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令和7年度答申第10号
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
処分庁が行った令和7年6月11日付け生活保護申請却下処分を取り消し、本件処分によって生じた損害額(法定金利や利息)を加えて支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
民法704条違反・偽計及び威力業務妨害であるため。また、最高裁判例違反の説明義務違反でもあるため。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
本件処分について、処分庁は、局長通知第7の2(6)アに基づき却下処分を行っている。したがって、本件処分については、法令の規定及びその解釈に従い適正になされたものであり、違法又は不当な点は認められない。
また、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないこと、申請拒否処分を書面でするときは、同時に、書面により当該処分の理由を示さなければならないとされるところ、処分庁が本件処分の保護申請却下通知に記載した「処分の理由」には、却下とした根拠及びそれに係る事実が詳細に記載されており、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がなされたかを申請者においてその記載自体から了知することが可能であると考えられる。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和7年10月24日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和7年10月31日 調査・審議
令和7年11月14日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 本件に係る法令等の規定について
(1)「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第7の1に基づけば、経常的最低生活費とは「要保護者の衣食等月々の経常的な最低生活需要のすべてを満たすための費用として認定するものであり、したがって、被保護者は、経常的最低生活費の範囲内において通常予測される生活需要はすべてまかなうべきものであること。」とされ、臨時的最低生活費とは「次に掲げる特別の需要のある者について、最低生活に必要不可欠な物資を欠いていると認められる場合であって、それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合に限り、別に定めるところにより、臨時的に認定するものであること。なお、被服費等の日常の諸経費は、本来経常的最低生活費の範囲内で、被保護者が、計画的に順次更新していくべきものであるから、一時扶助の認定にあたっては、十分留意すること。(1) 出生、入学、入退院等による臨時的な特別需要 (2) 日常生活の用を弁ずることのできない長期療養者について臨時的に生じた特別需要 (3) 新たに保護開始する際等に最低生活の基盤となる物資を欠いている場合の特別需要」とされている。
(2)「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の2(6)アにおいて、「被保護世帯が次の(ア)から(オ)までのいずれかの場合に該当し、次官通知第7に定めるところによって判断した結果、炊事用具、食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは、35,800円の範囲内において特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。
なお、真にやむを得ない事情により、この額により難いと認められるときは、57,000円の範囲内において、特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。(ア) 保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。(イ) 単身の被保護世帯であり、当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し、新たに単身で居住を始める場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。(ウ) 災害にあい、災害救助法第4条の救助が行われない場合において、当該地方公共団体等の救護をもってしては、災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき。(エ) 転居の場合であって、新旧住居の設備の相異により、現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず、最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき。(オ) 犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。」とされている。
(3)生活保護法(昭和25年法律第144号)第24条第4項において、保護の要否、種類、程度及び方法を決定した書面には、決定の理由を付さなければならないと規定されている。また、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項及び第2項において、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないこと、申請拒否処分を書面でするときは、同時に、書面により当該処分の理由を示さなければならないと規定されている。これらの理由提示の意義について、最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決、最高裁判所昭和49年4月25日第一小法廷判決、最高裁判所昭和60年1月22日第三小法廷判決などにおいて、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨であるものと解されており、このような趣旨に鑑み、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならないとされている。
3 本件処分の妥当性について
3 本件処分の妥当性について
処分庁は、令和〇年〇月〇日にケース診断会議を行った上で、局長通知第7の2(6)アに基づき本件処分を行っている。
生活保護法に関する各種通知において、プリンターの購入費用に関する直接的な規定はないが、プリンターは住宅内で使用する生活上の道具であることからすれば、局長通知第7の2(6)アの家具什器費の基準を適用して、支給の可否を判断することは妥当である。同基準(ア)から(オ)までに該当していない以上支給をすることはできず、申請を却下した処分庁の判断に不合理な点はない。
また、処分庁は、処分の理由として「プリンターは最低生活に直接必要といえないことから、局長通知第7の2(6)ア(ア)から(オ)のいずれにも該当せず、次官通知第7の1のとおり支給できないと判断し、当該購入に係る扶助費の申請はこれを却下する。」と生活保護申請却下通知書に明記しており、却下とした根拠及びそれに係る事実が記載されていることから、申請者においてその記載自体から了知することは十分に可能であることから、審査請求人が主張する説明義務違反にも当たらないと考えられる。
以上のとおり、本件処分は、法令等の定めるところに従って、適法かつ適正に行われたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。








