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令和5年第1回定例県議会の開会に当たり、提案説明に先立ち、一言申し上げます。
高病原性鳥インフルエンザが、全国各地で猛威をふるっており、過去最多の発生事例数、殺処分数となっています。
群馬県では昨年11月に農場内の消毒命令を発出し、県内の養鶏場でも飼養衛生管理基準の遵守徹底を進めていました。しかし、今年の元日の1件目から、わずか1か月の間に、3件の鳥インフルエンザが発生しました。
発生後は、殺処分や埋却等のほか、発生農場周辺の消毒ポイント設置などの防疫措置を速やかに対応してきました。国、自衛隊、市町村に加え、JAグループ、建設業協会をはじめとした関係団体からも応援をいただきました。御協力いただいた関係の皆様には厚く感謝を申し上げます。
今後、4例目を発生させないためには、発生原因の究明、分析が非常に重要です。県としては、農家の皆様が安心して養鶏業を営むことができるよう、国や市町村、関係機関としっかりと連携し、原因の究明、再発防止に全力で取り組んで参ります。
養鶏農家の皆様には、これまで以上に、飼養衛生管理基準の遵守徹底をお願い申し上げます。
次に、新型コロナウイルス感染症についてです。県内で感染者が初めて確認されてから、約3年が経過しました。この間、累計で40万人を超える方々の感染が確認され、多くの尊い命が失われています。改めて哀悼の意を表するとともに、御遺族の方々に、心からお悔やみを申し上げます。
そして、今も昼夜を問わず献身的に治療に当たられている医療従事者をはじめとする全ての関係者の皆様に深く敬意を表します。
新型コロナウイルス感染症に関しては、国が5月8日から感染症法上の分類を5類に移行する方針を決定しました。
先般、医療関係者、保健所長と移行に向けての議論を行いました。医療現場の実態や感染状況、ワクチン接種の進捗、そして、政府の方針も踏まえつつ、円滑な5類移行に向けたロードマップを早期に示したいと考えています。
さて、今議会は議員各位にとって、任期最後の定例会となります。この4年間、各般にわたり活発な議会活動を展開され、県政推進に御協力いただきましたことに対し、深く感謝を申し上げます。
特に今任期は、台風19号、豚熱、新型コロナウイルス感染症、そして、鳥インフルエンザなど、危機管理に追われる4年間でした。
県では、県民の命と健康、そして暮らしを守るため、様々な対策を講じて参りました。県議会におかれましては、幾度にもわたる臨時会の招集や議案の追加などに御協力いただきましたことに対し、改めて感謝を申し上げます。
今任期をもって引退をされる議員各位におかれましては、長年にわたり、県民福祉の向上に貢献されました。これまでの御功績に対し、心から敬意を表しますとともに、今後も、御支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
そして、来る4月の次期県議選に臨まれる各位には、再びこの議会でお会いできることを切に期待し、御健闘をお祈り申し上げます。
それでは、令和5年度当初予算案をはじめ、提出議案の大要について御説明申し上げます。
加えて、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べたいと思います。
現在、新型コロナをはじめ、豚熱、鳥インフルエンザといった3つのウイルスとの戦いや、エネルギー価格をはじめとした物価高騰など、厳しい状況が続いています。
しかし、こうした逆境の中にもチャンスはあると、私は考えています。
例えば、新型コロナは、消費行動や働き方をはじめ、社会構造を一変させました。この構造変化により、東京に近いにも関わらず、快疎な空間を有する群馬県の魅力が再評価されています。
また、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した燃料価格の高騰は、再生可能エネルギーのポテンシャルが高い群馬県にとって、再エネ投資を増やし、企業や個人を引きつけるチャンスでもあります。
加えて、飼料や肥料の高騰は、有機農業を一気に進める契機でもあります。
このように、逆境を前にただうろたえるのではなく、構造的な変化を冷静に分析し、変化に対応できる新たな仕組みを作っていく。守りに入らず、新たな富や価値を創出し、課題解決のモデルを群馬から世界に発信していきたいと考えています。
これまで、新型コロナを第8波まで経験し、コロナとの共存を前提に経済を回していくことができるようになってきました。群馬県が掲げてきた未来ビジョン「誰一人取り残さず、誰もが幸福を実感できる自立分散型の社会の実現」に向けて、本格的に取組を進める時がきたと考えています。
令和5年度も、様々な逆境に立ち向かい、県民の命と健康、そして暮らしを守ることに全力を尽くして参ります。
そして逆境をチャンスに変え、近未来構想の「リトリートの聖地」、「クリエイティブの発信源」、「レジリエンスの拠点」など、新しい群馬を創るための取組を進めて参ります。
令和5年度当初予算は、こうした思いを込めて、『ポストコロナ新時代創生予算~逆境をチャンスに変え、新たな群馬を実現する!~』と命名させていただきました。
令和5年度の一般会計当初予算の総額は、8,197億円です。
令和4年度当初予算と比較して約10億円増加し、平成20年度以降では、過去最大の予算規模となります。
それでは、令和5年度当初予算の主な取組について、3つの重点施策に沿って御説明申し上げます。
重点施策の一つ目は、「Well-beingを高める」です。
Well-beingとは、「肉体的にも、精神的にも、社会的にもすべてが満たされた状態にあること」と言われています。また、県が実施した県民幸福度アンケートでは、「健康状況」を重視する声が最も多く上げられていました。
こうしたWell-beingを高めるためには、まずは、福祉・医療のさらなる充実が必要と考えます。
そこで、子ども医療費の高校生世代までの無料化について、市町村との調整を速やかに進め、調整が整い次第、必要な予算を措置して参ります。
さらに、小児医療センターの再整備に着手するとともに、医療的ケア児等支援センターの設置など、障害児者支援のさらなる充実にも取り組みます。
また、全国的にも課題となっているヤングケアラーやケアリーバーに対する支援を強化するとともに、新たに、保育士・保育所支援センターを設置して、保育人材の確保を進めます。
このほか、科学的根拠に基づいた健康寿命延伸への取組を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症、豚熱、鳥インフルエンザといった脅威にもしっかりと対応して参ります。
また、引き続き災害レジリエンスNo.1の実現に向けて、防災・減災対策や災害医療の強化にも取り組みます。
重点施策の二つ目は、「未来への投資」です。
まず、「新たな富や価値の創出」に向けた取組を加速していきます。
リトリートの聖地を目指し、群馬県ならではの旅行スタイルを提案し、全国や海外からの誘客を促進します。
また、デジタルトランスフォーメーションの推進として、MaaSの社会実装支援を進め、県内の公共交通を新しく、持続可能なものに転換して参ります。これにより、自家用車から公共交通への転換を促すとともに、教育や住民サービスなど様々な分野との連携による利便性の向上、地域課題の解決を図ります。
4月には、「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が開催されます。世界各国や先端企業との関係を深め、日本最先端のデジタル県に向けた取組を加速します。
さらに、民間企業等が行う脱炭素社会の実現に貢献する取組や新たなビジネスモデル創出への支援など、グリーンイノベーションの推進にも引き続き取り組みます。
群馬モデルを追求する様々な取組も進めます。
まず、肥料価格高騰という逆境を群馬県の強みを生かすチャンスと捉え、化学肥料に過度に頼らない農業を推進し、有機農業の飛躍的拡大を目指した取組を推進します。
また、引き続き、ぐんまちゃんのブランド力強化に取り組み、群馬県の認知度向上と県民プライドの醸成を図っていきます。
次に、新たな富や価値を生み出す、「人への投資」にも取り組みます。
近未来構想において、群馬県はクリエイティブの発信源を目指しています。まず、デジタルクリエイティブ人材育成拠点「tsukurun」の運営のほか、動画クリエイター等が県内で制作活動を行える滞在型動画撮影施設を整備します。
さらに、知事によるロケ誘致のトップセールスや新たな企画や脚本づくりの場を提供するクリエイターズキャンプを実施し、映像産業の振興を図ります。
また、始動人の育成にも引き続き取り組みます。
群馬県が国内で唯一参加する、OECDの社会情動的スキル調査を県内の全高校で実施するとともに、群馬発の非認知スキルの評価・育成に向けた研究を開始します。
また先般、校名を「県立みらい共創中学校」に決定した夜間中学について、令和6年4月の開校に向けた準備を進めます。
群馬パーセントフォーアートでは、県予算や民間からの寄附等により安定的な財源を確保し、アート教育による始動人育成やアーティストが自立できる環境を整えます。引き続き、アーティストの制作活動を支援するほか、障害者の芸術文化活動を後押しする「障害者芸術文化活動支援センター」を設置します。
また、多文化共生・共創を一層推進していくため、新たに、日本人と外国人県民がお互いの文化を知るための交流の場の提供や、外国ルーツの高校生のキャリア形成支援に取り組みます。
重点施策の最後は、「財政の健全性の確保」です。
県民の安全・安心を守るとともに、ビジョンで描いた20年後の未来を実現するためには、財政の健全性を確保する必要があります。これは、知事就任以来、最も重視してきたテーマの1つです。令和5年度当初予算では、「基金残高の確保」、「県債発行額の抑制」、「県債残高の縮減」の3点について、前年度からさらに改善することができました。
まず財政調整基金の残高については、前年度を上回る219億円を確保しました。かつては、ほぼ全額を取り崩して当初予算を編成していた時期もありましたが、令和5年度当初予算においても、一定規模の残高を確保することができました。
県債については、臨時財政対策債の大幅な減により、発行額を104億円減の486億円としました。県債発行の当初予算額が500億円を下回るのは、平成5年度以来、30年ぶりとなります。
また、県債の発行抑制により、県債残高は令和4年度決算見込と比べて、439億円減少させることができました。県債残高の減少は2年連続となります。
このように、令和5年度当初予算では、県債の発行を大幅に抑制し、県債残高も減少させながら、前年度を上回る基金を確保することができました。しかし、依然として、財政は厳しい状況にあります。引き続き、財政の健全化を進めて参ります。
続いて、特別会計についてですが、母子父子寡婦福祉資金貸付金会計など11件を、企業会計については、流域下水道事業会計など7件を提出しております。
事件議案は、33件を提出しております。
第15号議案は、県庁舎31階のマルシェ&キッチンの整備に伴い、その設置及び管理に関する条例を制定しようとするものです。
第16号議案は、中小企業者等の事業の再生を支援するため、県信用保証協会に対して県が有する回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例を制定しようとするものです。
第80号議案は、アートの力を生かして県民の幸福度の向上を実現するため、県の責務等を規定する条例を制定しようとするものです。
続いて、令和4年度関係について、予算関係で14件を提出しています。
このうち、一般会計補正予算案については、国の補正予算に関連した出産・子育て応援交付金や、こどもの安心・安全対策支援などのほか、不用額の減額などの補正を行うものです。
事件議案としては、企業版ふるさと納税を活用した「群馬県不登校児童生徒等支援基金」の新設や、登録飼養衛生管理者による豚熱ワクチン接種にかかる手数料の設定など、15件を提出しております。
以上、重点的な施策について申し上げました。
現在、新型コロナ、豚熱、鳥インフルエンザなど、県民の命と健康、暮らしを脅かす様々な危機が取り巻いています。そうした危機の中から、新たな取組を進めていくチャンスを見出していくことが大変重要であると考えます。
この逆境に立ち向かい、新たな群馬を実現していくための歩みを止めない、これこそが、山本県政の最大の目標である「県民幸福度の向上」に繋がるものと信じ、全力を尽くして参ります。
そのためには、引き続き、県議会をはじめ県民皆様方の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
県議会の開会に当たり、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べるとともに、議案の大要について御説明申し上げました。
何とぞ、慎重御審議の上、御議決くださいますようお願い申し上げます。