本文
厚生文化・産経土木常任委員会連合審査会(群馬がん治療技術国際戦略総合特区の申請について)(平成24年9月19日)
1.開催日時
平成24年9月19日 10時01分~12時02分
2.開催場所
201委員会室
3.出席委員
(厚生文化常任委員会)
委員長:星名建市、副委員長:岸善一郎
委員:中沢丈一、委員:田所三千男、委員:塚原仁、委員:橋爪洋介、委員:後藤克己、委員:吉山勇、委員:酒井宏明、委員:安孫子
(産経土木常任委員会)
委員長:須藤和臣、副委員長:桂川孝子
委員:南波和憲、委員:岩井均、委員:織田沢俊幸、委員:岩上憲司、委員:伊藤祐司、委員:角倉邦良、委員:あべともよ、委員:清水真人
4.欠席委員
なし
5.主な質疑
(1)群馬がん治療技術国際戦略総合特区の効果について
質問:5年後の経済効果をどの程度見込んでいるのか。
答弁:現在内閣官房と調整中であるが、重粒子線治療施設の海外展開、人材育成及び県内企業の医療分野への参画等により、5,000億円程度の効果があるのではと考えている。また、算出は困難であるが、重粒子線治療の活用による早期社会復帰の効果もあると考えている。
質問:雇用についてはどうか。
答弁:雇用についても現在調整中であるが、40,000人程度の雇用があるのではと考えている。
質問:医療ツーリズムによる観光面の効果についてはどうか。
答弁:重粒子線治療については、平成29年に患者数30人、その家族が120人で3億円程度を見込んでいる。また、がん検診についても、患者数300人、その家族が1200人で15億円程度の効果があると見込んでいる。
(2)重粒子線治療の実績と今後の見込み等について
質問:群馬大学の重粒子線治療開始から2年間の実績と県外から紹介はどのくらいか。また、東京からの紹介はどうか。
答弁:平成22年3月から治験という形で治療を始め、6月から先進医療としての治療を行っており、治験は12人、先進医療として22年度は80人、23年度は214人、今年度は8月までの5ヶ月間で157人で合計451人である。うち県内患者が65%なので、県外からは35%、埼玉県や栃木県等の隣県の患者が多くを占めている。東京の患者は、昨年度末までの治療者中8人である。
質問:群馬大学では年間600人が目標と聞いたが、達成の見込はどうか。
答弁:26年度の目標が600人であるが、これまでは計画を上回っており順調であるが、人材育成が課題となっており、600人に対応するために増やしていく必要がある。また、国内だけでなく、海外の患者も見込んだ上で、600人の目標は達成できるのではないかと考えている。
質問:今後新たな施設ができることを見込んでも達成可能か。
答弁:国内でも佐賀県、神奈川県で、また、海外でも計画が進んでおり、それらを見込んで、人材の確保、患者の確保を計画している。
質問:外科的治療について触れていないがどうか。
答弁:重粒子線治療をシンボルとして特区に取り組むが、他の治療との組み合わせた集学的治療法の確立による新たな難治がんの克服として掲げており、外科手術の有効性等についても、このなかで考えていきたい。
今回の特区においても、集学的治療の観点から重粒子線治療のみならず、放射線治療、外科治療、化学治療等について、がん治療のより有効なパッケージとして海外展開を図る構成を考えている。
質問:医師会から要望のあった県民・国民優先の治療に対する配慮はどうなっているか。
答弁:現在の施設に多額の県税・国税が投入されているので、県民・国民優先という考えである。その中で、群馬大学も、外国人患者の受入は、上限を5%(30人程度)と考えている。
質問:治療の待機をしている患者はどのくらいか。待機患者が少なくても目標をクリアできるのか。
答弁:現在の治療の待機期間は平均で1週間、部位によっては2週間待ちであるが、待機者はないと把握している。目標をクリアするにはまだまだ努力が必要であるが、現在、群馬大学と県が連携して各県や首都圏の病院へのPRを行っているところである。
(3)県内の機運醸成について
質問:総合特区の取組について、県内の機運は醸成されているという認識か。
答弁:地域協議会は9月13日の開催とはなったが、群馬大学、県内企業等には事前に声をかけている。中小企業に関しては、次世代産業振興戦略会議が本特区の構成員となっているので、今後、健康科学に取り組む企業や金型企業などに声をかけていきたい。
質問:医師会が本特区の混合診療について懸念しているが、医師会への事前説明はどうだったのか。
答弁:医師会には、7月頃素案の段階と協議会の開催前に説明を行っている。
(4)重粒子線治療に係る保険適用について
質問:重粒子線治療が保険適用されるか否かは、県民にとって一番の問題だと思うがどうか。
答弁:重粒子線治療の314万円という高額な治療費は大きな課題であり、陽子線を含む粒子線治療施設を持つ県と共同して国に要望している。今年度の改定では、先進医療の保険適用を審査する会議での評価がもう1ランク上がれば適用となるまでになった。
質問:保険適用されるためには何が必要か。
答弁:保険適用のためには、例えば、骨肉腫のように、他の治療法では対応できないが重粒子線治療であれば対応できるなど効果を示すことが必要である。
質問:本特区は保険適用にどう貢献するのか。
答弁:特区の効果としては、薬事法の規制緩和がある。重粒子線治療の新技術である積層原体照射装置は、申請から1年半経って、まだ承認されていないが、薬事法の規制緩和で新しい技術の早期利用が可能になれば、重粒子線治療の効果として示すことができる。
質問:本特区が県民に有効なことを示すために、保険適用を申請書の目標の一つに掲げてはどうか。
答弁:保険適用については、求める規制緩和のひとつとして記載している。日本の医療産業を活性化させ、世界に打って出るというのが国際戦略総合特区であり、日本経済の活性化を申請書に盛り込んでいくことが重要である。申請書の位置づけとしては現状のかたちでよいと考えている。
質問:保険適用のない現時点で、重粒子線治療を希望する県民への救済措置はあるか。また、その利用件数は何件か。
答弁:群馬県では、治療費314万円を金融機関に借り受けた場合の利子補給を行っている。利率が6%上限で7年間まで対象である。現在利率は3.8%くらいなので7年間の利子は40万円程度である。この2年間の利用件数は1件である。
質問:群馬県民が治療を受けるときは、ベッド代を補助するなどの助成措置を講じてはどうか。
答弁:元々先進医療は自己負担が原則であり、他の高額医療もある中で公平性の観点からも慎重に検討した結果、患者が分割払いをすることにも対応できる利子補給制度を選択した。
(5)県内企業の参入について
質問:県内企業の参入が謳われているが、例えば重粒子線施設の建設に県内業者は関われたのか。
答弁:重粒子線治療施設は三菱電機が納入したが、今後の改良・開発等には県内企業が入っていけるよう、三菱電機・群馬大学に話している。また、重粒子線治療に使用するボーラス等について既に県内企業が入っている事例もある。今後、医工連携の取組のなかで県内の中小企業が医療産業に参入していけるよう、競争的資金の獲得等、支援を行っていきたい。
質問:県内中小企業の参入が進むよう努力してほしいがどうか。
答弁:特区の期間は5年間となっており、毎年取組計画を作成する予定である。現状では県内の大企業中心となっているが、今後中小企業の参入について継続的に呼びかけていきたい。
(6)総合特区の取組について
質問:がん特区構想によってがん対策推進計画がどのような影響を受けるのか。また、次期計画とどう整合を図っていくのか。
答弁:特区の申請と並行して次期計画を策定しているが、機械的に特区構想を盛り込むものではない。次期計画には、新しい観点も含め、がんの予防、検診、早期の適切な医療、緩和ケアなど様々な施策が盛り込まれる予定である。これらのがん対策全体が、特区構想の提案や議会での審査を通じて県民に情報提供されることが大事であると考えている。また、重粒子線治療は、次期計画におけるがん対策全体の底上げにつながるシンボル的な存在になると期待している。
質問:重粒子線治療の治療効果が高いとか難治性のがんに有効だとか、実績に基づいた基礎的データを公表することが大事であると思うがどうか。
答弁:群馬大学の治療はまだ2年半なので、基礎的データは公表されていないが、平成5年から治療している放医研のデータがある。2007年度で若干古いものだが、5年生存率で、前立腺がんで95%、手術不能の肺がんで70%、進行骨肉腫で50%、再発進行肝がんで50%、3期・4期の子宮頸がんで45%。これらの数字は、概ね他の治療法と同等又は同等以上と放医研では評価している。また、放医研の患者の多くは他の治療法では対応できなかったものである。群馬大学でも当初想定していた以上に副作用がなく、効果も高いと実感しているとのことである。
質問:外国人の人材育成に関し、外国人の医療行為を規制緩和すると日本の医療技術が崩壊すると医師会が懸念しているとの報道があったが、どう考えるか。
答弁:外国人の人材育成は臨床修練制度を想定している。日本の医師の指導の下で特定の専門的な分野に限り治療できる制度である。今回の特区の規制緩和では、修練の期間の上限が2年となっているものを4年まで認めることや、手続の簡素化を求めている。
質問:人材育成は特区でなくてもできると思うがどうか。
答弁:医学物理士、看護師、放射線技師等も含め、2年ではなかなか研究できない。特区で行う目的については、その手続きを簡素化し、より多くの方が日本で高度医療を学び、ひいては、本県の高度先進医療を国際的に発信でき、本県の医療機器等の産業も海外に展開できるようになるものと考えるものである。
質問:県民の意見を聞く場として、地域協議会を開いたというが、がん患者の団体の意見をどの程度聞いたか。
答弁:地域協議会は特区申請にあたっての推進母体であるため、患者団体には入っていただいていない。がん患者の意見は、健康福祉部はもちろん産業経済部としても個別に来所いただいた患者団体の意見等について反映させていきたい。総合特区は指定を受けなければ進まない話であり、現在は国への申請を意識した資料となっている。今後、県民に向けたPRについても考えていきたい。
(7)国際戦略総合特区の実現に向けた取り組みについて
質問:国際戦略総合特区申請の現在の情勢はどうか。また、実現に向けての県の取り組みはどうか。
答弁:内閣官房と何度も交渉を行っているが、数の問題で大変厳しい状況にある。また、先行事例に比べ、群馬県は指定地域の範囲が広いという指摘があり、現在調整中である。国際戦略総合特区取得のため最大限努力したいが、今回実現しなかった場合、来年度は特区申請を受け付けないので、3月は国際戦略総合特区と地域活性化総合特区の両面作戦も考えなければならない。
質問:国際戦略総合特区の実現に向けクリアすべき一番の課題はなにか。
答弁:既に7つ指定されているなかで、8つ目は駄目だというのが一番大きな課題である。県としては、7つも8つも同じであり、他の地域と同様日本の経済成長を牽引する内容であれば認めてほしいと考えている。
(8)総合特区の期間が終わった後について
質問:総合特区の期間である5年間が終わった後が課題だが、その姿をどのようにとらえているか。
答弁:産業経済面からは、5年間で積極的に研究開発に取り組み、規制緩和を活用して医療機器や医薬品の製造及び出荷が実現するようにしたい。医療面からは、今回の特区を200万県民に重粒子線治療を知っていただく契機とし、併せてがん検診率についても上げていきたいと考えている。
質問:畜産バイオマスの取り組みから学ぶものはあるか。
答弁:昨年地域特区に認められた畜産バイオマスの経験を踏まえ、内閣官房の事務局と十分事前協議を行っている。また、畜産バイオマスでは、国の補助金の上限枠を撤廃し、通常上限3,000万円の補助金を1億円程獲得した事例もある。年度毎の計画を作成するなかで参考としていきたい。