本文
人と動物の共通感染症について
更新日:2022年12月1日
印刷ページ表示
主な人と動物の共通感染症については、次のとおりです。
|狂犬病|ウエストナイル熱|鳥インフルエンザ|サルモネラ症|レプトスピラ症|パスツレラ症|猫ひっかき病|カンピロバクター症|野兎病|犬ブルセラ症|細菌性赤痢|Q熱|オウム病|エキノコックス症|回虫症(幼虫移行症)|疥癬症|トキソプラズマ症|皮膚糸状菌症|クリプトコックス症|
A 狂犬病
病原体 | 狂犬病ウィルス |
---|---|
感染動物 | すべてのほ乳類、鳥類 |
感染経路 | 狂犬病に感染した犬、猫及びコウモリを含む野生生物等温血動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からウィルスが侵入し、感染します。 |
動物の症状 | 犬の場合、狂犬病に感染すると1~2週間の短期間で発病します。狂犬病の犬は、むやみに歩き回り、柱などの物体にかみついたり、地面を無意味に掘る、狼のような特徴的な遠吠えをするなどの異常行動をとります。 また、流れるようにヨダレを流すようになります。(唾液の分泌の増加)。この時期の犬は攻撃的で、ちょっとした刺激でかみつきます。 さらに、水を飲むとのどがけいれんし苦しむため、水を極端に怖れるようになります。やがて、足腰が立たなくなり、うつろに宙をながめるようになり、死亡します。 |
人の症状 | 潜伏期間は9日から数年で通常は20から60日程度です。発病するかどうかはかまれた傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などで大きくかわります。 症状は、発熱、頭痛、全身倦怠、嘔吐などの不定症状で始まり、かまれた部位の異常感覚があります。ついで、筋肉の緊張、幻覚、けいれん、嚥下困難などが起きます。液体を飲むとのどがけいれんを起こし、非常に苦しいため水を怖れるようになります(このため狂犬病を恐水病ともいいます)。犬の遠吠えのようなうなり声をあげ、大量のヨダレをながし、昏睡、呼吸麻痺が起き死亡します。 |
予防方法 | <犬>狂犬病予防法により91日齢以上の犬は、登録(生涯1度)、狂犬病ワクチンを打つこと(年1回)が義務づけられています。 <人>狂犬病のおそれのある動物にかまれたら、すぐに傷を水でよく洗い、信頼できる病院でできるだけ早く傷の処置とワクチンを接種します。 発症したら治療法はありません。 |
その他 | 狂犬病は、人と動物の共通感染症で、世界各地ではいまだに流行が続いています。 特に近隣の中国・インド・フィリピン等では、犬による狂犬病が猛威をふるっており、アジア地域では主に犬に咬まれて狂犬病を発症し、年間約31,000人(WHO調べ 2004年)が命を落としたと推定されています。 日本では、昭和32年以降現在まで、動物の狂犬病は発生していませんが、平成18年8月に日本人2名がフィリピンで犬に噛まれ、同年11月に狂犬病を発症しました。 |
B ウエストナイル熱
病原体 | ウエストナイルウィルス |
---|---|
感染動物 | 鳥、蚊 |
感染経路 | 鳥、蚊の感染サイクルで維持され、感染蚊に刺されることにより感染します。 |
動物の症状 | 多くの鳥では無症状であるが、脳炎等を起こす場合があります。 |
人の症状 | 人における症状は発熱、インフルエンザ様症状で始まり、頭痛、背痛、筋痛、関節痛、疲労、発疹、リンパ腺症が現れます。重症では急性化膿性脊髄炎、脳膜炎に移行する場合があります。 |
予防方法 |
|
C 鳥インフルエンザ
病原体 | インフルエンザウィルス |
---|---|
感染動物 | 鶏、あひる、七面鳥、うずら等 |
感染経路 | 感染した鳥や感染後死亡した鳥の排泄物や体液への濃厚な接触、あるいは、これらからの飛沫を吸入することにより人へ感染しています。 |
動物の症状 | 神経症状(首曲がり、元気消失)、呼吸器症状、消化器症状(下痢、食欲減退等)を起こします。 |
人の症状 | 一般的には、突然の高熱、咳などの呼吸器症状の他、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴います。 ほとんど疾患名を付けられないほどの軽症例、通常のインフルエンザ様症状、そして重篤な肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全などにより、急激に悪化して死に至るものまで様々です。 |
予防方法 | 鳥インフルエンザウイルスの感染がみられている場合に、これらとの濃厚な接触を避ければ感染の危険性はほとんどありません。鳥インフルエンザの流行が鳥の間で起こっている国や地域に出かけなければならない時には、生きた鳥を扱っている市場に立ち入らない、また、集団発生が見られている鶏舎などへの出入りは絶対に避けて下さい。 |
その他 | 鳥を飼う場合は衛生状態に注意を払い、鳥に触った後の手洗いや糞尿の速やかな処理などを行うことが勧められます。鳥が普段と様子が違うとか、弱っているなど、健康状態に異常があった場合は獣医師に相談し、飼い主が身体に不調を感じた場合は早めに医療機関を受診することも大切です。 |
D サルモネラ症
病原体 | サルモネラ菌 |
---|---|
感染動物 | は虫類(ミドリガメ、イグアナなど)、犬、猫、牛、豚、鶏、両生類など |
感染経路 | 保菌している動物との接触を通じて感染(経口)します。 サルモネラ菌は、自然界にも広く生息しており、牛、豚、鶏は10~30%、犬や猫は3~10%、カメで50~90%も感染しているとの報告あり。 <通常は、汚染された食品を介して感染> |
動物の症状 | 無症状、下痢 小さなミドリガメは、保菌していても無症状のことが多い。 |
人の症状 | 8~48時間で、腹痛、下痢、発熱などが起こり、重傷になると粘血便を排泄します。 |
予防方法 |
|
E レプトスピラ症
病原体 | レプトスピラ細菌 |
---|---|
感染動物 | げっ歯類(ねずみなど)をはじめ多くの野生動物、犬、猫、家畜 |
感染経路 | 主にドブネズミが無症状で保菌し感染源となり、その菌を含む尿が、又は、尿により汚れた水が人や動物の健康な皮膚に触れただけで感染します。 |
動物の症状 | 無症状、発熱、出血、腎炎、黄疸 |
人の症状 | 5~14日間の潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などが生じ、その後黄疸が出現する場合があります。 |
予防方法 | <犬>ワクチン接種。 <人>レプトスピラ症の流行地域では、不用意に水に入らないこと。 |
その他 | この菌は、水の中ではとても長い間生き続けますが、熱、乾燥、各種消毒薬には弱く、通常の消毒方法で簡単に死滅します。 |
F パスツレラ症
病原体 | パスツレラ・ムルトシダ |
---|---|
感染動物 | 犬、猫、ウサギ |
感染経路 | 健康なイヌやネコの口の中に存在する菌(口腔内正常細菌)であり、これらの動物に咬まれたりすると感染します。またネコは肢を舐める習性がありますから、爪にもこの菌がいることがあります。そのため、引っかかれることによっても感染します。 |
動物の症状 | 無症状、まれに呼吸器症状 |
人の症状 | 咬傷では、咬傷部位が熱をもち、赤く腫れて痛みも伴い化膿する場合もあります。 慢性の気管支炎の人は、この菌を吸い込んで呼吸器感染症となり慢性化することもあります。 |
予防方法 |
|
G 猫ひっかき病
病原体 | バルトネラ・ヘンセレ |
---|---|
感染動物 | 猫、犬、ノミ |
感染経路 | 猫に引っ掻かれたり、咬まれたりした場合に感染します。また、感染したノミに刺されたり、犬から感染することもあります。 |
動物の症状 | 無症状 |
人の症状 | 数日から 2 週間の潜伏期間の後、引っ掻かれたり、咬まれたりした部分が発熱し、数週間から数ヶ月続くリンパ節の腫脹がみられます。稀に、脳症を併発することもあります。 |
予防方法 |
|
H カンピロバクター症
病原体 | カンピロバクター菌 |
---|---|
感染動物 | 鶏、牛、羊、犬、猫、水鳥 |
感染経路 | 保菌動物からの排泄物により汚染された食品や水を介して人に感染します。 比較的少ない菌量で病気を起こすことから、小児ではペットなどとの直接接触で感染する場合があります。 |
動物の症状 | 無症状が多い。 |
人の症状 | 汚染食品を食べた後1~7日で、発熱、倦怠感、頭痛、めまいなどが起こり、次いで吐き気、腹痛が起こります。 |
予防方法 |
|
I 野兎病
病原体 | 野兎病菌 |
---|---|
感染動物 | 野生げっ歯類(ウサギ、ネズミ)、野鳥 |
感染経路 | 保菌動物の剥皮作業や肉の調理時に、血液や臓器に直接触れることにより感染します。さらに、マダニ類等に刺されて感染する例、汚染生水からの経口感染もあります。 |
動物の症状 | 不明 |
人の症状 | 急性熱性疾患で、感染後3日目をピークとした1週間以内(稀に2週間~1カ月)の潜伏期間後に、突然の発熱(38~40℃)、悪寒・戦慄、頭痛、筋肉痛、関節痛などの感冒様の全身症状が認められます。 |
予防方法 | 流行地においては死体を含め、野生ノウサギや齧歯類などとの接触は避け、またダニ等に刺されない、生水の飲用をしないなどの注意が必要です。 |
J 犬ブルセラ症
病原体 | ブルセラ・カニス |
---|---|
感染動物 | 犬 |
感染経路 | 感染動物の流産組織、尿、精液などとの接触により主に経口、創傷感染します。 |
動物の症状 | 不妊症、死産、流産、睾丸炎など |
人の症状 | 通常1~3週間の潜伏期間後、発熱、筋肉痛など他の熱性疾患と類似する症状がでます。一部では、精巣炎を起こす場合があります。 |
予防方法 |
|
K 細菌性赤痢
病原体 | 赤痢菌 |
---|---|
感染動物 | 霊長類 |
感染経路 | 感染(保菌)又は発症している人やサルの排泄物の菌に汚染された食品や水等を介して経口により感染します。 |
動物の症状 | 水様性、粘血性などの下痢、元気食欲の消失、嘔吐など |
人の症状 | 動物とほぼ同様。 |
予防方法 |
|
その他 | 人用、動物用のワクチンはない。 |
L Q熱
病原体 | Q熱リケッチア |
---|---|
感染動物 | 牛、ヤギ、羊、犬、猫、鳥 |
感染経路 | 感染動物の排泄物、羊水、乳などに出てきた菌(熱、乾燥、多くの消毒液に強い)に汚染されたほこり等を吸い込むことにより感染します。 なお、人はこの菌にたいへん感染しやすく、数個の菌で感染してしまうことがあります。 |
動物の症状 | 多くが無症状ですが、牛や羊では死産、流産を起こすこともあります。 |
人の症状 | 感染した人の約半数は症状が出ません。急性のQ熱は潜伏期間がおよそ2~3週間で、症状は、発熱、筋肉痛、呼吸器症状などインフルエンザ様です。 心内膜炎を主な症状とする慢性型に移行する場合もあります。 |
予防方法 |
|
M オウム病
病原体 | オウム病クラミジア |
---|---|
感染動物 | オウム・インコ類、家禽、野鳥 |
感染経路 | 保菌動物の排泄物が乾燥し、それを吸入することで感染します。 また、咬まれたりした場合にも感染することがあります。 |
動物の症状 | さえずり、おしゃべりなどの元気がなくなり、また、食欲もなくなりやせてきます。 さらに、下痢を起こし、死んでしまう場合があります。 |
人の症状 | 高熱、筋肉痛、全身倦怠感などインフルエンザに似た症状が出ます。 重症になると呼吸困難・意識障害などを起こす場合があります。 |
予防方法 |
|
N エキノコックス症
病原体 | エキノコックス属条虫 |
---|---|
感染動物 | キツネ、犬、野ネズミ(キツネの糞を食べた野ネズミが感染) |
感染経路 | エキノコックスに感染したキツネや犬の糞便中に排出された虫卵が、人の口に入ることにより感染します。(日本では主に北海道で発生) (人の腸の中で幼虫になり、その後肝臓に寄生します。) |
動物の症状 | 無症状が多い。 |
人の症状 | 感染初期(約10年以内)は、無症状で経過することが多い。 初期には、上腹部の不快感・膨満感の症状で、さらに進行すると肝腫大、腹痛、黄疸、肝機能障害などが現れる。 |
予防方法 |
|
O 回虫症(幼虫移行症)
病原体 | 猫回虫、犬回虫、アライグマ回虫 |
---|---|
感染動物 | 猫、犬、アライグマ |
感染経路 | 感染動物の糞便から排泄された虫卵が口を介して感染するケースと回虫に感染した家畜の生の臓器(肝臓や肉の刺身など)を食べて感染するケースがあります。 |
動物の症状 | 子猫、子犬では、発育不良、食欲減退、粘液性下痢などを起こすが、成猫、成犬では無症状が多い。 |
人の症状 | 免疫力の弱い人や幼児では、虫卵が腸の中でふ化し、回虫の幼虫が肝臓・眼・神経など全身の内臓に移動して、視力障害、運動障害、肝機能障害などが起こる場合があります。 |
予防方法 |
|
P 疥癬症
病原体 | ヒゼンダニ |
---|---|
感染動物 | 犬、猫(人特有のヒゼンダニは、人から人に感染する) |
感染経路 | 犬や猫のヒゼンダニが皮膚の角皮層に寄生し感染します。 動物特有のヒゼンダニ(イヌセンコウヒゼンダニ、ネコショウセンコウヒゼンダニなど)は、人の皮膚では繁殖できないため、一時的な寄生で終わります。 |
動物の症状 | かゆみによる脱毛、皮膚状態の悪化など |
人の症状 | 動物と同様の症状を示します。 |
予防方法 | <動物>感染動物との接触をさせないこと。 |
Q トキソプラズマ症
病原体 | トキソプラズマ原虫 |
---|---|
感染動物 | 主に猫 |
感染経路 | 猫の糞便中や完全に熱処理されていない肉に入っているトキソプラズマが人の口から入り感染します。 |
動物の症状 | 成猫はほとんど無症状ですが、子猫では呼吸困難や視覚障害、神経症状等を起こす場合があります。 |
人の症状 | 健康であれば無症状かリンパ節が腫れる程度で済みますが、妊娠が感染すると流産や胎児の先天性障害(脳症、水頭症、発育不全など)が起きる場合があります。 |
予防方法 |
|
R 皮膚糸状菌症
病原体 | 犬小胞子菌、毛そう白癬菌 |
---|---|
感染動物 | ウサギ、ハムスター、犬、猫 |
感染経路 | 感染動物を抱くなど直接接触する部分の皮膚に感染します。 |
動物の症状 | 円形脱毛、かゆみなど。無症状の場合もあります。 |
人の症状 | 人の皮膚にこの菌の胞子が着くと、皮膚の浅い部分で増えていき、丸い赤みや水ぶくれができます。 |
予防方法 |
|
S クリプトコックス症
病原体 | クリプトコックス菌 |
---|---|
感染動物 | ハト、猫 |
感染経路 | 保菌動物の糞便が乾燥して舞い上がり、菌を含むほこりを吸い込んで感染します。 |
動物の症状 | ハトの場合は、体温が高いため菌の増殖が難しいことから無症状ですが、猫の場合は、猫エイズに感染している場合、呼吸器症状や神経症状を起こします。 |
人の症状 | 健常者にはほとんど感染しませんが、免疫力の弱い人では、中枢神経症状(髄膜炎、脳炎など)を起こす場合があります。 |
予防方法 |
|