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「高崎市スマートインターチェンジ周辺工業団地(仮称)造成事業に係る環境影響評価準備書」に対する意見について
1 大気環境について
- 工場稼働に伴う大気質、悪臭及び騒音・振動による影響について、隣接する住宅地に配慮した対策を進出企業に要請するなど、可能な限り低減するよう努めること。また、供用後の事後調査では、必要に応じて、企業の立地状況に基づく調査地点の再検討を行うこと。
- 工場で用いられる原動機等が及ぼす騒音・振動と低周波音は互いに関連する現象である。低周波音が発生する可能性も考慮することを評価書に記載し、供用後のモニタリングによる発生状況の把握を確実に実施すること。
2 水環境について
- 計画地内を流れる井野川は、中・西毛地域の中では有機物汚濁が進んでいる河川の一つであり、これ以上の有機物汚濁が進むことのないよう十分な配慮が必要である。また、排水に含まれる化学物質が変化して発生する水質事故等も考慮し、工場からの排水及び井野川の水質については、注意深く監視すること。
- 井野川の橋梁工事及び河川区域における工事については、自然改変を極力行わず、かつ環境負荷を低減する工法を検討するなど、計画地の水辺環境の保全に対して、できる限りの配慮をすること。また、評価書の作成にあたっては、これら工事の位置及び範囲の表示、シミュレーション写真の作成について、可能な範囲で検討すること。
3 地盤環境について
計画地においては造成中から緑化を実施し、水質汚濁及び砂塵による環境への影響を低減するよう努めること。
4 生物環境について
- 非改変区域に生息するマキエハギ(県レッドデータブックIA類)とタコノアシ(同IB類)について、西部地域における生息確認状況に基づき、タコノアシを注意が必要としている一方、マキエハギは特に措置を取らなくともよいと判断している。しかし、橋梁工事等により生育環境に影響が及ぶことも考えられることから、マキエハギについてもタコノアシと同様に注意が必要とし、影響がある場合には移植等の対応を検討すること。
- 植物の重要種等の移植について、隣接する耕作放棄地は今後改変の可能性があり、保全措置の実効性を確保する可能性が低いため、周辺の公有地への移植を検討すること。また、工事中のモニタリングにおいて、他の希少種が発見された場合には、移植の検討などの追加の対応を行うこと。
- 土地利用計画に示している公園・緑地の具体的内容について、可能な範囲で評価書に記載すること。また、植物の重要種等をこれら人工的な環境に移植した際は、適切な継続管理を行うこと。
- 周辺に営巣しているオオタカが、計画地をえさ場として利用している可能性があるため、継続調査を行うとともに、必要に応じて保護対策を行うこと。
- 井野川流域には、生態系や食物網の頂点に位置するアカギツネが生息しており、生物相の豊かさや生物多様性を示している。これらの動物は、移動経路として河川敷を利用しているため、河川区域の改変においては、工事中及び供用後の移動経路を確保するための適切な措置を講じること。
- 注目すべき種について環境保全措置を検討する際は、都市化に対応してきている野生動物の生態の変化にも十分留意して行うこと。
- ゴクラクハゼのように、その地で記録がない種が捕獲された場合には、貴重な資料になる可能性があるため、写真による記録を残すこと。
5 人と自然とのふれあいについて
文化財は、地域の歴史を知る貴重な財産であるので、これらの調査範囲については、十分検討したうえで適切に設定すること。
6 その他
- 計画地の南に位置する独立行政法人日本原子力研究開発機構 高崎量子応用研究所は、設置の経緯や研究内容、施設の共同利用に対する取組等、他の研究所とは異なる性質を持つ。環境保全上配慮を要する施設の選定にあたっては、そのような施設の性質にも留意したうえで検討を行うこと。
- 進出企業の業種によっては、セットバックのほか建屋配置による効果を検討するなど、隣接する住宅地に十分配慮した環境保全措置を講じること。
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