 10,910
小計 267本 20,014 17,889 1,444 980 40,328
  合計 755本 84,539 50,340 3,846 2,050 140,775

(注)各市町村の地下水採取量は、四捨五入しているため合計が一致しない場合があります。

2 地下水適正利用の推進

 地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げによって生じるため、その防止には地下水利用の適正化が重要です。
 このため、群馬県の生活環境を保全する条例により、地盤沈下防止に関する規制等を実施しています。また、地下水の採取量を削減するためには、代替水源の確保が不可欠であることから、東部地域水道(平成9年度に供用開始)などの整備を進めています。
 今後の地下水利用にあたっては、健全な水循環を目指し、地下水障害を発生させず、かつ持続的な利用が可能な範囲において適正利用を図っていきます。

3 取水における地下水から表流水への転換の推進

 群馬県の事業所では、高度経済成長の過程で、工場等による地下水採取量が増大したため、特に東部地域の地盤沈下が著しく進行したと考えられています。
 こうした状況を回避するため、地下水保全(地盤沈下)対策として東毛工業用水道事業を計画・事業化し、また東部地域水道用水供給事業も開始されました。
 東毛工業用水道事業及び東部地域水道用水供給事業により地下水から表流水への転換を進めた結果、特に水道用水の地下水採取量は平成15年度には基準年である昭和61年度に比べ年間557万立方メートルの削減となりました。
 事業の開始以降、地盤沈下は沈静化の方向にはありますが、まだ地盤沈下が完全に止まったわけではないため、今後とも引き続き地下水から表流水への転換を進め、地盤沈下の防止に努めます。

第3項 地下水・土壌汚染対策

1 地下水の水質測定の実施と結果

 地下水は、水温の変化が少なく一般に水質も良好であるため、水道、農業及び工業などに、貴重な水資源として広く利用されていますが、いったん有害物質に汚染されると、その回復は困難で影響が長期間持続するなどの特徴があります。
 有害物質による地下水汚染の未然防止を図るため、水質汚濁防止法では有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する措置や地下水の水質の監視測定体制の整備などの規定が設けられています。
 県内の地下水の水質監視は水質汚濁防止法に定める水質測定計画に基づき、県、前橋市、高崎市、伊勢崎市及び太田市が分担して行っています。

(1)地下水概況調査

ア 調査方法等
 県内の地下水の状況を把握するため全県を4キロメートル四方の151区画に区分し、1区画につき1本(県99、前橋市14、高崎市17、伊勢崎市9、太田市12)の井戸について調査しました。
 151井戸のうち97井戸は28項目(表2-3-2-13 地下水環境基準が定められている項目中1~3)を、28井戸は15項目(同表中2~3)を、26井戸は3項目(同表中3)を調査しました。
 なお、1,2-ジクロロエチレンの濃度は、シス体の濃度及びトランス体濃度の和です。また、平成23年10月27日にカドミウムの環境基準が0.003ミリグラム/リットルに改正されました。
イ 平成23年度の結果
 図2-3-2-14のとおり、29本の井戸で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素のみが、1本の井戸で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素と1,2-ジクロロエチレンが、1本の井戸でカドミウムが環境基準を超過して検出されました。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、下記(4)にあるような総合的な対策を行っています。
 それ以外の項目について、環境基準の超過はありませんでした。
 地下水環境基準達成率は79.5パーセント(120/151地点)で平成22年度(76.8パーセント)を上回りました。

(2)地下水継続監視調査

 概況調査で地下水質が環境基準を超過した地区の汚染の推移を監視するため、継続的に調査をしています。
 平成20年度以前にトリクロロエチレン等の有害物質が環境基準値を超過して検出された、前橋市の6地区、高崎市の2地区、伊勢崎市の1地区、桐生市の2地区、渋川市の1地区、富岡市の1地区、館林市の1地区、下仁田町の1地区、甘楽町の1地区及び藤岡市の1地区・計17地区で汚染状況の監視のための継続監視調査を実施しています。また、平成19年度からは硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について、20井戸を選定して継続監視調査を実施しています。

(3)周辺(終了)調査

 継続監視調査において環境基準を下回る状態が継続している地区の汚染状況を確認し、同地区の継続監視調査の時期を検討する資料を得るため実施するものです。
 平成23年度は周辺(終了)調査は行っていません。環境基準を継続して下回っている地区については、周辺(終了)調査を行うことを検討します。

(4)群馬県地下水質改善対策連絡協議会

 平成15年度に学識経験者と関係機関の職員を構成員とする地下水質改善対策連絡協議会を設置し、大間々扇状地をモデルに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水の汚濁機構及び対策手法について検討を行いました。この結果、地下水汚染は農業、畜産、生活排水等による複合的な影響を受けているものと推定され、現在、環境への負荷が少ない施肥の技術の普及、家畜排せつ物の管理指導、生活系廃水処理施設の整備推進などの対策を行っています。

2 有害物質使用事業場に対する立入指導

 土壌・地下水は一度汚染されてしまうと、元の状態に戻すためには、多くの時間と費用が必要です。このため、土壌・地下水汚染の未然防止を図ることが重要であり、有害物質を使用している事業者に対して、平成24年6月に施行される、改正水質汚濁防止法の周知と併せて、有害物質の地下浸透防止の徹底を指導していきます。

3 市街地における土壌汚染対策の推進

 土壌の汚染状況の把握や汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めた土壌汚染対策法が平成15年2月に施行され、土地所有者等に対し、一定の契機をとらえた土壌汚染状況調査が義務付けられました。
 この調査により、土壌中に一定の基準(指定基準)を超える有害物質が検出された土地については、県知事・政令市長(政令市長:前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市)は区域指定し、土地所有者等は汚染状況に応じ汚染除去等の必要な措置を実施しなければなりません。
 県内においては、平成24年3月末現在、区域指定されているのは10区域(富岡市内(2か所)・玉村町内・藤岡市内・明和町内・みどり市内・前橋市内(2か所)・太田市内・高崎市内の土地)です。
 平成23年度における一定規模以上の土地改変時の届出状況は、96件(政令市を除く)の届出があり、8件(8.3パーセント)に調査命令を発出、うち1件(1.0パーセント)で指定基準を超える汚染が見つかりました。
 また、月別では5月が最多で15件(15.6パーセント)で、全体的にも5月から8月に集中しています。

表2-3-2-14 環境森林事務所等別届出状況
年度 中部 西部 吾妻 利根沼田 東部 計(件)
平成23 15件 18件 17件 17件 29件 96件
※注1 1件(0) 1件(0) 2件(0) 0(0) 4件(1件) 8件(1件)

※注1 命令発出件数(うち、基準を超える汚染があった件数)
 なお、汚染土壌処理業については、平成23年度中には許可申請がなされませんでした。

4 環境への負荷が少ない施肥(せひ)技術の普及

 肥料価格の高騰対策、また環境に配慮した農業生産の取組として、県内各地で施肥技術改善の取組が行われています。その技術の特徴は、作物に共通な対策として、1)土壌診断に基づいた適正施肥、2)堆肥のように低価格・緩効性で、土壌の物理性を改善するような資材を利用する、3)作物の生育ステージに応じて溶出量を調整できる肥効調節型肥料を局所施用する、といったことがあげられます。特に、堆肥利用の場面では、県畜産試験場で開発された「堆肥施用量計算ソフト」を活用し、土壌診断データを基に施肥を行っています。
 県内で行われた施肥技術に関連した現地実証ほの概要は以下のとおりです。

(1)野菜用粒状局所施肥機を用いたブロッコリーの施肥コスト削減

 前橋市、伊勢崎市の露地野菜の中で重要品目に位置づけられるブロッコリーの局所施肥機の実証を行いました。手持ちの管理機を活用することが可能で、全面施肥から条施肥に変更することにより、ブロッコリーで最大4割の施肥量削減が可能になりました。

(2)堆肥を活用したトマトの低コスト施肥体系

 吾妻地域では、雨よけトマト栽培において、県畜産試験場で開発された「堆肥施用量計算ソフト」を利用し、堆肥の有効活用による肥料費削減と安定生産に向けた取組を強化しました。この技術により、化学肥料の使用量とコストの削減が可能になりました。

(3)高原野菜産地での堆肥利用推進の取組

 長野原町北軽井沢地区の露地野菜農家では、近隣地域からの家畜ふんを原料に自家製堆肥作成の取組が積極的に行われています。一部では、堆肥を土壌の物理性改善や地力維持の目的だけでなく、肥料や土壌改良剤として代替している生産者もおり、肥料費の低減につなげています。

(4)ナシ栽培における堆肥利用と土壌診断による施肥量の適正化

 前橋市木瀬地区のナシ栽培は、ナシ園と住宅の混住化により栽培上の制約が厳しくなってきています。そこで環境にやさしい農業に取り組むため、補助事業により堆肥散布機を導入し、土壌分析結果を基にして堆肥を有機質肥料として利用し、化学肥料削減を図りました。その結果、過剰施肥防止効果が見られ、肥料コスト低減につながりました。

(5)ペレット堆肥を使ったコンニャク栽培

 渋川市赤城町のコンニャク栽培では、化学肥料代替としてのペレット堆肥を利用した試験に取り組んでいます。この堆肥は管内の養豚農家等から搬出された糞尿等を原料に同地域の堆肥センターで製造したもので、散布しやすいタイプのものです。化学肥料を用いた場合より球茎の肥大はやや劣りましたが、生子収量は勝っているという結果になりました。

(6)キャベツのうね内部分施用における肥料等削減効果及び生産性の確認

 佐波伊勢崎地区のキャベツ栽培で、うね内部分施肥機を用いて、肥料削減効果と生産性を確認しました。その結果、全面施用に比べて収量は約3割の増収が認められました。一方、10アールあたりの肥料及び農薬費は、1~2割の削減効果がありました。

(7)水稲の育苗箱全量施肥専用肥料による省力・低コスト栽培

 米麦二毛作地帯を中心に、集落営農組織等の担い手による水稲作付拡大が進んでいます。その所得向上のため、本田における施肥窒素分を専用肥料によってあらかじめ育苗箱に施肥する技術を実証しました。専用肥料のみを施用した場合、慣行肥料と比較すると肥料費の50パーセントが削減できます。この技術によって、作業の効率化、環境負荷の低減を図ることが可能になります。

5 家畜排せつ物の取扱いの適正化指導

 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(以下、家畜排せつ物法)が完全施行され、畜産農家は家畜排せつ物の管理について、法律の基準を遵守することが義務付けられました。これに基づき、家畜排せつ物処理施設を整備する事業を実施し、適正な管理を指導してきました。
 また、同法に基づく国の基本方針変更に伴い、平成20年5月に「群馬県家畜排せつ物利用促進計画」を見直し、27年を目標年度として堆肥の利活用を積極的に進めることにしました。
 畜産農家には、家畜排せつ物の適正管理に加え、耕種農家と連携し、家畜ふん堆肥の農地への還元を基本とした有機質資源としての有効活用を図ることを指導しました。

(1)地域と調和した畜産環境確立

ア 家畜ふん堆肥流通利用支援
 家畜排せつ物法に対応するため、家畜排せつ物処理施設を整備し、畜産農家の周辺環境の保全を支援してきましたが、21年度からは地域における資源循環型農業の推進及び畜産経営の健全な発展を図ることを目的とし、堆肥流通のために必要な機械・施設の整備を行える事業を開始し、23年度は西部地域で堆肥保管施設を整備しました。
イ 畜産環境リース整備促進
 畜産環境整備機構が実施した畜産環境整備リース事業の特別緊急対策(2分の1補助付きリース事業)を利用し、畜産農家が設置したふん尿処理施設や機械等のリース代金について利子の一部を助成しました。

6 畜産臭気対策技術等を活かした環境保全(地域結集事業成果の普及促進)

 県では、「家畜排せつ物をエネルギーに変換して有効利用するとともに、環境への負荷を低減する技術」を開発する「環境に調和した地域産業創出プロジェクト」を平成18年1月から進めています。平成23年度は、畜産農家や湖沼等において、実証実験(実用レベル)を実施しました。
 本プロジェクトでは、大学、企業、試験研究機関が結集して次の研究開発に取り組んでいます。

  • 家畜尿汚水からリンなどの資源を回収するとともに、汚水を浄化する技術の研究開発
  • 畜産臭気対策として低コストで効率の良い脱臭装置の研究開発

 今後は、事業化・商品化につなげる研究開発を推進するとともに、研究成果の普及促進を図ります。

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