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群馬県家畜保健衛生業績発表会

更新日:2025年2月3日 印刷ページ表示

目的

 家畜保健衛生所等の日常業務に関連した業務・調査等の業績について、発表及び討議を行い、畜産の現況に即した家畜保健衛生事業の改善、向上に資することを目的とする。

開催日時

 令和6年12月20日(金曜日)

発表内容

1 豚熱ウイルスの野外浸潤拡大を懸念した養豚農場等への防疫レベルアップの取組

群馬県西部家保 水野航

 管内の野生イノシシにおける豚熱遺伝子検査陽性率は令和5年10月~6年5月の繁殖期に22%~54%と検査開始以来最も高く推移し、豚熱ウイルスは野外で浸潤拡大。農場への豚熱ウイルス浸潤と発生リスク上昇を懸念し、防疫体制を強化。1 危機意識を関係者と共有し、飼養衛生管理基準遵守率を向上。2 豚熱ワクチン( vac)接種の登録飼養衛生管理者接種制度(管理者接種制度)活用推進と、会計年度家畜防疫員獣医師により定期接種間隔を短縮し免疫空白期間の解消。3 vac 抗体陽性率低値農場で豚繁殖・呼吸障害症候群の感染が低値要因と推察されたため衛生管理を指導。しかし、農場従業員の不足により管理者接種制度の活用は一部で中止。また、会計年度家畜防疫員には県職員退職者等を活用しており、今後民間獣医師への引継ぎが必須。特定家畜伝染病防疫対策の継続には、農場従業員及び獣医師の人材確保が課題。

2 大脳皮質壊死症が発生した黒毛和種一貫農場への対応

群馬県中部家保 河西美紅

 令和6年8月29日、黒毛和種一貫農場で約5ヶ月齢の育成牛が起立不能、チアノーゼを呈し、診療獣医師に予後不良と判断され、病性鑑定に供された。病理解剖所見では大脳表面は黄桃色。大脳割面への紫外線照射では皮質部に層状の自家蛍光。病理組織学的検査では、大脳皮質部に神経細胞の層状壊死及び神経網の粗鬆化。以上の所見から本症例を大脳皮質壊死症と診断。診断を受け、診療獣医師と共に当該農場の飼料及び給与方法の聞き取り調査を実施。カビの発生によるチモシー乾草の嗜好性低下、粗飼料と濃厚飼料の同時給与、3ヶ月齢での飼料の急変と下痢傾向が判明。以上のことからチアミン欠乏が惹起されたと推察。飼養管理改善策を検討、指導。本症例診断以降、当該牛と同月齢の育成牛3頭において大脳皮質壊死症を疑う症状が認められたが、症状は軽度で診療獣医師の治療により回復、死亡事例なし。また、改善後の飼料及び給与方法で飼養管理された若齢牛群で新たな発生はない。

3 一酪農場とともに取り組んだ牛伝染性リンパ腫の清浄化対策

群馬県利根沼田家保 角田真実、茂木麻奈美

 成牛約40頭飼養する農場で平成30年度から牛伝染性リンパ腫清浄化対策を開始。年2回の全頭抗体検査とプロウイルス量測定、導入牛の抗体検査、初乳対策、吸血昆虫対策を実施。当初防虫ネットは設置したが、出入口やブヨ防除の設置方法に悩み、事例紹介、設置資材の資料を提示するも近年は未設置。陽性牛と陰性牛の分離飼育も未実施で、抗体検査で毎年陽転。今年度は必須対策で防虫ネットの設置、陽性牛の分離飼育を実施。防虫ネットは安価で身近な資材による継続しやすい設置方法を提案。家保と農場が意見を出し、ブヨの侵入経路は二重に、出入口は作業動線を考慮して開閉可能なカーテン式で設置し、錘にチェーンを活用。結果、牛舎内のブヨが激減し牛の横臥時間増加に加え牛舎内環境が改善。今年度の検査で陽転はなく、抗体陽性率は当初の55%から24%に減少。実践を含めた提案が理解醸成につながった経験を今後の対策推進に活かしたい。

4 動物ふれあい施設における飼養衛生管理指導

群馬県東部家保 南部雪江

 令和6年4月に管内商業施設において動物ふれあい施設が開業。当該施設から家畜の飼養衛生管理について相談を受け、指導を実施。施設では、45種類の動物を飼養。このうち、家畜はヒヨコ90羽、コールダック4羽、マイクロブタ4頭およびヤギ4頭。動物飼養前の施設を確認し、各特定家畜伝染病の国内発生状況に応じた段階的な防疫措置、交差汚染防止対策、海外渡航時対応、注意喚起の掲示等を改善指導。施設は、飼養衛生管理マニュアルを指導内容に沿って変更し営業開始。その後に再度、施設立入し、指導内容の遵守状況を確認。施設が実際に取った対応例として、令和6年6月に近隣での野生イノシシ豚熱陽性事例発生時、飼養衛生管理マニュアルに沿って、マイクロブタの展示を中止。高病原性鳥インフルエンザ対策として、冬季はコールダックの展示を中止。今後も施設と連携を取り、飼養衛生管理の取組みについて、指導を継続。

5 畜産関係職員のコミュニケーションスキル習得に向けた取り組み

群馬県中部家保 塩田友里恵

 特定家畜伝染病発生時には、まん延防止のため迅速な防疫措置が重要。対策の一環として、今年度、肉用鶏農場における殺処分方法の検討に関する県主催の防疫演習を実施。若手の畜産関係職員が1班約7名で検討。防疫指針及び防疫措置に対する理解向上の一方で班での討議は滞ることも多く、チーム力発揮のためのコミュニケーションスキル(CS)の重要性を実感。また、通常業務や防疫措置時の経験からCSの必要性を認識していたことから、CS習得を目的として、チームで活動するときのコツを体験的に学習し、気づきを引き出すワークショップ「やぐら鶴®」を実施。実施前後のアンケート結果から、防疫措置の緊迫感を疑似的に体験できる「やぐら鶴®」実施時は、通常業務時よりCSが低下傾向であったことや受講によりコミュニケーションに関する意識が向上するとの意見多数。CSは防疫措置に限らず、農場指導等通常業務にも重要なため今後もCS習得に向けた取り組みを継続。

6 呼吸器疾患の病性鑑定実施状況とパスツレラ科特異的発色媒体培地を用いた有用性の検討

群馬県家衛研 志村仁

 牛・豚呼吸器疾患は経済損失の大きな一因。近年、パスツレラ科に特異的に発色する培地が開発。今後活用するため、当所における病性鑑定依頼状況と保存菌株について実態を調査。また保存菌株と鼻腔スワブや肺等を用いた本培地の有効性を検討。過去3年間の原因究明のための病性鑑定実施頭数は367頭で、その内75頭が呼吸器疾患による依頼。保存分離菌株5,056株の内、1,530株(30.3%)が呼吸器から分離。牛から分離された菌種(割合) は、Pasteurella multocida ( 以下、P.m) 156株(33.5%)、Mannheimia haemolytica( 以下、M.h)120株( 25.8% )でパスツレラ科細菌が約6 割。豚では、P.m
119株( 11.5% )。P.m およびM.h の83.3%が発色培地でピンク色や藤色コロニーを形成。腸内細菌やグラム陽性菌は、青色や瑠璃色のコロニーもしくはコロニー形成が確認できず。鼻腔スワブ等原因菌以外で汚染された検体でも正確で迅速な診断と治療に寄与できると示唆。

7 黒毛和種にみられたアスペルギルス属真菌による流産

群馬県家衛研 高島映令彩

 2023年5月下旬から6月上旬に、繁殖牛75頭、肉用育成牛30頭を飼養する農場で流産が2例発生。2例目の流産胎子及び胎盤について病性鑑定を実施。剖検では、流産胎子に著変は認められず、胎盤において絨毛叢は灰白色を呈し腫大。微生物学的検査では、大脳及び主要臓器から有意な細菌は分離されず、大脳、肝臓、脾臓、腎臓及び心臓からListeria monocytogenesLeptospira interrogans 及びNeospora caninum 特異遺伝子は不検出。病理組織学的検査では胎盤において絨毛は壊死し固有構造はほぼ消失。壊死部には変性した好中球、細胞退廃物及び線維素がみられ、多数の菌糸を確認。胎盤の壊死部についてグロコット染色を実施し、均一な幅で隔壁を持ちY字状に分岐する真菌菌糸を多数確認。真菌菌糸は抗Aspergillus 抗体を用いた免疫組織化学的検査で陽性。以上よりアスペルギルス属真菌による流産と診断。流産発生の原因究明には胎子だけでなく胎盤も含めた検索をすることが重要。

8 一酪農場にみられた輸入ストローによるライグラススタッガー及びフェスクフット症例

群馬県西部家保 上原めぐみ

 搾乳牛約50頭の一酪農場において、イタリアンストローとして輸入ペレニアルライグラスを購入、給与した乳用育成牛4頭で起立不能、未経産牛1頭で左右後趾内蹄の壊死を確認。給与した輸入乾牧草と同ロット試料を検査し、ローズベンガル染色でエンドファイト菌糸を確認、エンドファイト毒素であるロリトレムB: 4300μg/kg、エルゴバリン:930μg/kgは高値。本症例はエンドファイト中毒によるライグラススタッガー( rs)とフェスクフット( ff)と診断。ff 発症牛は震えと起立の嫌悪もみられ、rs 併発と推察。当該輸入乾牧草の給与期間は発症までの約1か月間だが、rs 発症牛は予後不良、ff 発症牛は治療により回復。当該輸入乾牧草の単独給与は、飼料価格高騰により粗飼料を安価な輸入ストローへ変更せざるを得なかったため。飼料価格高騰下の飼料設計変更農場は多数。管内牛飼養者へ輸入ストローの単独給与について注意喚起し、他農場での発生は無し。

9 野生イノシシにおける豚熱の感染状況

群馬県家衛研 江原彰宏

 令和元年10月から令和6年9月末までに実施した野生イノシシの豚熱サーベイランス結果を報告。338/5,439頭( 6.2% )で遺伝子検査陽性、1,216 /4,355頭( 27.9% )で抗体陽性。年度及び季節ごとにみると、遺伝子検査陽性個体が確認された後に抗体陽性率が増加し、それに伴い遺伝子検査陽性頭数も減少したが、抗体陽性率が減少してくると再度遺伝子検査陽性頭数が増加。また、地域別でみると、5地域中4地域において遺伝子検査陽性個体が初めて確認されてから約1年後に遺伝子検査陽性頭数が減少傾向となるが、3~4年後には増加傾向。以上より、野生イノシシの群内では、豚熱感染後における抗体陽性率の増加により感染リスクは減少するが、抗体陽性率の減少に伴い感染リスクが増加することでウイルスが維持されている状況と示唆。引き続き、農場での対策によるウイルス侵入防止及び野生イノシシへの対策による環境中ウイルス量の低下が豚熱対策として重要。

令和6年度群馬県家畜保健衛生業績発表会抄録(PDF:178KB)

過去の開催

令和5度群馬県家畜保健衛生業績発表会抄録(PDF:190KB)