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嗅覚測定法によるニオイの測定について

更新日:2019年8月27日 印刷ページ表示

 『悪臭による被害を防止し、住民の生活環境を快適に保つための法律』として、昭和46年に悪臭防止法は制定されました。ニオイの測定は分析機器を用いる方法『機器測定法』が定められましたが、その後、ニオイは人間の嗅覚で直接感じるものであるため、分析機器によるニオイの測定結果と、人間の感覚とが一致しないケースが多々生じていました。これをうけて、平成7年に悪臭防止法が改正され、ニオイの測定方法として、人間の嗅覚を用いる方法『嗅覚測定法』が追加されました。

 ここでは、人間の嗅覚を用いたニオイの測定について紹介します。

嗅覚測定法でニオイを測定する理由

 ニオイには、3つの特徴があります。

(1)『低濃度』でも感じ取れること

 人間の嗅覚は鋭敏で、かなり低濃度のニオイも感じることができます。特に焦げたニオイや、腐ったニオイに対しては敏感であり、嗅覚は人間が本能的に危険を回避するために備わっている感覚器官です。

(2)『多成分』であること

 一つのニオイでも、実は多くの成分が含まれています。例えば、タバコのニオイには数千種類の成分が含まれていると言われています。調香師などの専門家を除き、通常の人間では、そのニオイの成分一つ一つを嗅ぎ分ける力は弱いことが分かっています。しかし、どんなに多くの成分が含まれていても、それらを逃がすことなく全部まとめて感じることができます。一方、分析機器を用いると、ニオイの成分を知ることができます。しかし、全部まとめるとどれ程のニオイになるかは知ることができません。

(3)『相互作用』をすること

 複数のニオイが混ざり合うことによって、様々な相互作用が起こります。例えば、別々に嗅ぐとそれほど強く感じないニオイでも、混ぜて嗅ぐと強く感じることがあります。これを相乗作用といいます。その逆の相殺作用もあります。このような相互作用が複雑に絡み合って、一つのニオイが作り出されるのです(例:香水)。人間の嗅覚は、この複雑な相互作用を全て加味して、総合的にニオイを感じとっています。分析機器で測定し、いずれの成分もごく微量しか含まれていなかったとしても、相乗作用で強いニオイに感じることもあるのです。

 『嗅覚測定法』は、この3つの特徴をうまく反映した測定方法として、多くの自治体で導入され始めています。しかし、人間の嗅覚を用いるため、測定精度や結果の客観性などについて、分析機器を用いる『機器測定法』以上に細心の注意を払わなければなりません。

嗅覚測定法によるニオイの測定方法

 実際にニオイを嗅ぐ人間を『嗅覚パネラー』と呼びます。嗅覚測定は、6名以上の嗅覚パネラーで行います。嗅覚パネラーの個人差を少なくし、結果に客観性を持たせるためです。もちろん、嗅覚パネラーは正常な嗅覚を有していなければなりませんので、事前に嗅覚検査を行い、これに合格しなければなりません。

 嗅覚パネラー6名以上で測定を開始します。測定は『三点比較式臭袋法(さんてんひかくしきにおいぶくろほう)』に従って行います。内容積3リットルのポリエステル製の『臭い袋』を3つ準備します。このうちの1つにニオイを薄めて入れ、他の2つには無臭の空気を入れておきます。嗅覚パネラーは3つの臭い袋の中に入れられている空気のニオイを嗅ぎ、どの臭い袋にニオイが入っていたかを答えます。

 嗅覚パネラーが正解したら、3つの臭い袋のうちの1つに入れるニオイをさらに薄めます。この操作を繰り返していくと、やがて嗅覚パネラーはどの臭い袋にニオイが入っているのかを判別できなくなります。この時の『希釈倍数』(もとのニオイを何倍に薄めたか)でニオイを数値化します。これを『臭気濃度』といいます。例えば、もとのニオイを10倍に薄めた時、ニオイを判別できなくなったら、臭気濃度:10、100倍に薄めた時、ニオイを判別できなくなったら、臭気濃度:100となります。おわかりのとおり、臭気濃度が大きいほど、もとのニオイが強いことになります。

測定結果の表示方法

 上記のようにして求めた『臭気濃度』を『臭気指数』に変換すると、人間の感覚とよく一致する結果になります。人間の感覚強度(ニオイの感じ方)は刺激量(ニオイの量)の対数に比例すると言われているからです。これを『ウェーバー・フェヒナーの法則』と言います。この関係をグラフで表すと、下図のようになります。

ウェーバー・フェヒナーの法則:人のニオイの感じ方はニオイの量の対数に比例しますのグラフ画像

 縦軸が人間の感覚強度(ニオイの感じ方)、横軸が刺激量(ニオイの量)です。刺激量がある量に達した時、初めてニオイがあると感じるようになります。この時の刺激量を『検知閾値(けんちいきち)』(ニオイを感じる最少の刺激量)と言います。その後、刺激量の増加とともに感覚強度も増加しますが、次第にグラフが横にねてきます。グラフが横になった領域では、刺激量が増えても、感覚としてはそれ程強くなったと感じなくなることを意味しています。もし刺激量の増加に伴って感覚強度も増加し続けたら、ニオイ刺激によって人間は倒れてしまうかもしれません。この性質は、強いニオイ刺激から身を守るための防御機構と言えます。

 実際には、次の式により、『臭気指数』に変換して表示します。

 『臭気指数』 = 10 × log『臭気濃度』

 嗅覚測定法で求めた『臭気濃度』を『臭気指数』に変換すると、「臭気濃度:10」は「臭気指数:10」、「臭気濃度:100」は「臭気指数:20」に変換されます。臭気濃度の10と100では、濃度的には10倍の差があります。しかし、臭気指数に変換すると、10と20では2倍の差になります。つまり、臭気濃度10のニオイと100のニオイを比べると、人間の嗅覚では10倍ではなく、2倍程度の差として感じるのです。

参考文献

  • 川崎通昭・堀内哲嗣郎 共著 「嗅覚とにおい物質」臭気対策研究協会
  • 岩崎好陽「臭気の嗅覚測定法」臭気対策研究協会

作成:群馬県衛生環境研究所

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