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豊かで美しいぐんまの自然を守り、未来へ引き継いでいくことは、私たちに課せられた重要な責務です
群馬県は、東西約96キロメートル、南北約119キロメートル、総面積約6,363平方キロメートルで、本州のほぼ中央に位置しています。海抜12メートル余から2,500メートル超までの変化に富んだ地形・地質の中に多くの河川、湖沼が点在し、利根川を軸として山岳部の渓流から平野部の小川にいたるまで、多様な水辺環境を形成しています。
本県は、こうした地理的要因を背景に、豊富な動植物種が生育し、生物多様性が豊かな、自然環境に恵まれた県です。
しかしながら、開発や観光資源としての利用に伴う動植物への影響や水資源への質的影響が懸念される一方で、近年の中山間地域の高齢化や平野部の都市化により、耕作放棄地の増加や里山利用の低下による自然環境の質的変化も生じています。これに伴い、野生動物の生息域の拡大や外来生物の侵入など、農林水産業や生態系への影響も発生しています。
また、近年では様々な開発が進み、動植物の生息空間の縮小や、森林等を源とする豊かな水資源の量と質の両面への影響が懸念されています。さらに、都市部では水質汚濁や大気汚染、廃棄物の増加、都市化に伴う緑地の減少などの環境問題も顕在化しています。
県土の85%が山地で占められ、浅間山をはじめ多くの火山があります。県南部の多野山地や北東部の足尾山地は古い山地、上越国境の谷川連峰は新しい山地です。ほかに、蛇紋岩や石灰岩から成る山地もあります。山地は中部から東部の台地を経て関東平野へとつながり、その間を流れる河川の多くは利根川に集まります。
地形や気象など複雑な環境要因により、3,203種の植物が確認されています。その分布は生い立ちの背景などから、「日本海(多雪地帯)」、「フォッサマグナ(火山地帯)」、「関東」の3つの要素に大きく分類できます。
哺乳類47種、鳥類263種、爬虫類15種、両生類17種、淡水魚類62種が確認されています。また、動物の中で最も種類が多い昆虫類は、未確認のものも数多くあり種類は把握されていませんが、チョウ類やコウチュウ類、トンボ類、バッタ類、ハチ類など数多くの種が生息しています。ほかにも、クモ類や甲殻類、陸・淡水産貝類など多くの動物が確認されています。
本県には、日光、上信越高原、尾瀬国立公園と妙義荒船佐久高原国定公園の4つの自然公園があります。尾瀬、谷川岳、草津・白根・万座、浅間高原、鹿沢高原の各地区に地元住民を中心として設立された「美しくする会」が主体となり、美化清掃活動やゴミ持ち帰り運動を行い、美しい公園づくりを進めています。また、自然公園指導員(70名)とも連携を図り、適正な利用者指導や自然保護の啓発に取り組んでいます。
本県には、県立公園条例に基づく公園として「赤城公園」、「榛名公園」、「妙義公園」、「敷島公園」、「群馬の森」、「金山総合公園」、「つつじが岡公園」、「観音山ファミリーパーク」の8か所あります。これらの公園は、みどりの保全と良好な都市生活環境の提供に大きな役割を果たすとともに、県民に潤いの場を提供しています。このように「憩いの場」、「レクリエーションの場」、「景勝地」として県民をはじめ多くの方が訪れるため、公園内には、ビジターセンター、遊歩道、運動施設、遊具、駐車場及び公衆トイレ等の各種施設を整備し、多様な利用者の利便性の向上を図っています。
本県の森林面積は42万5千ヘクタールで、県土の約67%を占めています。人工林はスギ、カラマツが多く、天然林はブナ、コナラなどの広葉樹が多くなっています。森林は県民の生活になくてはならないものです。住宅建築の材料となる木材を生産し、また、きのこなどの豊かな特用林産物を育んで山村の経済に大きく貢献しています。また、森林は、水資源のかん養、土砂流出や土砂崩壊防止、自然環境の保全・形成等の公益的機能を有するほか、近年、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の吸収源としての要請も高まっています。
水源かん養機能計量化調査報告書(昭和63年3月)によれば、県内民有林の保水能力は6億3千万トンと試算されています。また、国有林を合わせた群馬県全体では11億8千万トンと推計されています。これは、県内の主な8ダム(藤原、相俣、薗原、矢木沢、下久保、草木、奈良俣、渡良瀬遊水池)の有効貯水量5億3千万tの2.2倍に相当し、首都圏の水がめとしての役割を果たしています。森林が持つ水源かん養機能を効果的に発揮させるためには、間伐などの森林整備を適切に実施する必要があります。