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森林環境税導入に関する特別委員会(平成24年6月12日)

1.開催日時

 平成24年6月12日(火曜日)10時00分~13時46分

2.開催場所

 403委員会室

3.出席委員

 委員長:関根圀男、副委員長:狩野浩志
 委員:織田沢俊幸、委員:井田泉、委員:笹川博義、委員:あべともよ、委員:後藤克己、委員:臂泰雄、委員:高田勝浩、委員:金井康夫、委員:清水真人、委員:藥丸潔

4.欠席委員

 なし

5.主な質疑

(1)森林環境税の導入について

質問:高知県から始まり現在33県で導入されているが、関東一の森林県である本県において、なぜ導入が遅れたのか。

答弁:昭和46年度に県議会で「利根川上流水源かん養に関する意見書」を決議して以来、応益分担や水源税などについて検討してきた経緯がある。新たに県民に負担を求めるには、慎重に検討することが必要であり、平成19年度から検討に入り、研究会等を経て、森林環境税を活用する事業や課税方法、実施期間などを検討した。その後、リーマンショックによる社会・経済情勢の変化や東日本大震災の発生などがあったが、平成24年2月定例県議会において、知事が導入に向けて、森林や水環境を保全する方法や財源の確保について、平成24年度中に議論し、条例案の作成までスピード感をもって検討していくという方向性を示したことを受け、現在本格的な検討を行っているところである。

質問:森林環境税がなければ、森林や水環境の保全に支障があるのか。手を付けられない森林が出てくるのか。現状で手が回らない部分に森林環境税を導入して対応していくということか。

答弁:国庫補助事業で対応できない部分について、森林環境税を導入して森林整備をしたい。里山については竹林の問題があり、人工林に侵入した竹の整理についての国庫補助事業はあるが、竹林自体の整備について国の支援制度はないので、そのような部分に使うことも検討したい。

質問:森林環境の保全、水環境の保全、過疎・山村の振興に係る事業について、過去20年間の推移はどうか。

答弁:国・県・市町村費、所有者等の負担金を含む事業費ベースで、森林整備が約214億円で75,000ヘクタール、保安林整備が約190億円で50,000ヘクタール、県有林は約4億9千万円で2,400ヘクタール、林道事業は約1,020億円で355キロメートル、作業道は約48億6千万円で2,090キロメートルほど整備してきた。
 また、河川の水質監視や工場・事業場の排水対策、水質汚濁事故等発生事案対策、地下水質調査などの事業費で、平成3~4年頃は年2千7百万円程度、ここ5年間は年1千7百万円程度であり、予算的には減少傾向である。しかし、この間、委託の水質分析を衛生環境研究所での実施に変えるなど、監視等の水準を落とさないよう事業の見直しを行っている。

質問:河川改修事業の中で、生物多様性や生態系などの環境面に配慮した既存のコンクリート護岸を壊して、多自然川づくりを行う事業はあったか。

答弁:河川改修は、出水で氾濫被害が発生した地域あるいは流下能力が不足する地域について、氾濫被害を防止するという目的を持って河積を拡げるなどの事業を行ってきた。この中で、多自然川づくりの考え方を導入し改修を行ってきている。

質問:各県では、森林整備、木材の利用拡大、河川・湖沼の水質保全等に使用されているが、本県で導入された場合はどのように考えているか。

答弁:群馬県は、森林県であり、水源県でもあるので、森林環境の保全と水環境の保全に使いたい。
 今後、有識者会議、県議会特別委員会においては、森林環境の保全と水環境の保全との2本柱の範囲内で議論いただき、使途を検討したいと考えている。

質問:水環境保全に関する森林環境税の使途としては、既存の事業に充てるのか。

答弁:これまでの事業を継続しても水質環境基準を達成する見込みのない水域が出てきており、環境基準達成のために、新しい取り組みを検討しており、このような新規事業を想定している。

質問:今までの事業を総括せず、財源が足りないというだけで森林環境税を導入するのは疑問である。
 目指すべき森林や水環境の姿を明確にすべきではないか。

答弁:細かい使途や必要な金額、税額については、今後の議論で深めたい。既存の事業では対応できない部分に森林環境税の税収を充てたいと考えている。

質問:長野県は、里山の整備に特化している。鳥獣害、小規模所有で整備が進まない、また、県民の目に触れやすいという面から、里山の整備の方が趣旨に合っているのではないか。

答弁:里山は、マツクイムシ、竹の繁茂などにより荒廃している。通学路や生活道路の近くにあるが、国の補助事業がないため、森林環境税により重点的に整備したいと考えている。

質問:奥山の整備は重要であるが、県民から見えない上、奥山の範囲も問題である。経営可能な範囲を広げることが重要ではないか。

答弁:水源県として、公益的機能が損なわれるおそれのある森林は整備したい。林業経営と言っても、路網が整備されている森林とそれ以外とでは生産条件が全く異なる。

質問:公共事業よりも集約化施業を進める方向にある。長野県も危惧していたが、森林環境税を導入することにより、業として自立する流れに逆行しないようにしてほしいがどうか。

答弁:業として成り立つようにするということは、路網整備や高性能林業機械の導入など基盤整備をするということである。戦後植林した森林が伐期を迎え、豊富な森林資源になった。この森林資源から投資を回収しなければ、森林組合の存在意義が問われる。温暖化対策により揺り戻しがあったことは事実であるが、公共事業漬けになるとは考えられない。

(2)間伐について

質問:本県における間伐が必要な森林面積はどのくらいか。

答弁:県内の人工林約11万ヘクタールのうち、森林経営を目指すべき森林は約8万2千ヘクタールあり、その中で若齢級と高齢級の森林を除く約7万ヘクタールの森林が間伐を繰り返しながら林業経営をしていくことを目指す森林と考えている。

質問:その7万ヘクタールは、手入れがされているのか。

答弁:10年ごとに間伐すると年間7千ヘクタールの間伐が必要となる。現状の間伐面積は、年間約5千ヘクタールで推移しているため、2千ヘクタールが残る。

質問:県では、年間7千ヘクタールの人工林整備を目標としているが、その費用はどのくらいか。

答弁:森林整備のヘクタール当たり平均所要額は、約20万円である。

質問:間伐が進まない原因は何か。

答弁:県も含めて関係者は努力している。森林所有者は小規模所有が多く、相続や売買等により自分の所有林がどこにあるか分からなくなってしまうことが原因の1つである。

質問:国の政策も、集約化された森林に補助する方向になっている。そうなると取り残される森林が発生すると思うがどうか。

答弁:あってはならないことであるが、取り残される森林は事実として発生している。森林所有者に利益を還元するような仕組みを構築して、経営意欲を芽生えさせ、収益性をあげる努力が必要である。

質問:成長の遅れたやせ細った森林の間伐材も利用することができるか。

答弁:間伐材についても、林業経営につながるよう、できるだけ搬出して利用している。渋川県産材センターではB・C材の定額買い取りも行っている。

(3)水質保全対策について

質問:はばたけ群馬プランで、汚水処理人口普及率を平成27年度で86.7%と掲げているが、目標達成について、現状ではどのように考えているか。

答弁:現在、ステップアッププランの導入や群馬県汚水処理促進協議会を設立し、効率的な汚水処理計画の策定について、市町村と検討をしているが、目標の数値より低くなる可能性はある。

質問:汚水処理人口普及率ステップアッププランの予算額はいくらか。

答弁:平成24年度当初予算は、市町村単独管渠整備費に3%の補助、農業集落排水事業に5%の補助、浄化槽対策として合併浄化槽の設置及び転換に対して市町村に補助しており、7億6千8百万円を計上している。

質問:汚水処理人口普及率ステップアッププランによる補助率を1%嵩上げするといくらになるか。

答弁:約5千4百万円必要となる。

質問:合併浄化槽への補助金について、ステップアッププランとの関係で、エコ補助金の現状はどうなっているか。補助金は今年度限りと書いてあるが、継続について検討をお願いしたいがどうか。

答弁:エコ補助金は、単独浄化槽から合併浄化槽へ切り替える時に、1基あたり10万円の補助として、平成23年度に創設した。平成23年度の実績は、1,189基の利用があり、転換効果が見られたため、平成24年度も引き続き予算計上している。今年度限りということで推進しているが、今後、検討していきたい。

(4)税収について

質問:群馬県で、森林環境税を導入した場合に、税収はどの程度になるか。茨城県方式(個人県民税均等割年間1,000円、法人県民税均等割10%の上乗せ)、栃木県方式(個人県民税均等割年間700円、法人県民税均等割7%の上乗せ)、全国で最も多い方式(個人県民税均等割年間500円、法人県民税均等割5%の上乗せ)の3パターンの場合、どうなるか。

答弁:平成24年度当初予算ベースで試算すると、茨城県方式では個人の県民税9億4千万円、法人の県民税2億3千万円、合計11億7千万円程度となる。栃木県方式では個人の県民税6億6千万円、法人の県民税1億6千万円、合計8億2千万円程度となる。全国で最も多い方式では個人の県民税4億7千万円、法人の県民税1億1千万円、合計で5億8千万円程度となる。

質問:税収については、基金を造成して管理するのか。

答弁:これから議論していただきたいところであるが、目的を明確にするため基金に繰り入れることが必要と考える。

質問:森林環境税を導入した場合、普通交付税算定上の基準財政収入額に算入されるのか。

答弁:森林環境税は県独自の超過課税であり、基準財政収入額には算入されない。したがって、普通交付税上、不利益になることはない。

(5)県民への周知・説明について

質問:森林環境税は非常に良いことと考えるが、復興増税の中で新たな税負担を求めることは難しい。
 県民に対し、どのように周知し、説明するのか。

答弁:各方面の理解を得る必要があり、会議等の機会を活用し、できる限り説明し、様々なメデイアや広報媒体を使ってPRしたい。検討経過も県民に公開している。

質問:県のホームページを見ても森林環境税の項目が出てこないが、掲載してはどうか。

答弁:デリケートな問題なので、パブリックコメントなど議論が深まった段階で掲載したいと考えている。

質問:現状の説明資料をホームページに載せてほしいがどうか。

答弁:議論の過程については公開したい。なお、第1回有識者会議の概要については、ホームページに掲載している。

(6)森林環境税の賦課徴収方法について

質問:課税は、個人と法人ではどのように行うのか。例えば、税金を払っている人は、お年寄りなど様々な方がいるが、全員に課税するのか。また、住民税を払っていない人は課税されないのか。

答弁:現在、33県が個人の県民税に上乗せする形で超過課税を行っている。その例で言うと、個人の県民税の均等割が非課税となっている方には課税しておらず、それが通常の考え方である。また、法人の県民税に上乗せする場合、法人の県民税にも均等割というものがあり、資本金又は出資金等に応じて年額が定められており、それに上乗せすることとなる。

質問:自動車税などの税金では、納税を行わない場合、何らかの措置が行われることになると思われるが、森林環境税の納税を行わない場合どうなるか。

答弁:税である以上、納期内に納税されなければ滞納となり、督促状・催告状の送付や戸別訪問等を行い納税してもらうことになる。それでも、納税されない場合、最終的には滞納処分を行うこととなる。

質問:新税導入にあたって市町村の協力を得る必要があると思うが、どのように考えているか。

答弁:個人の県民税に関しては、法に定められた徴収取扱費を交付している。新税の導入は市町村に新たな負担を強いることになる。例えば徴収に要する経費のほかシステム改修などが必要となり、その分の経費負担等について要望が出てくる可能性がある。

質問:市町村から徴収取扱費等の費用負担の要望が出てくると思われる。市町村の理解を得るためにも検討する必要があると考えるがどうか。

答弁:現在、個人の県民税については、賦課徴収を行う市町村に対し、納税義務者1人につき3千円を支払っている。今回、個人の県民税に付加した場合は、市町村において、システムの改修費用や徴収実費、事務費などが発生するため、その費用負担も検討する必要があると考える。

質問:森林環境税は、法定外目的税か。

答弁:他県で行われているものは地方税法に定められた標準税率を引き上げる超過課税であり、法定外目的税ではない。

(7)課税期間について

質問:課税期間は5年が多いが、どのように考えているのか。どうせ導入するのであれば10年程度の期間がなければ効果が現れないと考えるがどうか。

答弁:33県のうち3県が10年、残りは5年である。課税期間が満了した22県すべてが延長している。
 特別な税なので期間を設けた方がよいと考えている。10年の県も5年で中間評価をしている。

質問:本県は、県土の67%が森林である。森林整備は終わりのない仕事の1つであり、課税期間が短期間では世代間調整という意味から適当でないと考えるが、どのくらいの期間を考えているのか。

答弁:全導入県で課税期間を設定しており5年間が多い。課税期間が満了した全22県が延長している。
 見直しに当たり、評価の1つとしてアンケートを実施している県があり、6~8割が延長に賛成している。また、見直し時に税率を上げたり、使途を拡大している県もある。

(8)外国資本等による森林買収への対応について

質問:外国資本による森林買収に対し、何らかの対策をすべきと思うがどうか。

答弁:税制による対応は難しいと思う。公有林化やしっかり山を管理する費用に充てることも1つの案として検討したい。水源地域の適正な管理に使いたい。

質問:外国人、県外の人による森林買収があった場合、応益分を県(森林環境税)に寄付する制度にすることは出来ないか。

答弁:個人の財産権に関わる問題なので、県レベルでは出来ないと考える。

質問:応益分担の考え方からすれば、森林環境税を充てて整備した森林を、外国資本や県外者が取得した場合、付加価値が増加した分を寄付してもらってはどうか。

答弁:個人の森林売買を県レベルで制限することは難しい。応益分担については、昭和46年に県議会で意見書が可決されて以来、水源税など様々な要望をしてきた。森林整備の結果として下流都県にも利益をもたらすが、環境保全や災害防止など直接の利益は県民が享受する。まずは上流県としての責務を果たした上で、応益分担を求めるという筋道はある。

(9)森林を支えるソフト事業について

質問:県有林パートナー事業の実績は2件で450万円と聞いている。経済情勢にもよるが寄付を集めるのが難しければ、クレジット化する方法もある。J-VERに取り組む県もあるがどうか。

答弁:森林を支えるソフト事業に充てるかどうかは、これから議論すべき問題である。J-VERは、森林整備に要する費用を捻出する方法であるが、多大な経費を要する。また、クレジットが定価どおりに販売できない状況にもある。経済状況を勘案して慎重に検討すべきであると考える。

(10)事業の評価について

質問:事業実施に当たり評価が必要と考えるが、評価の単位は、事業ごとまたは事業全体のどちらにすべきか。

答弁:これからの検討課題であるが、理想は事業ごとの評価である。3年又は5年ごとに評価すべきと考える。

質問:事業の透明性を確保するため、第三者機関による評価が必要と考えるがどうか。

答弁:その方向で検討したい。

(11)名称について

質問:森林環境税という名称では、森林に特化していると誤解される。県民にアピールするためにも、「水」を含めた名称を検討してはどうか。

答弁:有識者会議でも同様の意見があった。森林環境税は通称であり、他県でも様々な愛称を付けている。名称については、有識者会議や県議会において議論していただきたいと考えている。

(12)バイオマス発電について

質問:バイオマス発電は将来有望と思われるがどうか。

答弁:木質バイオマス資源のエネルギー利用については、以前は生産コストが高いなどの問題で普及してこなかったが、現在は施業集約化による低コスト化や原油価格の高止まり、再生可能エネルギーの固定価格買取制の導入など状況が変わってきており、木質バイオマスのエネルギー利用は将来性が高いと考えている。誰が実施するのかという問題はあるが、木質バイオマス発電などの取り組みに対して積極的に支援していきたい。

(13)市町村長への説明について

質問:森林環境税の導入については、県民の理解とともに市町村長の理解が不可欠である。市町村長にはどのように説明するのか。

答弁:直接説明したいと考えている。すでに5月15日の全国山村振興連盟群馬県支部総会において、出席した町村長には説明した。今後も、市長会、町村会及び市町村の税務担当者には、機会をとらえて説明したい。


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