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伊勢崎宮郷工業団地造成事業に係る環境影響評価準備書に対する意見について
1 大気環境について
- 微小粒子状物質(PM2.5)は、平成21年に環境基準や測定方法が設定されており、群馬県内では平成23年度から前橋測定局で測定を開始しているが、予測・評価の手法が確立されていないことから、群馬県環境影響評価技術指針では、環境影響評価の対象とする環境要素に設定されていない。しかしながら、微小粒子状物質は、将来、大気環境に係る重要物質になると思われるため、既存資料の調査結果として前橋測定局の微小粒子状物質測定データを評価書に掲載すること。
- 計画地は、住宅等に近接していることから、工場稼働に伴う騒音による影響をできる限り低減するため、入居企業に対して適切な公害防止協定の締結及び指導を行うよう伊勢崎市に要請すること。
2 水環境について
- 計画地に近接する韮川放水路は、平地では珍しいバイカモが群生し、また県準絶滅危惧種のアオハダトンボが生息している貴重な水環境であるため、工業団地区域内の土砂が韮川放水路に流入しないよう十分に配慮すること。
- 工業団地分譲後、化学工場やプラスチック製品製造業など化学物質を取り扱う企業が入居する場合は、水質汚濁事故防止のため、入居企業に対して適切な公害防止協定の締結及び指導を行うよう伊勢崎市に要請すること。
3 地盤環境について
- 計画地は、1783年天明の浅間山大噴火時に泥流が押し寄せた場所で、大量の火山物質が堆積している可能性がある。火山物質を含む地盤は、乱すと地盤強度が極端に低下するため、計画地の掘削土砂を盛土材として利用する場合には、建物の建たない場所に使用するなど、できる限り配慮すること。
- 造成工事に使用する盛土材として、一部、他事業の建設発生土を搬入する計画であるが、その検査項目として、現段階では自然的原因による基準超過の可能性のある8物質に限定することはできないため、他事業の建設発生土を搬入する場合の検査項目及び頻度を再検討すること。
4 生物環境について
- 植物・動物の注目すべき種の選定に際して、「哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物1及び植物2のレッドリストの見直しについて」(平成19年、環境省)、「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物植物編」(平成13年、群馬県)及び「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物動物編」(平成14年、群馬県)の掲載種を基準としているが、平成24年4月に「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物植物編(2012年改訂版)」が、12月に「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物動物編(2012年改訂版)」が出版され、また、8月には環境省の第4次レッドリストが公表されている。そのため、新たに注目すべき種として選定された種については、工事実施前に行う環境保全対策時に、これらを対象とした現地調査も実施し、必要に応じて専門家等の助言を得ながら適切な保全措置を講じること。
- 計画区域内で確認された注目すべき植物・動物について、周辺の水田や調整池等に移設するなどの代償措置を講じる際には、必要に応じて専門家等の助言を得ながら移設場所、時期、方法等を十分検討し、できる限り従来の環境を確保するよう配慮すること。
- 造成工事により、広範囲に裸地が生じることや、大量の土砂を計画地外から搬入することから、工業団地造成から分譲までの間、工場敷地内が雑草等、特に外来生物が繁茂する荒地とならないように、適切な維持管理を行うこと。
5 人と自然とのふれあいについて
- 計画地の西北に位置する倭文神社は、延喜式神名帳に記載された群馬県では由緒ある十二社の一つであるとともに、当神社の社叢は貴重な景観環境を形成しているため、当神社に対する文化財及び景観環境としての位置付けを評価書に記載すること。
- 計画地内に配置される道路に植栽を行う場合は、街路樹の生育に十分なスペースを確保するように配慮すること。
6 その他
- 調整池の必要貯水容量を確保するため、必要に応じて造成工事中に堆積した土砂の浚渫等適切な維持管理を行うこと。また、分譲後においても、調整池の適切な維持管理を行うよう伊勢崎市に要請すること。
- 調整池の詳細構造決定の際には、環境保全対策として移設する植物・動物の生育・生息環境に配慮するほか、調整池としての機能性を損なうことのないよう十分留意すること。
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