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放射能対策特別委員会(平成24年10月12日)
1.開催日時
平成24年10月12日(金曜日)10時00分~14時42分
2.開催場所
301委員会室
3.出席委員
委員長:田所三千男、副委員長:福重隆浩
委員:中村紀雄、委員:萩原渉、委員:大林俊一、委員:角倉邦良、委員:岸善一郎、委員:井下泰伸、委員:酒井宏明、委員:金子渡、委員:小川晶
4.欠席委員
委員:村岡隆村
5.主な質疑
(1)原子力に関する安全協定について
質問:原発が所在する県との情報提供に関する協定等が必要であると思う。柏崎刈羽原発のある新潟県との協定等を締結すべきと思うがどうか。
答弁:柏崎刈羽原発については、事業者である東京電力と原発に異常があった場合の通報や定期的な会議の開催などについて協議しているところであり、できるだけ早期に覚書を締結したいと思っている。また、東海第二原発の事業者である日本原子力発電(株)とも協議を始めるところである。
(2)除染対策について
質問:ホットスポットはどこにあるか分からない。除染は、汚染状況重点調査地域だけで安全か。
答弁:汚染状況重点調査地域でなくてもホットスポットは形成され得る。各市町村で監視しており、発見されれば対処している状況である。
質問:河川にも森林に落ちた放射性セシウムが流れ出してくることがある。森林のセシウムの除染はどのように行われるのか。
答弁:除染は、生活圏を第一優先で行っており、森林については、生活圏から概ね20メートルまでのところやキャンプ場など人が集まるところを行うこととしている。それ以外の森林の除染については、環境省が中心となって技術的なことも含めて検討が行われていると承知している。なお、河川・湖沼の水質については環境省が定期的にモニタリングを行っており、現段階では森からの放射性セシウムの著しい流出は認められていない。
質問:川場村に行って聞いた話であるが、国の基準で除染をやっても効果がない。芝草を刈ってもセシウムが染みこんでいるので、土壌の対処をしなくてはならないということであった。国が示す補助対象の除染方法はどのようなものか。
答弁:除染の実施項目には、「比較的線量が低い地域」のものと「比較的線量の高い地域」のものがあり、群馬県は「比較的線量が低い地域」である。具体的な項目については、建物の洗浄、側溝の清掃、草木の除去等が基本であるが、子どもが長時間生活する場所、学校関係については、表土の除去、被覆など追加で認められる項目がある。
質問:市町村は、年間1ミリシーベルト以下を除染目標としてきたはずだが、環境省は、あくまでも目標であり、達成できなくても除染終了となっている。自治体は国の基準では効果がないと言っているが、県としては基準、対応をどう考えるか。
答弁:国は長期的に1ミリシーベルトをクリアすればよいと言っている。森林を含めた全域であれば、国の考えは理解できるが、生活圏は1日も早く年間1ミリシーベルトをクリアした方がよい。県も市町村と同じ考え方である。
質問:除染費用については、全額、国または東電に求償すべきと考えるがどうか。
答弁:除染費用については今回の事故がなければ市町村も支出がなかったものであり、原因者に求償するのが基本だと思っている。まずは国の補助制度を活用し、次に東電への求償を考えることになると思う。
(3)放射線の影響に関する県民の健康調査等について
質問:放射性ヨウ素の半減期は8日間だが、チェルノブイリでは5年後にも影響が現れている。放射性ヨウ素への対応について、県はどのように取り組んでいるのか。また、今後どう取り組むのか。
答弁:有識者会議では、放射性物質の降下は確かにあったが、安定ヨウ素剤の服用基準よりははるかに下であり、健康影響はないと考えるとのご意見をいただいた。有識者会議での意見を踏まえながら、先行している福島県の調査結果に注視していきたい。
質問:放射性物質が非常に落ちた箇所を中心に調査する方法もあると思うが、今後の対応として県として何もしなくてよいのか。何らかの行動が必要ではないかと思うがどうか。
答弁:原発事故による健康影響を調べる方法は、専門家の中でも意見が分かれるところと承知している。福島県で先行している調査結果や調査方法が参考にできると考えている。
(4)除染土壌等の処分について
質問:自宅である程度の数値が出れば、個人で除染する人もいると思う。Q&Aでは人の近寄らない庭の隅などに置く、または、市町村に相談とある。業者が山に廃棄物を勝手に捨てる事例があると報道されていた。そのようなことが起こらないよう啓発活動をどう考えるか。
答弁:法律では、除染は、除去土壌の仮置場の確保まで含めて、行政が責任を持って行うこととしている。個人が除染を行う場合でも、除去物の処理については、市町村に相談し、適切に行ってもらうことになる。
質問:汚染状況重点調査地域で指定された12市町村以外の市町村の仮置き場の状況は把握しているか。
答弁:確保の状況は把握していないが、国庫補助の対象にならないというだけで、除染した土壌が出てくれば少量であっても市町村が確保して、安全な形で管理することには変わりはない。
質問:面的な除染を行っている市町村では、具体的な状況はどうなっているのか。
答弁:桐生市は、国有林内、みどり市は市有地に設置予定。高山村は村有地に設置済み。川場村は村有地に子ども空間から発生した土壌を置く予定である。なお、市町村によっては、天地返しや覆土など除去土壌が発生しない方法を選ぶ場合もあるため、全ての市町村が仮置き場を設置するかは、未定である。
(5)指定廃棄物の最終処分候補地について
質問:指定廃棄物は国の責任で処理することになっているが、県としても、国に対して、今の段階からいくつかの条件をしっかりとつけていくことが必要だと思うがどうか。
答弁:指定廃棄物は国の責任で処理するものとなっているが、県としては国の取り組みに協力していきたいと考えている。ただし、地元の理解をいただくこと、不安を払拭することが大事であると考えており、国には地元市町村等への具体的な説明を要求したい。
質問:国に協力していくとは、どういうことか。県として協力するとはいったいどういう協力なのか。地元の合意なしでは受け入れられないという立場という認識でよいか。
答弁:国に協力するとは、国からの要請等に対して知見や情報の提供をすることである。地元の合意は大切であり、地元の理解への取組みをしっかりお願いしていきたい。
質問:地元の合意抜きで、見切り発車はないという認識を県も持っているということでよいか。
答弁:地元の合意はとても大切だと認識している。
質問:指定廃棄物の最終処分場について、栃木県や茨城県の例をみると国有林が指定されるという予想がつく。国から国有林を保有する市町村に対して説明会を開催したことはあるか。
答弁:国からそのような説明会は行われていない。
質問:県では、実際に指定廃棄物がある6市村以外の市町村を対象とした説明会を開催したか。
答弁:県も6市村以外を対象とした説明会は行っていない。
(6)いわゆる「黒い土」(ホットスポット)の対応について
質問:黒い土の拡散について雑誌等で取り上げられた。一部の地域では、7万ベクレルのものがあり、廃棄物の8,000ベクレルと比べても大変高い。冬になり、乾燥して、そういったものが飛散をして子どもたちへの健康被害があるのではないかと心配をしているがどうか。
答弁:雨で集まってホットスポットとして放射能が高くなっていることはあり得る。周囲よりも1時間当たり1マイクロシーベルトを超えている場合は、ホットスポットとして国のガイドラインに基づいて、市町村が除染を行っており、これにより対応できると考えている。
質問:冬に乾燥して飛散したものを子どもたちが吸入してしまうことで、内部被ばくが心配である。空間線量で一元的に線引きするのではなく実態に即して対応すべきだと思うがどうか。
答弁:ホットスポットの対応は空間放射線量が基本である。ただ、不安の払拭も大事であるので、黒い土に限らず、住民の方が不安に思うところについては、きめ細かく調査をして対応していく必要があると思う。
質問:県が市町村に具体的な指針を出してやらないと、市町村としてもなかなか動きづらいというところがあるかもしれない。考え方や指針を県として具体的に出すことが重要だと思うがどうか。
答弁:国が示しているとおり空間放射線量率というもので、量としてどれだけ人体に影響を及ぼすのかという基本的な考え方で対処する。ただし、不安ということは別問題なので、市町村とも良く協議をしていかなければならないと思っている。
(7)しいたけ栽培への影響について
質問:しいたけの生産量が、実際にどの程度落ちたのか又は落ちそうなのかという点については、どのようになっているか。
答弁:平成23年次の原木しいたけ生産量は、ほぼ平成22年次並で国の速報値では全国1位を保っている。しかし、この春の植菌量が昨年の約半分と推計され、また、ほだ木の約4割しか使用できない状況から、平成24年次の生産量は大幅に減少することが予想される。
質問:東京電力の賠償金の支払いが遅れ、生産者は厳しい状況である。JAでは、賠償金額の7から8割を貸し出しているとも聞くが、借り入れた場合の利子について群馬県として支援することも必要ではないかと思うがどうか。
答弁:賠償金については早期の支払いを東京電力に要請するとともに、状況について現在確認しているところである。また、補正事業での支援のほかに、現行の融資制度の活用や貸付け要件の見直し、また利子補給も含めて検討していきたいと考えている。
(8)汚染牧草について
質問:平成23年産牧草の在庫がまだ存在するのか。どの地域に多く残っているのか。
答弁:牧草は、ロール化して乾草として1~2年程度利用することができるので、県内にまだ在庫は存在する。在庫量に関して地域的な偏りはないが、永年生牧草が放射性物質の大きな影響を受けたため、除染が必要となった永年生牧草地について、現在、除染作業を実施している。
質問:畜産農家への啓蒙活動等の対応は、どのように行っているのか。
答弁:牧草の暫定許容値は昨年4月は1キロ当たり300ベクレル、今年の2月以降は100ベクレルと改正されているが、その都度農家への情報提供や、農家所有の牧草検査により、汚染牧草の確定等を徹底して行っている。
(9)万一の有事を想定しての対応について
質問:万が一再度原発に何らかの事故が発生した場合、どのような対応をとるのか。
答弁:原発事故への対応について昨年度地域防災計画を修正し原発事故が発生した際の対応について新たに規定した。発生した際には、情報収集、モニタリング体制の強化、県民への情報の伝達、相談窓口の設置、健康被害への影響と対策の検討、風評被害の影響の軽減を行うことになる。
質問:県民に対してどのような形で伝達するか。
答弁:県の広報媒体や報道を通じて行うことになる。
質問:優先順位があると思うが最初の行動は何か。
答弁:まず、プレス発表を行い、統一的で、正確な情報発信を期したい。
質問:岐阜県では、放射性物質拡散シミュレーションというものを行っている。群馬県も独自で原発事故を想定したシミュレーションを行うべきと思うがどうか。
答弁:見直しがなされた国の防災指針では、緊急防護措置地域の範囲や対応などが示されると思うが、こうしたことも踏まえ、県として何をやっていくべきか、広く検討していきたい。
質問:事故が起こった場合の対応として、医療救急マニュアルを検討しているか。
答弁:被ばく医療については、今回の事故以前では原発設置県において初期治療を行い、二次救急をその周囲の医学部の附属病院等で行い、三次救急については東日本では放射線医学総合研究所で行うこととなっていた。現在のところ、群馬県には原発は設置されていないことからその体制はできていないが、今回の事故以降、福島県から群馬大学等に万が一の場合の収容についての要請があり準備されていたと聞いている。
質問:具体的な医療救急マニュアルを県独自で作成してほしい。踏み込んだマニュアルを県独自で作成するべきと考えるがどうか。
答弁:今後の課題と考えている。
(10)放射線教育の副読本に関する補足資料について
質問:津波によって爆発事故が起こったということは書いてあるが、これでは津波が原因だと子どもたちは思ってしまう。放射能汚染の実態等についても取り上げるべきと考えるがどうか。
答弁:今回配布した資料は、あくまでもコンテンツ集であり、指導する教職員の経験等により、放射能汚染に触れて授業を展開していくものであると考えている。県としては、限られた時間の中で、放射線の基本的な知識と事故があった場合の身の守り方の2点に絞って指導できるような資料を作成した。
質問:チェリノブイリの事故から何を学ぶのかがきわめて重要だと思うが、この事故のことが書いていないのは問題だと思うがどうか。
答弁:チェリノブイリの事故についても否定するものではない。今回の福島の事故、放射線の問題は、日本人にとって歴史的な教訓であると認識している。まず、それをしっかり抑えた上で、チェルノブイリのことについて触れる余裕があれば、触れていくことは間違ったことではないと考える。
質問:自分の身を守るということも大事であるが、事故が起こらないようにするにはどうしたらいいか一緒に考えていくということが大事だと思う。見直しが必要だと思うがどうか。
答弁:この副読本のねらいは、放射線の基礎知識と身の守り方を身に付けることである。中3の放射線を学ぶ授業の中で、原爆や原発事故について指導すべきと考えている。今後の教職員を集めた研修の中で、今回の補足資料を使ってより広い学習ができるよう指導を行っていきたいと考えている。
(11)県民局に設置した放射性物質検査機器の活用状況等について
質問:県民局に設置した放射性物質検査機器の活用状況はどうか。
答弁:機器は市町村の学校給食食材検査のために国の補助金を利用して県内5教育事務所に導入した。1日6回、週4日検査しており、現在14市町村が利用している。その他に18市町村が独自に購入した機器もしくは消費者庁からの貸与機器によって学校給食食材を検査している。
(12)学校給食の放射性物質検査について
質問:県内市町村の中で学校給食の食材を事前に検査をしている市町村はどのくらいか。
答弁:事前(食材)検査は29市町村、事後検査は20市町村で行っている。
質問:沼田市は食材検査ができないため9月議会でとりあげられたが、山間部では事前に検査したくてもできないようなこともある。県として何か支援はできないか。
答弁:検査機器は、精密機械であり容易に移動できないため、直接貸し出すことは難しい。市町村の会議や栄養士の集まり等において、事務所まで来て活用していただきたいとお願いしている。
(13)子どもの健康調査について
質問:子どもに結節やのう胞が見つかる確率は医学的にどの程度か。
答弁:原発の影響があるか否かを正しく判断するためには比較対象が必要であり、国が行うとしている調査の結果を待たないと判断できない。
質問:福島県の健康調査だけを見て群馬県で安全と判断するのは早いと思うが、国の調査を見て、また他の意見が出てくるかもしれないということか。
答弁:のう胞、結節については、放射線の影響であるということは考えにくいので、正しくは国の調査を待たないと判断できない。
質問:自主的に自分の子どもの甲状腺の検査等をした方々の話では、何らかの異常が見つかっている方もいる。不安に思っている方がいることを受けて、健康調査をした方がよいと思うがどうか。
答弁:福島県から長野県に避難して来た130人の子どもを対象に甲状腺機能検査を行ったところ、10人に機能低下が見られたという発表があったが、日本小児内分泌学会では明らかに放射線の影響であるとは言えないという見解を示している。現状では健康調査は必要ないと考えている。
質問:栃木県那須町では、ホールボディカウンタを購入し、尿検査等の検査を行っている。北毛の一部地域など、那須町と同じくらいの線量のところもあったことを踏まえると、そのような対応が必要ではないかと思うがどうか。
答弁:県全体として見た時にどこまで取組むかということになると、全国的な調査の結果を見てということになる。個別に不安を持っている方については、県の関係機関へ御相談いただき、個々に納得していただけるよう対応していきたい。