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第35回群馬県青少年健全育成審議会の結果概要
開催日時
令和5年7月19日(水曜日)13時00分~15時00分まで
開催場所
昭和庁舎2階21会議室
出席委員
大森会長以下11名
事務局
児童福祉・青少年課長以下7名
傍聴者
なし
議題
1 「ぐんま子ども・若者未来ビジョン2020」の点検・評価について
「ぐんま子ども・若者未来ビジョン2020」の外部評価を行うため、同計画の令和4年度推進状況と本審議会第1部会における審議結果について事務局から説明、報告を受けました。
小児等在宅医療に対応した医療機関数
小児在宅医療については登録医療機関数が少ないことが以前からの課題で、機関数も減り続けている。問題への今後の対策として、県と小児医療センターが連携し、在宅医療の推進を担うコーディネーターを作る合意ができたので、開業小児科の経営が厳しい状態はあるが、積極的に進める方針である。コーディネーターによる連携により医療機関数が増えることを期待したい。
公立高校全日制における高校3年間でインターンシップに参加したことがある生徒の割合
- 高校生のインターンシップについては、職業観を育成することが狙いだと思う。当社でも昨年、高校生のインターンシップをかなり手厚くプログラムを用意して数名を受け入れたが、押し並べて高校生自身からの反応はあまり見受けられなかった。我々は、普通科高校から大学への進学意向をもつ高校生が実際に会社に行き仕事を見ることは、職業観、キャリアパスを早いうちから描くとことができるため、非常に重要だとわかる。しかし、高校生自身がなぜインターンシップに行くのかよく理解していないのではないか。職業観を身に付けることがなぜ大事なのかということを生徒に考えさせてからでないとあまり意味がない。私が評議員をしている高校では、OBを中心に社会人を講師として呼んでおり、特に実業家などの講義は人気がある。割合が下がったことは、コロナの影響だけではなく、そのような下地を作ることでインターンシップの効果が上がるのではないか。
- 高校生自身の希望や考えなど、自ら考えさせる必要がある。高校生に対して職業観といっても、将来について悩みどうしようかという3年間だと思われる。私が前職にいた大学では、高校生が大学訪問して最前線の研究を見学する機会があったので、企業に限らず、行政、大学など将来に向けた希望を確認するきっかけにしてほしい。
- 群馬県としては、県内の高校生に群馬県で就職してほしいと考えているのか。
- 高校生の県内進学率は、石川県に次いで群馬県が全国2位と報道にあった。だが、群馬県内の大学の定員を全て合わせても、県内の高校生が大学へ進学する総数には足らない。しかし、県内大学に進学した学生の県内就職割合は、どの大学も7、8割なので、県内大学に進学してもらうことで県内に就職することにもつながると思う。だが、子ども達の未来は子ども達のもので、県のものではないというところも踏まえなければならない。ただ、群馬県は進学に関して恵まれた環境で、高等教育機関が他県に比べると非常に多く、進学機会の提供に貢献している。
- また、高校生のインターンシップに関して、高校時代に職業観をもつことはなかなか難しい。職業体験であれば中学校で全員がやっている。大学では、プログラムとしてほとんどの大学でインターンシップがあり、就職活動のスタートラインがインターンシップから始まっている。高等教育機関でのインターンシップと、中学校の職業体験の違いを、もう少し目的を明確にする必要があるが、そのためにはプログラム設計が重要になる。最近、高校からの依頼が増えているのが、探究の授業と絡めたインターンシップであり、自分でテーマを設定して研究、調査、または自分の将来について考え、その一環として、探究型インターンシップとして、目的を設けてインターンシップに行き、体験、調査して、また授業に展開していく。ただインターンシップに行くだけではなく、自分の生き方を考え、身に付ける機会とする位置付けが必要と思う。しかし、経済同友会が各高校から受付をしているが、余りにも数が多く捌ききれていない。高校と企業団体とのコーディネート機能について制度設計していかないと、昨年の実績22%はコロナ禍の影響だろうから40%には戻ると思われるが、60、70%にするには受入れ側の体制の整備が重要となる。
外国人生徒の進学率と全体の進学率との差
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外国人生徒の進学率の問題について、事業報告にある数パーセントの差である少人数の生徒の迷いや困り感はどういったものなのか。もし、人数が数名であれば、当事者に直接聞く必要性があるのではないか。問題解決にリンクするような困り感は抽出ができているか。
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担任の先生もいるだろうが、そもそも対象の生徒から進学意思を喚起してない可能性もある。国の中央教育審議会では、今後の18歳世代の人口減少について80万人を切ったことと、これからの学校のあり方について議論したが、人口問題研究所は18歳の子どもが生まれた年の出生数と18歳人口をイコールにしておらず、外国からの移住者がより増える予想を立てており18歳人口が少し多い。現在、群馬県は全国でも移住という意味で先進地域だが、移住者は今後もっと増えていくだろう。そのときには、この課題の対象となる人数は数名ではなく、県全体で彼らを支えないと社会的な問題になるおそれがあるので、しっかり学業から社会につなげる道筋が必要であり、次のプランでは本格的に取り組まなくてはいけない。
- 外国籍の生徒が日本の教育システムに対応できない問題は、システムをその対象に合わせて適宜対応すればよいが、他にも親御さんの経済的な負担もあるのではないか。親自身の生活も大変であるのに、子の大学などの進学となるとなおさら負担は大きいので、子どもの学ぶ権利を大前提に踏まえて、親世代の意識を変える課題にアプローチしなくてはならない。学ぶ意欲があれば、奨学金などサポート制度もあるので活用すれば、学ぶ機会を得られる。ある地元企業では、学びの場を親世代に対しても提供している事例がある。更には、夜間中学校のように大人が学ぶ機会を設けることで、学ぶこと自体の喜びや、そこから広がる新しい社会や世界を知ることもできるので、親世代を含めた支援が必要になると考える。
- 大学での外国籍の学生は、勉強するために来日してくる人達であり、ここで問題としているのは、定住、永住外国人の子弟と、就労ビザで入国した外国人の子弟である。必ずしも全てが、奨学金や支援金などを受けられるわけではないので。問題を整理して、一概に外国籍の子どもとせず、個別に丁寧な対応を検討していただきたい。
朝食を全く食べない小学生、中学生の割合
- 朝食を毎日欠食する方が僅かにでも増えていることは、長期に渡る問題で、実際はその数倍の人数が時々は食べていない状態と思う。まず、現状はどのような要因が絡んでいるのかを把握し、それぞれに対策できることを「このくらいの対応でいい」という段階で終わらせず、具体的な施策につなげなくてはいけない。さらに人数が増えると、対処困難な状態となるので、県として現段階のうちに危機意識を持って、具体的な取組や弊害などの要因を調べて難題に取り組む対策チームを作っていただきたい。
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朝食を食べない子どもの課題は2つの側面があり、まず1つは、成長などの健康面、栄養摂取という意味での現実的な問題である。もう1つが子どもの家庭環境の課題で、朝食が用意されない状況をどう捉えるかという問題となる。健康面では、他県などでの提供事例の報告もあるが、どこかで食べられれば済むのか。そうではなく、総合的に家庭で朝食が摂れることに意味があると捉えるべきか。健康面の喫緊の対策と家庭の問題という総合的な対策の両方が必要になってくる。
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子どもの身体的健康の問題は、行動にも関係する。身体に糖分が入らないと、自律神経系のバランス崩れが起こりやすく、問題行動或いは注意欠如など、問題行動を助長することにも関連する要因となり得る。早く手を打つ必要がある健康面の対策と、家庭などで安定して朝食が用意される環境という時間がかかる対策も必要で、それらは矛盾する面もあるもしれない。両親が朝食を摂らない家庭で育つと、その子ども達も同じような家族を構成していくだろう。先送りすると手が打てなくなるのではと危惧する。
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大学では、100円朝食を提供する大学が段々と増えており、一人暮らしの大学生の健康面はその方法でカバーできるが、小・中学生に対して朝の子ども食堂などどこまでできるのか。専門家の知見でも「この割合だった」と単に言える状況ではないので、県としてタスクフォースを検討していただきたい。
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昼の給食も当初は様々な意見があっただろうが、時間をかけて現在の制度政策になったと考える。
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新聞記事に県内小学校での事例があり、学校の家庭科教室で、スープ1杯を朝始業前に希望者に提供しているが、学校、先生ではなく、学校運営協議会、地域のボランティアが学校に入って活動している。子ども達はあくまでも希望者とあるが、本当に朝食が必要な子どもは担任や養護の先生はわかっている。やれるところからまずやることがいいアイデアで、学校PTAなど地域組織が、地域づくりの活動を工夫して学校に入っている。私は食生活改善推進員協議会員であるが、地域のおばあちゃん達などと協力し、スープ一杯にクッキーや小さなおにぎりなど、受け取った子どもが、差別や区別を受けないよう工夫して提供してほしい。成長発達の著しい子ども達が、朝食を摂らない摂れないことは由々しき問題で、喫緊の課題としてできることから取り組んでもらいたい。
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地域の方々が、朝の時間帯に学校で読み聞かせするなど各小学校でも行っており、地域には人材がいる。
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学校の先生にさらなる対応を求めることは負担が大きく、私のようなシニア世代は社会貢献活動をしたくて仕方がないので、行動力のあるシニア世代を活用していただきたい。
2 第8回ぐんま青少年基本調査のアンケート項目について
「第8回ぐんま青少年基本調査」を実施するにあたり、調査の趣旨、アンケート方法及び項目等について事務局から説明を受けました。
部活動にかかる調査項目について
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小学生から親世代まで、広く学校の部活動が問題として取り上げられ、かつ対応の進捗が遅い現状であるが、質問が中学生、高校生で各一項目だけである。例えば、地域クラブが欲しい、どういう競技をやりたい、学校から地域へ移行する国や自治体の方針についての意見、部活で不安を感じていることなど、非常に重要な問題なので、もう少し部活動に関する項目があってもいいのではないか。
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部活動については、地域移行や学校の小規模化により希望する活動ができない問題、教師の働き方の問題もあり課題となっているため、子ども達がどう考えているかも含めて検討いただきたい。
ヤングケアラーにかかる調査項目について
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ヤングケアラー問題を県が実態調査したと報道にもあったが、青少年健全育成への取組みのなかでも、特に大きな問題であると考えるので、ぜひ項目に取り上げて施策に反映させてもらいたい。県内市町村にも先進的に取り組んでいる自治体があるので、やれるところからやる必要がある。調査によりしっかり統計をとる必要があるのではないか。児童虐待、いじめ重大事態、貧困、ニート、ひきこもり、不登校という問題と同様に並べられる問題だと考えている。
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ヤングケアラーはかなり重要な問題なので、青少年基本調査を待たずして抜き出し、県が実態調査を始めたと思います。青少年基本調査は、定点観測として行い、喫緊の課題は抜き出して別に実態調査を実施していると思う。実態調査に加えて、さらに質問するものがあればぜひ検討していただきたい。
中学生・高校生の結婚観にかかる調査項目について
- 結婚感について、中学生に将来結婚したいかという質問はどうなのかという印象を持った。この質問は高校生を対象としているのではないか。中学生に対して、「なぜ結婚したくないのか」、「自由な時間が減るから」などは、少子化対策での大人への質問と同じ項目もある。
- 中学生に対する結婚観についての質問は、少子化対策として、結婚やLgbtなどの意識がどの年代から芽生えるかなどを検討するために、年齢を下げて調査しているのか。
- また、小中高校生に「あなたには自信のあるものがありますか」という質問があるが、前々回の調査の際、子ども達に「自己肯定感はありますか」と尋ねてもわからないから、「自信があるものがありますか」と表現を変え、その回答と地域活動や社会活動に参加しているかなどの質問の結果とをクロスして、効果や事業検証にあてた記憶がある。子どもに何か自信があることが大事で、その背後にある子ども達が自分のことをどのように思っているかを調査したと記憶している。
- 質問の回答を誘導しないよう調査の対象となる青少年に、項目や文言についてきちんと説明しなければいけない。何についての質問か判断できるようにして、回答についても項目や自由記載のスペースなどが適当でないと思う箇所がある。調査方法も、学級で先生の一斉指導のもと入力することは、個人的には抵抗感がある。保護者に対する調査も、回答の方法などについて配意してもらいたい。
- 中学生に対する質問に、「子どもがいなくてもいい理由」として、「育てるのに不安があるから」や「経済的な負担が大きいから」などはそぐわないと思う。妊娠の確率についての質問も、医師や看護士の医療従事者から中学生が聞く機会はないと思うので、検討が必要なのではないか。
インターネットにかかる調査項目について
- インターネットについて、一人一人が端末を持っているかなどの設問があるが、そもそも子ども達はインターネットの正しい使い方の教育や指導を受けているのだろうか。「おぜのかみさま」のクリアファイルなどもあるが、情報教育リテラシーなどインターネットを利用するための根本的な教育が学校教育現場でなされる必要がある。
- これからは生成AIの活用もしなくてはならない。
- 情報モラル教育について、私の活動するNPO法人では情報モラル教育を実施している。桐生市では、毎年全小・中学生に年1回の情報モラルの授業を委託されており、特にコロナ禍以降は、インターネットでの禁止を促す内容から、より適正な使用方法へと指導を変えており、講習の成果が数字として出るようになるといい。ところで、調査のうち、ニート、ひきこもり、虐待などの問題が深刻化しているとあるが、例えば不登校の生徒からも回答は収集されるのか。不登校の子ども達が入るかどうかにより結果も変わるので、なるべく収集していただきたい。
- 小・中学生のタブレットは、自宅への持ち帰りができる自治体とそうでない自治体があるため、不登校だと、家庭で回答できる子どもと、回答できない子どもが出てくる。持ち帰りができない場合の回答方法を検討した方が、当事者の声が反映されるので重要であり検討してほしい。
コロナ禍を経験した青少年に対する調査項目について
- 7年に一度、基本調査で定点観測していくことについて、非常に有用な調査だと思っている。今回だけになるかもしれないが、今年調査をする意味として、やはりコロナを経験した子ども達世代が、どのように社会に対応し、現在何を抱えて学校に通っているのかという調査が必要ではないか。学校に登校できない時期があったことや、屋外に出られなかったこと、マスクのこと、周りとの人間関係、何が怖かったなど、色々と項目はある。
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群馬県は県内に多くの大学があるので、コロナのような大変な事象を、データ収集分析し、それを読み解き考察を加え、施策に反映するための提言・提案について、過去に社会問題に対する実態調査から予防啓発パンフレットなどを作成した経緯もあるので、県下の複数の大学教員や、教育研究機関、ここに参加している先生などが参画できないか。審議会の直接的な仕事ではないが、特にコロナ禍の子ども達の心身の健康や喫緊の課題等を明らかにして、それに対する施策や対策を練りたい。
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基本調査の結果からデータレベルでの分析はすると思うが、その結果の意味を読み解くところに、県内の様々な見識を持つ人たちの知見が入り、それを施策にまで持っていくための専門家チームをつくるというのはいいアイデアと思うので、ぜひ検討していただきたい。
皆さんからいただいたご意見を読み取り、ぜひ施策に反映していただきたい。