本文
* 東京国立博物館所蔵、Image:TNM Image Archives ** 国(文化庁)保管
埴輪の見方・楽しみ方について、県埋蔵文化財調査事業団の新倉専門官・普及課長に伺いました。
新倉明彦さん
「当事業団では、道路建設などに伴う発掘調査によって発見された文化財の発掘・復元・保存や県民への情報発信などをしています。
本県から出土した埴輪は、むらなく堅く焼けていて、高い技術で作られていたことを実感します。また焼く技術だけでなく、土選びや造形など埴輪作りに関わる全ての技術が優れていたからこそ、群馬の埴輪は質が高く優れているのだと思います」
「埴輪を見るときは、作った人が何を表現し、伝えたかったのかを読み取ろうとすると、もっと楽しむことができると思います。
例えば、簡略化された脚と比べて、上半身の服装や装飾品などが細かく表現されていれば、その部分を強調したかったのかもしれません。
埴輪の近くに寄っていろいろな角度からよく見ることで、新しい発見があると思います。『群馬HANI-1グランプリ』などをきっかけに気になる埴輪が見つかった人には、ぜひ実物を見てさらに興味を膨らませてほしいです」
当時の姿を復元した保渡田八幡塚古墳(高崎市)における埴輪の配置やその意味について、かみつけの里博物館の横山学芸員に伺いました。
横山千晶さん
保渡田八幡塚古墳における埴輪の配置
「保渡田八幡塚古墳は、5世紀後半に造られた、墳丘長約96メートルの前方後円墳です。史跡整備により築造当時の姿に復元しました。
墳丘の外周には、円筒埴輪と上部がラッパのように広がっている朝顔形埴輪が幾重にも並べられています。これは、古墳の中に悪い物が入らないようにする結界のようなものと考えられています。
外堤には、盾を持った人の埴輪が並んでいます。最も外側で古墳を守る役割を担っていたのでしょう」
「この古墳の最大の特徴は、墳丘の南側の内堤から54体の人物・動物埴輪が出土したことです。6世紀の榛名山噴火に伴う泥流により、埴輪の下半分が配置や向きが分かる状態で残った、全国的にも珍しい例です。
再現した54体の配置の意味にはいくつかの解釈がありますが、王が行った儀式を構成する複数の場面を表しているという学説に基づくと、座って行う儀式やイノシシ狩り、財物の誇示など七つの場面が見て取れます。
考古学の研究は、発見された遺跡や出土品を基に仮説を立てて行われますが、仮説は一つとは限りません。本当かなと思ったら、自分なりの説を考えてみてください。たくさんの人に当館を訪れてもらい、考古学の『考える楽しさ』を感じてもらいたいです」