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JTB(上海)国際旅行社有限公司
1 調査先及び対応者
JTB(上海)国際旅行社有限公司 中村範男総経理 他
2 調査日時
平成24年11月8日(木曜日)9時00分~10時00分
3 調査目的
今後の観光客の誘客についての参考とするため、旅行需要の現状や今後の動向等について現地調査する。
4 調査先概要
JTB(上海)国際旅行社有限公司は、日本国内での最大の旅行会社であるJTBグループにおける上海での営業拠点として設置されている。
上海及びその周辺地域は中国における海外旅行の中心地であり、将来的な観光誘客に向けてはその消費動向を注視する必要があると考えられるが、本年9月中旬に中国国内で発生した反日デモ騒動によって、日本国内への旅行は敬遠されている現状が伺える。
5 説明要旨
- JTBチャイナグループの状況:香港、マカオを含め11社で、社員数は約600人、その内、上海には2社(他に3つの事務所もあり)で、100%独資会社である。
- JTB上海の従業員:170人(ほとんどの者が日本語学校出身で日本語が話せる。)
※北京にあるJTB新紀元国際旅行社は地元旅行社との合弁会社であるが、この会社に中国からの認可がおり、中国国内において海外旅行を扱えるようになった。
※「2way」が可能となった。 - 中国への観光客:1位は韓国人、2位は日本人である。グレードの高いホテルの宿泊は圧倒的に日本人が多いので、中国のホテルや観光関係者は、本当は日本人に来てほしくて仕方ないと思っている。
- 日本の各県や市などから「ぜひうちに」とか「我が県にはこんないいところがある」といった話を多々もらうが、聞いている方からすると、はっきり言って「どれも同じ」といった実感がある。
- 単に「来てください」だけでなく、「こちらからも送るから、そちらからも来てください」(「2way」の関係)というのが有効な手段である。
- 昨年、日本から中国への観光客は年間370万人であった。それだけの日本人が中国にも来ているし、中国人も日本には行きたいと思っている。
- 政治(政府)の影響が強い国であり、暗黙のプレッシャーもあるので、現時点ではまだ難しい面はある。
- 群馬県として、今度新たに事務所を開設されるが、当社の社員170人のうち受ける側のスタッフが120人であるが、残りの出す側のスタッフも50人いるので、お互いに知恵を絞って連携していけると思う。
- 今年の10月は事前には開設以来最大の予約人数であったが、9月の反日デモの影響から団体客の96%がキャンセルとなった。JTBとしても大変に厳しいが、それ以上に、それらを受ける仕事をしている側は話にならない状況である。
- 群馬県と同様に空港のない自治体のPR活動は、正直、どれも似かよったものとなっており、一歩抜きん出たPRが必要だと感じている。
- 中国(富裕層)のどこに的を絞ってPRをしていくかが非常に大切である。
- ただ「温泉」を売り込むのではなく、中国の健康ブームに乗って「温泉の効能」といったものを売り込むのも有効な手段ではないかと思う。
- 草津の「湯もみ」の音楽を活用して、ラジオでその音楽を流しながらPRするといった方法も良いのではないかと思う。
- ゴルフ人気も上がってきており、温泉との組み合わせ企画や、プラチナ会員向けのゴルフコンペ企画なども面白いと思う。(他県ではまだ手掛けていない。)
- 1回広告を出しただけではなかなか響いてこない市場であり、九州などは10年ぐらい前からPR活動を継続してきて、やっと最近になって芽が出てきた状況である。
- 今はスピードもアップしてきており、10年とは言わないが、やはり3~5年といった長期のスパンで戦略的にPRしていくことが必要だと思う。
- 多くの自治体は単発でいろいろな業者にお願いしてPRしているが、できれば1年契約とするなど、業者と一緒になってPRしてくことが必要だと感じている。
- 一度成功すれば、その後は口コミで広がることもある。いろいろな自治体の成功例、失敗例も知っているので、今後も連携して取り組んで行ければと思っている。
※当ビルの直ぐ下の地下鉄のコンコースにショッピング街があり、多くの日本企業が出店している。(反日デモの当日も、その場所は中国人客で大盛況であった。)
6 質疑応答の概要
質問:中国国内での有効なPR方法が何かないか。
回答:現時点ではまだ難しいと思うが、日本で言う「旅番組」のようなものがあるので、それをうまく活用できればいいと思う。中国人は本場の温泉についてはほとんど知らず、箱根のユネッサンのようなものだと思っている人もいる。そうした人たちに草津のような「本当の温泉」というものを知ってもらえば口コミで広がっていくこともあると思う。
質問:空港のない県として有効な誘客手段はどんなものがあると思うか。
回答:「2wayチャーター」といった企画もあると思うが、それ以外にも周遊企画の中で「地元のいいもの」を組み込むのも方法ではないか。また、中国内でも北京と上海とではニーズも違い答えが解らないのが正直なところでもある。団体ツアーと個人ツアーということで考えた場合、個人ツアーで大切なのは2次交通の整備だと思う。関東圏は「東京」という圧倒的に魅力のある場所がある。少し前は北海道が人気であったが、原発事故以降は九州や沖縄が人気になってきているが、どんな時代でも「東京」は変わらぬ人気である。この東京+アルファの部分でいかに誘客出来るかといった点で2次交通の整備は欠かせないものである。ご当地ならではの魅力を時間をかけて地道にPRしていくことが必要だと思う。北海道も九州も沖縄も以前から努力してやっていた。現地で扱っている我々エージェントとしても、九州などには送り出しやすい空気感がある。
質問:日本人観光客の上海での料理に関する満足度はどうか。
回答:料理はおいしいと思う。やはり世界中でも一番ホットな場所の1つでもあるのでいい食材が集まっており、ある程度の料金であれば満足のいく料理は食べられる。
質問:最近はかなり安価なツアーもあるがどうか。
回答:確かにものすごく安いツアーもあり、料理もそれなりのものになってしまう。やはり「安かろう悪かろう」では旅行者も旅行会社もお互いに不幸になると思う。
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