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去る2月14日から15日に県内は歴史的豪雪となり、大きな被害が発生しました。
今回の豪雪により亡くなられた方々に心からお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に対しましてもお見舞い申し上げます。
県としましては、安中市において、国道18号碓氷バイパスの通行止めにより車の中に多くの人達が閉じ込められるという状況が発生していることから、災害救助法を適用しました。
また、県内の至る所で発生している道路の通行止め、渋滞の解消に向けて、除雪を行うとともに、停電の復旧に向けて全力を挙げ、1日も早く県民の皆様が通常の生活に戻れるようしっかりと取り組んで参ります。
さて、平成26年第1回定例県議会の開会に当たり、提案説明に先立ち一言申し上げます。
一昨年末まで、長引く不況に東日本大震災の影響が加わり、将来への不安や前に進まない政治に対する不満から、国民全体に停滞感、閉塞感が漂っておりました。
その後、新政権が誕生し、経済政策を次々と実行に移す中、原材料価格や燃料費の高騰などで苦しい経営を強いられている分野はあるものの、輸出産業を中心に企業収益は改善を続けております。
今後は、景気回復が広く行き渡り、企業収益の改善が雇用拡大や所得の上昇につながることにより消費が拡大し、さらなる景気回復へと続く、「好循環」が生まれることが期待されます。
現在、国会では、民間主導の好循環の実現に向けた「成長戦略」について議論が進められておりますが、消費税率引き上げに伴う景気の減速が懸念される中、景気回復の勢いが将来にわたって持続されるよう、政策を前進させていただきたいと思います。
県としても、国と連携しながら、多くの県民が一日も早く景気回復を実感できるよう、全力で取り組んで参ります。
さて、昨年から今年にかけて、スポーツ分野における本県勢の活躍には目を見張るものがありました。野球では前橋育英高校と上武大学が、駅伝では富士見中学校が全国の頂点に立ち、さらに今年1月に行われた都道府県対抗駅伝において、女子が2位、男子が3位と、過去最高の順位を記録するなど、群馬の将来を担う若い力が輝き、県民に勇気と希望を与えてくれました。
平成26年度も、この勢いに乗り、群馬県がさらに大きくはばたけるよう、施策を推進して参ります。
特に、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録については、これまで、文化庁や関係市町とも連携しながら、その実現に向け、全力を挙げて取り組んできました。
今年6月には、カタールのドーハで開催されるユネスコ世界遺産委員会で登録審議が行われる予定であり、登録決定の瞬間まで気を緩めないよう、対応に万全を期して参ります。
富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴の4資産は有機的に連携して絹の大量生産への途を開きました。これにより、それまで特権階級のものであった絹製品の大衆化が図られ、人々の生活を豊かにしたことは世界遺産としてふさわしいと考えております。
登録が実現すれば、日本国内のみならず、広く世界の方々に対して群馬をアピールする絶好のチャンスとなります。引き続き、各資産の適切な保存管理に努めるとともに、本県を訪れる多くの方々に、温泉や雄大な自然などと合わせ、群馬の魅力を十分に味わっていただけるよう、観光振興の核として活用して参ります。
それでは、平成26年度当初予算案をはじめ、提出議案の大要について御説明申し上げますとともに、併せて、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べます。
平成26年度当初予算の編成に当たっては、第14次総合計画『はばたけ群馬プラン』に掲げる3つの基本目標、「地域を支え、経済、社会活動を支える人づくり」、「誰もが安全で安心できる暮らしづくり」、「恵まれた立地条件を活かした産業活力の向上、社会基盤づくり」の実現に向け、15の重点プロジェクトを着実に推進することを基本方針といたしました。
リーマンショック、東日本大震災の影響により厳しい状況が続いていた本県経済ですが、自動車関連産業を中心に生産が増加しているほか、個人消費は底堅く推移し、雇用環境も改善が続くなど、景気は緩やかに回復しております。
一方で、円安による輸入資材の高騰などにより、依然として厳しい経営状況にある中小企業等があることも事実であります。
このような状況を踏まえ、景気回復の動きを県内隅々まで行き渡らせ、群馬県が将来にわたって持続的に成長、発展していけるよう、『景気回復、成長予算』といたしました。
平成26年度の一般会計当初予算の総額は、6,815億8,700万円であります。
平成25年度当初予算に比べて2.3%の増で、地方財政計画の伸び率であるプラス1.8%を上回る積極型の予算といたしました。
制度融資を特別会計に移管した平成20年度以降では、最大の予算規模となっております。
次に当初予算の主な財源についてであります。
まず、平成25年度の県税収入については、好調な企業業績を反映し、当初予算額の1,965億円を上回る、1,995億円程度を確保できる見通しです。
今後もこの流れが続くと期待されることから、平成26年度の県税収入は、25年度当初予算に比べ161億円多い2,126億円を見込むこととしました。県税収入が2,000億円を超えるのは、平成21年度以来、5年ぶりのことであります。
一方、地方交付税及び臨時財政対策債が、国の地方財政対策によって減額となることが見込まれる中、期限が延長された経済危機対策関連基金や財政調整基金、減債基金については、可能な限り活用することといたしました。
なお、昨年度のように大規模な国の補正予算の活用が見込めない中で、公共事業費の急激な落ち込みを防ぎ、回復基調にある県内景気をしっかりと下支えする必要があるため、臨時財政対策債を除く県債を増額することにより財源を確保したところであります。
その一方で、臨時財政対策債を除く県債の残高は減らしているほか、プライマリーバランスについても、14年連続で黒字を維持するなど、財政の健全性を確保した上で、景気回復を着実に進めるため、積極型の予算を編成したものであります。
それでは、総合計画の3つの基本目標に沿って、重点施策について申し上げます。
基本目標の一点目は、「地域を支え、経済、社会活動を支える人づくり」であります。
次代を担う人材づくりでは、まず、深刻ないじめ、不登校等の解消を図るため、引き続き、県内全ての公立小、中学校及び県立高校にスクールカウンセラーを配置するとともに、新たに、スクールソーシャルワーカーを教育事務所に配置し、福祉的な視点から支援を行うことにより、相談体制の充実を図ります。
特別支援学校の整備では、昨年4月に、みやま養護学校富岡分校が開校したのに続き、今年4月には、みやま養護学校藤岡分校が開校します。さらに、吾妻地域において、平成27年4月の開校を目指し、榛名養護学校吾妻分校(仮称)の整備を進めて参ります。これにより、特別支援学校の未設置地域は解消されることとなります。
県民参加による文化芸術の振興を図るため、平成26年度から29年度までの4箇年で、群馬交響楽団によるオペラ「蝶々夫人」の上演や子ども歌舞伎の公演などを実施します。
平成27年1月から2月にかけて本県で開催される第70回冬季国体において本県選手が優秀な成績を収められるよう、選手強化に対する支援を行います。
また、冬季国体の開催を契機として、県全体にスポーツ振興の機運を盛り上げるため、生活文化スポーツ部内に「スポーツプロジェクト推進室」を新設し、フルマラソン大会の実施に向けた準備を進めるほか、東京オリンピック、パラリンピックのキャンプ地誘致に向けて積極的に取り組んで参ります。
高齢者が活躍できる社会をつくるため、シニア就業支援センターにおいて、再就職などの相談に対応するほか、高齢者が協賛店で商品の割引などを受けられる優待制度を引き続き実施します。
群馬の飛躍を支える産業人材の育成では、特に、担い手不足や高齢化などの厳しい状況を抱えている農業分野において、群馬県農業公社を「農地中間管理機構」として位置づけ、経営感覚に優れた地域の中核的な担い手に対する農地集積、集約化を進めて参ります。
地域の安心を支える医療、福祉人材の育成、確保を図るため、医師、看護師の確保対策や介護人材確保対策などにも引き続き取り組みます。
基本目標の二点目は、「誰もが安全で安心できる暮らしづくり」であります。
「医療先進県ぐんま」を推進するため、がん対策を推進するとともに、救急医療に関する情報システムの充実により、搬送時間の更なる短縮を目指します。また、最先端の心臓手術が行える「ハイブリッド手術室」を心臓血管センターに整備するなど、県立病院における医療提供体制の充実を図って参ります。
誰もが安心して生活できる福祉の充実では、生活困窮者自立支援法の本格施行に向けたモデル事業として、生活困窮者に対する相談支援を実施するほか、県立障害者リハビリテーションセンターの再編整備を計画的に進めます。
また、第5期高齢者保健福祉計画に基づき、特別養護老人ホームを360床整備します。これにより、平成26年度末には、地域密着型特別養護老人ホームと合わせ、目標である1万床の整備が完了することとなります。
安全な暮らしを実現するため、女性が安心して暮らし、働ける環境整備の一環として、DV被害者を保護する民間施設への支援を拡充するとともに、医療機関や警察、NPOなどと連携し、性犯罪被害者に対するワンストップ支援拠点の設置に向けて準備を進めます。
また、渋川警察署の移転整備を進めるほか、幹線道路の整備に対応した信号機の新設や老朽化した信号柱の更新、通学路の安全対策など、交通安全施設の整備を推進します。
災害に強い県土を築くでは、広域災害や大規模事故発生時における消防活動体制の充実を図るため、市町村等の消防救急無線デジタル化を支援するほか、耐震改修促進法の改正に伴い、大規模な建築物に平成27年末までの耐震診断実施が義務付けられたことを受け、旅館、ホテルに対し、新たに耐震診断費の補助を行います。
誰もが安心して働ける労働、雇用環境づくりでは、女性や若者の雇用の拡大をめざして、ジョブカフェ等において就職支援を行うほか、緊急雇用創出基金を活用し、約千人の雇用を創出します。また、昨年4月に県庁内に設置した「障害者就労サポートセンター」を中心に、庁内関係部局と関係機関との連携を強化して、求人、求職情報の共有化を図るとともに、特別支援学校や就労支援機関の取組をサポートしながら、障害者雇用を促進します。
優れた群馬の環境を守り未来に継承するため、新たに導入する「ぐんま緑の県民税」を活用して、条件不利地等における森林整備や森林ボランティア活動を推進するとともに、市町村が実施する里山、平地林の整備に対する支援等を行います。
また、再生可能エネルギーの導入促進を図るため、一般住宅への太陽光発電設備設置費補助を既築住宅に重点化して継続するほか、災害時の電力確保による防災機能の強化を図るため、公共施設などにおいて太陽光発電設備や蓄電池の導入を進めます。
さらに、尾瀬の鳩待峠における入山者の一極集中を解消するため、大清水、一ノ瀬間において低公害車による営業運行開始に向けた試験運行等を実施します。
地域住民の生活を支える「地域力」の強化では、地域住民、団体等の連携による魅力ある地域づくりを支援するため、活動拠点となる集会施設の整備に対する補助を継続するほか、道路や河川の除草などを実施する団体に奨励金を交付する「花と緑のクリーン作戦」について、事務、事業見直し委員会における議論を踏まえ、制度を一部見直した上で、実施して参ります。
基本目標の三点目は、「恵まれた立地条件を活かした産業活力の向上、社会基盤づくり」であります。
まず、はばたけ群馬の経済戦略では、高崎競馬場跡地に設置を計画しているコンベンション施設について、民間活力を利用した事業手法による施設整備を進めるとともに、国際会議や展示会等の誘致を推進するためのコンベンションビューローの設立に向けて調査検討を行います。
観光振興では、3年連続となる「ググっとぐんま観光キャンペーン」を秋に実施し、市町村と連携しながら、オール群馬の体制で誘客を図ります。特に今回は、世界遺産登録が期待される「富岡製糸場と絹産業遺産群」を活かした取組のほか、北陸新幹線の金沢延伸を視野に入れ、北陸方面からの誘客にも力を入れたキャンペーンを展開します。
国際戦略関係では、農畜産物の販路拡大を推進するため、地域別、品目別に輸出量や輸出ルート等を検討し、実効性のある具体的なアクションプログラムを策定するほか、国際見本市への出展や海外におけるモニター販売など、ターゲットとなる国、地域における輸入規制解除の動向も見据えながら取り組んで参ります。
さらに、有害鳥獣対策では、農林業者や地域の方々に被害の減少を実感してもらうため、対策を統括する部長級の職を設置するなど体制を強化した上で、「捕る」対策に重点化し、明確な目標のもと、スピード感を持って取り組んで参ります。
中小企業支援では、景気回復の動きを県内隅々まで行き渡らせるため、制度融資や、その特例措置延長による金融支援のほか、「群馬がん治療技術地域活性化総合特区」を契機とした医療産業の振興などを通じて、次世代産業の育成を図ります。
ぐんまのイメージアップでは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録に向けた取組のほか、登録後急増が見込まれる観光客に4資産の真価を理解してもらい、気持ちよく訪問していただくため、関係市町が行う資産の保存修理や環境整備に対し支援を行うとともに、周辺道路の整備など受け入れ体制づくりを進めます。
また、古代の東国文化の中心であり、東日本最大の古墳大国である本県の歴史文化遺産の魅力を全国に向けて発信するほか、金井東裏遺跡から出土した甲着装人骨について、歴史的な意義を解明するための調査を継続するとともに、発見の成果を広く知ってもらうため、精密なレプリカを制作します。
はばたけ群馬の社会基盤づくりでは、公共事業費を増額し、「7つの交通軸」を中心とした道路網整備など、本県のさらなる成長につながる社会基盤の整備を重点的、計画的に進めて参ります。
八ッ場ダムについては、政府予算案に計上された本体工事費にあわせて、国直轄事業負担金を計上するとともに、生活再建事業などの取組を着実に進めて参ります。
さらに、立地企業の受け皿となる新たな産業団地の開発、造成に取り組み、本県の立地環境の優位性をより一層高めて参ります。
このほか、特別会計については、母子寡婦福祉資金貸付金会計など11件を、企業会計については電気事業会計など6件を提出しております。
事件議案は、42件を提出しており、このうち、第14号議案は、市町村合併の進展や中核市の誕生など、市町村を取り巻く状況の変化を踏まえ、地域の実情に応じた地域振興事業の推進体制を整備するため、5つの県民局を7つの振興局へと再編しようとするものです。
第17号議案は、消費税率の引き上げに伴い、県有施設の使用料等を改定しようとするものです。
第35号議案は、高等学校の授業料無償制度の見直しに伴い、授業料の納付義務を規定しようとするものです。
第42号議案から第48号議案は、「群馬県行政に係る基本計画の議決等に関する条例」に基づき、各行政分野における基本計画等の策定にあたり、議会の議決を得ようとするものです。
続いて、平成25年度関係についてでありますが、予算関係では14件を提出しております。
このうち、一般会計補正予算案については、国の補正予算に伴う、経済危機対策関連基金の積み増しや公共事業費の増額など、所要の補正を行うものであります。
事件議案としては、経済危機対策関連基金の事業期間の延長や、回収の見込めない債権の放棄など、24件を提出しております。
私は、知事就任以来、「群馬をさらに大きくはばたかせたい」との思いから、幹線道路網の整備や企業誘致、特別支援学校の整備など、様々な施策に取り組んで参りました。
企業立地件数は全国的にも上位に位置しているほか、今年9月には東毛広域幹線道路が全線開通し、平成27年4月には特別支援学校の未設置地域が解消されるなど、これまでの取組が確実に実を結びつつあります。
永年の懸案であった八ッ場ダムについても、平成26年度政府予算案にダム本体工事費が盛り込まれるとともに、本年1月には本体工事の入札手続きが開始されました。県としても、現地の生活再建に向けた基幹施設、産業基盤等の整備や、地域活性化のための生活再建事業を着実に推進して参ります。
今年は「午年」、群馬の年であります。「景気回復、成長予算」を効果的に執行することにより、群馬を躍進させ、県民に夢と希望を持っていただけるよう、先頭に立って全力を尽くして参る所存であります。
県議会、県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
以上、県議会の開会に当たり、県政推進に当たっての所信の一端を申し述べるとともに、提出議案の大要について御説明申し上げました。
何とぞ、慎重御審議の上、御議決くださいますようお願い申し上げます。