本文
2月定例県議会の開会に当たり、平成22年度当初予算案をはじめ、提出議案の大要について御説明申し上げますとともに、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べ、県議会と県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと思います。
我が国の経済は、一昨年の世界的な金融危機を契機とする未曾有の不況から最悪期を脱し、持ち直しの動きが見えてきております。しかし、未だ失業率は高水準にあり、景気の回復も自律性に乏しく、力強さに欠けており、依然として厳しい状況にあります。
県内においても、一部の地域、業種では回復の傾向が出てきているものの、中小企業においては、なお厳しい状況が続いております。
また、企業収益の減少により、平成22年度の県税収入は法人関係税を中心に大幅な減少が見込まれ、平成21年度当初予算に比べて約400億円の減収となるなど、厳しい財政状況の中での新年度予算編成となったところであります。
国では、民主党を中心とした鳩山内閣で初めての新年度予算編成が行われました。大変厳しい地方財政を考慮して、地方交付税が1.1兆円の増額となったことは、一定の評価をするところでありますが、地方財政対策の大きな部分が臨時財政対策債をもって講じられたことは、今後の地方財政にとっての懸念材料であります。
また、「地域主権」の理念を掲げ、「国と地方の協議の場」の制度化を目指すなど、地方を重視する姿勢については大いに評価するものですが、子ども手当への地方負担の導入が地方に何ら説明のないまま決定されたことは遺憾であり、今後、真の地域主権の実現に向けた取り組みを強く期待するものであります。
さらに、国の公共事業費が大幅に削減されたことについては、景気や雇用、社会資本整備など、国民の生活にも大きな影響を及ぼすものと懸念されたところであります。
このような国の大きな政策変更に対応する中で、県民生活等への影響を十分に勘案しながら、慎重に検討を行い、新年度当初予算の編成を行ったところであります。
予算の編成に当たっては、「人を大切にする予算」を念頭に置いて、引き続きマニフェストの3つの柱である、「県政改革の一層の推進」、「県民生活の安心・安全の確保」、「県内経済の活力向上」を中心に取り組みました。特に厳しい経済状況を踏まえて、「景気・雇用対策」に全力で取り組むとともに、医療・福祉・教育など、県民の暮らしを支える取り組みについても積極的に対応することといたしました。また、全国育樹祭やデスティネーションキャンペーンの実施を控えて、ぐんまのイメージアップに向けた取り組みについても強力に進めることといたしました。
以上の考え方に基づき、平成22年度当初予算の編成を行った結果、予算の総額は、6,581億3,100万円となり、平成21年度に比べ、地方財政計画を上回る、99.6%の予算額となったところであります。
それでは、予算の3つの柱に沿って、重点施策を申し上げます。
はじめに、「県政改革の一層の推進」であります。長年の懸案でありました林業公社と元総社用地について、問題の解決に向けた取り組みを進めて参ります。
まず、林業公社については、国の拡大造林施策の推進母体として昭和41年に設立され、借入金を活用した分収林事業を行って参りましたが、その後の木材価格の下落によって、伐採を行ったとしても借入金の返済は困難な状況となっております。そのため、抜本的な対策を講じることが必要と判断し、新たに創設された「第三セクター等改革推進債」の活用も視野に入れつつ、森林資産の圧縮と借入金の早期償還に向けた取り組みを開始することといたしました。
次に、元総社用地については、住宅供給公社が取得して以来、15年以上にわたり遊休地化しております。地域の発展の妨げとなっているとともに、公社における借入金の利子や税負担などの管理費用も年々膨らんできました。この際、問題をこれ以上先送りせずに解決すべきものと判断し、県営住宅の建て替えなどによる有効活用を進めることといたしました。
このほかの行財政改革の取り組みとしては、すべての事業について事業評価を徹底し、予算に反映させるとともに、公共施設のあり方検討委員会の答申を踏まえて施設運営の改善を進めて参ります。
また、知事、副知事等の給料を引き下げるほか、厳しい財政状況に鑑み、管理職全員の給料を減額することといたしました。
歳入面では、未利用地の売却や広告料収入などの自主財源の確保に、引き続き全庁をあげて取り組んで参ります。
組織改正では、危機管理監を部長同格に格上げして危機管理体制を強化します。さらに、企画機能の強化を図るほか、新型インフルエンザ対策や鳥獣被害対策など、緊急性の高い行政課題に的確に対応して参ります。また、ぐんまのイメージアップやデスティネーションキャンペーンに積極的に取り組むための組織を新設し、元気で活力ある群馬づくりの推進に向けた執行体制を整備することといたしました。
二つ目の柱は、「県民生活の安心・安全の確保」であります。
医師確保については、修学資金の対象を、新たに県内外の医学部5・6年生及び群馬大学の総合医を目指す研修医に拡大するなど、事業を大幅に拡充します。
また、看護師等修学資金の貸与枠の拡大や、県立病院の看護体制の充実など、看護師確保対策にも取り組んで参ります。
がん対策では、群馬大学と共同で設置を進めてきた重粒子線治療施設が完成し、世界最先端の治療が県内で受けられるようになります。県民が治療を受ける際の経済的負担を軽減するための制度も創設することといたしました。
地域医療体制の整備としては、群大病院を感染症治療の中核病院として位置づけ、第一種感染症指定医療機関の指定に必要な施設整備を行うほか、総合太田病院の新築移転に対して、救急医療や周産期医療などの充実を図るための支援を行います。また、県立小児医療センターにNICUを増床するほか、認知症疾患医療センターを県内7病院に設置するなど、地域医療の一層の充実を図ります。
子ども医療費の無料化については、市町村と協調して、昨年10月から中学生までの完全実施を実現いたしましたが、新年度は通年化した形での予算計上となります。
教育の分野では、スクールカウンセラーの配置を拡充するなど、いじめや不登校などの問題にしっかり対応できる体制を充実させます。また、中学校第1学年に非常勤講師の増配置を行う「わかばプラン」についても拡充を行います。
私立学校に対しては、公立高校の授業料無償化に準じて授業料の負担軽減を図るための就学支援金を助成するほか、低所得世帯に対して入学金の一部減免が行えるよう、県単独で新たに補助を実施いたします。また、経常費補助についても補助単価の増額を行っております。
環境における取り組みとしては、地球温暖化対策のために、新たな実行計画を策定いたします。また、住宅用太陽光発電設備の導入については、4,000件にまで補助対象を拡大し、導入を促進して参ります。
このほか、警察官の16人増員、地上デジタル放送への移行支援など、県民生活の安心・安全を進めるための取り組みを行って参ります。
なお、子ども手当の制度導入に際し、これまでの児童手当に係る県負担が存続、拡大することとなりました。これは平成22年度限りの暫定的な取扱いとされ、新たに負担が増える部分について国からの財源措置が講じられたこと、また、県が予算計上しないと手当を交付する市町村の財政運営に支障を生じることから、本県においても所要額を計上することといたしました。平成23年度については、国が全額を負担して、実施されるべきものと考えております。
第三の柱は、「県内経済の活力向上」であります。
まず、ぐんまのイメージアップを図るための取り組みについてであります。
来年7月からのデスティネーションキャンペーンに向けて、市町村や関係団体と連携して受入体制の整備を行うとともに、観光資源の掘り起こしを進めます。本年9月に開催される全国宣伝販売促進会議では、全国の旅行会社やマスコミに対して群馬の魅力をアピールするとともに、JR東日本と連携してプレキャンペーンの広報宣伝を実施します。
10月3日には、県立森林公園「21世紀の森」において、第34回全国育樹祭を開催いたします。これを機に森林県ぐんま」を全国にPRしていきたいと考えております。
赤城山の振興については、有識者による懇談会を開催して検討を進めるとともに、赤城公園内の整備も行って参ります。
地域経済の活性化に向けては、経営サポート資金の融資枠を700億円確保して、中小企業の資金面を引き続きしっかりと支援します。また、企業の経営改善を進める「群馬ものづくり改善インストラクタースクール」を全国初の取り組みとして実施いたします。
雇用をめぐる環境が依然として厳しい状況にあることから、雇用対策に重点的に取り組み、2つの基金事業を合わせて80億円余りを活用して、約5,000人の雇用を創出します。この中で、厳しい内定状況となっている高校新卒者について、未就職者を県の臨時職員として雇用する取り組みも実施いたします。
農業の振興については、まず、県産農畜産物のブランド力を強化するため、農業団体等と連携して協議会を設置し、生産から販売までの対策を総合的に推進します。また、野菜の生産振興に引き続き取り組むほか、省エネ型設備への更新支援など、環境に配慮した取り組みを進めるとともに、新規参入希望者を農家が受け入れて研修を行う「就農留学」の制度を拡充します。遺伝子組換えカイコや堆肥処理施設の脱臭装置など、新たな技術を活用した農業振興策についても進めて参ります。
林業の振興としては、新たに設置される北部県産材センターに対して支援を行うほか、「ぐんまの木で家づくり支援事業」を拡充して、県産材の利用拡大を進めます。森林吸収源対策としての間伐などの森林整備も計画的に進めて参ります。
有害鳥獣による農林業被害については、近年、被害が拡大、深刻化していることから、抜本的な対策を講じることといたしました。まず、「鳥獣被害対策支援センター」を設置し、日本獣医生命科学大学の協力を得て、人材育成、調査研究、地域ぐるみの被害対策支援の拠点といたします。また、捕獲用のわなの購入費や捕獲した場合の奨励金など、農家や市町村への補助も大幅に拡充し、地域における住民、市町村との連携体制を作って、しっかりとした対策を講じて参ります。
公共事業については、国の予算の大幅な削減を受けて、14.3%減の812億円となりました。国の予算組み替えにより、補助公共事業の一部が交付金事業となったこともあり、補助公共事業がマイナス46.3%の大幅な減額となる一方、単独公共事業は36.9%の増額となりました。交付金事業を除いた単独公共事業は、対前年度比
2.9%の増額としたところであります。
また、平成21年度2月補正予算に道路整備費70億円を追加計上して予算額を確保し、均衡ある県土発展のために必要な事業の進捗を図って参ります。
主な取り組みとしては、7つの交通軸に関連する道路整備を推進するとともに、汚水処理人口普及率を向上させるために、浄化槽の補助単価を大幅に改善して、市町村の取り組みを支援して参ります。
八ッ場ダムについては、特定多目的ダム法に基づく「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」に基づいて事業が進められるよう、ダム関連負担金やダム関連事業について、群馬県としての必要額を計上したところであります。現地生活再建に向けた基盤整備や住民の生活安定のために、しっかりと取り組んで参ります。
平成22年度の予算関係では、このほか、特別会計予算案12件、企業関係予算案6件を提出しております。
事件議案は、27件を提出しております。このうち第29号議案は、公共施設のあり方検討委員会の答申を踏まえ、「少年自然の家」及び「青年の家」の名称を「青少年自然の家」に統一し、使用料の見直しを行おうとするものです。また、第46号議案は、看護体制の充実等を図るため、県立病院の職員定数を改正しようとするものであります。
続いて、平成21年度関係についてでありますが、予算関係では14件を提出しております。このうち、一般会計補正予算案については、国の補正予算に伴う基金の積立を行うほか、「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」を活用した経済対策や公共事業の追加計上など、必要な補正措置を講ずるものであります。
事件議案については、中之条町と六合村の合併など、18件を提出しております。
以上、重点的な施策について、御説明申し上げました。
平成19年7月に知事就任以来、群馬をはばたかせるために、全力で取り組んできたところであります。子ども医療費無料化、ドクターヘリ導入、企業誘致など、マニフェストを着実に実施するとともに、尾瀬学校の開始やぐんま認定介護福祉士制度の創設などにも取り組み、成果を上げることができたと考えております。
平成23年には、北関東自動車道が開通し、群馬デスティネーションキャンペーンも実施されます。過去からの懸案事項に解決の道筋をつけ、しっかり基礎を固めて、群馬をさらに大きくはばたかせていきたいと考えております。
県議会及び県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
県議会の開会に当たり、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べるとともに、議案の大要について御説明申し上げました。
何とぞ、慎重御審議の上、御議決くださいますようお願い申し上げます。