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第2部第3章第1節 放射線対策

更新日:2012年10月1日 印刷ページ表示

第1項 空間放射線量調査

1 空間放射線量のモニタリング

(1)モニタリングポストによる監視

 モニタリングポストは、放射性物質の飛来を監視する「火の見やぐら」の役割を担っています。県では、平成2年度から衛生環境研究所の屋上、地上21.8メートルにモニタリングポストを設置し、継続して測定を行っています。
 平成23年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により、県内では一時的に空間線量率の上昇が認められましたが(3月15日13時~14時:0.562マイクロシーベルト)、その後減少し、現在では毎時0.03マイクロシーベルト前後と事故前の平常値の範囲内で安定して推移しています。
 平成24年3月には、モニタリングポストを更に24基設置し、現在は県内25か所で常時監視しています。現在の県内の状況は、毎時0.1マイクロシーベルト以下という低い数値で推移しています。

(2)サーベイメータ等による測定

 モニタリングポストによる監視とは別に、県内各地の生活空間における放射線量を詳しく把握するため、150地点を定点と定め、年2回(9月と3月)サーベイメータによる調査を実施しています(測定高:0センチメートル、50センチメートル、100センチメートル)。平成24年度3月の測定値は、毎時0.028~0.305マイクロシーベルトでした(測定高1メートル)。

第2項 放射能調査

1 上水道

(1)水道水の監視

 水道水中の放射性物質の監視については、従前から文部科学省委託事業である「環境放射能水準調査」の一環として年1回測定を行っていましたが、原子力発電所事故の発生を受けて、強化モニタリングとして毎日1回測定を行う体制となりました。概ね平成23年4月下旬を最後に放射性ヨウ素及び放射性セシウムは不検出が続いていたため、文部科学省の方針変更を受けて、平成24年1月からは3か月分の水道水を濃縮し、精度を100倍に高めた測定を行う体制へと移行しました。なお、平成24年1~3月分の測定結果は、セシウム134が0.0032ベクレル/キログラム、セシウム137が0.0039ベクレル/キログラムという結果でした。

(2)県営水道の監視体制

 県企業局は水道用水供給事業者として4つの県営水道を運営しており、16市町村の経営する水道事業を通じて、県内の約160万人に水道水を供給しています。
 そのため、安全な水を供給するという事業者としての責務を負っていることから、県営水道の放射性物質の検査は、ゲルマニウム半導体検出器を導入し、水質検査センター(太田市新田反町町)において、平成23年9月12日から実施しています。
 水質検査センターでは、県営4水道の浄水について、浄水場毎に検体を採取し、放射性ヨウ素、放射性セシウムについて、週3回程度実施し、結果を公表しています。

2 流通食品等

 県内に流通する食品(加工食品の原材料を含む。)について、放射性物質に係る安全性を確認するために検査を実施し、検査結果を速やかに情報提供しています。平成23年度は12月から検査を開始し3月までに計66検体の検査を実施しましたが、すべての検体で暫定規制値を下回っていました。

3 県産農畜産物

(1)農産物

 県内で生産されている農産物は、定期的に検査を実施し、安全性を確認しています。
 県内では、平成23年3月にホウレンソウ及びカキナが暫定規制値を超えたため、出荷規制の対象となりましたが、その後の検査によって安全確認されたため、平成23年4月には出荷規制は解除になりました。
 また、平成23年5月・6月の検査では、茶について暫定規制値を超える値が検出されたため、出荷自粛を要請しました。その後、平成24年5月の検査で一部解除となりましたが、平成24年6月の検査で基準値を超える値が検出されたため、一部の地域については出荷自粛が継続となっています。
 平成24年度も引き続き、農産物の生産・出荷等の実態に応じて、出荷前または出荷初期段階で定期的な検査を実施し、安全性を確認していきます。

(2)牛肉

 平成23年7月8日に福島県産の牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことにより、牛肉の安全性への信頼性が揺らいだ状況となり、群馬県のみならず東日本各地で枝肉価格が暴落し畜産農家は大打撃を受けました。
 また、市場の買参人や実需者である量販店等からは出荷する牛肉の検査を求める声が急速に高まり、取引が成立しない事例等も発生しました。
 このため、県内のと畜場に出荷された肉用牛を対象として7月31日と畜分から県内の全戸1頭調査を開始するとともに、全頭検査を実施しました。
 これまでに、暫定規制値を超える牛肉は検出されていません。
 平成23年度 検査戸数:437戸 検査頭数:9,964頭

(3)原乳

 原乳については、23年3月22日から県内全域が対象となるよう毎週2検体、1月25日からは毎週3検体について検査を継続しています。
 これまで、全ての検体が暫定規制値を大きく下回っています。
 平成23年度 検査回数:49回 検査数:110検体

(4)豚肉、鶏肉、鶏卵

 豚肉、鶏肉については、平成23年4・10月、平成24年2月に、豚肉11検体、鶏肉5検体を、鶏卵については、平成23年4月に1検体を検査しましたが、いずれも未検出でした。

4 野生獣肉、きのこ

(1)野生獣肉

 県内各地で捕獲された野生獣肉については、環境調査及び食肉利用の面から検査を実施しています。検査結果が、基準値(100ベクレル/キログラム)を超えた市町村においては、該当獣種の自家消費及び出荷を自粛していただくとともに、その他の地域や獣種についても慎重な対応をお願いしています。なお、検査結果については、県のホームページで公開しています。

(2)きのこ

 栽培されているきのこ類については、毎週定期的にモニタリング検査を行い、安全性を確認しています。また、安全なきのこ生産を推進するため、放射性汚染物質の簡易測定器を購入して検査態勢を整備し、きのこ原木やほだ木等の生産資材を対象とする指標値(きのこ原木・ほだ木の放射性セシウム50ベクレル/キログラム、菌床等の放射性セシウム200ベクレル/キログラム)の確認検査等を実施しています。

5 各種飼料等

(1)平成23年産飼料作物、牧草等への対応について

 原発事故発生後に県内で生産された飼料作物等について、国の通知に基づき、安全性を確認するモニタリング調査を実施し、平成23年5月10日以降に収穫されたものについて安全性が確認され、利用が可能となりました。
 また、青刈りとうもろこしや稲発酵粗飼料などの夏作飼料作物についてもモニタリング検査を実施し、すべての検査において安全性が確認され、利用が可能となりました。

(2)県外産稲わらへの対応について

 福島県内で、原発事故後に収集された高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが肉牛に給与されていたことが判明したことから、同様に収集された稲わらの緊急調査を行い、その結果、県内でも県外産汚染稲わらが流通していたことが判明したため放射性物質検査を行うとともに、該当稲わらの隔離及び処分(返品)等の対応を行いました。

(3)乾草・サイレージ等への対応について

 牛肉等畜産物の放射性物質検査において、比較的高い放射性セシウムが検出される事例が散見されたため、改めて各生産者が保管している平成23年産の牧草等を原料とした乾草やサイレージ等について抽出調査と追加調査を実施しました。その結果、新たに県内83地域で放射性セシウムの暫定許容値を超過した乾草・サイレージが生産されたことが判明したことから、それらについて利用自粛を要請しました。

(4)平成24年産飼料作物、牧草等への対応について

 平成24年に生産される飼料作物、牧草等についても、引き続き牛肉や牛乳の安全性の確保を図るため、県内を5地域に区分し、それぞれの地域において、飼料作物、牧草等の品目ごとに検査を実施しています。

6 農地土壌等

 県産農畜産物の安全を担保し、また、生産者が安心して営農に取り組めるよう、平成23年4月より県内の農地土壌を対象とした放射性物質の調査に取り組んでいます。

(1)農地土壌の放射性セシウムの濃度分布

 平成23年度に、農地における放射性セシウムの分布状況を把握するための土壌調査を行いました。県内を2.5キロメートル四方の区画に分け、市町村とJAの協力により農地のある各区画から調査対象ほ場を選定し、水田では平成23年4月~6月に、畑・樹園地等では6月~12月にほ場の土壌を採取しました。採取した土壌は、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射性セシウム(Cs-134、Cs-137)濃度を測定しました。
 農地土壌の放射性セシウムの濃度分布は、文部科学省の航空機モニタリングで得られた空間線量率の分布とほぼ同様の傾向を示しました。県内の90パーセントを超える農地において500ベクレル/キログラム以下であり、最も高い地域では2,000ベクレル/キログラム~2,500ベクレル/キログラムの範囲でした。農地土壌の放射性セシウムの濃度分布図及び各地点別結果一覧等の調査結果は、県のホームページで公開しています。

(2)モニタリング定点調査、詳細調査

 平成24年度以降は、平成23年度の調査地点の一部において、継続して農地土壌の放射性セシウム濃度等のモニタリング定点調査を行います。また、これまで得られた知見を基に、地域と調整して農地土壌と農作物の放射性セシウム濃度等の詳細調査を行います。これらの調査結果を踏まえ、技術対策を講じることで、安全な農畜産物の生産をさらに推進していきます。

7 下水汚泥

 福島県の原子力発電所事故に起因し、下水汚泥からも放射性物質が検出されており、県が管理している流域下水処理場(奥利根、県央、桐生、西邑楽、利根備前島、平塚)で発生する下水汚泥の放射性物質濃度を、平成23年5月から概ね2週間間隔で検査しています。これまでの検査結果(平成23年5月5日~平成24年6月22日まで)は次のとおりです。

  • 放射性ヨウ素131:0~570ベクレル/キログラム
  • 放射性セシウム134:0~400ベクレル/キログラム
  • 放射性セシウム137:0~470ベクレル/キログラム

 従前、下水汚泥はセメント、溶融スラグ及び肥料の原料として、再利用処分されていましたが、放射性物質の検出を受け、それらを一時停止し、貯留保管していました(平成23年5月上旬から6月中旬まで)。
 現在発生している下水汚泥は、放射性物質濃度がセメント原料としての基準を満たしているので、セメント原料として再利用処分を再開しています。また、貯留保管しているものについても、セメントや溶融スラグの原料として利用できることが確認されたため、再利用処分を進めています。

第3項 放射性物質を含む廃棄物の処理

1 指定廃棄物の処理

(1)指定廃棄物の現状

 指定廃棄物は、平成24年1月1日に完全施行された放射性物質汚染対処特措法において、事故由来放射性物質についての放射能濃度(放射性セシウム134と137の合計値をいう。)が8,000ベクレル/キログラムを超える廃棄物であって環境大臣が指定したものをいいます。
 環境省によれば平成24年3月26日現在で、群馬県内には、浄水発生土が約144トン指定されているほか、下水汚泥焼却灰約460トン、浄水発生土約330トンが保管されているものと推計されています。これら指定廃棄物の処分は、国が責任をもって行うものとされています。

(2)指定廃棄物の処理方針

 指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内で行うこととされています。国では、平成24年3月30日付けで指定廃棄物の今後の処理方針を公表しました。その内容は次のとおりです。
 国は、今後3年程度をめどに、必要な最終処分場を確保することを目指す。
 最終処分場を新たに建設する場合は、県内に集約して設置し、候補地を国有地の活用も含め、都道府県毎に複数抽出。その後、現地調査などにより立地特性を把握した上で、国が立地場所を決定。
 国は、最終処分場が設置されるまでの間、当面、焼却、乾燥、溶融などの中間処理を行い保管の負担を軽減。

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