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国際戦略対策特別委員会(平成24年6月12日)
1.開催日時
平成24年6月12日(火曜日)9時58分~13時58分
2.開催場所
402委員会室
3.出席委員
委員長:久保田順一郎、副委員長:岩井均
委員:中沢丈一、委員:塚越紀一、委員:大沢幸一、委員:新井雅博、委員:舘野英一、委員:茂木英子、委員:須藤和臣、委員:大手治之、委員:吉山勇、委員:安孫子哲
4.欠席委員
なし
5.主な質疑
(1)上海事務所の設置について
質問:事務所の候補地として、なぜ上海市を選んだのか。
答弁:上海市は、中国一の経済都市であり、多くの国から人やもの、企業、情報等が集まるため、情報発信拠点としてふさわしく、拠点を置くべき都市として最も適していると判断した。
質問:場所は上海市内のどの辺りを考えているのか。また、広さはどの程度を想定しているのか。
答弁:他県と連携した活動が効果的であると考え、他県事務所が集中しているエリアを中心に検討を進めている。面積については、他県例を踏まえ70~100平方メートル程度と想定している。
質問:他道府県で設置している上海事務所の状況はどうか。
答弁:現在、中国全体では30道府県が事務所を設置しているが、そのうち上海市へは24道府県が設置している。近県では、茨城県と埼玉県が上海市に設置している。
質問:設置申請等に係る事務手続きや必要経費はどうか。
答弁:具体的な手続きは、国際貿易促進委員会という市の機関へ申請を行うが、他県例からすると許可まで4ヶ月程度を要すると考えている。また、申請の前に物件を確保するとともに、勤務する職員の履歴を提出する必要があるなど、日本と比べて厳しい手続きとなっている。なお、市等への負担金は必要ないと思われるが、申請手数料は必要である。
質問:物件選定等に関し地元のどのようなところに協力を依頼しているのか。
答弁:現在は、上海の県人会組織であるぐんまサポーターズに情報をいただきながら、場所の絞り込みを進めているところである。
質問:現地調査の予定はどうか。
答弁:昨年、知事が訪問して状況を調査してきた。また、ルートづくりも含めて、近々、現地調査も行う予定である。
質問:県産業支援機構と連携して設置するとのことだが、役割分担についてはどうか。
答弁:県内企業とのパイプ役となるのが産業支援機構であり、現地における活動の主体となるのが県であると考えている。
質問:前回の上海への職員派遣の評価や課題はどうか。
答弁:前回は、群馬銀行の上海駐在員事務所へ研修職員として赴任させたものであり、銀行が持つネットワークの活用といったことで一定の成果はあったと考えているが、一方で、当時はまだ中国に向けに観光誘客などの取り組みを積極的に行う環境にはなく、海外との経済交流を戦略的に推進する体制がなかったなどの課題もあった。
質問:派遣される職員の身分はどうなるのか。
答弁:派遣する職員は、産業支援機構と県職員の身分を併任することになる。
質問:事務所の存在を広く知ってもらうため、設置後はPRが必要だと思うがどうか。
答弁:現在、香港への派遣職員や海外サポーターズなどの海外拠点ができつつあり、それらの情報を報道提供しているが、上海事務所についても、県民に幅広く知ってもらえるよう、積極的にPRしていきたいと考えている。
質問:中国展開を検討している事業者に、どの程度まで対応できるのか。
答弁:個別の企業ごとに様々なニーズがあると思うが、できる限り応えていきたい。中でも、現地への橋渡しは事務所の重要な業務の一つだと考えており、しっかりと対応していきたい。
(2)国際戦略について
質問:戦略の3本柱のうち、どれに一番力を入れて取り組んでいくのか。
答弁:観光誘客や農畜産物等の販路拡大、企業のビジネス展開の支援は、取り組み手法こそ違う面があるが、県経済の活性化のためには全て重要であり、どれが上で、どれが下ということはない。
質問:地域別の重点戦略の順位付けをしっかりして取り組んでいく必要があると思うがどうか。
答弁:まずは、上海戦略にしっかりと取り組んでいきたい。その他、対象地域と広く交流等を重ね、経済交流につながりそうな地域をしっかりと見極めて、関係を深めていきたいと考えている。
質問:相手国との相関関係が重要だと思うがどうか。
答弁:現在、東アジア各地域からビジネス交流や大学間交流の話を持ちかけられており、こうした件に誠実にしっかりと対応し、お互いの利益につながるような交流を目指していきたい。
(3)環日本海経済研究所(ERINA)との連携について
質問:北東アジア地域の情報発信をしている当該団体との連携を一層強化していく必要があると思うがどうか。
答弁:平成22年度以前は会議出席や機関誌などで情報収集はしていたが、それ以降は非常に重視して積極的に連携している。国際戦略策定における有識者懇談会のメンバーに入ってもらっており、常時密に情報交流ができる体制となっており、今後とも更に連携を強化して活用していきたい。
質問:団体事務所がある朱鷺メッセでは、随時、国際見本市等を開催しているが、この活用をどう考えているか。
答弁:見本市等への出展は国内外への発信のきっかけとしてはよいことであり、出展したい企業を広く募るなど、積極的に取り組んでいる企業を支援していきたい。
質問:県職員OBなどを嘱託職員という形でもよいから派遣することは考えられないか。
答弁:他県においても中国に事務所を出す際に民間と連携する例もあることから、事務所の展開のひとつの方法として検討してまいりたい。
(4)海外ぐんまサポーターズ委嘱について
質問:県人会等に委嘱するということであるが、今後はどんな団体を予定しているのか。
答弁:現地に在住している方々を組織化し、そこに委嘱する手順で行っている。今後については具体的にまだ決まっていないが、台湾などでの可能性を検討しているところである。
質問:委嘱は東アジア地域に特化しているのか。
答弁:特化したものではないが、戦略地域を優先にしたいと考えている。
質問:群馬日仏協会など、県内団体等に委嘱してはどうか。
答弁:サポーターズは原則として海外在住の方等を対象としたものである。ただし、県内団体は重要なチャンネルであると考えているので、密に情報交換を図ってまいりたい。
(5)県内企業の海外進出状況について
質問:東アジアに進出している県内企業はどのくらい、どういった企業があるのか。
答弁:今年3月にまとめた調査では、192社350事業所が中国やASEAN諸国などに進出していると把握している。国別では、中国が133社202事業所、タイが34社36事業所、フィリピンが23社29事業所などとなっている。業種別には、一般機械器具や輸送用機器等の製造業がほとんどであるが、小売業やサービス業などの進出事例もある。
(6)道路標識への外国語併記について
質問:県内の道路標識はローマ字表記が付加されているが、外国語併記の考えはどうか。
答弁:観光誘客の観点からも大切であると認識しており、今後の課題として考えていきたい。なお、東武鉄道の特急列車では4カ国語で車内放送をおこなっているなどの事例もある。
質問:温泉地に絞り込んで、多言語表記をしてはどうか。
答弁:課題として捉え、今後研究していきたい。
(7)農畜産物の輸出再開の見通しについて
質問:香港への牛肉輸出が再開したが、その他の今後の見込みはどうか。
答弁:牛肉は、6月8日に香港、13日にカナダへの輸出再開となったが、依然として香港では生鮮野菜等に対する輸入規制が続いている他、中国、マカオ、台湾などへも本県産農畜産物の全品目についての輸入規制が続いており、規制解除の時期について目処が立たない現状である。
(8)公営競技の活用について
質問:公営競技(ギャンブル)を活用した観光誘客プランについてどう考えるか。
答弁:公営競技に関する外国人観光客の受入れは主催者の判断になるが、既に中国で設立した旅行会社からも話があり、主催者に来県時の対応を相談したところ、駐車場確保や、車券等の購入方法、レース予想も含めて積極的な受入れの対応の返事をいただいているので、今後は有効なPR手法等について検討していきたいと考えている。
(9)海外向けの誘客宣伝の取り組みと宿泊業者等の受入れ体制について
質問:海外に向けたアピール方法及びイメージ定着のための取り組みはどうか。
答弁:「日本のまん中」、「日本一の温泉県」といった分かり易い表現により定着を図りたい。また、本年度から改めて多言語によるホームページを作成する他、フェイスブックを活用した情報発信や、中国向けに微博(ウェイボー)を利用するなどしてイメージアップを図っていきたい。
質問:海外での消費動向と県内事業者とを結びつけるマーケティングが必要だと考えるがどうか。
答弁:ターゲットとする国や地域、今後の具体的な展開方法等について県内企業の意向や希望を調査して海外展開を支援したいと考えており、今年度、県内2千社を対象に県の経済施策に関する企業ニーズのアンケート調査を行うとともに、必要に応じて訪問調査を実施する予定である。
質問:県内における宿泊事業者等の受入れの気運はどうか。
答弁:2010年の群馬経済研究所の調査結果では、今後の外国人観光客に対する取組方針について、積極的な施設が34.7%、消極的な施設は37.9%だった。外国語を話せるスタッフがいないとか、温泉の入り方が不安などの様々な原因があるが、一番の要因は経験がないことが大きい。ただし、
最近ではインバウンドの取り組みは不可欠という考えも浸透してきている状況にある。
質問:温泉地の受入れ体制はどうか。
答弁:看板等の多言語表示や、歓迎していることを伝えるための多言語のパンフレット、食事メニューなどの用意が必要であり、本年度、千客万来支援事業に国際観光枠を設けて支援している。
(10)他県との広域的な取り組みについて
質問:広域的な取り組みの現状はどうか。
答弁:ビジット・ジャパン地方連携事業等を活用し、広域連携に取り組んでいる。群馬・埼玉・新潟の3県で、香港の国際旅游展において共同PRすることとしている他、上信越3県、北関東3県、北関東磐越5県など様々な組合せでも取り組んでいるところである。
(11)国の補助事業の活用について
質問:ジャパンブランド支援事業の活用状況はどうか。
答弁:昨年度、NPO群馬県ものづくり研究会の「ぐんま次世代自動車向け高度金型ブランドプロジェクト」が採択され、次世代自動車の海外市場での可能性調査を実施した。今年度は、本県からの該当事例はないが、過去には昭和村のこんにゃくを生かした事業もあり、海外へのマーケティング調査や海外展示会への出展等、段階的支援が国の資金を活用して実施できた。
(12)留学生の活用について
質問:東アジアから本県に留学生はどのくらい来ているのか。
答弁:平成23年5月現在、全留学生数が1,107名で、そのうちアジアからは1,087名である。
質問:これまで留学生とはどのような交流をしてきたのか。また、今後はどうするのか。
答弁:これまでは県主導の交流事業は少なかったが、今後は留学生から母国へ群馬の良さを発信してもらうよう考えており、ブログやツイッターを活用して留学生に口コミによる情報発信をしてもらうよう「ぐんまのいいとこ伝え隊」事業を実施する予定である。
(13)グローバル人材の育成について
質問:「明石塾」では受講生が様々な体験をしていると聞くが、状況はどうか。
答弁:「明石塾」では10人の選抜に100人以上の高校生が申し込むなど、県内にも意識の高い学生がたくさんいると感じている。当初は英語を勉強したいという目的できているが、次第に群馬県のことをよく知らなければ国際人として発信できないことに気付くようになる。人格形成を含めたグローバル人材育成事業は継続していきたいと考えており、明石塾がその中核を担うと思っている。
(14)県の海外進出と関係部局間の連携について
質問:後発であるからこその利点についてどう考えるか。
答弁:先に進出した他県の状況も勉強もできる利点もあり、今後の経済や観光の活性化を考えた上で、県としてもしっかりと取り組み、県民の利益となるよう活かしていきたい。
質問:県庁内の各部署、民間団体などとの連携はどうか。
答弁:国際戦略課だけで取り組むものではなく、庁内各課や、民間団体、進出企業の方々からの情報や取り組みをできるだけ活かしながら取り組んでいきたい。
質問:東国文化については、韓国とのつながりが強いため連携をしてはどうか。
答弁:群馬県の特徴である東国文化のすばらしさは、今の韓国からの技術や文化の伝承が背景にあり、そうしたつながりを基にしてどのような形がよいのか考えていきたい。
(15)ASEAN諸国との関わりについて
質問:今後、ASEAN諸国との関わりをどのように持って行くつもりなのか。
答弁:ASEAN諸国は、産業集積が進んでいるが賃金が安く、また、市場としての魅力もあることから企業が注目していると認識している。シンガポールはフリーポートで関税がかからず、タイでは日本食への関心が高いといった特色もあるが、観光客誘客は困難な状況であり、これらを勘案して、当面は企業のビジネス展開支援や農畜産物の輸出を戦略の柱として考えていきたい。
(16)全庁的な取り組みに対する職員の意識統一について
質問:県職員の国際戦略に向けた意識統一をどのように図っていくのか。
答弁:知事の最重要施策として位置づけられたことで、職員全員がそれを意識して業務に当たることで庁内の調整が非常にスムーズに行くようになっているなど意識改革も進んでいる。今後、海外への派遣職員から入ってくる情報を職員に共有させ、各施策に活かしていきたい。
(17)山東省との交流について
質問:国際戦略には山東省への取り組みが明記されていないが、どのように交流を進めていくのか。
答弁:山東省は中国東北部という括りの中で考えており、これまでも相互交流があるが、今後は県民が利益を享受できる経済交流が進められるようであれば、もう一歩踏み出すことができるのではないかと考えている。
(18)国際戦略に係る講演会の状況について
質問:サポーターズのメンバーにより行った講演会の状況はどうか。
答弁:上海で会社を興した体験に基づくサポーターズメンバーによる中国ビジネス論の講演であり、定員の100人が参加するなど、効果があったと感じている。
(19)富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録を見据えた誘客策について
質問:国際戦略と世界遺産登録の関係についてどう考えているか。
答弁:登録の時期はまだはっきりと分からないが、実現すれば外国からも人を引きつけるような大きな観光資源となるので、有効に活用していきたい。
(20)市町村の国際交流関係協会との連携について
質問:市町村の国際交流関係協会との連携についてどう考えているか。
答弁:交流には人と人とのつながりが重要だと考えているため、各市町村の訪問を始めたところであり、そうした中で市町村の協会との関係も築いていければと考えている。
(21)誘客時のトラブル対策について
質問:外国人観光客のトラブルへの対応はどうなっているか。
答弁:外国人観光客には団体旅行と個人旅行の場合とがあり、団体旅行の場合には、原則として旅館等と旅行会社とでトラブルに対応することになる。個人旅行者の場合は自分で手配するため、トラブルが起こると心細いと思われる。本県への観光客は、複数回来日している個人旅行者も多いので、地域の観光協会や国際協会が相談窓口となるなどの対応を考えていきたい。
(22)県内の卸売市場との連携について
質問:築地市場のように、県内の卸売市場も観光資源として利用できないか。
答弁:高崎市総合卸売市場では、月に2回一般市民を対象に開放デーを設けており、外国人観光客を含めた観光コースの一つとして取り組むことができないか、市場側と検討しているところである。
(23)ALL JAPAN SHOW(オールジャパンショー)について
質問:本年度の対応はどう考えているか。
答弁:昨年度、上海で開催された際には県としても出展した。原発事故の風評被害などの影響もあり、メインの物産を会場に持ち込めずパンフレット配布程度のPRだった。今年度もまだ物産等を持って行ける状況にないため、状況を見極めた上で対応したいと考えている。
質問:今年度の天津での開催についても出展すべきだと思うがどうか。
答弁:いろいろな国に行ってプロモーションを仕掛けるという観点から、今年度は、韓国と香港での旅行博覧会の方に出展することを予定しており、将来的には中国での旅行博覧会も視野に入れた対応もしていきたいと考えている。
(24)中国人観光客の入国ルートについて
質問:中国人観光客はどこの空港を利用して本県へ来ているか調査しているか。
答弁:どこの国から来ているかは調査しているが、どこの空港からかはデータがない。
(25)台湾との交流促進について
質問:台湾バナナの活用についての検討状況はどうなっているか。
答弁:台湾バナナは高価なことから常時使用するのは難しいが、PRできる場を設けるような形で協力ができないか検討しているところである。
(26)観光振興条例について
質問:通常は条例があり、それに基づいたプランがあるのが基本だと思うがどうか。
答弁:条例を根拠としてプランを策定することで位置付けを明確にすることになる。また、プランを審議する観光審議会も条例に書き込んで設置意義を明確にすることが良いと考えている。
質問:全国では、保守的な県は条例でなく計画を策定することが多いと聞くが認識はどうか。
答弁:国では法律に基づいた観光基本計画が定められており、県では観光振興に関する条例がないため、総合計画の下部計画に位置付けられている。根拠となる条例があれば民意を反映し、位置づけも明確になるなど、いろいろな意味でメリットにもなり得ると考える。