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鳥獣害対策特別委員会(平成25年10月3日)
1.開催日時
平成25年10月3日(木曜日)9時59分~15時25分
2.開催場所
403委員会室
3.出席委員
委員長:関根圀男、副委員長:織田沢俊幸
委員:黒沢孝行、委員:須藤昭男、委員:狩野浩志、委員:福重隆浩、委員:岩上憲司、委員:あべともよ、委員:臂泰雄、委員:清水真人
4.欠席委員
委員:大林俊一
5.主な質疑
参考人質疑
(1)農業における鳥獣被害の現状について
須藤(昭)委員
地域の実態はどのようか。
松井参考人
沼田市池田地区ではクマの被害が一番大きく、果樹への被害は、40年前は少なかったが、ここ10年は恒常化している。また、他の加害獣も種類、被害地域が拡大している。
被害対策としては、集落ぐるみでの電気柵の設置、緩衝帯の整備のほか、地域をあげてサル追いやクマ追いにも取り組んだ結果、農業被害は軽減しており、鳥獣被害対策支援センターを中心とした指導のもと、被害対策を行った場所では効果が出ている。
須藤(昭)委員
人的被害についてはどのようか。
松井参考人
電気柵の設置により、クマやイノシシの通り道が変わったようであり、日常生活での人身被害の発生が懸念され、もし通学中に被害が出れば取り返しがつかないことになる。
また、ここ数年、ヤマビルが市街地に広がってきており、作業で山に入った人が被害に遭っており、観光農業への風評被害が広がることを一番心配している。ヤマビルはカモシカやイノシシが連れてくると聞いており、元を断たない限りヤマビル被害のような二次的被害も広がる。
須藤(昭)委員
県行政に対する要望があれば伺う。
松井参考人
クマやイノシシを何頭捕れば被害が減るのか、何頭残せば絶滅しないのか、わからず、終わりが見えず、被害をなくすために、県で計画的な捕獲に取り組んでもらいたい。市町村だけに任せず、県が監督責任を果たしてもらいたい。
(2)林業における鳥獣害被害の現状について
須藤(昭)委員
被害の現状と県行政への要望についてはどうか。
坂本参考人
みどり市東町や桐生市梅田でも山の上の方ではほとんどがクマの剥皮被害を受け、さらに拡大している。クマは1頭が1日400本の皮を剥く個体もいるといわれており、東毛地区に棲息するクマの6割が皮を剥く癖があるとの調査結果があると聞いている。当該地域を、県が重点地区として捕獲してほしい。
(3)漁業における被害の現状について
須藤(昭)委員
被害の現状と取組について伺う。
吉澤参考人
カワウの県内への飛来は平成2年頃から増加し、近年では数百羽の大群で河川湖沼に飛来し、繁殖地も県内数カ所で確認されている。平成24年度のカワウの年間被害額は、試算によると1億2,560万円余り、被害量は134トンと推定され、アユは1日に1羽で1,750円分食べられている試算になる。
被害対策の取組として、県内主要漁場29箇所で年3回カワウの飛来数を記録するほか、カワウ捕獲推進事業により、本年度は150羽捕獲予定であるが、銃器による捕獲場所が限られているため、一部しか捕獲できない。カワウ追い払いは、全国内水面漁連の補助事業により、ロケット花火、テグス張り、竹伏せ等を実施しているが、早朝からの作業による近隣住民からの苦情や、カワウが慣れて効果が長続きしない等の問題がある。
須藤(昭)委員
県行政に対する要望があれば伺う。
吉澤参考人
保護管理計画のもと適切にコントロールする必要があると考えているが、県内の魚の資源量から考えるとカワウの数が多すぎるので、適正数を把握して被害対策を確立してもらいたい。また、漁場においては有害鳥獣捕獲のほかに、機動的な捕獲集団を編成し、現場の要望に直ちに対応できる体制をつくってもらいたい。
(4)狩猟者の現状について
須藤(昭)委員
狩猟者の現状や、会員獲得に向けてどのような取組をしているか。
石関参考人
24年の会員数は2,038人で、毎年、およそ100人ずつ減少しているが、新規加入が50から80人いる。全国でもかつて40万人いた会員も現在は10万人を割り込んでおり、県猟友会では、狩猟免許取得予備講習会でパンフレットを配布しているほか、大日本猟友会では、関係省庁へ法改正等の要望書を提出している。銃所持の規制を緩和してもらえれば、会員は増えると思う。
(5)ライフル射撃場について
須藤(昭)委員
ライフル射撃場の設置について、どのように考えているか。
石関参考人
クレー射撃場に50メートルのドーム型ライフル射撃場の設置を考えており、県猟友会の積立金で費用の2分の1から3分の1を負担できると思う。昨年3件の死亡事故はライフルスラッグの事故であるが、安中の射場は散弾銃なので、現状では教育ができず、大口径のライフルやスラッグの射場ができれば、対応できる。
(6)外来生物の対策について
黒沢委員
外来生物は根絶していかなければならないが、どのように取り組めばよいか。
羽澄参考人
外来生物は完全排除が基本であり、早期発見、早期捕獲が重要であり、県と市町村の体制を速やかに構築すべきである。
黒沢委員
現場だけでは対応ができないが、どうすればよいか。
羽澄参考人
分布状況は、県が把握しているはずであり、地域で目視・轢死体発見・足跡・痕跡などを確認できれば捕獲可能であり、地域住民にパンフレット等で周知、啓蒙し情報集約に努めて対策することが重要である。
(7)市町村の現場で感じる思いや県への要請について
黒沢委員
市町村の現場で感じる思いや県への要請について伺う。
岩井参考人
現在の補助事業は、被害現場での迅速な被害対策に取り組むことが難しく、電気柵設置が間に合わないという意見も聞く。鳥獣害対策は兆候が出始めた時に実施することが重要であり、基金的な事業や精算で行える事業も必要ではないかと考える。
あべ委員
取組前後で、どの程度被害軽減に成果が見られたのか。成果に繋がった取組のポイントは何か。
岩井参考人
集落でどのような対策を実施するかを話し合うことで取組が進み、被害の低減に繋がったと考える。行政が防護柵を推進しても、集落にやる気がなければ無用の長物になってしまうので、行政は、集落が何を必要としているかをくみ取りながら、迅速な対応をしていくことが必要と考える。
(8)鳥獣害対策の考え方について
岩上委員
個体数調整の考え方と県行政としてどのように取り組むべきか指導願いたい。
羽澄参考人
かつては農林漁業に狩猟者が付随し、鳥獣を押さえ込んでいたが、過疎化の進行と狩猟者の減少により現在の人数では捕獲しきれない。鳥獣問題は、実は地域再生・地域振興の話であり、100年後の姿を描くことが重要であり、人が撤退するところ、農林業を守るところ、人が住むところのゾーニングをすべきである。将来的に人が撤退するところは、社会福祉の問題であり、他方、農林業地はしっかり対策をすべきで、予算も単年度ではなく、未来永劫続けなければならず、それが無理なら撤退しかない。対策技術は確立しているので、地域の条件に合わせてコーディネーターがやってくれれば、獣害対策はできる。
あべ委員
県として地域振興の話とのことだが、目標、進捗管理、手順はどうすればよいのか。
羽澄参考人
捕獲目標と被害の軽減とは直接関係なく、何頭捕獲しても被害問題は解決しない。農林業者や住民が納得するために、農林業を活性化するビジョンが示されれば、フラストレーションが減る。そこに獣害対策をオプションとして組み込む。適正管理計画だけで何かができるものではない。
(9)適正管理計画について
福重委員
現行の第11次県計画を最終年(平成29年)まで進めた場合、手遅れになるのか、被害が減少すると思われるか。
羽澄参考人
予算に限りがある中で、生息数を把握すべきはシカだけであり、シカは森林を荒廃させ、土壌流出させてしまうなど国土保全上問題でもある。シカは、外来生物ではなく絶滅させてはいけないが、一度メスを集中的に捕獲し、その後は適度に捕獲すればいい。その他の動物については出没する農地で捕獲する。
福重委員
11次計画をそのまま進めてよいか。変更する必要はあるか。
羽澄参考人
特定計画は、計画立案、遂行、モニタリング、効果測定を制度化したもの。適正管理計画と農水省の特措法を一体的に運用していくことが大切である。
【付議事件に関する質疑】
(10)こどもの国における対策について
黒沢委員
5月議会での一般質問後、具体的な対策はどのようにやっているのか。
浅田都市計画課次長
関係機関と連携し、費用や耐用年数を考慮し、効果的な対策を実施していきたい。昼間も目撃されており、時間をおかずに有識者、専門家の意見を聞いて対策を検討したい。
田中鳥獣対策専門官
現地を確認したところ、刈り払いについては十分な対応がとられているが、刈り払った草等を集積したところで、ミミズが発生しイノシシが誘引されており、早急に片付けるべきである。防護柵の設置については、地元太田市と連携してイノシシの捕獲も含めて、全体的な対策を検討したい。
(11)鳥獣害対策について
須藤(昭)委員
シカによる被害額が大幅に増加しているが、地域はどこか。
金井田森づくり主監
前橋市は、松くい虫被害跡地の植林地が多く、被害が増加しており、桐生市では梅田地区などが増加した。
須藤(昭)委員
クマ捕獲用檻の設置に係る補助はどうか。
田中鳥獣対策専門官
市町村に対し、県単の有害鳥獣対策事業費補助金では費用の4分の1、または鳥獣被害防止総合対策交付金では費用の2分の1が補助対象となる。なお、市町村負担部分の8割は特別交付税で措置される。
須藤(昭)委員
クマ剥皮被害が顕著な地域を被害対策のモデル地区として指定してはどうか。
下田自然環境課長
桐生市及びみどり市の被害地については、両市ともツキノワグマ地域計画を策定し、既にモデル地区のようになっているが、県が被害対策に取り組む姿勢を示すという考えに立ち、モデル地区の指定を検討したい。
岩上委員
被害の増加原因をどのように捉え、総括しているのか。
澁谷技術支援課長
国の交付金などを活用して、農地を囲う恒久柵や電気柵の設置に取り組む農家も増えており、被害軽減に繋がると考えている。中山間地については、面整備による耕地整備と防護柵の設置による環境整備により、新規就農者を受け入れて地域活性化を図るなどの、総合的な取組を進めて、鳥獣被害の軽減にも結びつける必要があると考えている。
松本林政課長
シカ、カモシカ被害防止対策として忌避剤散布などに対して補助しているが、個体数が増えており、被害が増加している。所有者の意欲があがるように補助金を質的に向上させることも必要である。
(12)人身被害への対応について
狩野委員
参考人から、クマの人身被害への対応要望があったが、人身被害は自己責任か。また、補償はどうするのか。
下田自然環境課長
現状、自己責任である。クマの被害については、今年度は沼田で1件あったが、クマが出てこないようにすることは難しいことから、人間側が鈴やラジオなどを携帯し対応するしかなく、そのことを周知していきたい。
(13)シカの適正管理と個体調整について
狩野委員
シカがいなくなったという位までやるべきであり、様々な対策をしても被害が減少しないのは、対策がかみ合っていないからではないか。
下田自然環境課長
猟友会だけではマンパワーが不足しているが、実施隊であれば、市町村主導で取り組める。有害捕獲は、ワナが9割であり、農家や実施隊の人達が捕獲できる。赤城では専門家に捕獲してもらっており、その技術・ノウハウを農家や実施隊に伝達し、5年後、10年後には猟友会に代わる人達に捕獲してもらう体制の整備を考えていく必要がある。
狩野委員
ワナで捕獲しても止めさしが必要であり、そのためにライフル射撃場が必要との参考人意見があったが、事故とライフル銃の関係はどうか。
下田自然環境課長
純粋なライフルの事故は2件で、黒保根の事故は正確には散弾銃であった。民間の施設も含めて検討していきたい。
(14)有害鳥獣の捕獲について
福重委員
国の中央環境審議会自然環境部会「鳥獣管理のあり方検討小委員会」の論点に、専門業者の育成があるが、県ではどうか。
下田自然環境課長
受け皿は、東京の自然環境研究センターが唯一であるが、将来的には農協なども含め、民間でやりたいところがあれば育てていきたい。
福重委員
自衛隊OBを採用するなど、自治体に捕獲部隊があれば、効率的と考えるがどうか。
下田自然環境課長
神奈川県では猟友会OBや自然環境研究センターからの派遣職員などを配置しており、本県でも新しい形態での組織を模索する必要があると考えている。
岩上委員
狩猟者の減少により、民間を活用するなど、住民に見える対策をすべきではないか。
下田自然環境課長
今までは対応が後手に回り効果や検証が甘かった。できることから取り組んでいきたい。
あべ委員
現在の捕獲奨励金の額ではインセンティブが働かず、捕獲が仕事になれば若い人や専門業者が参加できるが、委託では捕獲頭数が金額につながらない面もあると思うが、どうか。
下田自然環境課長
捕獲していただく方に対しては、捕獲奨励金の他に県単で人件費や保険料などの経費の4分の1を補助し、市町村の持ち出し分には交付税措置がある。
あべ委員
適正管理計画の捕獲水準を満たした場合、鳥獣被害への影響はどうなるのか。
田中鳥獣対策専門官
捕獲数増加と被害減少との関連性ははっきりしておらず、被害減少に直結しない。捕獲に加えて柵の設置や藪の刈り払いなどの組み合わせが必要である。
臂委員
民間企業、NPO等の協力を得ながら取り組むとあるが、具体的に動き出しているのか。
下田自然環境課長
県として試行的に動き出しており、近々形になると思っている。
清水委員
銃以外の止めさし方法はあるのか。
下田自然環境課長
電気ショックや二酸化炭素を注入するものがある。県でも試行し、うまくいけば普及したいと考えている。
(15)カワウ対策について
狩野委員
カワウ捕獲への対応が遅れている。適正管理計画がないが、どうするのか。
下田自然環境課長
適正管理計画を作成しているのは全国で2県だけである。県境を越えて移動することから難しいと言われているが、今年度中には作成したい。支援センター、技術支援課、長岡技術科学大学助教、漁協などと、現地調査を行っており、対策について検討していきたい。
狩野委員
営巣地がわかっているのであれば、集中的に捕獲できないのか。
下田自然環境課長
専門家の意見では、空気銃でも群れが分裂してしまい、捕獲は厳しい。適正な規模を維持するように対応していくしかない。
田中鳥獣対策専門官
テープ張りや樹木を伐採すれば、そこからいなくなるだけで、どこかに行く。一定の場所に群れを押し込め、大きくしないことが対策としてはよいとのことである。滋賀県のように、相当に銃の技術が優れた者でないと、逃げられてしまう。
(16)クマによる被害への対応状況について
臂委員
クマも慣れると、鈴やラジオでは逃げないと聞いており、人身被害に対応できるような体制が必要と思うがどうか。
下田自然環境課長
被害が出た場合は有害捕獲できることになっており、出没したからすぐに捕獲というのは難しい。また、桐生市・みどり市におけるクマ対策のモデルを、ほかの地域へ転用・普及するなどを検討したい。
(17)外来生物対策について
臂委員
アライグマやハクビシンは積極的に捕獲する必要があると思うが、捕獲の実態はどうか。
下田自然環境課長
被害者が捕獲をしているのが実情である。アライグマは特定外来生物であり基本的には殲滅を目指すべきである。
(18)鳥獣害対策の組織体制等について
狩野委員
予算や人員を一元化する必要性はどうか。
石井環境森林部長
対策本部の形で一元化を図る話もあったが、鳥獣被害対策支援センターを中心に取り組もうと考えている。担当レベルで横の連携を図っており、機能し始めていると思うが、不足しているようであればさらに検討していきたい。
狩野委員
被害が減らないのは、現状の組織が機能していないからではないか。組織を再編強化し、市町村との連携の仕組みを考えてもらいたいがどうか。
石井環境森林部長
市町村との連携については、森林事務所を通じて、特に北毛地域はスムーズにできている。参考人意見を参考にし、さらに調整していきたい。
(19)相談体制について
あべ委員
被害に悩んでいる人からの相談に応じる体制づくりは、どのようになっているか。
須川鳥獣被害対策支援センター所長
現状では、市町村から県の機関に相談があり、その後センターが対応することが多いが、センターが拡充されたことも踏まえ、相談後3日以内に現場に行く方針で積極的に現場に出て、農家や市町村職員とコミュニケーションをとることで、被害対策に結びつけられるような体制づくりに取り組んでいる。
あべ委員
体系的に人材育成することで、相談体制の整備がさらに進むと考えるが、どのように考えているか。
須川鳥獣被害対策支援センター所長
体系的な人材育成プログラムを現在検討しており、来年度から、具体的な取組を進めていきたいと考えている。高度な専門技術者や地域対策の指導者を育成し、各地域に配置できれば、円滑な被害対策に結びつくと考えている。
(20)専門性を持った人材について
臂委員
県の専門機関における鳥獣害の専門職員の状況はどうか。
田中林業試験場長
ツキノワグマの研究を中心に林業技師1名、ニホンジカの研究を中心に獣医師1名の計2名の職員を配置し、研究に取り組んでいる。
澁谷技術支援課長
農業技術センターでは鳥獣害の専門職員はいないが、鳥獣被害対策支援センターで3名のスタッフが、日本獣医生命科学大学と連携して広域被害対策研究などに取り組んでいる。
勅使河原蚕糸園芸課長
水産試験場では、魚類資源調査や外来魚対策などの水産に関わる研究員が10名おり、うち、2名がカワウ対策を担当している。
臂委員
現場や他の部署で専門性を活かした仕事に就くなど、採用を含めてもっと人材を活用してはどうか。
石井環境森林部長
大学や鳥獣害対策支援センター職員、自然史博物館の学芸員と共に現場に同行するなどの連携を図っている。職員人事については、林業職員、獣医師職員などの配置が課題であり、今後、人事において考えていきたい。
須川鳥獣被害対策支援センター所長
鳥獣被害対策支援センターの職員は、管理職を除いて6名おり、農業技師4名、林業技師1名、獣医師1名の構成である。このうち、獣医師の1名が学生時代に野生鳥獣の経験があるが、他の職員は、野生鳥獣対策の経験が少ないため、センター内での人材育成も重要だと考えている。現在、日本獣医生命科学大学との包括連携に基づく共同研究や現地での連携活動を通じて、職員のスキルアップを図っている。