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中国・上海を訪問して
国際戦略対策特別委員会 副委員長 岩井 均
今回の上海における調査では、これまでの議員有志で行った調査と、委員会として行う調査の違いをまざまざと感じさせられた。在上海日本国総領事館では泉裕泰総領事、本県進出企業である信泰鹿島電子では鹿島保宏董事長(会長)、東京海上日動火災保険では大野博仁董事長(会長)、JTB上海国際旅行社では中村範男社長と懇談することができた。各所におけるトップと意見交換できるということは公務の委員会として訪問したことで、受け入れ側が最大限に配慮して頂いた結果であると考える。議員有志の調査では非常に困難なことである。
尖閣諸島の国有化に端を発した中国国内の反日暴動から1ヵ月余りの上海訪問は、一部から調査目的を達成できないのではないかとの意見があったが、このような時でも県議会が現地の状況を調査し、不安を抱えているであろう進出企業等から直接話を聞くことは意義のあることと考え、上海を訪問した。新聞やテレビ、インターネット等で得る間接的な情報も大事だが、現地・現場で直接的に、また肌感覚で分かるものがあることも事実である。果たして、極めて有意義な3日間であった。
上海において反日デモは発生したが暴動はなく、他都市で暴動があった当日も、地下の日本食店街は大盛況であったとのこと。マスコミの過激な報道により日本人観光客が減少しているが、これからは中国国内の正確な情報に基づいて、より多くの日本人に中国に来てもらいたいとのことであった。
また、上海事務所設置予定場所は、茨城県をはじめ他府県の上海事務所も数多く入居するビルであり、総領事館にも近く、情報収集や情報交換しやすい好適地と感じられた。
泉総領事は、「今の中国経済は下向きの不安があるが、GDPは20~30年後、今の倍になるだろう。企業が出るチャンスである。日本国内が厳しいから中国に進出するかというマイナス思考ではなく、中国進出して頑張ろうという意欲で来てほしい。」、「これからの上海はより発展する。群馬が上海に出るのは遅いが、今後を見れば非常に良いことだ。」と上海事務所設置を大いに歓迎してくれた。
東京海上の大野会長も、「将来性があるのが中国。捨てる決断はない。」との認識を示した。
JTB上海の中村社長は、上海事務所設置を歓迎し、「情報を取り合いながら良い関係を作りたい。」という話をされた。幹部から、観光誘客に関し具体的な提案も頂いた。「どこにターゲットを絞りPRするか。富裕層の中でもターゲットを絞ったほうがいい。」、「他県も温泉をPRしているが、効能についてはしていない。中国は健康ブームであり、草津温泉に入ると、何に効くかPRすべき。」、「中国国内で、「湯もみ音頭」の音楽をラジオで流してPRし、耳に残す方法を。」、「ゴルフが人気なので、温泉+ゴルフの一体的PRをすべき。他県がしていないプラチナ会員向けコンペをしたらどうか。」、「他自治体は単発で観光会社にお願いしているが、1年を1社と提携して中国市場に臨むべき。」、「中国人は本物の温泉を知らず、大きな温泉プールをイメージしている。中国のテレビで観光キャンペーン番組、旅番組を持ったらどうか。」など貴重な提案を頂き前向きに検討する必要がある。
信泰鹿島電子の鹿島会長には、広い工場を丁寧にご案内して頂いた。本県からの進出企業が中国で積極的に仕事を展開されていることに敬意を表したい。先発進出企業として、今後の進出企業へのアドバイスをして頂ければありがたい。
知事はじめ県庁職員だけでなく、今回、県民の代表である県議会が上海を訪問し、様々に意見交換し、各所で協力要請を行ったことは非常に意義深いものと考える。しかし、旅費等の制約があり、通訳を交えた中国人関係者との意見交換ができなかったことは課題として残る。
最後に、今後、上海市当局や在上海日本人関係者等と密接に情報交換を行い、所期の目的が達成できるよう事務所職員の活躍と県庁の強力な後押しを大いに期待している。